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ダンスフロアとエクスペリメンタル、アカデミックの垣根を飛び越える女性アーティスト、ホリー・ハーンドン

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才能豊かなサウンド・アーティスト、Holly Herndon(ホリー・ハーンドン)が昨年10月に開催されたRed Bull Music Academy Tokyoでのレクチャーとライブのために来日した。ベルリンでテクノDJとして活躍した後、現在はスタンフォードで博士課程を取り、テクノロジーを使いこなしてビートミュージックとサウンド・アートの垣根を超える自由な活動で世界中のファンを魅了している彼女。アルバム「ムーブメント」やEP「コーラス」においては、Max/MSPと彼女自身の声を使ってインターネットとの関係を表現した。ポップで美しく、アカデミックであると同時にダンスフロアにおいても機能するサウンドからインスタレーション作品まで手がける彼女に話を聞いた。

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Q. いつから音楽活動にMax/MSPなどのプログラムを取り入れたんでしょうか?

20代のなかばぐらい。カリフォルニアの音楽大学「Mills College」のプログラミングの学部で勉強を初めてから。そこでコンピュータが楽器として成り立つということを学んだの。エレクトロニック・ミュージックのパイオニア、ジョン・ビショップにすごく影響を受けた。その前はベルリンで音楽活動をしていたんだけど、その頃はハードウェアで音楽を作っていたわ。

Q. エレクトロニックな音楽だけでなく、和声のプロジェクトも手がけていますね。

コーラスやエイトピースのアンサンブルのために楽譜を書いたり、ソロのボーカリストのための曲も書いているの。二つの顔があるけど、どちらも私。それはすごく大切なこと。今の音楽業界のコミュニティはそこをすごく分けてしまうでしょう。それが音楽の発展に悪い影響を与えていると思うわ。


Holly Herndon 「Chorus」 Video directed by Akihiko Taniguchi & produced by Mat Dryhurst.

Q. あなたのアルバム「ムーブメント」には、強いビートのダンサブルな曲と、実験的な曲、どちらもありますね。

二つの違う世界観を一つに入れたかったの。いつもは違う世界にいる音楽たちが集まる場所にしたかった。「ムーブメント」ではこの曲はビートがあるもの、というようにガラリと分かれているけれど、最近ではふたつの世界をもっと合体させたいと思っているの。「Chorus」もそのひとつね。

Q. その、ビートミュージックと実験音楽を繋ぐような曲「Chorus」が「ネット・コンクレート」という手法によって作られているとおっしゃっていましたが、その手法について教えてください。

まず、「Surveillance」(サベイランス/監視)という言葉のことから説明するわ。テクノロジー業界のホットトピックのひとつよ。例えば自分が食べているものや行動をシステムに入力することで、遠隔でダイエットの指導をすることが流行っているでしょう。自分の詳細な行動を大企業が知っているっていうことで、批判の声も大きいわ。「ネット・コンクレート」は、その手法を、自分の音楽に取り入れたの。パートナーのマットが、わたしのコンピュータのオンラインのアクティビティで出るすべての音を記録するソフトウェアを作ったの。行動を音源化してくれるということね。そこから選出してエディットした音で「Chorus」を作ったの。コンピュータは自分のことをスパイするし、他人をスパイする場所でもあるから。

Q. そのプロジェクトを初めたきっかけは?

私はすごく旅行することが多いから、彼とはskypeでコミュニケーションしているの。ホテルで身支度をしながらskypeをすると、バスルームから喋ったりして、そのフレームに私がいないことがあって。その画面を彼がスクリーンショットすることからインスピレーションが生まれたの。「これを音でやったら面白い」と思って。


Holly Herndon 「Home」
Collaboration with Metahaven & Mathew Dryhurst. Released on RVNG Intl.

Q. もうひとつ、NSA(アメリカ国家安全保障局)のことを歌った曲「Home」についても教えて下さい。

この曲は政治的なメッセージであり、今のオンラインの状況についてを歌っているわ。人間と機械の密接な関係についてよ。わたしのように毎日いろいろなところを転々とする生活だと、自分の家よりも、携帯電話のほうが家のような存在になるの。海外に行くとホットスポットを見つけるために走りまわるし、人と話すのも頼りっきりだし、私のすべての情報が携帯電話の中にある。だから、自分の電話にアクセスされたりデータを盗まれるのは、私にとってはすごく怖いこと。

Q. サウンド面では?

オンラインっぽさを意識しているわ。ボーカルをチョップして、skypeの会話を再現しているの。「ネット・コンクレート」のほかには、サウンド・ライブラリーから引用したボールを落とす音を使っているわ。ドラムの音として、「トン、トトトトン」みたいなユニークな音を使いたかったから。それに「Don’t drop the ball」っていうことわざにもちなんでいるの。

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Q. これは最初に質問するべきでした。インターネットは好きですか?

好きというよりも愛しているわ(笑)。現代社会で最も興味深いものよ。インターネットの良いところは、ユニークで新しいものや自然とか人間とかいろんな画像を階級なく見られるところ。でも最近アメリカでは、インターネットの格差ができているの。民間の機関や企業が一般の人に対して、ネットを閲覧させる環境を制限する法律が出来て。その平等さを守るためには戦いたいと思っているわ。

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Q. サウンドアーティストにとって、音源を作ることとインスタレーションを作ることはどのような違いがあるのでしょうか。

プロセスは違うけど、レベルは同じね。例えば「Being There」というプロジェクトでは、12ピースのブラスのアンサンブルのための曲を作って演奏したの。目標としては、ライブを生で見る人と、オンラインで見る人が同じ体験を出来るもの。というのも、今までにライブでは良くなかったのにいろいろ編集してオンラインで見ると素晴らしい、なんて作品を経験したことがあるから。だからアンサンブルを演奏するミュージシャンに向けた楽譜だけでなく、「ここはこういうアングルで撮ってほしい、最後はカメラ目線でお辞儀をする」などフィルムクルーのための指示も書いているの。でも実際仕上がったら100%意図が再現されてなくって、もう一度やり直したいと思っているところ。

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Q. ほかの作品についても聞かせてください。インスタレーション作品「Ada」については?

Conrad Shawcross(コンラッド・ショウクロス)というアーティストから依頼されたプロジェクト。彼は4人のコンポーザーを選んで、それぞれが巨大なロボットのために曲を作ったの。ロボットは、ライトがついた手と足が動き回る巨大なもの。腕の動きをプログラミングしていて、コンポーザーによって違うコレオグラフィを付けているの。私から彼へのリクエストは、ロボットの腕の動きがスムーズだったのを、もっとアグレッシブにしてもらうこと。ロボットの感情で説明すると、なにかに興味を惹かれている感じから核心を得るという変遷。コレオグラフィにある感情を表す音を付けたという感じね。

Q. 最新プロジェクトは?

ポール・ランスキーというアメリカ人のコンポーザーと、ニューヨークのMoMA PS1で彼の音楽を使った作品を作って欲しいという依頼があって。彼の作品「chatter pieces」を、新しく録音して作ったの。テーマは、私がいなくても密接に感じてくれるインスタレーション。もともと彼の作品は奥さんの声をサンプリングした作品で、私のバージョンではiPhoneに電話の会話を録音できるアプリを使って、夫との会話と母との会話を録音して使っているわ。その音を使って、ポールの昔のインタビューの言葉を再現しているの。私がテーマとしている「親密さ」は、インターネットを通すと、そこにいなくても親密な感情が作れると思っているの。お母さんが「ハニー、愛してるよ」って言う言葉を聞かせるのは、親密な関係を他人に披露するということ。そこの空間にいなくても人と人が密接なことは、私のキーワードになってるの。

Q. 最後に、日本のオーディエンスにメッセージを。

いま、世界のどこのカルチャーも似たようなものになっているけど、日本のものはストレートに日本のカルチャーが伝わってくるのが素晴らしいと思ってリスペクトしているわ。これからも日本のカルチャーを伝えて欲しいと思っています。



ホリーがRed Bull Music Academy Tokyo 2014で行ったレクチャーは現在オンラインにて公開中。ぜひ今後の彼女の活動も合わせてチェックしてほしい。



text by Akiko Saito

http://www.redbullmusicacademy.jp/

Infromation

Holly Herndon
http://hollyherndon.com/
Holly Herndonがベルリンのテクノカルチャーにどっぷり浸る為にテネシーにある実家を去ったのは彼女がまだ十代の頃だったが、のちにMills Collegeにて電子音楽で修士号を取得する為にアメリカに帰国。Mills在学中に2011年のElizabeth Mills Crothers賞で最優秀作曲賞を受賞し、アルバム「Movement」を完成させる。以後、パリのPalais De TokyoにてConrad Shawcrossとコラボレーション、ニューヨークのワールドフィナンシャルセンターにてTilt Brassによって演奏された作品の作曲を担当するなど、国際的に活動を展開。2014年には、谷口暁彦とのコラボレーション作品「Chorus」を発表し、同年9月にRVNGIntl.よりシングル「Home」をリリース。現在は作曲の分野で博士号を取得する為にスタンフォード大学に在学している。

書籍「アゲインスト・リテラシー|グラフィティ文化論 」- 大山エンリコイサム 著

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現在ニューヨークを拠点に活動する美術家・大山エンリコイサムによる、日本初の本格的なグラフィティ文化論「アゲインスト・リテラシー」が刊行された。

本書では近年、著者が発表したグラフィティ文化やストリート・アートに関する論考を大幅に加筆し、書き下ろし原稿を加えた内容となっている。

4章で構成され、第1章では、バンクシー、ホセ・パルラ、ラメルジーほか8人の作家を個別に論じる。第2章では、20世紀初頭のアメリカからニューヨークを舞台に「落書き」の系譜を探り、100年の歴史のなかでグラフィティ文化を文脈化する。第3章では、舞台を日本に移し、2章で示したグラフィティ文化論の知見から現代日本の諸相を考察する。第4章は、本書前半の議論を参照しつつ、1960年代ニューヨークの美術批評が取り組んだ問題を拡張的に読解し、著者自身の制作についても解説がなされている。

本書はグラフィティ文化の入門書、批評の書であり、美術家である著者のステートメントでもある。グラフィティ文化と現代美術の接点から導出される「文脈的なリテラシー(フリード)」「感性的なリテラシー(ソンタグ)」というキーワードを手がかりに、 さまざまな文脈やリテラシーによって複雑に編成された現代の文化状況のなかで、硬直する思考に抵抗し、しなやかな感性を発揮するためのガイドとなっている。

カルチャーに大きな影響を与えてきたグラフィティとストリート・アートの魅力や複雑に絡み合う背景が包括的にまとめられている貴重な一冊となっている。ぜひ手にとってみてほしい。

アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論 Against Literacy: On Graffiti Culture
大山エンリコイサム
LIXIL出版
売り上げランキング: 12,106


ストリートアーティスト・スウーン | Article by 大山エンリコイサム
http://www.cbc-net.com/topic/2012/05/swoon/



Oyama Enrico Isamu Letter “Quick Turn Structure” (New Jersey City University, 2014)

Information


アゲインスト・リテラシー|グラフィティ文化論
http://www1.lixil.co.jp/publish/book/detail/d_86480014.html

著者:大山エンリコイサム
本体価格:2700円(税抜き)
A5判、上製、256ページ
ISBN 978-4-86480-014-3
2015年1月31日発行

目次
プロローグ 

1 作家論
バンクシーズ・リテラシー──監視の視線から見晴らしのよい視野へ 
BNE──水の透明なリテラシー 
レター・レイサーズ──ラメルジーと武装文字の空気力学 
絵画とスピード違反──サイ・トゥオンブリとホセ・パルラ
誘拐と競売──ゼウスと有名性について 
スウーンとストリート・アートの「新しいはじまり」 
バリー・マッギーの「界面」 
Obey Me──横断と支配の論理 

2 都市と落書きの文化史
[Ⅰ]前史(一八六二 ─ 一九六七) 
[Ⅱ]グラフィティとプロテストの落書き 
[Ⅲ]地下鉄の時代とそれ以降 

3 現代日本との接点
スタイル化するシミュラークル──グラフィティ 文化とオタク文化
日本の視覚文化とライヴ・ペインティング的なもの 
匿名性の遠心力 ──震災から考える 

4 美術史に照らして
アゲインスト・リテラシー

エピローグ 


ターミノロジー
文献リスト 

Profile

大山エンリコイサム(Ōyama Enrico Isamu Letter)
美術家。1983年、イタリア人の父と日本人の母のもと東京に生まれる。慶応義塾大学卒業後、東京芸術大学大学院修了。
グラフィティ文化の視覚言語を翻案したモチーフ「クイック・ターン・ストラクチャー(Quick Turn Structure)」を軸にした壁画やペインティング作品を発表し、注目を集める。また、現代美術とストリート・アートを横断する視点から、エッセイや論文の執筆も行なう。 2011年秋のパリ・コレクションではコム デ ギャルソンにアートワークを提供するなど、積極的に活動を広げている。アジアン・カルチュラル・カウンシル2011年度グランティ(ニューヨーク滞在)。2012年秋よりニューヨーク在住。
www.enricoletter.net

メディアアート研究者・馬定延による書籍「日本メディアアート史」刊行

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メディアアート研究者として知られる、馬定延による書籍「日本メディアアート史」が昨年末に刊行された。

本書は、技術革新とともに進化してきた日本のメディアアートを、その時代背景に着目して論じるというスタイルで書かれている。

草月アートセンター、大阪万博、つくば科学博、ARTEC、セゾン文化、ARTLAB、ICC、そして大学教育、芸術家たちはそういった大きな国のイベントや企業、大学との関わりの中で、テクノロジー/マスメディア/社会といかにして切り結び、芸術表現を生み出してきたのか。

新進気鋭の研究者による待望の通史を、ぜひ手にとって読んでみてほしい。

2月26日には、NADiff a/p/a/r/tにて、『日本メディアアート史』刊行記念トークイベント「編み直されるアートの現在 ── 研究者の記述とアーティストの思考」も開催される。出演は馬定延、谷口暁彦、渡邉朋也。モデレーターは松井 茂。(予約は満席につき終了)

馬定延によるエッセイ「情報と物質と思い出横丁情報科学芸術アカデミー」
書評『日本メディアアート史』(メディア芸術カレントコンテンツ)

日本メディアアート史
馬定延(マ・ジョンヨン)
アルテスパブリッシング
売り上げランキング: 16,215



Information

『日本メディアアート史』馬 定延
http://artespublishing.com/books/86559-116-3/

定価:本体 2800 円【税別】
A5判・並製368頁
発売日:2014年12月20日
ISBN:978-4-86559-116-3 C0070
ジャンル:現代アート/美術
装丁:菊池周二

『日本メディアアート史』刊行記念トークイベント
「編み直されるアートの現在
── 研究者の記述とアーティストの思考」

2015年2月26日 [木]
20:00 – 22:00(19:30 開場)
入場料:1,000円(本書を当日御買上の方は無料)
会場:NADiff a/p/a/r/t 1F 店内

[出演]馬定延、谷口暁彦、渡邉朋也
[モデレーター]松井茂

書籍「インタラクションデザイン」国内外の制作事例約200作品をピックアップ – BNN新社より刊行

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インタラクションデザインに関する制作事例やインタビュー等をまとめた書籍がBNN新社より2月10日に発売される。

ユーザーの心をつかむ「インタラクションデザイン」は、デザインの新しいカテゴリーとして浸透し、その領域を拡げている。特に近年は様々な手法やデバイスの登場と共に表現の実験が進み、商業的、実用的な応用例が増えている。
本書では、「オーディオ・ビジュアル」、「ビジュアライゼーション」、「サイネージ / デバイス」などのカテゴリーで国内外の制作事例約200作品をピックアップし、目的にかなったアイデアと、それを実現するための技術を端的に紹介している。

また、真鍋大度+石橋素による「インタラクションデザインの現在と未来」と題したイントロダクションに始まり、Aaron Koblin、Universal Everything、IMMERSIVE GARDEN、Semitransparent Design、PARTY、dot by dot inc.、Rhizomatiksなどこの分野で注目を集めているプロダクションなどのインタビューも収録。
先端かつ実践的なクリエイションについて知ることのできる一冊となっている。
ぜひ手に取ってご覧頂きたい。

INTERACTION DESIGN―インタラクションデザイン
ビー・エヌ・エヌ新社
売り上げランキング: 33,884


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Information

インタラクションデザイン
http://www.bnn.co.jp/books/7328/

定価:本体3,000円+税
仕様:B5判/208ページ
発売日:2015年02月10日
出版社: BNN新社

目次
INTRODUCTION:
インタラクションデザインの現在と未来 真鍋大度+石橋素
INTERVIEW:
Aaron Koblin
Universal Everything
IMMERSIVE GARDEN
Semitransparent Design
PARTY
dot by dot inc.
Rhizomatiks

CATEGORY:
1. COLLABORATIVE WITH USER ユーザー参加型
2. INTERACTIVE FILM インタラクティブフィルム
3. AUDIO VISUAL オーディオ・ビジュアル
4. VISUALIZATION ビジュアライゼーション
5. 3D
6. MOTION モーション
7. SCROLL スクロール
8. SMARTPHONE スマートフォン連動
9. UI/UX DESIGN ユーザーエクスペリエンス
10. SIGNAGE / DEVICE サイネージ / デバイス
11. STAGE 舞台演出

開催目前 FITC Tokyo 2015 – スピーカーQ&A リカルド・カベッロ

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デザイン、アート、テクノロジーに特化したカンファレンスイベント「FITC Tokyo 2015」が今年も開催!2015年2月7日(土)、8日(日)の2日間、昨年と同じくお台場の日本科学未来館にて、世界中から集まった最前線のデジタルクリエイターたちがプレゼンテーションを繰り広げる。

「FITC Tokyo」の開催は今回で6回目。昨年は演出振付家のMIKIKOが登壇し、Perfumeをめぐるコンセプト、制作プロセスなど、ダンスとテクノロジーを繋ぐ演出についてのプレゼンテーションを行い、大きな話題を呼んだ。FITCの特徴は、デジタル・クリエイティブに特化し、最新の事例をクリエイター自身が語ってくれるところ。インタラクティブ、テクニカル、デザイン、ビジネスなど、急速に変化し続けるこの業界の最先端の話題がいつも取り上げられる貴重な機会だ。合わせて行なわれるパーティでは、ネットワーキングの機会も提供される。

今回登場するゲストの一人、「Google Gravity」やオンラインのミュージックビデオ「ROME」のプログラム、three.jsなどのオープンソースライブラリとツールの開発を手がけるMr. doobことリカルド・カベッロにインタビューした。

20150119_fitc02 Q. 最近どんな仕事をしていますか?

ここ5年のあいだは、主にthree.jsというJavaScript 3Dの開発を容易にするためのライブラリーの開発に注力していたよ。そしてこのプロジェクトに連携するかたちで、プログラミングのスキルがない人々でも作品がつくれるようなエディターの開発も始めたんだ。2015年にはこのエディターを実際に使ってもらって役立つような完成度に到達させたいね。もうひとつ、frame.jsというアニメーションシーケンスの作成を助けるライブラリーの開発もしているけど、こっちはまだごく初期のステージなんだ。昨年末は、MozillaのMozVRプロジェクトの手伝いもしていた。これはWebVRという、WebからVRデバイスを操作するための新しいAPI群のデモンストレーションなんだ。

mozvr


Q 世界でも最新のVRのプロジェクトに関わっているんですね。海外でのVRでの状況はどうなっていますか?

Google Cardboardによってスマートフォンを持っている誰もが$20あればVRにアクセスできるようになった。ヘッドストラップが付属していないのが残念だけどね。GearVRはVRヘッドセットのなかでも最新で最良のものだ。これはSamsung Galaxy Note 4を機器本体およびスクリーンとして使い、Oculusの持つ独自のソフトウェアプラットフォームが組み込まれている。GearVRとOculusのソフトウェアの組み合わせによりはじめて、ヘッドセットを着けたままで異なるゲームやVR体験を次々にダウンロードし、楽しむことが可能になったんだ。もうひとつ興味深いトピックは、VR世界とのインタラクションの仕方についてだ。Leap Motionは、VRヘッドセット自体にマウントされることで、ついにその有用性を示し始めたようだ。いま、この分野においていくつもの実験的な試みがなされているよ。

Q VRコンテンツを作るときに気をつけていることは何ですか?

パフォーマンスだね。なによりまず、ユーザーの頭の動きに応じた視覚フィードバックが戻されるまでの遅延は最小限にしなければならないんだ。それをまずきちんとやってから、その次にVRコンテンツ自体の見た目を良くすることにフォーカスするんだ。

Q FITCで何を話す予定ですか?

リカルド:おもに、ぼくが最近開発に取り組んでいるツールについて話をするつもりだ。それらのツールがみんなのクリエイティビティや生産性をパワーアップさせられるといいなと思っているんだ。




ほか、今回のFITCにも、カッティング・エッジなプロジェクトを手がけるクリエイターたちが登壇。いまトレンドになっている「グリッチ」や「データモッシュ」をもちいた表現をいち早く行っていたクリエイター、デビッド・オライリー。今年、プレイヤーが山になれるシミュレーション・ゲーム「MOUNTAIN」でも話題を呼んだ彼が、3Dソフトウェアを使用したアート制作プロセスについて講演を行う。そしてクリエイティブディレクターでありデザイナーのアッシュ・ソープ。ハリウッド映画「猿の惑星: 新世紀」や「アメイジング・スパイダーマン2」などにおいてモーション・グラフィックスのデザイナーを手がける気鋭の存在だ。彼が語るクリエイティブブロック(創作活動で直面する壁)、疑念、落ち込みの克服方法、目標を見失わないようにする方法などはぜひ聞いておきたいところ。またクリエイティブコーダーのマリオ・クリングマン、ソフトウェア・サウンド・光・空間を使ったビジュアル・アートを手がけるソウゲン・チュン、デザイン・ディレクターのGMUNKら、最先端のデジタル・アーティストらが来日する。

日本からは、メディア・アーティストの真鍋大度、やんツー、藤岡定のほか、顔面プロジェクションマッピング「OMOTE」で話題のクリエイター浅井宣通、Takram Design Engineeringの緒方壽人、マルチメディア・アーティストのBaiyonらが出演。

彼らのトークは、新しいアイデアやコンセプトを見つけ、デザインとアートに関するテクノロジーの限界を打ち破るヒントになるはずだ。

2015年1月31日までは、チケットの早期割引が行われている。是非チェックを!

Information

FITC Tokyo 2015
http://fitc.ca/tokyo/

開催日:
2月7日(土)〜2月8日(日)13:00~18:30 [2日間開催]

会場:
日本科学未来館 7F 未来館ホール

早期割引チケット:
早期早割2日間チケット 13,000円(学生7,000円)
早期早割2/7 1日チケット 7,000円(学生3,500円)
早期早割2/8 1日チケット 7,000円(学生3,500円)

通常チケット (2015年2月より若干枚数販売):
2日間チケット 16,000円(学生9,000円)
2/7 1日チケット 9,000円(学生4,500円)
2/8 1日チケット 9,000円(学生4,500円)

スピーカー:
Baiyon
Bradley (GMUNK) Munkowitz
Cod.Act
David OReilly
Motoi Ishibashi
Tsuyoshi Nakao
yang02
アッシュ・ソープ
ソウゲン・チュン
マリオ・クリングマン
リカルド・カベッロ
浅井 宣通
真鍋 大度
緒方 壽人
藤岡 定

ダンスがプログラミングで進化する ー YCAM RAM プロジェクト | サマーキャンプ・レポート – 2015年1月にはダンス公演発表へ

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ダンスがプログラミングで進化する3日間のサマーキャンプを実施


山口情報芸術センター[YCAM]とザ・フォーサイス・カンパニーの中心的ダンサーである安藤洋子とともに2010年より継続的に進んでいる共同研究開発プロジェクト「Reactor for Awareness in Motion(リアクター・フォー・アウェアネス・イン・モーション/略称:RAM)」。

昨年、以下の記事でもRAMの仕組みやプロジェクトの取り組みについて紹介している。本プロジェクトについてまだご存知でない方はぜひご覧いただければと思う。

ram_top-640x360メディアテクノロジーを介した身体と知覚の新しい回路
YCAM InterLab+安藤洋子 共同研究開発プロジェクト「Reactor for Awareness in Motion」レポート



そして昨年に引き続きRAMのワークショップが「RAM SUMMER CAMP 2014」と題して今年の夏、3日間に渡り7月19日から開催された。今回はゲストによるレクチャーのほか、ダンスやプログラミングのワークショップとさらに濃密で多面的な内容となった。

ゲスト講師にはモントリオールのコンコルディア大学でデザイン、コンピューテーション・アーツの分野で教鞭をとり、自身もアーティストとして活動するクリス・サルター氏、慶應義塾大学環境情報学部准教授でインタラクティブメディア研究者・デザイナーの筧康明氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授で様々な分野で人の感覚・知覚に関わるデバイスを開発する稲見昌彦氏が参加。
プログラマー陣には昨年に続き大西義人氏、清水基氏、新たに開発メンバーとしてアーティスト・プログラマーとして活動する神田竜氏、ひつじ氏、魚住勇太氏らが参加した。

少し時間が経ってしまったが、プロジェクトの歩みやRAMの主要構成要素などの詳細は上記の記事を参照いただき、今回はサマーキャンプの模様をレポートしつつ、現状そして今後のRAMプロジェクトについてお伝えしたい。

また来年の1月24日、25日にはRAMの成果発表が予定されており、興味ある方はそちらもチェックしてほしい。


RAMの現在地


メディアテクノロジーを介した身体と知覚の新しい回路を見出すことを目的として2010年から開始したRAMプロジェクト。2011年にインスタレーション作品「Reacting Space for Dividual Behavior」がYCAMにて発表され、その後も国内外のプロジェクトメンバーが加わり、継続的にツール開発や実験を実施し、ワークショップやシンポジウムなどを重ねてきた。

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2013年2月に開催されたRAMの研究開発チームによる成果発表。写真は安藤と同じくザ・フォーサイス・カンパニーのダンサーであるシリル・バルディによるダンスデモンストレーションの様子。詳しくはCBCNET内の記事へ

RAMではダンスとメディアテクノロジーそれぞれの専門家がコンセプトを共有し、テクノロジーが単なる舞台作品の演出のためではなく、ダンスの一つの本質を捉え、新たな身体表現への昇華させることを模索している。

その主要構成要素となるのは、RAMチームが独自開発したモーションキャプチャシステム「MOTIONER」とそこから得られたデータを扱いやすくし、ビジュアライズに特化したOpenFrameworksで制作されたツールキット「RAM Dance Toolkit」である。このツールキット上では様々なエフェクトやルールをプログラムすることができ、リアルタイムにスクリーンに描写することによってダンサーにフィードバックをもたらすことが出来る。その「ルール」がある環境のことをRAMでは「シーン」と定義している。

これらのツールはYCAM InterLabが中心となり、外部のエンジニア・プログラマーとともに開発されてきた。これまで関わったチームメンバーはこちらで確認することができる。またRAM Dance Toolkitのアプリケーション一式とMOTIONERの制作方法は一般にもオープンソースとして公開されている。(詳しくはRAM特設ウェブサイトへ)

土台となるこれらのツールは数年に渡る研究開発により既に一定の安定感と機能性を獲得しており、現在はこのツールたちを使い、実際にどういった表現や意識への働きかけることができるのか、というアウトプットへ向けての実践段階に入ってきている。そうしたなか、今回のサマーキャンプが実施された。

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今回のワークショップでは6人分用のMOTIONERが用意された

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モーションデータを扱いやすくし、ビジュアライズに特化したOpenFrameworksで制作されたツールキット「RAM Dance Toolkit」 。各種ツールの詳細はRAMのウェブサイトへ。

RAM SUMMER CAMP 2014


ダンサー/振付家とプログラマー、合計約30名が参加した今回のサマーキャンプでは昨年より参加者に対して明確にRAMが目指している方向性が提示された。
まずRAMプロジェクトが想定するダンスとは予め決められた振付や演出から生まれるものではなく、「ダンサーが環境からの情報に対してリアクトする状態を見せること」とし、RAMはダンサーとコミュニケートし、ダンサーの動きを促す環境を生み出すリアルタイムのシステムとして機能するものであるとしている。今回のワークショップでは課題が以下のように設定された。

ダンサーを刺激し、ルールが創発されるシーンを作る。
その際、空間との対話を意識すること。
また、発表はRAMで想定するダンスになっていること。



昨年のワークショップをもとに作成されたプロジェクト紹介ビデオ

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初日にはRAMの全体の説明があったあと、「ワールド・カフェ」というグループを組み替えながら議論をし、参加者同士の知識の共有とつながりを作っていくワークショップを通じ、チーム編成を行っていった。まだこの段階では「RAMが想定するダンス」という部分への理解がなかなか難しいのもあり、それぞれ何かを見出そうとしていた。

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イントロダクション・ワークショップとしてYCAM InterLabの大脇氏によるダンスワークショップが行われた。いくつか簡単な準備運動を経て、小型カメラとモニター、ボールがついた棒などを使い、自身が見える視点とそれに対する意識の持ち方などについて体験するに内容となっていた。

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安藤氏によるダンス・ワークショップ。
身体や空間の捉え方、そして意識の持ち方について、基本的だが日常では意識することが無い感覚を呼び覚ましながら進行していく。

たとえば、単純なゴム紐を両手に持ち「ゴム紐が緩まないように引っ張り、そのテンションを保ちながら移動する」というルールが設けられた。すると舞台上にいる参加者は迷いがなく移動していく。単純なゴム紐ではあるがそれが身体に与える「ルール」が明確であり、同時多発的に複数の事象を意識しないといけない。この自身と他者が共有できる「ルール」を直感的に感じれられる内容となった。

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清水基氏によるプログラミングワークショップではプログラミングを全くやったことがないひとに向けて、コンピューターの仕組みからopenFrameworksを使った簡単な描画方法、そしてRAM Dance Toolkitに実際にその描画が反映されるところまで行われた。プログラミングの経験がないダンサーも数行のプログラムを書くことによりコンピューターの動作やインタラクションが起こすことが出来る仕組みを理解し、各自が楽しそうに実験していたのが印象的であった。

レクチャー


続いて、サマーキャンプでのゲスト講師によるレクチャー。

自身もアーティストとして活動し、パフォーマンス作品を発表しているクリス・サルター氏によるレクチャーでは新たなメディア環境においての動きと時間の体験というテーマで、パフォーマンスの歴史を振り返りながらどのような変容を遂げてきたかを伝える内容となった。フセヴォロド・メイエルホリドやオスカー・シュレンマー、マース・カニンガム、ウィリアム・フォーサイスなどが発表してきた著名なパフォーマンス作品の数々にどのような特性や時代背景があり現在へと繋がっているのか、RAMのコンセプトを考えていく上で貴重な資料が多く見られた。

その内容は2010年にMIT Pressよりリリースされた「Entangled: Technology and the Transformation of Performance」にもまとめられている。(参照リンク

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コンコルディア大学でデザイン、コンピューテーション・アーツの分野で教鞭をとり、自身もアーティストとして活動するクリス・サルター氏。


二日目には筧氏と稲見氏によるレクチャーが行われた。

昨年のRAMワークショップにも参加していた筧康明氏のレクチャーでは人間の五感や物理素材の特性とテクノロジーを掛け合わせることにより、感覚やコミュニケーションを拡張するインタラクティブメディアの可能性を作品の実例とともに紹介された。
YCAMも参加していた触感をテーマとした「TECHTILE」や今年のICCでのオープンスペースで発表されている「HABILITATE」などのプロジェクトが紹介され、人間の身体とその外側ににある他者や社会との関わりを再考し拡張する様々なヒントが散りばめられていた。

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最近ではJINS MEMEなどの取り組みが話題となった稲見氏のレクチャーではのようにヒューマンインタフェース、ロボットを専門とするだけによりドラスティックなテクノロジーによる人間の機能拡張の話となった。

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テクノロジー、環境、人間、他者、などの関係性について多岐に渡る内容となり、多くの点でRAMのプロジェクトを考える上で繋がるところがあった。また、ワークショップとレクチャーを重ねるごとに参加者の意識もどこか拡張し、最終日の発表に向けて講師含めて議論が次第に活発化していくのが顕著に見て取れる日々となった。

3日間を終えての成果発表


RAMプロジェクトの可能性であり同時に難しさでもあるのは、ダンサーがどのようにフィードバックを感じて、どういった感覚が刺激され、リアクトの思考と動作に繋がるのか、というのは実際に試してみないと分からないところだろう。プログラマーがMOTIONERを身につけみると想像と全く異なるフィードバックが感じられることもあるという。
さらには、プログラマーが作ったシーンからフィードバックを得て、ダンサーがシーンに影響を与える「フィードフォワード」という行為の循環を絶えず作り出だしていくにはどういうシステムが有効なのだろうか。

議論と作業は連日深夜まで続き、最後にそれぞれのチームによる成果発表が行われた。各チームからは「スピード」、「バグ」、「時間」などキーワードを軸に様々なフィードバックを与えるシーンが披露された。プログラムの実装には時間を要するため、実際にシーンをダンサーに試してもらい、そのフィードバックの具合を確認し合う時間は十分には無かったのだが、それでも短期間とは思えない内容のものとなった。

安藤氏、クリス・サルター氏、開発陣から各チームへの具体的な感想や提案があり、参加者はさらに制作に取り組みたい様子であった。こうした短時間でもダンサーとプログラマーらが描く視点を擦り合わせていき、RAMが持つ可能性を広げられたのは今後のプロジェクトの発展を期待させるものであった。

以下は発表されたいくつかのシーン。

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体の部位を平面として一反木綿のようになるシーン

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フィードバックが書体になっているシーン。意外にもこのシンプルなアイディアは開発チームでは上がったことがなかったいう。

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ダンスでは「スピード」をどう表現するかという重要な要素になることから、体の部位の移動速度に着目しビジュアライズしたシーン。

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もっとダンサーの人にプログラマーを意識してほしい、という思いから、ダンサーの動きに応じてプログラマーに微量の電流を流すというシーン。痛そうなプログラマーの顔に参加者は大ウケであった。

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「バグ」をテーマにしたシーン。ダンサーの意識を「バグらせる」というテーマのもといくつかシーンが提案された。これは上半身と下半身の距離関係が極端に離れてしまうシーン。

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最後は参加者みんなで「山口」ハンドサインで記念撮影。


RAMの今後、1月には新作ダンス公演


以前のレポートでも記載したが、RAMにはいくつかの課題点もある。
現状のMOTIONERは舞台空間での絶対位置が取ることができない。それにより複数のダンサーがいる場合や空間上に物理オブジェクトがある場合はスムーズにインタラクトできる情報を提供することが難しい。またダンサーからするとMOTIONERを身につけることに抵抗感を感じることもあるであろうし、現状はスクリーンを通じてのフィードバックが中心となっているのも議論の要点となっていた。

もちろん空間の位置情報の取得は光学式センサーやKinectを使った仕組みを利用することで改善は可能であるが、MOTIONERが一定の機能性を有してるからこそ今回のような成果があったのも一面としてある。こうした議論からRAMの次の展開を見出していく必要がある。




20141127_ycam-ramそして来年の1月、RAMプロジェクトの成果を新作ダンス公演として発表されることになった。
発表される作品ではデジタルシステムに加えて、箱庭と呼ばれる小さな実験室が登場するという。新たなコラボレーターとして空間構成には田根剛氏、音楽・サウンドプログラミングにはevala氏を新たに迎え、発表に向けて制作が続いている。この公演からRAMの一つの形が見られるのを楽しみにしたい。

RAMは現在も研究開発が続いているオンゴーイングなプロジェクトであり、興味があるダンサーやプログラマーはプロジェクトサイトからぜひ詳細をご覧頂きたい。

1月の公演の詳細はこちらから。
YCAM RAM「Dividual Plays(ディヴィジュアル・プレイズ)身体の無意識とシステムとの対話」1月24日(土)、25日(日)開催


Article by Yosuke Kurita



「RAMサマーキャンプ2014」
http://www.ycam.jp/performingarts/2014/07/ram-summer-camp.html
http://ram.ycam.jp/
講師:YCAM InterLab、安藤洋子(ダンサー/ザ・フォーサイス・カンパニー)、清水基(プログラマー)、筧康明(インタラクティブメディア研究者・デザイナー/慶應義塾大学環境情報学部准教授)、稲見昌彦(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、クリス・サルター(アーティスト/コンコルディア大学[カナダ]准教授)ほか
日付/時間 :
2014-07-19(土)
2014-07-20(日)
2014-07-21(月)

場所 :
スタジオA /

Information

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YCAM InterLab+安藤洋子
共同研究開発プロジェクト Reactor for Awareness in Motion (RAM) 2014-15成果公演
「Dividual Plays―身体の無意識とシステムとの対話」

http://www.ycam.jp/performingarts/2015/01/dividual-plays.html
http://ram.ycam.jp/

日付/時間 :
2015-01-24(土)19:00開演
2015-01-25(日)14:00開演
会場:山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA
料金 :
前売 一般2,500円/any会員・特別割引2,000円、25歳以下1,800円
当日 3,000円
チケット発売日:11月29日(土)

プロジェクト・ディレクション:YCAM InterLab
ダンスコンセプト・ディレクション:安藤洋子(ザ・フォーサイス・カンパニー)

研究開発:
プログラミング・デバイスデザイン:大西義人 神田竜 ひつじ
研究開発コンサルティング:筧康明(慶應義塾大学)
ダンス:川口ゆい 小㞍健太 笹本龍史(METHOD B)

スペシャル・コラボレーター:
空間構成:田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE/ARCHITECTS)
音楽・サウンドプログラミング: evala(port, ATAK)

主催:公益財団法人山口市文化振興財団
後援:山口市、山口市教育委員会、大阪ドイツ文化センター
平成26年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
本事業は宝くじの助成を受けて実施しています。
協賛:資生堂
共同開発:YCAM InterLab
企画制作:山口情報芸術センター[YCAM]

タイプフェイスから眼鏡のデザインを作るブランド TYPE から
新モデル「Din」「Futura」発売

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以前、CBCNETでも紹介した、タイプフェイスから眼鏡のデザインを作るブランド「TYPE」から新たに「 Din (ディン)」と「Futura(フーツラ)」が発売された。

書体のデザインがメッセージの伝わり方に影響を及ぼすように、眼鏡のフレームの微妙なデザインの違いは、それをかける人の印象に変化をもたらす。この考えのもと、TYPEは書体と眼鏡の機能的・デザイン的な共通点に着想を得て生まれ、ひとつひとつ、眼鏡の聖地と呼ばれる鯖江市の職人の手によって手作りされている。

第一弾モデル「Helvetica®」と「Garamond」に続いて、第二弾の「Din」と「Futura」も、色はBlack/Tortoise(べっこう)/Clearから、眼鏡とサングラスから選ぶことができる。また度付きレンズへの変更も可能。フレームの太さは(Light/Regular/Bold)から自分に合った眼鏡のデザインを選ぶことができる。

「Din」は、ドイツの工業規格のために誕生した書体で、直線と細長いデザインが特徴。現在は国や用途を問わず広く使用されており、日本でも日常的に目にすることができる。Dinの持つ、くせのないニュートラルで洗練された印象をデザインに反映することで、多くの人がかけやすく、使いやすい眼鏡に仕上がっている。

「Futura」は、丸みを帯びたデザインが特徴で、多くのブランドのロゴに使用されており、認知度の高い書体。モダンで幾何学的でありながら、どこか愛嬌のあるFuturaの特徴を活かした眼鏡となっている。

また、モノタイプ社のタイプディレクター小林章氏への両書体に関するインタビューも上がっている。


新商品の「Din」「Futura」およびTYPEのラインナップは、TYPEのウェブサイト、11月5日(水)にオープンした「Oh My Glasses 渋谷ロフト店」、メガネ通販サイト「Oh My Glasses」で購入可能。

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Information

TYPE ブランドウェブサイト
http://type.gs/

新モデル概要
商品名:TYPE「Din(ディン)」「Futura(フーツラ)」
型数:各3型、各3色(度付き眼鏡、サングラス対応)合計36種類
販売価格:24,840円(税込、レンズ代別)
発売日:2014年12月1日(月)

発売元:オーマイグラス株式会社
企画・設計:ワイデン+ケネディトウキョウ

あの音楽は、誰がどんな風に作ったのか? 日本のゲーム音楽の歴史と、その魅力を探訪するドキュメンタリー・シリーズ『ディギン・イン・ザ・カーツ』

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エピソード1:テレビゲームミュージックの到来

ヒップホップやテクノなどのストリート・ミュージックを日本人がやるのは「猿真似」だと揶揄されることがある。日本にはホンモノのシーンがなかった、外国文化の輸入に過ぎないと。だがその認識は大間違いだということを、この映画は教えてくれる。

日本から生まれ、世界に多大な影響を与えたホンモノのストリート・ミュージック。それはテレビゲーム音楽だ。80年代に日本が生んだ家庭用テレビゲーム機は世界に輸出されて爆発的な人気となり、以降のユース・カルチャーにすさまじい影響力を与えた。なかでもゲーム中で使われている、日本のコンポーザーたちによるオリジナル音楽が、海外のミュージシャンに多大な影響を与えているのである。

この知られざる事実を描いたのが、ドキュメンタリー映画「ディギン・イン・ザ・カーツ」。レッドブルが主催する「レッドブル・ミュージック・アカデミー」による、日本のテレビゲーム音楽の歴史を探る作品だ。意外にも、日本のゲーム音楽と現代の音楽シーンを対比的に捉えたドキュメンタリーが作られるのは世界初。

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ニック・デュワイヤー(プロデューサー)

本作のプロデューサーはニュージーランド出身のニック・デュワイヤー。もともと彼が初めて日本のゲームに触れたのは10歳の頃。兄が日本で買ってきたスーパーファミコンに夢中になり、ゲームと日本語を勉強するようになった。本企画は昨年、監督が個人的に日本を観光で訪れていた時に、ゲーム音楽を聴きながら渋谷の街を眺めているときに思いついたもの。レッドブル・ミュージック・アカデミーに相談し、「世界初の企画」ということで支援を得、このたびの完成にこぎつけた。

映画に登場するのは二種類の人々だ。いっぽうは、80年代から90年代に伝説のゲーム・ミュージックを生み出した音楽家。もういっぽうは、ゲーム・ミュージックに多大な影響を受けた、現在の音楽シーンを代表する海外の気鋭音楽家たち。

前者には、任天堂で「メトロイド」や「テトリス」などのクラシックを生み出した田中宏和や、「ファイナルファンタジー」シリーズの植松伸夫、ナムコで「ドルアーガの塔」を手がけた小沢純子、カプコンで「ストリートファイター」の世界各国出身のキャラクターにワールド・ミュージックのテーマを作った下村陽子、8ビットサウンドを代表する作品「ギミック!」を手がけた影山雅司、SEGAの「アウトラン」を手がけるHiro、「アクトレイザー」の古代祐三ら。みなテレビゲーム・ミュージックを手がけたパイオニアたち。その影響の大きさに比べ、これまで裏方としてスポットライトを浴びなかった人も多い。

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植松伸夫

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影山雅司

いままで語られることが少なかったゲーム音楽制作の裏側。当時は現在ほど家庭用ゲーム機がハイテクでなかった時代だ。音楽を作るにも、厳しいテクノロジーの制約があった。楽器で演奏した曲を採譜して、プログラムできるように音を数字に置き換えて打ち込んでいく。また、出せる音色もファミリーコンピューターは3音、スーパーファミコンでも8音というミニマルぶり。だが、そんな制約のなかで、彼らは知恵を絞り、妥協というものをしなかった。ゴシック・ロックやファンク、ラテン・ジャズ、さらにはTR808やTR909をサンプリングしてデトロイト・テクノなど先端の音楽を取り入れ、豊かな音楽世界を創りあげていった。

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フライング・ロータス

そんな日本のゲーム音楽に大きく影響を受けたと語る豪華アーティストたち。アメリカのフライング・ロータスやサンダー・キャット、ジャスト・ブレイズ、J Rocc、ファティマ・アル・カディリ、アナマナグチ。そしてUKのKODE9、レディ・ホーク、ディジー・ラスカル、アイコニカ。

フライング・ロータスはしっぽマリオのTシャツを着て、真剣な表情で「魂斗羅がヤバイ」と言う。ファティマ・アル・カディリは「悪魔城ドラキュラ」シリーズが「究極の絶望と喜びが存在するゲーム音楽の殿堂」と主張し、KODE9は日本のゲーム音楽がヒップホップ、ダブステップ、フットワークにまで影響すると語る。サンダー・キャットの携帯メール着信音は「昇竜拳!」だ。


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ファティマ・アル・カディリ

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KODE9

彼らにとってゲーム音楽は魔法のようだった。「ストリートファイターII」の音楽に、サンダー・キャットは「まるで自分がチャンピオンのような気分にさせてくれた。下手くそでも、死んだ時には偉大な死であったかのように思えた。死んでもあいつは諦めなかった、そんな気分にさせてくれる音楽はどうやって出来るのだろう?」と当時の感動を語る。厳しい容量の制限の中に日本の作曲家たちが詰め込んだ、アルペジオがあり、ビートがあり、リズミカルで、シンコペーションがあるゲーム音楽。それはループすることを想定された強度のある音楽に彼らが触れた源流の一つであり、ビートメイカーたちに多大な影響を与えているのだ。

本作には、素晴らしい音楽の文化をつくりあげた作り手と現代のビートメーカーたちに加え、日本の美しい風景も大きくフィーチャーされる。既に海外でも大きな反響を呼んでいるそうだ。当時ゲーム音楽に影響を受けた大人も、当時を知らない若いファンにも見てもらいたい、日本のクラフトマンシップを巡るドキュメンタリー映画の名作である。

「ディギン・イン・ザ・カーツ」は全6回のエピソードとなっており、レッドブル・ミュージック・アカデミーの特設Webサイトにて公開中。サイトにはディジー・ラスカルらの話を深く掘り下げたパーソナル・ストーリー・クリップや、ジャスト・ブレイズやJ-Roccらによるゲーム音楽だけのDJミックスなど、ボーナス・コンテンツの隠しステージが満載。ぜひチェックを。

また、11月13日(木)には本作の制作記念イベント「Red Bull Music Academy presents 1UP: Cart Diggers Live」を渋谷「WOMB」で開催。Rustieがゲーム『ベア・ナックル』の作曲家である古代祐三の音楽を中心にライブセットを披露するほか、Oneohtrix Point Neverはシューティング・ゲームへのトリビュート演奏を披露。Fatima Al Qadiriも登場する。こちらも是非!

Article by Akiko Saito

Information

RED BULL MUSIC ACADEMY PRESENTS
DIGGIN’ IN THE CARTS

http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/digging-in-the-carts

20141002_diggin-in-the-carts05ディギン・イン・ザ・カーツ 制作記念イベント
Red Bull Music Academy presents 1UP: Cart Diggers Live

http://www.redbullmusicacademy.com/events/tokyo-2014-1up-cart-diggers
会場 : Womb
会場住所 : 東京都渋谷区円山町2-16 1F
開催日/公演日 : 2014/11/13 (木)
開演時間 : 19:00 ~ 22:00
入場料 : 1000円
予約はこちらから

出演者
ROOM 1:
Rustie vs Yuzo Koshiro
Oneohtrix Point Never: Bullet Hell Abstraction IV
Fatima Al Qadiri: Forgotten World
CHIP TANAKA
DUB-Russell & (*L_*) & 初音ミク
HALLY

ROOM 2:
QUARTA 330
大久保博
井上拓
佐野電磁
杉山圭一
ローリング内沢 CURATING THE ROOM
日野太郎 (VJ)
+Classic Arcade machines

大日本タイポ組合編集長による、文字による文字のための文字のサイト『 type.center 』

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大日本タイポ組合が編集長を務める「文字による文字のための文字のサイト」type.center (読み : タイプドットセンター)が公開された。

サイト名の type.center は、「文字の真ん中」ということで、文字の情報の「中心」であることと、みんなが集まれる「場」としての意味合いを持っている。

ターゲット層は「文字をつかう人」と「文字をつくる人」の両方、つまりデザイナーや書体関係者、双方の「中心」として情報を発信していく。
また、今は文字について興味が浅い、あるいは、まだそこまで詳しくない学生や一般層といった「今後、文字をつかおうとする人」「文字をつくろうとする人」に向けても、文字の面白さや興味深さなどについて伝えていく。

なんとも粋なドメイン(type.center)のサイトでは文字通り「ドット」が「センター」に配置されたビビットかつやわらかな印象のあるデザインになっている。

今後掲載されるコンテンツの例としては、文字に関するニュース、文字関連のイベントレポートやインタビュー記事、今日が誕生日の書体デザイナーやイベントなどのお知らせ、「文字と著作権」「文字なぞりによる書体見本」「書体用語集」などの連載が予定されている。

文字に関係する全ての人が楽しめる、幅広く文字に関する情報が集まる type.center を、今後も要チェックだ!
より詳細なプロジェクトの意気込みは大日本タイポ組合による素敵なABOUT文をご参照ください。


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Information

文字による文字のための文字のサイト
type.center

http://type.center/

サイト公開日 2014年10月1日
twitterアカウント @type_center
facebookページ https://www.facebook.com/type.center.jp

都市のすき間にアートが介入する瞬間 — 取り壊し予定のビルがアート空間に変貌した 「BCTION」現場レポート!アンコール開催も決定

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手前: Usugrow / 柱など: BAKIBAKI(DOPPEL)

取り壊し予定のビルまるまる一棟をアーティストたちが完全ジャックするアートプロジェクト「BCTION」(ビクション)が9/1〜9/15の期間に開催された。ここにはおよそ60組弱のアーティストが集結し、各々が9階建てのビルの壁面や床、階段のいたるところで制作を実施。360°空間をフルに利用した大胆なペインティングやインスタレーションが随所に施され、ビルはたちまちにアート空間へと姿を変えてしまった。一体、この現場で何が起きていたのか? 早速その模様をお届けしたい。

Text by Arina Tsukada




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大山康太郎 / 床一面に巨大な魔方陣が登場

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Houxo Que / 点滅し続ける液晶モニタの上にペインティング。ブルーライトの空間で怪しく光る

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Meguru Yamaguchi / NYC在住のMeguruくんの作品。まるでその場で描いたような迫力!

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Aruto Watanabe / 廃材を用いた都市のインスタレーションを展開

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81BASTARDS (OT, MHAK, YOSHI47, SAND NAOKI, JUN INOUE)

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ヌケメ/ 本当に入ると危険らしい

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裏千家の茶道家、松村宗亮さんによる茶会も実施


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9F建てのビルの上(10F)はインターネットにつながっていた。
…という事実を知ったのは会場を後にしてからだった。当日会場では、「あれ、exonemoってリストに書いてあるけど、見つかった? どこどこ?」という会話が何度かなされるも、誰も発見できず。と、思ったら10Fは常時24時間営業でいつでもアクセス可能なのでした。

——「BCTIONビルの10階はインターネットだ」という妄想にもとづいて、ハッシュタグの上でおこなわれる展覧会。 誰でも参加できるハッシュタグという仕組みは、同じく誰でも参加できるストリートと等しい条件を備えている。 街の風景を「描き変える」ことから始まったストリートアート。 ネット上にあふれるBCTIONのイメージをREMIXして、ネットならではの新しいBCTIONを生み出すことを目指す。 現代のストリートとも言えるインターネットを通じて、リアルとは何かを探ります。(以上、http://exonemo.com/bction/ より引用)


総括


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TORU MATSUSITA

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SSSK

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DRAGON76 & Gravityfree


東京という都市が新陳代謝を繰り返すとき、必ずデッドスペースは生まれてくる。特に2020年の東京オリンピックに向けて開発が進む今、このような解体予定のビルはどんどん出てくるに違いない。今回のように、こうした都市開発のすき間にアートが介入するのは最高にエキサイティングなことだし、これからもっとアーティストたちは社会や都市のど真ん中に忍び込んでいくべきだ。
地方芸術祭など行政主導の「街なかアート」もいいけれど、やっぱりワクワクするのは、グラスルーツから自然と生まれてくる抑えきれない衝動(のようなもの)であり、その圧倒的なパワーに触れる瞬間だったりする。ストリートのかっこ良さはそこにあるし、それはきっと、いまの社会に必要なエネルギーでもあるはずだ。

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THA(IMAONE, SOH)

都市とアートの関係についてもう少し。たとえば、ベルリンでは東西冷戦時代の壁崩壊から25年が経ったいま、クラブシーンを筆頭とするアンダーグラウンド・カルチャーがいかに都市の社会構造や産業に影響を与えてきたかを振り返るムードが高まっている。その特徴的な流れのひとつに、昨年秋に東京で開催されたカンファレンス「After25」がある。ここでのビジョンは、アンダーグラウンドな文化そのものが都市のエネルギーとなり、直接的にビジネスや行政へ貢献することを提示すること。そして、この先発展しそうなスタートアップにも注目しながら、東京とベルリンの双方で新たなシーンを育むことにあった。

とはいえ、ベルリンと異なる東京の弱点は、とにかく(面積も人口も産業も)巨大すぎて見通しが悪いことであり、特に流動性の悪い不動産事情でローカルな街の発展が起きにくいことである。
そもそも、“TOKYO”(またはJAPAN?)を総括するようなシーンは今後も生まれにくいだろうし、その必要すらないかもしれない。一方で、可能性を感じるのは今回のBCTIONのようなインディペンデントなムーブメントだ。元々、今回のBCTIONはビルオーナーがアート好きであり、主催者のひとりである嶋本丈士のファンだったことから始まったという。こうしたすき間産業ならぬすき間アートが都市のあらゆるところに浸食し、互いに特色を出しながら、いつしか大きな生態系になっていったらなかなか楽しいことになりそうだ。そう考えると、特にこの先2020年までの数年間は、よく注視していればチャンスがそこら中に転がっているのかもしれない。
そんな未来を期待させてくれるアートプロジェクトBCTION、展示は9月15日までだったが、大好評につき9月27日、28日にアフターパーティが開催されるとのこと。お見逃しなく!



会期:2014年9月27日(土)〜9月28日(日)
時間:13:00〜20:00
入場:無料
申込は以下より
http://peatix.com/event/52584

Information

BCTION
http://bction.com/


場所 : 麹町の某オフィスビル。(全9フロア。1フロア平均250平米)
日時 : 9月1日(月)〜9月15日(月) 12:00〜20:00

※9月27日、28日にアンコール開催予定

入場方法: 事前にbction.com経由でチケット購入可。

チケットに本イベントの開催地の詳細を記載
登録
URL : http://peatix.com/event/48732
入場料 : 無料

本日よりスタート、アルスエレクトロニカ2014で開催される「Future Innovators Summit」

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毎年9月にオーストリア・リンツで開催されるアルスエレクトロニカ・フェスティバル。
今年も既に日本から何人ものアーティストがこの地に集結し、展示やパフォーマンス、カンファレンスなどが目白押しの数日間がスタートする。そんな中でひとつ注目のプログラムについてご紹介したい。9月4日〜7日の計4日間で開催される今年のアルスのメインイベント、「Future Innovators Summit」だ。


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「Future Innovators Summit」は今年春に正式発表された博報堂×アルスエレクトロニカの共同事業「Future Catalysts」のオーガナイズによるサミットである。と、のっけからこの異色の組み合わせに首を傾げるひとも多いかもしれない。日本の広告代理店とオーストリアのアートセンター。つまり、博報堂はメディアアートを使った広告を作りたいのだろうか? 
様子をうかがうと、答えはそれだけではないらしい。ここでのポイントは、アルスエレクトロニカというアートセンターが、20年以上にわたってリンツという都市の発展(産業・教育・行政・観光)に貢献してきたバックグラウンドにある。また、アルスのFUTURELABなどでは、都市のみならず欧州企業を相手に共同プロジェクトを進め、新たな産業のイノベーションを促すような試みに取り組んでいる。「Future Catalysts」とは、こうしたアルスにおける数々の実践例を参照しながら、アートとビジネスや社会をつなぐフレームワークや、彼らの思考・哲学そのものを日本社会に実践していこうという試みのようだ。

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アルスエレクトロニカ・センター photo: Nicolas Ferrando, Lois Lammerhuber

こうした背景から、社会・文化的イノベーションを目指し、新たな対話と創造のプラットフォームを生む試みとして開催されるのが、今回の「FUTURE INNOVATORS SUMMIT」だ。
さて、このサミットで一体何が行われるのだろうか? テーマは「What it takes to change(変化を促すもの)」。これから先の社会において、「変化」のシーズを探していくという(なんとも壮大な)ミッションが設けられている。これは今年のアルスエレクトロニカ・フェスティバル全体におけるテーマの副題でもあり、アルスが提案するひとつの世界観を体現するものとも言えるだろう。ちなみに、フェスの全体タイトルはアルファベットの「C」。Creativity, Communication, City, Catalyst……等々、変化をうながす様々な「C」が街中に登場することを意味している。

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セッションは6つのグループに分かれ、各グループが2日間ずつワークショップタイプのセッションを行う。計4日間のプログラムだが、ここで注目したいのが参加者の面々。アーティスト、社会活動家、科学者、デザイナー、エンジニア、アントレプレナーまでさまざまな国籍・ジャンルの人々が集まるなかで、日本人も複数参加している。

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なんと、あの仕込みiPhoneの森翔太さんが登場である。何を隠そう、森さんは今年のアルス受賞者だ。そのほか、今年特別展示を行うOpen Reel Ensembleの和田永さんや慶應SFC准教授の筧康明さん、日本在住のメディアアーティストEric Siuさんなども参加する。この異色なラインナップを見ておわかりの通り、当日になるまで何が起こるか全くわからないのが面白いところ。当日は一部プログラムがUST中継されるようなので、日本の皆さんもぜひチェックしてみよう。

サミットの模様はUSTREAMでも中継され、アーカイブも記録される予定だ。
USTREAMやプロジェクトの詳細は特設ウェブサイトにまとめられており、Twitter(https://twitter.com/FISummit2014)でも最新情報を発信している。

4日間に渡ってどのような議論や展開となるか楽しみにしたい。

Text by Arina Tsukada

Information

FUTURE CATALYSTS Hakuhodo × Ars Electronica
http://www.future-catalysts.com/

FUTURE INOVATORS SUMMIT
http://www.aec.at/c/en/future-innovators-summit/

雑誌アイデア 最新号「特集:ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・コミュニケーション」発売

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雑誌アイデアの最新号「特集:ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・コミュニケーション」が発売された。

本特集では主に2000年代後半から2010年代にかけてのインターネット環境から登場した新しい視覚体験を取り上げる。
しかし、今回の特集はこうした議題でしばし連想されそうな、日本国内のPixivやニコニコ動画にフォーカスを当てるのではない。
それと平行しながらもインターネットの別の場所、写真共有サービスのPhotobucketやFlickr、動画共有サイトのVimeoやYouTube、モバイルでの写真や動画の共有サービスInstagram、音楽系プラットフォームのSoundCloudやBandcamp、総合的SNSのFacebookやGoogle+、そしてコンテンツ拡散の流通経路となるマイクロブログのTumblrやTwitterなどで育まれていた世界的な潮流に注目するものだ。

巻頭はラファエル・ローゼンダール、文・田中良治「退屈とクリエイション」。

また、ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・アーティストとして、Adam Ferriss,Alain Vonck,Anny Wang,Anthony Antonellis,BACON,Dom Sebastian,Emilio Gomariz,Francesco Mancin,Joe Hamilton,Kim Laughton,Michael Guidetti,Norman Orro,Nic Hamilton,OKFocus,§†§,Sebastian Thewes,Steph Davidson,Teen Witch Fan Club / Zain Curtis,Thomas Traum,ucnv、が紹介されている。

その他、髙岡謙太郎「ウェブサービスにおけるヴィジュアル・コミュニケーションの進化」、水野勝仁「ポスト・インターネットというプラットフォーム上で自生をはじめた複雑な生態系」、谷口暁彦「ググっても出てこない,ぼくが知りうるネットアートについての歴史の断片,そして最近のこと」など、CBCNETでもおなじみの面々による文章も収録。

また今年2月にクリエイションギャラリーG8で開催された「光るグラフィック」展での座談会「CMYKとRGBをなめらかにつなぐ」の内容も掲載されている。

昨年末に発売されたMASSAGEも現代のインターネットカルチャーにスポットを当てた特集であったが、本誌も刻々と変化するポスト・インターネット時代のビジュアル表現を切り取った貴重な一冊となるだろう。
ぜひ、手にとってみてほしい。

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《巻頭》ラファエル・ローゼンダール


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Information

IDEA No.366 : ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・コミュニケーション
http://www.idea-mag.com/jp/publication/366.php

2014年8月9日発売
特集:ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・コミュニケーション
企画・監修:髙岡謙太郎,ばるぼら

idea (アイデア) 2014年 09月号
誠文堂新光社 (2014-08-09)



特集:ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・コミュニケーション

ラファエル・ローゼンダール

退屈とクリエイション
文・田中良治

ポスト・インターネット時代のヴィジュアル・アーティスト
Adam Ferriss,Alain Vonck,Anny Wang,Anthony Antonellis,BACON,Dom Sebastian,Emilio Gomariz,Francesco Mancin,Joe Hamilton,Kim Laughton,Michael Guidetti,Norman Orro,Nic Hamilton,OKFocus,§†§,Sebastian Thewes,Steph Davidson,Teen Witch Fan Club / Zain Curtis,Thomas Traum,ucnv

・ウェブサービスにおけるヴィジュアル・コミュニケーションの進化
文・髙岡謙太郎

・ポスト・インターネットというプラットフォーム上で自生をはじめた複雑な生態系
文・水野勝仁

・ググっても出てこない,ぼくが知りうるネットアートについての歴史の断片,そして最近のこと
文・谷口暁彦

・Networking and Inter-Viewing with pootee

・NEENマニフェスト

・List of Works

「光るグラフィック」展(クリエイションギャラリーG8)
座談会「CMYKとRGBをなめらかにつなぐ」
出演:勝井三雄,ラファエル・ローゼンダール,
モデレーター:田中良治,萩原俊矢

オール・ポッシブル・フューチャーズ
デザイン:橋詰宗
・ジョン・スエダ「スペキュレーションについて」
・対談:ジョン・スエダ×エミリー・マクヴァリッシュ
「後ろに下がって観れば観るほど,よりよく見える見込みがある」
・スペキュレーティブ・グラフィックデザインの実践についての質問

インフォグラフィックスの潮流 第2回
[マップ]都市交通図からみる潮流
トポグラフィーからトポロジーへ―ロンドンの地下鉄路線図を中心に
文・デザイン:永原康史

イエローページ 第2回:アーロン・ニエ(台北)
文・構成:後藤哲也
デザイン:スルキ&ミン

レビュー&インフォメーション

「小豆島にみる日本の未来のつくり方」
東京場所/大阪場所

「竹尾ペーパーショウ2014」
文・田中義久

新刊案内
idea of music [012]

世界中のFabLab関係者が大集合!FabLab仙台マネジャーが綴る 「FAB10@バルセロナ」レポート

こんにちは、FabLab仙台の渡辺です。自分は福岡の大学でメディアアートやデザインを学んだ後あっちこっちで働いて、現在は福岡のクリエイティブスタジオである株式会社あのラボのプログラマー&デザイナー兼FabLab仙台のマネージャーを務めております。

さて、この7月1日から7月8日までの間、『FAB10』こと第10回目のFabLab世界会議がバルセロナで行われました。

fab10_top

最近は何かと話題なのでご存知の方も多いとは思いますが、FabLabとはデジタルファブリケーション機器を備えたオープンアクセス可能な市民工房のことで、現在世界中のあちこちに次々と増えています。そのペースは年に2倍に増える程と言われており、実際日本でも去年の段階では6~7カ所程度だったFabLabが今年度には12~13カ所程度に増える見込みです。ただよく勘違いされるのですが、FabLabとはマクドナルドみたいなチェーン店という訳ではなく、あくまでも個々のFabLabのマスター達がそれぞれに運営しているもので、その形態も独立採算で運営している所、大学や行政が支援して運営している所、仕事を持っている人たちで集まって週末開いている所など様々です。

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オープンアクセス可能な市民工房であるFabLab。ちなみにFabLab仙台はこのような感じ。

その世界中に数多くあるFabLabの関係者が年に一度大集合するのが『FAB○○』(○の中には開催回数が入る)で、毎年異なる都市で開かれています。去年は横浜、今年はバルセロナ、そして来年はボストンです。

自分もFabLabマネージャーですので色々な情報収集(そしてバカンス)のためにバルセロナに行ってきました。仕事の都合で7月2日に単身バルセロナ入り、そして7日に単身離脱というさみしいスケジュールだったのですがFAB10についてレポートしてみたいと思います。

羽田→パリ→バルセロナと乗り継いで16時間かけてバルセロナに到着。そこからバスでメイン会場となるDHUB、バルセロナの中心地にほど近い場所にあるデザインセンターのような所に移動。ちなみに新宿にある某ビルを思い起こさせるような高層ビルが隣にありますが、これはバルセロナ水道局が持っているビルだそうでやっぱり座薬と呼ばれているらしいです。

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今回のメイン会場となるDHUB

乗り継ぎ便の遅れで予定時間より遅れての到着で会場もすでに閉まっていましたが、会場前で難なくFabLabメンバー達と合流でき一息。そのまま、バルセロナに新しく出来たFabLab『Ateneu de Fabricacio de Les Corts』を見学しに行きました。バルセロナ市は今後40年をかけて町中にFabLabを整備していくという壮大な構想を掲げており、この新しいFabLabもバルセロナ市の支援を受けてオープンしたものだそうです。

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入り口の看板には『Ajuntament de Barcelona』(多分バルセロナ議会という意味?)の文字が。


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めちゃめちゃ広い倉庫を改造したような場所。


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奥には巨大なCNCや卓上ボール盤などの加工機械部屋があった。もちろんレーザーカッター等もある。


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FabKidsルームもあり、お子様が多数遊んでいた。

さすがに疲れたのでアパートに戻る事に。バルセロナでは鎌倉で革職人をされているKULUSKAさん夫妻やその友人たちと一緒にairbnbで取ったアパートに滞在しました。KULUSKAさん夫妻は今回のFAB10を最終目的地として一ヶ月前からヨーロッパ中のFabLabを巡り、そこでワークショップを開くという素敵な旅をされている方です。今回の自分のメインミッションの一つが、FAB10でのKULUSKAさんのワークショップを手伝うことなんですが、これはのちほど詳しく書きたいと思います。

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毎晩みんなで自炊していくスタイル

次の日(3日)は朝一で会場入り。会場内は大きく二つに分かれており、一方が講演やプレゼンテーションのためのスペース、もう一方がワークショップのための工作スペースとなっていました。

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講演のためのスペース。左側のスクリーンの向こう側がワークショップスペース。


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Superlabと呼ばれるだだっ広いワークショップスペース。巨大なレーザーカッターが何台もあった。

Fab10は関係者向けの日と一般市民に公開される日に分かれていて、7月2日から4日までは基本的に関係者向け、7月5日から7日までは一般市民に公開される日となっていました。2日から4日の関係者向けデーは、午前中は新しく誕生したFabLabのプレゼンテーションなどがあり、午後は分科会的なディスカッションやワークショップが会場のあちこちで行われました。

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サン・クガ(スペイン)に新しく出来たFabLabのプレゼン。


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こちらはマドリードのメイカースペースのプレゼン

ちなみに午前のプレゼンテーションの合間に体操をするというのが恒例になっていて、3日午前のプレゼンテーションの合間には、ふなっしーのラジオ体操動画を見ながら会場全員でラジオ体操をするという光景が拝めました。

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会場の日本人全員が壇上に集まり、みんなでラジオ体操。

午後は会場の至る所でワークショップ&ディスカッション。ディスカッションは『ファブ教育について』、『各エリアのFabLabに関する情報交換』、『FabLabのライフサイクル』など真面目なものから『Are Fab Labs Dead?(ファブラボは死んだのか?)』など刺激的なものまで、様々なテーマで行われました。

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会場のあちこちのテーブルで行われるディスカッション

ワークショップも多種多様で、『日本の伝統工芸の体験』、『3Dプリンターのハッキング』、『FabLabで作るスケートボード』、『オープンソースカーの作り方』、『バイオハッキング』などなど、あまりにも盛りだくさんで全てを紹介することができないくらい開催されました。その時のスケジュールの詳細はWebサイトにアップされています。

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テーブル毎に行われるWS、WS、WS・・・・


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ペルーのFabLabによる織物ワークショップ。織り機はレーザーカッターで作られている模様。


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日本の工芸のワークショップ。3Dプリンタで出力した赤べこに和紙を貼り、乾かした後お腹から裂いて和紙を分離し完成。


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企業ブースもあり、NC加工機のニューモデルのデモもいち早く体験できた。

7月5日、6日は一般市民向けのワークショップ日で、バルセロナに一緒に滞在しているKULUSKAさん夫妻のワークショップもそのプログラムの一部として開催されました。KULUSKAさんは鎌倉を拠点として活動されている革職人で、自身のウェブサイト上に公開されているアプリを使って自分の足にぴったり合う革スリッパのsvgデータを作成・ダウンロードし、illustratorなどのソフトを使ってグラフィックなどさらにデザインを追加、そのデータを使ってレーザーカッターで革を加工し最後に縫い合わせて革スリッパを作る、というワークショップを日本各地で行っています(http://kuluska-japan.com)。

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スリッパデータはオープンデータとなっており、だれでもデータをダウンロードして自分のスリッパを作る事が出来ます。アフリカのFabLabではこのスリッパデータを利用してオバマ大統領の顔を彫り込んだスリッパを製作し、アフリカにすむオバマ大統領のおばあさんにプレゼントしたという素敵なストーリーもあったりします。(余談ですがKULUSKAさんは今回オバマ大統領のおばあさんの柄が彫り込まれた革スリッパを持ち歩いており、他のFabLabの人と協力してなんとかオバマ大統領にこれを渡そうと企んでいるようでした。)

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オバマ大統領のおばあさん柄のスリッパ。コレ渡せたらミラクル!

そしてKULUSKAさんはこの夏日本を飛び出し、一ヶ月間ヨーロッパ各地のFabLabを巡りながら革スリッパワークショップを開催しており、このバルセロナのFAB10でのワークショップが最終目的地となっていました。

まずウェブアプリを使って自分の足のサイズに合うスリッパのsvgデータを作成。(http://kuluska-japan.com/traveling-design/kuluska-app/)

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足のサイズ(横幅と縦幅)をウェブアプリに入力するとsvgが作成される。ちょっと大きめにつくるのがコツらしい。

次にillustratorでグラフィックや形を好みに合わせて変えていきます。

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グラフィックだけでなくつま先部分を切って指が出るようにしたりと、形も自由自在に変更できる。

データが完成した人からレーザーカッターを使って革の加工をします。途中で我々のエリアだけ停電して(しかも2日連続)他のエリアの使ってないレーザーカッターを探しまわったのは良い思い出。

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レーザーカット準備中。


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切り出された革スリッパ。コレを縫い合わせれば完成。

KULUSKAさんのオープンデータ革スリッパはFab界隈では有名だということもありワークショップは大盛況で、フランスから来たというカップルや、申し込み登録していないのに俺にもやらせろと集まってくる人も。他にもケベックのFabLabから来た夫婦やモスクワのデザイナーという女性、アイルランド、ロンドン、世界各地のメイカーがスリッパ作りに参加しました。完成したら写真撮影をして終了。

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バルセロナ県のはずれの方から来たというrosaさん。3種類の革を使ったツートンカラーのスリッパを製作。

ワークショップに加えて様々な展示もされていたのですが、最もお気に入りだったのはトーゴのwoelabというラボが展示していたコレ。
なんとほとんどの部品がPCケースなどの廃品を利用して作られている3Dプリンターで出力もちゃんとできていました。FAB10のイベントとしてGlobal Fab Awardというコンペが開催されていたのですが見事グランプリに選ばれていました。

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筐体やねじ・歯車など、どうみてもどっかから拾ってきた部品感満載。電源部の側面に書いてある『OK』の文字がジャンク感を漂わす。

最終日となった7日、この日はシンポジウムの日でバルセロナ市の市長やその他関係者、大学関係者、ArduinoやGoogleやNikeなどの企業関係者など様々な人が次々と登壇していたようです(帰国のため昼には会場を離れてしまったので最後まで居られませんでした)。しかしなぜか会場の真ん中、スクリーンのど真ん前に柱が一本立っているという謎の空間でしたが場所が変更される事も無く淡々と講演は進んでいました。これもラテンの血のなせる技なのでしょうか。

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前方真ん中に座っている真面目な人ほどスクリーンが見にくいという・・・

最後には、バルセロナが掲げるファブラボ40年構想のカウントダウンスイッチオンのセレモニー、そして来年FAB11が行われるボストンへとトーチが渡されました。

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40年分のカウントダウンがスタート。今後40年かけてバルセロナはFab Cityへと変貌していく。


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FabFoundationのディレクターSherryさんにトーチが渡される。このトーチももちろんお手製、だったはず。

ここで紹介した他にも、IAACという建築の大学院大学の中にあるファブラボや、バルセロナ郊外の山の上にあるGreen FabLabなど様々な会場があり、本当に紹介しきれないほど盛りだくさんの世界会議でした。

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DHUBから徒歩10分程の所にあるIAAC。こちらでもワークショップが開催されていた。


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車で30分、山登り30分の所にあるというGreen FabLab。会期中、何度か見学ツアーが組まれていた。

また8日にはバルセロナのビーチでアフターパーティという大変陽気なイベントがあったそうですが、帰国のため参加できず残念でした。とはいえ会期中通して全体的に堅苦しい感じはあまり無く、世界”会議”というよりはイベント満載のお祭りといった感じで陽気に過ごせたので十分楽しかったです。

しかし振り返ってみると “さすがシエスタの国スペイン” と言うべきか、イベントスケジュール通りに物事が進まずその日の朝にその日の予定がうわさ話で伝わってきたり、朝は必ず30分以上遅れてスタートし終わりの時間きっちりに”Get out here!”とアナウンスが入ったり、Green FabLab見学会では”あっちでバーベキューやるよ”と言っていたのに何もなかったり、会場クローズ後に”表でビール飲み放題のパーティやるよ!”と言っていたのに開始10分くらいでビールが無くなっていたり、でもランチの時間には必ずビールが用意されていたり、ああスペインって良い国だなぁと思い知らされたFAB10でした。おしまい。


執筆:渡辺圭介
編集:齋藤あきこ

Information

第10回 FabLab世界会議 バルセロナ
https://www.fab10.org/en/home

執筆者プロフィール
渡辺圭介
九州芸術工科大学大学院 芸術工学研究科修了。株式会社 anno labデザイナー&プログラマー。2013年5月に設立されたFabLab SENDAIのマネージャーを務める。

幾何学が導く、ここちよいデザイン – 書籍「GEOMETRY MAKES ME HAPPY」BNN新社より刊行

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BNN新社より幾何学的デザインとアート作品事例をまとめた書籍「GEOMETRY MAKES ME HAPPY 幾何学が導く、ここちよいデザイン」が刊行された。

アートとデザインの世界は、作品の構造やベースを作るにあたり、ある種の数学的概念に依存し続けてきた。特に幾何学は構成の基礎とされているが、近年になって明らかにモチーフとしての人気が高まってきている。

本書では、さまざまな形で応用された、あたらしい幾何学的デザインとアートを紹介。アート、写真、グラフィックデザイン、イラスト、インダストリアルデザイン、ストリートアート、建築のセクションにまとめたカラフルで刺激あふれる1冊となっており、気づいたらずっと見入ってしまう内容となっている。

豊富な写真とともに、幅広い分野の作品が収録されているので、資料としても重宝するだろう。
ぜひ、手にとってご覧いただきたい。

GEOMETRY MAKES ME HAPPY 幾何学が導く、ここちよいデザイン
ビー・エヌ・エヌ新社
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Information

GEOMETRY MAKES ME HAPPY
幾何学が導く、ここちよいデザイン

http://www.bnn.co.jp/books/6705/

定価:本体3,000円+税
仕様:B5判変型/192ページ
発売日:2014年06月30日
訳者:上原裕美子 / ブレインウッズ株式会社


目次

…WHEN IT MEETS ART
アート

…WHEN IT MEETS PHOTOGRAPHY
写真

…WHEN IT MEETS GRAPHIC DESIGN
グラフィックデザイン

…WHEN IT MEETS ILLUSTRATION
イラスト

…WHEN IT MEETS INDUSTRIAL DESIGN
インダストリアルデザイン

…WHEN IT MEETS STREET ART
ストリートアート

…WHEN IT MEETS ARCHITECTURE
建築

藝大デザイン科の学生がつくるタイポグラフィーのフリーマガジン『MOZ』2号目は「スクールタイポ特集」

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東京藝術大学大学院デザイン科の学生が中心となり、フォントメーカーのモリサワ協賛のもと発行されているフリーマガジン『MOZ』の第二号目が発行された。

『MOZ』は、毎号「フォント(書体)」に関する特集を組んでいるフリーマガジンで、藝大デザイン科の学生が企画、編集、取材、デザインを手がけ、年に1回発行されている。

今回は「スクールタイポ特集」
子どもをとりまく身近な環境に存在する書体をテーマに、小学生へのタイポグラフィワークショップ、教科書体の歴史的変遷、デザイナー祖父江慎氏インタビュー、デザイナー葛西薫氏インタビュー、といった内容が収録されている。

読み応えのある内容となっており、タイポグラフィーにまつわる素敵なプロジェクトとなっている。
配布場所は、株式会社モリサワ東京本社受付、藝大アートプラザ、Earth&Salt他、という事で、見つけた際は、ぜひ手にとってみてほしい。

またBCCKSにて創刊号(特集は「SWISS Inspired」、「世界はなぜヘルベチカを選ぶのか」)のデータ本を読む事ができるので、こちらも気になる内容となっており要チェックだ。


MOZ』 東京藝術大学著


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Information

MOZ vol2 : スクールタイポ特集

・小学生へのタイポグラフィワークショップ
・教科書体の歴史的変遷
・デザイナー祖父江慎氏インタビュー(小中学生の手書きノート講評)
・デザイナー葛西薫氏インタビュー (青春のことばと文字)

監修者: 松下計(東京藝術大学デザイン科教授)、藤崎圭一郎(東京藝術大学デザイン科准教授)
制作:東京藝術大学大学院 松下研究室+藤崎研究室の学生11名(修士2年、学部3年)
配布場所: 株式会社モリサワ東京本社受付、藝大アートプラザ、Earth&Saltなど

ロンドンのアーティスト・グループ「rAndom International」での仕事 – Satoru Kusakabe インタビュー

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Rain Room – 2012

イギリス、ロンドンに拠点を置くアート・スタジオ rAndom International。クオリティの高いインタラクティブ・インスタレーションを多く制作しているアーティスト・グループ だ。2012年にロンドンにあるヨーロッパ最大の総合文化施設バービカン・センターで発表された大規模なインタラクティブ・インスタレーション《Rain Room》は、「雨の中を濡れずに歩くことが出来る部屋」という、この字面だけ見るととんでもない作品。この作品は地元ロンドンではかなり大きな評判を呼んだらしく、なんと作品を体験するのに「7時間待った」というブログ記事まで発見した。

rAndom Internationalは、日本ではまだ United Visual ArtistTroika ほどの知名度はないスタジオであると思うが、地元ロンドンでは非常に注目されているグループである。そして、このスタジオにはSatoru Kusakabe(※以降 クサカベさん)という日本人デザイナーが1人在籍している。以前から個人的にスタジオのことや、この日本人デザイナーの彼が非常に気になっていて、今回ロンドンに滞在する機会があり、クサカベさんにアポを取りrAndom Internationalのスタジオに訪問しインタビューを敢行。rAndom Internationalやクサカベさんの仕事について、ざっくばらんに話を聞いてみた。

TEXT: yang02




rAndom Internationalに入ったきっかけ


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rAndom Internationalのスタジオ。古い倉庫を改装した建物。


Q. ちょうど一年前ぐらいに何かのキッカケでrAndom Internationalのサイト見た時に、メンバーのページに日本人がいる!て知ってちょっとビックリして、それ以来この人は何者なんだと気になってました。イギリスの大学を出られたんですよね?

そうですね、セントラル・セント・マーチンズという大学です。

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rAndom Internationalのサイトのメンバーページ

Q. 日本の専門学校も卒業されてますよね?

高校を出た後、ESMOD JAPON という日本のファッションの専門学校に通ってました。当時からプロダクトデザインにも興味を持っていて、そこを卒業した後、プロダクトデザインを学ぶことに決めました。日本の美大に進学も考えたのですが、僕の技術レベルだと入るのが難しそうだったので(笑)けっこうプラクティカルな理由でロンドンの美大を選びました。

Q. プラクティカルな理由というのは?

イギリスの大学にはファンデーションという制度があって、要は普通の4年制大学の一年目にあたるものなのですが、そこで文字通り一年間基礎をやってから3年制の本科に進むというものです。高校から大学に行く場合はイギリス人でも必ずファンデーションに行くのですが、すでにその事柄に対してある程度の基礎や経験があると認められた場合はファンデーションに行かずに直に本科に進めます。モチベーションや学費のことを考えても3年で終了できるというのは魅力的でした。そこで試験を受けたらそのまま本科に行って良いと言われたのでロンドンのセントラル・セント・マーチンズでプロダクトデザインを学びました。

Q. 卒業後、すぐrAndom Internationalのメンバーになったんですか?

それがすんなりと入れたわけでもなくて(笑)
rAndom Internationalは学生のころからロンドンで最も好きなスタジオの一つで、当時からインターンの募集に応募してたんですが全然入れなくて。大学を卒業した後、普通の家具デザインのスタジオでインターンとして働いてました。でも、やっぱり家具のデザインにはそこまで興味が持てず、結局辞めることになったんですが、たまたまそのスタジオのディレクターの方がrAndom Internationalのメンバーと知り合いで、彼の紹介を経て入社ることができました。採用してもらった時に提出したポートフォリオは学生の時にインターンで応募したポートフォリオと全く一緒だったんですけどね(笑)
入ってから最初の 10 ヶ月はインターンで、現在は正式メンバーになってデザイナーとして働いていて入社 3 年目になります。

Q. rAndom Internationalの作品はインタラクティブなものが多いと思うのですが、クサカベさんはデザイナーとして主にどんな仕事をされてますか?

rAndom Internationalはもともと RCA (Royal College of Art)を卒業したドイツ人 2 人とイギリス人 1 人の計 3 人(Hannes, Florian, Stuart)のメンバーでスタートしたスタジオなのですが、彼らの役割が良くできていて、Stuart がソフトの設計、Florian がハードの設計、そして Hannes がプレスとマーケティングを担当しています。なのでソフトウエアや PCB(プリント基板)などのエレクトロニクスは Stuart とあともう一人のうちのメンバー(Dev)で担当していて、僕はその部分はほとんどやりません。

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rAndom Internationalの創設者たちが、2005年にRCAの卒業制作で手がけた《Pixelroller》という作品。壁面上でローラー型ディバイスを転がすと、PCで表示されたビットマップ画像が浮かび上がってくる、パフォーマティブな作品。

僕はデザイナーですが、うちの場合デザイナーとはデザイン・エンジニアのことであって、主にハードウエアのデザインを担当しています。作品にもよりますが、それがキネティックなものであればそのフィジカルな部分がちゃんと動くようにその機構を設計し、画面上で動きのシミュレーションを行います。スタティックなものであればそれがいかに美しく正しいプロポーションで成立するかを設計します。うちの作品はフィジカルな部分が多いので、ハードのデザインにすごく時間をかけるんですね。しっかりと設計した上でプロトタイプ制作、実装を行います。故にデザイナーを何人か雇っていて、僕もそのうちの1人です。あとはハードの他、簡単なアニメーションもつくります。要はディレクターが考える作品コンセプトのレンダリングですが、その作品がどう動くのかをその時におおまかにコーディングしてアニメーションを起こすので、ソフトウエアのプロトタイプになることもあります。あとは、そうですね、プロジェクトのマネージメントからスケジュール管理まで大体デザイナーがやりますので、まあなんでもやりますよ(笑)

Q. ではそのディレクターである三人が考えるコンセプトを具体的な形に落とし込むというのがメインの仕事ということなんですね?

基本的にはそうですね。とはいえ前途した通りプロジェクトの管理もしますし、必要であればクライアントとのやりとりもします。規模が大きなプロジェクトの場合、設置作業も複雑になってきますがそれも担当デザイナーが管理しますので、ただ単に形に落とし込むというより、その作品を成功させるのが仕事、という感じです。


rAndom Internationalの作品について


Q. rAndom Internationalの作品は日本で目にする機会はほとんどないと思ます。なので、日本であまり作品が知られてないと思うんですが、いくつか作品を紹介していただけますか?

《Pixelroller》以降、本格的にスタジオとして始動後、復数の鏡が一斉に鑑賞者の方に向く《Audience》や、非物質的である”時間”を光の動きで表す《Study Of Time / I》など、一貫して人間や物理現象そのものに対する興味から、2D の画面だけで完結する作品はつくらず、インタラクションとフィジカリティを伴ったキネティック作品やインスタレーションを多く制作してます。その作品が物理現象に由縁するものであるかないかに関わらず、僕らの作品とその鑑賞者がどのように振舞うのかが最大の楽しみだったりします。


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また、広告やコマーシャルな案件はほぼ受けてません。純粋なアート作品だけを制作し、ギャラリーを介してクライアントに作品を購入してもらいます。
2012 年にロンドンのバービカン・センターで初めて展示をした《Rain Room》という、部屋の中で雨を降らせる、しかし鑑賞者はその雨に濡れないといった大規模なインスタレーションがあるんですが、この作品以降、急激にオファーが増えて、プロジェクトの規模も大きくなり、rAndom Internationalの知名度が一気に上がってきました。

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Rain Room – 2012

Q. クサカベさんは現在はどんなプロジェクトに関わっているんでしょう?

今はちょうど関わってたプロジェクトが一段落して、次のプロジェクトまでの合間のゆるい期間です。つくっていたのは《Swarm Light》という LED のシャンデリアのような作品のデスクトップ版で、《Swarm Study VI / Small Swarm》という作品です。 ”Swarm”という名前の通り、グリッド状に並んだ LED の光が鳥や虫の群れのように動く作品です。マイクロフォンや赤外線などのセンサーの入力がついていて、大きな音をたてたり近づいたりすると群れがビックリしてバラバラになったりというインタラクションを含んでいます。



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Q. rAndom Internationalで制作している作品は基本的にアート作品として、売るために制作されてると伺いましたが、クライアントが購入した作品が万が一故障した場合、メンテナンスはしに行くんですか?

はい、しますね。なので買われた作品が遠くに行ってしまうとメンテナンスが大変だったりします(笑)

Q. 作品は企業が購入されるケースが多いのでしょうか?

様々ですが、個人で購入される方もけっこういます。例えば、バービカン・センターでやった《Rain Room》は個人所有です。こういったインスタレーション作品が売れた場合には、要望に応じて購入先が用意したスペースに作品をインストールしに行きますね。
そしてなるべくメンテナスに行かなくてすむように、納品前に耐久テストなどを念入りに行います。消耗しやすいパーツはある程度替えを用意します。

Q. ではその他、クサカベさんが関わったプロジェクトで印象深かったものがあれば教えて下さい

2013年に僕がメインで進行してたプロジェクトがあって、それがかなり大変でしたがとても印象に残ってます。Ruhr TriennaleというドイツのトリエンナーレにてrAndom Internationalがオファーを受けて制作したコミッションワークで、簡単に説明すると、ただ高いところから大量の水が落ちてくるという作品です。

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Tower》という作品で、建物の構造を利用して高い場所に設置した四角いストラクチャーから、毎分 30,000 リットルもの水が落ちてきます。”Instant Structure”というサブタイトル通り、歴史的な周りの建物からインスパイアされたレクタンギュラーな構造物を水で作り直すという刹那的な建築作品でした。 設置場所がユネスコに登録されている世界遺産の炭鉱跡地だったので、取り付けネジ一つとっても許可を取るのに半年掛かったり、水漏れの問題だったり、フェスティバル側とのやりとりなど苦労の連続でしたが、一つ大きなプロジェクトを任され、それをやり切ったことで非常に良い経験ができたかなと思ってます。

Q. では最後に、クサカベさん自身やrAndom Internationalの今後について教えて下さい

僕は現在、会社からUK圏外の人向けのワーキングビザを取ってもらっていて、その有効期限があと 3 年あるのでとりあえずrAndom Internationalでしばらく働いて、その後はまだわからないです。この先、何ができるようになっているかということに興味があるので、まだ rAndom でやりたいことがあるのであれば残るかもしれないし、他のところでやりたいことがあれば違うところに行くかもしれませんし、日本に戻るかもしれません。どこに居るかより、何をしてるのかの方に興味があります。rAndom Internationalに関しては、今も面白いプロジェクトがいくつか進行して、僕もそのうちの一つを担当しています。それらがいつ発表できるかはまだ未定ですが、もしできることなら日本でプロジェクトやりたいですね。

今日はどうもありがとうございました、今後のrAndom International及びクサカベさんの一層の活躍に注目してます!


Infromation

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http://random-international.com/
Stuart Wood、Florian Ortkrass、Hannes Kochの3人によって2005年に設立されたアーティスト・グループ。人間のアクションや現象そのもに対する興味から、インタラクティブなインスタレーション作品を多く手がける。ロンドンに拠点を置き、バービカン・センターやニューヨークの現代美術館MoMAなど、国内外で多く作品を発表する。

Satoru Kusakabe
1985 年東京都生まれ。ESMOD JAPON 卒業後、2011 年にロンドンの Central Saint Martins プロダクト・デザイン科卒業。現 rAndom Internatioanl デザイナー。

手描きアニメ、プロジェクションマッピング、メディアアートまで、分野を超えて映像の今を一望できる作家年鑑「映像作家100人 2014」

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今年も、分野を超えて映像の今を一望できる、必携の作家年鑑「映像作家100人」の2014年版が4月21日より発売される。

今回も、手描きアニメからプロジェクションマッピング、メディアアートまで幅広く紹介。
巻頭特集は「映像作家のブランディングとマネジメント」。
「クリエイターの集うチームとマネジメントの存在意義」、「会社のブランド力を維持するための組織と個人の関係性」、「若手アニメーション作家のセルフブランディング考」、「拠点と仕事の固定フレームを越えて、海外へ」、4つの観点で、活躍する作家の対談が収録されている。

職種、メディア、手法等、既存のフレームの枠を越え、多種多様な表現がクロスオーバーしたスキームを映像制作者自らが追求し、提案できる時代。映像クリエイターが生み出す最先端の仕事に迫る。

紹介作家は、
001 阿部伸吾/002 AC 部/003 ANSWR/004 新井風愉/005 ボストーク/006 世界/007 EPOCH/008 ユーフラテス/009 フラッパー3/010 フジモトカイ/011 藤安広人/012 フキン/013 浜根玲奈/014 針生悠伺/015 端地美鈴/016 橋本大佑/017 比嘉了/018 東弘明/019 姫田真武/020 ひらのりょう/021 平岡政展/022 HORSTON/023 細金卓矢 ….などなど、フリーランスの作家からプロダクションまで、様々な表現手法の作家がとりあげられている。
さらに、サンプル映像を収録した約50分のDVDも付属している。

映像表現の今が詰まった本書をぜひ、手にとってみてほしい。

本誌の刊行を記念してCBCNETの読者2名様へプレゼント!詳しくは記事後半へ。

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CBCNETの読者へ本書を2名様へプレゼント。
詳細は以下を御覧ください。

読者プレゼント : 「映像作家100人 2014 」

本書を、抽選でCBCNETの読者2名様へプレゼントいたします!

プレゼント概要
応募手順:
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※キャンペーンのFacebookアプリは「Crocos懸賞」を利用しております。
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応募締切:2014年 4月 28日 15:00
協力:ビー・エヌ・エヌ新社

ご応募お待ちしております!



Information

映像作家100人 2014
http://www.bnn.co.jp/books/6505/

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映像作家100人 2014 -JAPANESE MOTION GRAPHIC CREATORS 2014 (DVD-ROM付)
ビー・エヌ・エヌ新社
売り上げランキング: 15,938



ISBN:978-4-86100-917-4
定価:本体3,800円+税
仕様:B5判/256ページ
付属物:DVD-ROM×1(※約50分のサンプル映像を収録)
発売日:2014年04月21日
編集:庄野祐輔、古屋蔵人、藤田夏海
デザイン:田中良治(Semitransparent Design)

目次

FEATURE:
CREATOR’S BRANDING & MANAGEMENT
映像作家のブランディングとマネジメント

TALK 1: TEAM : クリエイターの集うチームとマネジメントの存在意義
伊藤ガビン(BOCTOK)× 森下征治(TANGE FILMS)× 中根さや香(N・E・W)
The significance of the team and management in a gathering of creators
GABIN ITO × SEIJI MORISHITA × SAYAKA NAKANE

TALK 2: COMPANY : 会社のブランド力を維持するための組織と個人の関係性
真鍋大度(Rhizomatiks)× 高橋裕士(WOW)× 猪子寿之(teamLab)
The relationship between the organization and
the individual for maintaining the corporate brand
DAITO MANABE × HIROSHI TAKAHASHI × TOSHIYUKI INOKO

TALK 3: INDIVIDUAL CREATOR: 若手アニメーション作家のセルフブランディング考
水尻自子× ひらのりょう× ししやまざき
Young animators self-branding
YORIKO MIZUSHIRI × RYO HIRANO × SHISHI YAMAZAKI

TALK 4: OVERSEAS: 拠点と仕事の固定フレームを越えて、海外へ
関根光才× 伊藤直樹(PARTY)× 井口皓太(世界)
Getting out of the restricting“box”of fixed workstyle and location by going overseas
KOSAI SEKINE × NAOKI ITO × KOTA IGUCHI

ARCHIVES OF WORK & PROFILES
映像作家クリエイティブファイル

街中のメディアをデザインする – 「インタラクティブ・クリエーション・キャンプ」成果発表展レポート

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2014年3月12日〜23日、青山のスパイラルガーデン エスプラナードにてサイネージをテーマとした「インタラクティブ・クリエーション・キャンプ 」成果発表展が開催された。

「インタラクティブ・クリエーション・キャンプ 」
とは、ユッシ・アンジェスレヴァ氏、近森基氏、筧康明氏など、現代のメディア環境に精通するクリエイター18名を講師に迎え、サイネージの制作に取り組むハッカソンスタイルのワークショップだ。

このプロジェクトは、プロダクション数社によって運営されているクリエイティブ・アライアンスI.C.E(アイス)が、街中でノイズ化しつつあるサイネージを見直し、社会により良い効果を生み出せるサイネージを、という目的のもとに主催したもの。

コンピュータが発明された60年代の後半には、既にインタラクティブアートのようなものがつくられていたというが、その存在が顕著になってきたのは1980年代の中頃。そして1990年にはPrix Ars Electronica(アルス・エレクトロニカ賞)にインタラクティブアート部門が設立され、1995年には「World Wide Web」というインターネット関連部門が設立された。(現在はネット関連のカテゴリーはインタラクティブアート部門とデジタルコミュニティ部門に集約)インターネットが登場した90年代以降は、インタラクティブアートとインターネットはつかず離れずの関係にあり、共に歩んできたといえるだろう。

今回のワークショップが、インタラクティブコンテンツやWebの制作に携わるプロダクションによって企画されたということにも、ひとつの時代の流れを感じた。

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同展には、一般公募から選出された若手デザイナー / プログラマー 29名が5つのチームに分かれ、「ソーシャルグッド」をテーマに制作したサイネージが並んだ。「ソーシャルグッド」とは、一般に社会貢献活動を促進するソーシャルサービスの総称、または、そうしたサービスを通じたとりくみのことを指すが、このワークショップでは、サイネージを通じて街中により良い効果を生み出すコミュニケーションデザインを目指したという。ワークショップは今年の2月から約1ヶ月に渡って開催されたが、サイネージの制作は約3週間という短いタームの中で行われたという。それにしてはクオリティの高い作品が揃い、3週間で制作されたとはとても信じられなかった。ここでは、2日間にわたって行われた講評会とシンポジウムの模様をお届けする。


サイネージをもっと使えるものにするためには?現場に立つディレクターがアドバイス


3月22日(土)は、インタラクティブデザインの現場で活躍するディレクター陣が揃い、講評会を開催。単なる評価にとどまらず、現実的なアドバイスがよせられた。
講評メンバーはベルリンから来日したユッシ・アンジェスレヴァ氏(ART+COM)、小池博史氏(イメージソース)、村田健氏(ソニックジャム)、築地Roy良氏(BIRDMAN)、木下謙一氏(ラナエクストラクティブ)、 阿部淳也氏(ワンパク)。

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左から、ユッシ・アンジェスレヴァ、村田健、阿部淳也、小池博史、築地Roy良、木下謙一

てあらいかがみ


想定環境:アミューズメント施設等のトイレ、幼稚園
手洗いゲームを通して、子供たちに正しい手の洗い方を伝えるサイネージ。手洗いジェルのポンプの下に圧力センサーが仕込まれており、ポンプを押すとゲームがスタート。ディスプレイ上に自分の手と泡、バイキンなどが映し出され、手洗いゲームが楽しめる。手の動きはLeap Motionで読み取り、インストラクションの通りに手を洗うと、ゲームをクリアできる。

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「てあらいかがみ」
Katsufumi Matsui, Eri Nishihara, Yuta Takeuchi, Tomo Kihara, Wataru Ito, Yuta Kato

アンジェスレヴァ氏は「ビジュアライゼーションがうまくいっていて、楽しさがあるのがいい」とコメント。子供たちに人気があり、リピートする子供も多かったそうだ。実際に体験してみると、ゲームをクリアする感動があり、かなり完成度が高い。木下氏は「この場で手が洗えるともっと良かったのでは。次のステップとして、ぜひそういうところまで考えてみて」と言及。阿部氏も「洗面所という設定だとしたら、ひげ剃りや歯ブラシが出てくるなど、もっとバリエーションが広がる。もう一つステップを加えればメーカーに売り込めそう」とコメントをよせた。


Look at Me!


想定環境:駅構内
“歩きスマホ”をしている人に注意喚起を促すサイネージ。キネクトセンサーで通行人を検知し、指向性スピーカー(限られた範囲のターゲットに限定して音を発するスピーカー)で「前を向きなさい」と呼びかけ、ディスプレイに近づいていくと、モザイクのかかった女性の姿が徐々に鮮明になり、女装した男性の姿が現れる。最後のオチには、ユーモアで注意喚起をやわらげようというねらいがある。

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「Look at Me!」
Wakana Goto, Masanori Yoshii, Kazuma Kousaka, Nagomu Sugimoto, Yuki Anai, Kentarou Tetsuka

このサイネージは「指向性スピーカーが凄い」と一部で話題を集めていた。たしかに街を歩いている時、いきなり耳元でささやかれるように話しかけられたら、気にならずにはいられないだろう。モザイク状の映像が魅力的で、最後にオチをつけるというアプローチも好評だった。
築地氏は「サイネージに指向性スピーカーを使うという着目点はいいかなと思いました。個人を特定するような呼びかけをするともう一つ次のステップに行ける」とコメントした。


自分販売機


想定環境:街頭
「3Dプリンタが一般化したら、自分の3Dデータが自動販売機で買えるようになるかもしれない」という発想から生まれた自販機型サイネージ。キネクトセンサーでユーザーを3Dスキャンし、ディスプレイに4つのテクスチャの3Dデータを表示。ユーザーは好きなデータを選び、SNSやメールなどで共有できる。

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「自分販売機」
Koki Nomura, Kanako Takehara, Kenta Watashima, Mai Nakagawa, Kazuma Suzuki, Ryota Okawa

講評陣から「こんな自販機が実現できる未来も、そう遠くはないかもしれない」と評価されたサイネージ。制作メンバーは、「3Dデータが婚活や就活に使われるようになることもあるかも」という未来を見据えてデザインしたそう。今回は展示スペースの関係でキネクトセンサーを1台しか設置できなかったというのが残念だったが、3Dスキャンの精度が高まればぐっと面白く、現実的になりそうなアイデアだ。


Cloud Sending


想定環境:空港
旅行者が自分のスーツケースの空き容量を“寄付”し、支援物資の運搬に貢献できるサイネージ。飛行機の搭乗券をスキャンし、秤の上に荷物をのせると、ディスプレイに荷物の空き容量と行き先から決定した支援物資が表示され、その間に印刷されたレシートをカウンターに持って行くと、支援物質を受け取れる。旅行者の移動と共に世界中へ支援物資が届けられる。

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「Cloud Sending」
Naoya Iwamoto, Yoshinori Takeuchi, Natsuko Miyazaki, Yuki Yoshida, Arata Uesugi, Yu Nakamura

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「Cloud Sending」

アフォーダンスを意識したというこのサイネージは、何とも心地よいナビゲーションに驚かされた。アンジェスレヴァ氏は「アイデアもデザインもとてもいいと思う。ただ搭乗券を受け取った後にこのシステムを利用するのは現実的ではない。サービス自体は他の方法で行い、このディスプレイはサービスを可視化するプロモーションに利用してもいいかもしれない」とコメント。さらに村田氏は「インストラクションムービーが自然に入って来るのがいい。例えば被災地に支援物資を送る体験ができるサイネージなど、ひとつの作品として発表してもいいのでは」と評価した。


スマホリウム


想定環境:カフェ、モバイルキャリアショップなどの施設
街中でのスマートフォン充電システムのためのサイネージ。それぞれの機種に対応した棚から充電を始めると、ディスプレイに植物が芽吹き、充電時間とともに成長。専用アプリをインストールすると、生成される植物のキーカラーが選べるなど、+αのサービスが楽しめる。今回の制作ではキーカラーの搭載までにとどまったが、スマホリウムの位置情報を通知するサービスなどを想定。

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「スマホリウム」
Aki Aoki, Tomonori Mizutani, Kazuki Sakoh, Wan-seok Ryu, Shotaro Ito

このサイネージは女性をターゲットにデザインされており、木製の充電ドックが丁寧につくられていた。築地氏からは「専用アプリに可能性を感じた。いっそのことこのディスプレイはやめて、スマートフォンの画面に表現をフォーカスさせてみては」とコメントがあり、アンジェスレヴァ氏もその意見に同意。最適なディスプレイを選択する必要性に気づかせられた。

最後に、今回のプロジェクトの発起人でもある小池氏が「今回は『ソーシャルグッド』というお題に応えることで、皆さん作品を成立させる最低限のライン、もしくはそれ以上のところまで行くことができたと思います。今回は縦型モニターという縛りがありましたが、メディアはそれだけではありません。ここからさらに発展させ、社会的問題を解決するインタラクティブデザインの存在を盛り上げていきましょう」とコメントし、会を締めくくった。


ユッシ・アンジェスレヴァ、近森基、筧康明、大内裕史、Saqooshaが語った
インタラクティブメディアの今、そしてこれから


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3月21日(金)には、今回のワークショップに講師として参加したクリエイター陣を迎え、シンポジウムを開催。登壇者はユッシ・アンジェスレヴァ氏(ART+COM)、近森基氏(plaplax代表取締役)、筧康明氏(plaplax / 慶應義塾大学准教授)、大内裕史氏(WOW)、Saqooshaこと小山智彦氏(カタマリ)。ファシリテーターは岡田智博氏(NPOクリエイティブクラスター)。

前半はデザインチームART+COMの副クリエイティブディレクターであり、ベルリン芸術大学の名誉教授でもあるユッシ・アンジェスレヴァ氏によるプレゼンテーションが行われた。
アンジェスレヴァ氏の代表作といえばBMWミュージアムのプロジェクト「kinetic sculpture」。この日のプレゼンでは、彼の出身校であるロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)時代の作品から「kinetic sculpture」に至るまで、そしてベルリン芸術大学でのプロジェクトなどが紹介された。

Bodyscanner from Jussi Ängeslevä on Vimeo.


「私がデザインを学び始めたころは、インタラクションデザインという分野はなく、当初はコンピュータだけで作品をつくっていたのですが、RCAではフィジカルな要素が大切だということを学びました。『BODYSCANNER』(2001)は、体の中を見ることができるという非常にシンプルな作品ですが、私のインタラクションのキャリアに大きな変化をもたらしました。この時から、目で見ることだけではなく、体で感じるということを重視するようになりました。」

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ユッシ・アンジェスレヴァ

2002年にRCAを卒業したアンジェスレヴァ氏は、2003年に Prix Ars Electronicaにて「Honorary Mention」(栄誉賞)を受賞し、2004年にART+COM のクリエイティブディレクターに就任。以降は、ART+COMとアカデミアの間を行き来しながら様々なプロジェクトに関わるようになる。プレゼンでは、現在教鞭をとっているベルリン芸術大学デジタルメディアデザイン学科のプロジェクトから、興味深い事例の数々を紹介してくれた。

下の動画は出生前診断検査にフォーカスしたプロジェクト「therefore I am」(2014)。母親の血液を分析することによって胎児のDNAを読み出し、その人のライフストーリーを予測しプリントアウトするというものだ。

therefore I am from Michael Burk on Vimeo.

「therefore I am」Digitale Klasse, Berlin University of the Arts, Prof. Joachim Sauter, Prof. Jussi Ängeslevä


ほか、ベルリンの街を走る自転車が舗装の悪い道を走ると“Complain”(文句)を記録し、その記録を政治家に送るという作品「Auto-Complain」や現在取り組んでいるという3Dプリンタで指輪をジェネレートするプロジェクト「Ciphering」などを紹介。社会にコミットする政治的なものや、哲学的な問いを投げかけるものなど、思慮に富んだ作品が揃っていた。

後半は登壇者によるディスカッションが行われ、それぞれが今回の展示について、総評を述べた。

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左からユッシ・アンジェスレヴァ、岡田智博、Saqoosha、筧康明、近森基、大内裕史

Saqoosha:どの作品も完成度が高いと思いました。ソーシャルグッドというテーマは僕からの提案だったんですけれど、どの作品も技術だけになっておらず、きちんとテーマにはまっていたと思います。

岡田:技術的なイノベーションだけではないことをしないと、本当に価値のあるものはできてこない。これからは新しいテクノロジーだけではなく、テクノロジーと付き合う物語をつくっていくことが必要ですね。

筧:今回参加した方たちは、何の文脈もない白い壁の前にストーリーをつくっていかなければならないという難しい競技に挑まなくてはなりませんでした。そんな中、サイネージが置かれている場所を想起させられるような作品が揃い、デザインが機能していたと思います。本当はこの後に、実際に適した場所に、適したタイミングで置いていくという作業があると思うんですが、そこまで行けそうな作品が並んでいたと思います。

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近森:デザイナーとエンジニアが一つのグループで作品をつくり、ゴールを切れた意味は大きい。でももう、インタラクティブというだけで「いいね」と言われる時代は終わりつつある。今回はインタラクションをつくるということがテーマの一つにあったけれど、ここで大事なのは、どうインタラクションをつくるかということだけではなく、それがどういうストーリーの中で成立し、どんな意味をもっているか、ということだったのではないでしょうか。

筧:狭いインタラクションではなくて、広い意味での関係性を見るということ。

大内:ここで終わらせるにはもったいないものばかり。着眼点はすごくいいと思うので、次のステップを期待してしまいます。本当に酷いサイネージが多い中、つくる僕らも責任を感じています。今回並んだ作品のような、日常に「あったらいいな」というクリエーション、僕らは意外とやっていないんです。次はそういった日常的な欲求にフォーカスしていこう、社会にコミットしていこう、という段階にきている。そんな中、今回のようなワークショップが開催された意味は大きい。ここから社会に落としこめたらいいですよね。お金を投資して下さる方がいたらいいですけど(笑)。

アンジェスレヴァ:短い時間の中、ここまで作品のクオリティを高めたことはすごいことだと思います。今回のワークショップはテクノロジーよりも、皆さんが何を学んだかということが大事です。テクノロジーを理解する必要はありますが、実際にものをつくる時には、どこにフォーカスをおくかということを考える必要がある。つくることの意味を考えずに、テクノロジーだけにフォーカスしてしまうと、最良の結果は得られないと思います。私自身の制作でも、多くのことはやっていません。私の挑戦は、一つのことにフォーカスしていくということです。

シンポジウムは熱のこもったトークが展開され、やや時間を押して閉会した。

今回のプロジェクトを通して見えてきたのは、サイネージをどこに、どのように設置するか、という次なる課題と、サイネージをつくることは、住環境や都市環境に関わってくるということだということ。下の写真は、アンジェレヴァ氏が興味深いリファレンスとして紹介してくれた写真だが、サンパウロの美化運動の一環として発令された屋外広告禁止条例(2007年施行)によって、町が様変わりした様子を写している。

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source:
Sao paolo passed a law forbidding Advertisement billboards few years back. The city looks pretty eerie these days
https://secure.flickr.com/photos/tonydemarco/sets/72157600075508212/

サンパウロの街の様子は、少々抑圧的な感も否めないけれど、街に最初から看板やポスターが無かったら、それはそれできれいかもしれない。もし本当にそうなったら、その時そこに何をインストールしていくのか、インタラクティブメディアには不可視なものを可視化していくポテンシャルがあるということも加味しつつ、改めて考えてみたい。


Text by Yu Miyakoshi

Information

「インタラクティブ・クリエーション・キャンプ 」成果発表展
http://i-c-e.jp/icc2014/

会期:2014 年 3 月 12 日(水)〜23 日(日)
会場:スパイラルガーデン エスプラナード(スパイラル M2F) 
主催:一般社団法人インタラクティブ・コミュニケーション・エキスパーツ
会場協力:株式会社ワコールアートセンター
助成:平成25 年度文化庁メディア人材育成支援事業

講師
Jussi Ängeslevä ART+COM 副クリエイティブディレクター / ベルリン芸術大学名誉教授
近森 基 ( 株 ) プラプラックス メディアアーティスト
筧 康明 インタラクティブメディアデザイナー / 研究者
大内裕史 WOW ビジュアルアートディレクター
岡田智博 NPOクリエイティブクラスター クリエイティブプロデューサー
小池博史 ( 株 ) イメージソース クリエイティブディレクター
富永幸宏 ( 株 ) エイド・ディーシーシー エグゼクティブプロデューサー
遠崎寿義 ( 株 ) ザ・ストリッパーズ クリエイティブディレクター
村田 健 ( 株 ) ソニックジャム チーフプロデューサー / テクニカルディレクター
築地Roy良 ( 株 ) BIRDMAN クリエイティブディレクター / アートディレクター
北村 健 ( 株 ) ベースメントファクトリープロダクション クリエイティブディレクター
木下謙一 ( 株 ) ラナエクストラクティブ クリエイティブディレクター
阿部淳也 ( 株 ) ワンパク クリエイティブディレクター
澤邊芳明 ( 株 ) ワン・トゥー・テン・デザイン クリエイティブディレクター
小山智彦 ( 株 ) カタマリ テクニカルディレクター / Flashディベロッパー
藤牧篤 ( 株 ) イメージソース アートディレクター
北村博朗 ( 株 ) イメージソース テクニカルディレクター
坪倉輝明 ( 株 ) ワン・トゥー・テンデザイン プログラマー / メディアアーティスト

ARTSAT 1: INVADERが地球を回る “リアル”

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「ロケット打ち上げを見に種子島に行こうかな」、知人のそんなツイートが今回のきっかけだった。そう、今回打ち上げられるH-IIAロケットには「ARTSAT Project」の超小型衛星「ARTSAT 1: INVADER」(以下、INVADER)が相乗りするのだ。ICCの展示でARTSAT Projectのことを知ってはいた。そのプロジェクトの、彼らが作った衛星がいよいよ宇宙に行くという。これは行かなくちゃ、だ。こうして、本当に種子島に行くことになった。

無音の中に広がる光


2014年2月27日鹿児島空港から、この種子島ツアーは始まった。ARTSAT Projectに携わってきた緒方壽人さんら総勢6名。打ち上げ準備の進捗を確認しつつ、種子島行きのフェリーが出る鹿児島港に向かった。

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フェリーでは緒方さんに開発時の様子などを聞いたり。もっとも興奮状態にあり、このときのことはあまり記憶に残っていないのだが……(右から上條哲也さん、藤本直明さん、北村穣さん、平野大輔さん、緒方壽人さん、筆者)。

島に着いたのは22時近く。地元の方に教えてもらった見学ポイントに着いたのは23時頃だっただろうか。そこは、ちょうど発射台の対岸に位置する場所で、遮るものなく見ることができる。すでに発射台に移動されていたロケットを目の当たりにして興奮する一同。そして、ここから打ち上げ予定の午前3時37分まで、4時間強を待つことになる。

南の島とはいえ2月の夜はまだ寒く、コーヒー&ベーグル(平野さんはニセコのベーグル屋さん)で温まる。徐々に人も増えてくる。車で待つもの、寝袋に包まるもの、持ち込んだイスやシートに無言で座るもの、しまいにはトランスをかけて騒ぎだすものも。元旦の初日の出待ちってこんなかなと思い始めた頃、やっと午前3時を迎える。最終のGO/NOGO判断の結果がGOとなり、予定通り打ち上げが行われるとスピーカーにのせてアナウンスが入った。再度テンションが上がり始める。

そこからの時間は速く、(感覚では)あっという間にカウントダウン「10,9,8,7,….」が始まる。そして、いよいよカウント「0」。点火されたロケットエンジンの光が煙とともに見えてくる。数秒間は無音の状態だ。遅れてやってくるエンジン音に、やっと声を出すことができた。といっても、しばらくの間は自分とロケットに向き合うのに夢中で会話にはならない。ロケットが上昇し、点になり、上空から無事見えなくなってようやく興奮を分かち合う感じ。2月28日午前3時37分、H-IIAロケット 23号機が打ち上げられた。

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[NASA/Bill Ingalls]
ロケットの打ち上げを生で見るという体験は、あの光景は、説明のしようがない。

無事にロケットの打ち上げを見ることができ、高揚感とともに満足していた私たちだが、実は緒方さんにとってはここからが本当の正念場だった。INVADERの分離と軌道への投入、さらには無事にアンテナが展開されるか、INVADERからの電波を地上で受信できるのか。データ受信を確認できて、はじめて「成功」なのだ。

「ARTSAT Project」とは?


ここで、ARTSAT Projectの全体像を振り返ってみよう。ARTSAT Project(衛星芸術プロジェクト)は多摩美術大学と東京大学による共同プロジェクトだ。従来のサイエンスミッションの衛星とは別に、芸術の分野で活用するための専用の衛星を自分たちで打ち上げようというもの。久保田晃弘さん(多摩美術大学)と田中利樹さん(東京大学)が出会ったことで発生したプロジェクトだ。

地球を周回する「宇宙と地上を結ぶメディア」としての衛星を使って、 そこからインタラクティヴなメディア・アート作品やサウンド・アート作品など、 さまざまな芸術作品の制作を展開していくプロジェクト
http://artsat.jp/より)


人工衛星から地球に送られてくるデータを芸術の分野で活用することは、これまでにももちろんあった。しかし、彼らが考えたのはそのもう1つ先なのだ。自分たちで自分たちの衛星を運用し、そこで取得できるデータをメディアアートに活用する、データを公開し、より多くの人たちに活用してもらう。さらには、衛星をインタラクティブにアートに組み込んでいく、それにより新しい表現を生み出そうと、より主体的に関わることを目的としている。

プロジェクトが始まったのは2010年。2012年には、ICC「オープンスペース2012」にて展示が行われたので、(私もそうだが)記憶にある人も多いのではないか。しかし、これらの展示がゴールではなかったのだ。


ICC「オープン・スペース2012」展においての展示。上記は『ARTSAT: イントロダクション』第二フェーズとなった『フィジカル・サテライト』。多くのアーティストやプログラマーが参加し、衛星芸術表現に関するさまざまな実験と制作が行われた。

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[ARTSAT 1: INVADER – realtime tracker α:田所淳]

http://artsat.jp/


INVADERからの最初の声

打ち上げが無事に成功すると、衛星はロケットから分離され、周回軌道に放出される。その後、自動的に電源がONになる仕組みだ。電源が正常に入ると、次に通信用のアンテナの展開。正常にアンテナが開かなければ、INVADERからのデータは地上に届かない。

すでにご存知のとおり、INVADERからの最初のデータ(CWビーコン:生存信号)は無事、地上局に届いた。このときの地上局の様子を伝えるユーストを、緒方さんは種子島のファミレスで食い入るように見ていた。ご自身がブログ(http://www.takram.com/lab/artsat1-invader/)で書かれているように、緒方さんは熱構造系チームでこのアンテナの展開機構の設計に関わっていたからだ。

その様子を背後から見ていて、地上局にも行ってみないとこのプロジェクトの始まりを見たことにはならないと思った。

以下がINVADERからの最初の受信データだ。




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[撮影:津島岳央]
打ち上げ当日の地上局で、右が久保田晃弘さん、左が田中利樹さん。「そういうシーンのドキュメンタリーは見たことがあったんですが、本当にリアリティというか、聞こえたという感じがあるのはすごい体験でした」(久保田さん)


運用準備が着々と進む地上局

打ち上げからおよそ10日経った3月9日、久保田さんに話をお聞きするために多摩美術大学八王子キャンパスに設置された地上局(ARTSAT TamabiGS)を訪れた。部屋にはアナログモデムのような受信音が響いている。ちょうど、CWビーコンを受信しているところだったのだ。

地上局では屋上に設置されたアンテナを介して衛星間通信を行う。前述のように、衛星が「生きている」ことを示すのがCWビーコン、衛星はこの信号をつねに流している。ちなみに、このCWビーコンはモールス信号で送信される。衛星との通信はアマチュア無線の帯域が使われており、アマチュア無線の無線機があれば聞くことができる。事実、各地のアマチュア無線家の方たちからの情報提供も多いそうだ。

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INVADERが近づいてくるのを自動コントロールでとらえる。

この地上局でINVADERと交信できるのは日に2回。「パス」と呼ばれる、衛星が地上局の可視範囲の上空を通過する間だ。地球の自転の影響もあり、交信できる時間帯およびその時刻・時間(概ね10分間弱だという)は毎回異なるという。衛星が見える位置に入ったときに地上局側からコマンドを打って、インタラクティブな通信を行う仕組みだ。地上局が果たす機能は、衛星へのコマンドやバイナリの送信、衛星からのデータの受信およびそのデータの解析作業、サーバおよび衛星APIを介したデータの配信となっている。



3月8日の交信で取得された、INVADERに搭載されたArduino MEGA互換のミッションOBC「Morikawa」によるモールス信号「Hello, space!」と音声での「こんにちは、宇宙」。

軌道を計算して算出されたパスの予定時間は公式のFacebookページ(https://www.facebook.com/artsat)で随時公開されている。今日の2度目のパスではデジトーカ(音声合成チップ)の運用を試すという。こちらから送信するコマンドに応えてデジトーカが音楽を鳴らすか。しかし残念ながら、この日の周回がノイズの多い大陸側だったためか、デジトーカからの音を確認することはできなかった。

このように現在は、日照の時間、衛星側の温度、バッテリー、海側の周回なのか大陸側の周回なのか、さまざまな要因を検証しながら、INVADERとの通信(衛星の機能)を試している。「まだ衛星の回転が速く、姿勢が安定していないので、向きによってアンテナの受信が強くなったり弱くなったり、そういう状況です。1つ1つ衛星の機能を確かめつつ、4月頃から安定的に運用できるようにしていきたいというところです」(久保田さん)。今後、INVADERからのデータはARTSAT APIを通して配信される。そのフォーマット作り、安定してデータを供給するための準備を進めている段階だ。

プロジェクトはどこに向かうのか?


ARTSAT Projectが目指すところ、可能にすることは何だろうか? 延べで、およそ70〜80人が関わっているという、このプロジェクト。きっかけは2010年夏に遡る。

かつて40年前、コンピュータが新しいメディアとして登場しコンピュータアートやデジタルデザインが始まった。いまの時代、それにあたるものは何か? たとえば宇宙テクノロジーのようなものが新しいメディアアートにとっての表現の可能性になるのではないかと考えていた久保田さんと、サイエンスミッションや天文学のための衛星を作ってきたがもう少し身近に貢献できるようなことがやれたらと考えていた田中さんが出会い、「ハイエンドなDIYとローエンドな衛星がつながったら、そこにすごく新しい可能性が生まれるんじゃないか」と、そのあたりがうまくシンクロしたのだという。

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[撮影:津島岳央]
久保田さん(左)と田中さん(右)

衛星から取得できるデータはさまざまだ。衛星の温度、あるいは明るさ(太陽電池の発電量)、ジャイロ(姿勢)、磁気であったり……。サイエンスミッションにおいてはまずこうしたデータは「理解すること」が先にある。そうしたデータにもしふれることができたとしても(もちろん、それらの一部は公開されている)、その意味するところを理解することは私たちには難しいだろう。理解できないデータにふれたとして、それは、私たちに何の感情も起こさない。しかし、こうしたデータを使って、たとえば衛星を自分を重ね合わせることができる作品があればどうだろうか。そういった作品から、「今日は(宇宙は)暑いね」だったり、「明るいね」、「暗いね」といった表現を受け取ることができれば、私たちは何らかの感情を喚起されるだろう。そして、宇宙を、地球を回るINVADERをもっと身近に感じることができるのかもしれない。いま「自分が」地球を回っていたらこんなに寒いんだ、こんなに速いんだとか、90分で回るというのはこういうこと、意外に速いんだと。つまり、作品の表現に使われることで、その作品を通して、私たちは、リアルなINVADERの存在を共有することができるのだ。

多摩美の制作チームは、6月7日から始まる東京都現代美術館での展示に向けて、INVADERからのデータを使った作品作りに取りかかっているという。もちろん、ARTSAT APIの運用が始まれば、そこから配信されるデータを使ってたくさんの人たちがいろいろなものを作るだろう。だが、まずは多摩美チームとして今回のプロジェクトの象徴となるようなものを作ることを目指している。まだミーティングを始めたばかり。今まさに軌道上に衛星がいるということを表現したいという話をしているという。実際に衛星が宇宙に行って、衛星と交信しているリアリティを表現したいと。

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2号機となる深宇宙彫刻 「DESPATCH」の外観
ARTSAT Project自体もまだまだ進行中だ。2号機として「ARTSAT2: DESPATCH」の開発が始まっている。DESPATCH(深宇宙彫刻)は地球脱出軌道によって深宇宙に放出される作品だ。DESPATCHについては、また機会があれば詳細をお伝えしたい。

「やってみておもしろいなと思ったのは、全部がつながっているんですね。衛星の設計からデータ配信するところまで。どれか1つ作ればいいということではない。全部を作らなきゃいけない。だから、ハードだ、ソフトだとは分けられないんです。書類書きからすべて。そこが難しいけど、おもしろいところ」という久保田さんの言葉が心に残った。

ARTSATのようなプロジェクトが乗ることで、遠いものだった人工衛星が格段に身近に感じられるようになった。これまでロケットにかかわりのなかった私でさえ、種子島に行ってしまうほど。こうした超小型衛星の技術が普及し、これまで人工衛星が進出していなかった新しい分野に組み込まれていく。遠い「宇宙」が、私たちの普段の生活の中で身近なものになっていく。もう、そんな未来がすぐそこまで来ているのだ。

(大内 孝子)



Information

ARTSAT Project
http://artsat.jp

Facebook Page
https://www.facebook.com/artsat

デジタルのアウラ、役立たずのテクノロジー、データから見えるヒューマニティ ― Super Flying Tokyo レポート vol.2

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今年2月に開催されたデジタルアーティストたちのカンファレンスイベント「Super Flying Tokyo」。前回レポートから時間が空いてしまったが、後半戦の3名も決して見逃せない超重要人物ばかりだ。もしあなたがデジタル表現に興味があるなら、はてまた、現在も更新され続ける最新のアートの価値観を知りたいのなら、これから記述するアーティストたちの名前は覚えておくのがいいだろう。何がすごいかって? 早速レポート開始です!


Text by Arina Tsukada
Photo by Shizuo Takahashi


デジタルから生まれる“アウラ”の存在


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Jussi Ängeslevä「Aura of the digitally fabricated」

ベルリンから来日したJussi Ängeslevä(ユッシ・アジェスレヴァ)は、30年間にわたって続くデザインチームART+COMの副クリエイティブ・ディレクターを務め、ベルリン藝術大学でもデジタル、メディア、デザインの領域で教鞭を執るデザイナーである。
ART+COMの名を一躍世界に知らしめたのは、なんといってもBMWミュージアムのプロジェクト《kinetic sculpture》における超絶的に美しいインスタレーションではないだろうか。そのタイトル通り、デバイスを駆使して構築された“動く彫刻”のインスタレーションは、メディアアートに携わるひとでなくとも、直感的にその美を感じることができるだろう。



元々、コンピュータコミュニケーション、サイエンティスト、ハッカー、映像制作者などが集まるART+COMはインタラクティビティの新しい可能性を探るデザイン集団。今もスクリーンメディアの仕事が中心にあるものの、彼らの目指す地平はデジタルとアナログの美しき融合にある。デジタルコンテンツをいかに物理空間に落とし込むか? この問いから、彼らはデザインプロセスそのものを可視化し、物質をデジタル制御によって動かすインスタレーションを生み出していった。

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「《kinetic sculpture》に取り組む際、私たちは球体のプロトタイプを何個も用意し、このメディアが何なのかということから探っていきました。バーチャルなプログラムと現実の物体をいかに噛み合わせるか、いくつものシミュレーションを行ないながら、微調整を繰り返していったのです。
この作品を発表して以来、世界中で似たようなイミテーションがいくつも作られましたが、どれも何かが不足しているんですね。メカニカルな部分だけが注目されているようですが、それだけではこの作品の本質はつかめない。ここにおけるテクノロジーとは、ひとつの表現手法でしかありません。私自身は自分をデザイナーだと思っているので、マテリアル自体をどうデザインするかに最も多くの時間をかけているんです」


《Kinetic Rain》ART+COM Singapore’s Changi Airport Terminal1

キネティックシリーズのひとつの集大成ともいえるのが、シンガポールのチャンギ空港において、全体で75㎡の面積を占める巨大なアートインスタレーション《kinetic rain》である。まず動画をご覧いただければ、筆舌に尽くせぬ美しき光景が広がっていることがわかるだろう。608個のアルミ素材の雨粒が鋼鉄のワイヤーでつり下げられ、コンピュータ制御によって上下にゆったりと動くように演出されている。また、インスタレーションの下にはライト光源が設置され、天井に写し出された雨粒の影によって、空間を踊るようなビジュアルが生まれているのだ。ああ、想像するだけですばらしい!今すぐシンガポールに飛び立ちたい!

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ドイツ銀行のショールームにおける作品でも、鏡と影を用いたインスタレーション《ANAMORPHIC LOGOS》やポリゴン状の鏡《ANAMORPHIC MIRROR》を手がけたART+COM。ここでもオープンぎりぎりまで実験を繰り返し、複雑な構成を練っていったという。
「《ANAMORPHIC LOGOS》ではポジション・コントロールをどうするかが目下の課題でした。ライティング、影、そして鏡の反射などは、コンピュータ上のシミュレーションでは実現できていても、実際に稼働してみて初めて見えてくるイメージがあることに気付かされました。映像投影ではこうならなかったでしょうが、現実の物質同士がなせるイメージはもっと具現性が高いのです。鏡という物質の特性をつかむことで、アナログな物質(鏡)とスーパーテクニカルなプログラムを融合することができました。物理的な存在や媒体に、テクニカルで動的な思考をかけ合わせるということ、この考え方は様々なプロジェクトに応用することができるのです」

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これらの他にも、鏡を持たせたモーター付きの義手ロボットを並べて、スポットライトによる光の反射で漢字を描写する《Mobility》や、同様にスポットライトと水の反射を利用した韓国の河川敷のプロジェクトなどを次々と説明していくユッシ。そのどれもが極めて精密にデザインされたものであり、シンプルな物理現象を用いて、世界を美しきグリッドに変換してしまうことは作品を見れば一目瞭然だ。

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ここで、本プレゼンのタイトルにもなった「デジタルで製造されたものがはらむアウラ」とは何かを一度考えてみたい。20世紀、ヴァルター・ベンヤミンが『複製技術時代の芸術』において唱えた「アウラ」とは、優れた芸術作品を前にしたときに「いま」「ここ」に存在すると感じる畏怖や崇高さを示す(ある種、封建的で儀礼的な)感覚のことである。映像や写真などの機械的な複製が可能になったアート作品における「アウラの喪失」を、ヴェンヤミンは新たな芸術の方向性として迎え入れた。しかし21世紀の現在、ART+COMはテクノロジーを駆使して再びアウラの存在を導き出しているかのように思える。デジタル製造によって生まれたプロダクトは、形や機能、そしてその意味をも個人の力でカスタマイズできることを可能にする。ART+COMがこうしたオブジェクトをデザインする際、メディアが持つ特性やシステム全体、製造のプロセスすらも徹底的に構築することで、空間に意味を創出する強度なアート作品を生み出すことができるのだ。

役立たずのテクノロジーから生まれる新たな体験


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Ivan Poupyrev「Experience Technology or Why I Don’t Bother Making Anything Useful.」

Walt Disney Imagineeringや東京のSONY CSLで暦本純一との共同研究を経て、現在はシリコンバレーのGoogle Motorola ATAPディビジョンにてR&Dチームを率いるサイエンティスト兼デザイナーのIvan Poupyrev(イワン・プピレフ)。これほど輝かしい経歴を持ちながら、イワンがいくつも発明してきたデバイスのコンセプトは「役に立たないもの」だという。それには、彼がSONY在籍時代の逸話がきっかけとなっていた。

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「かれこれ10年以上前、SONYでは触覚をフィードバックするスクリーンを開発していました。スクリーンをタッチしたとき、実際にボタンを押しているような感覚が得られる触感のアクチュエーターを導入したのです。これはアメリカ市場向けのリモコンとして開発されたのですが、当時のデザイナーとは何度もケンカしましたね。だって、ボタンが必要ないはずのスクリーンセンサーなのに、結局そのリモコンはボタン付きだったんです(笑)。なぜって? ボタンがないデバイスは消費者に受け入れられないと判断されたんです。結局、数年後にiPhoneが登場するわけですが、それまでは見向きもされなかったんですね」

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「しかし、彼らの主張はある意味正しかった。だってApple以前のタッチスクリーンはすべて失敗していたんですから。では、なぜスマートフォンが成功したのか? それは「体験」が「機能」を超える時代が訪れたことを意味しています。キーボードの方が早くタイピングできるけれども、タッチスクリーンが魅力的なものになった。そこでは新しいテクノロジーにともなう体験を提示することが重要になったのです。
一方、テクノロジーにはいくつもの制約があります。テクノロジーの有用性ばかりを追求しても、必ず限界はやってくる。しかし、日々の環境の中に、新しくて魅力的な体験を創出することは可能なんです」

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「Touché(トゥッシュ)」とは、イワンが開発したタッチングセンサー。これを取り付ければ、ドアノブもテーブルも、水面すらもタッチスクリーンにすることができる。
「たとえば植物にセンサーを仕込み、植物のどこをさわるかで音に変換したり、触れたときの強度で反応を変化させることができます。これがなんの役に立つのか? そんな質問は受け付けません。で、タッチセンサー仕込みの鉢植えを当時の私のボス(=ミッキーマウス・笑)の元へ持っていきました。唐突にディズニーランドの施設内に置いてみたんですが、子どもたちはすぐさま発見して喜んでくれましたね」

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そのほかにも、相手のカラダに触れると、シグナルが伝達してマイクから音が聞こえる《Ishin-Denshin》(以心伝心)や、空気泡とビジュアル投影を用いて、手のひらで蝶が羽ばたいているようなインスタレーション《AIREAL》など、人体とのインタラクションにまつわる作品を生み出してきたイワン。
「テクノロジーは、有用性があることを前提に開発されます。しかし、テクノロジーはいつ暴走するかわからない。私は役立たずなテクノロジーを作り続けながら、UselessなテクノロジーのUsefulさは何かってことをいつも考えているんです」

データビジュアライズから探るヒューマニティ


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Aaron Koblin「Data+Art」

GoogleのData Artsチームを率いて、データビジュアライゼーションや、二次創作的なユーザー参加型コンテンツを次々と発信しているAaron Koblin(アーロン・コブリン)。真鍋大度が手がけたPerfume Global Siteの二次創作を誘発する参加型プロジェクトも、このアーロンの活動にかなりの影響を受けているという。

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「見えないものを見せること。これがデータビジュアライズの最もシンプルな解答です。過去には、北米の飛行機の航路をマッピングしたり、グローバル通信の頻度を国際電話とIPプロトコルの回線で計測したり、アムステルダムという一都市のなかでSNSがどのように使われているかなどをビジュライズしてきました。
僕のもうひとつのテーマは『Working Together』。インターネットを経由して、たくさんのひとと恊働で作品を生み出すプロジェクトを編み出しました」

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アーロンによる《The Sheep Market》とはAmazonのウェブサービスMechanical Turkを使ったプロジェクト作品。オンライン上で世界中の人々にヒツジの絵を描いてもらい、その対価に0.02ドル(USD)を支払うというもので、最終的に100,000頭のヒツジが集まるまで続けられた。
「これをアート作品として販売したのですが、知的財産などについての議論も起きました。なぜヒツジを題材に選んだかといえば、初めてクローン化された動物でもあり、機械的な繁殖生産の象徴であるということ。それに、『星の王子さま』にもヒツジを描くシーンがありますね」

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こうした不特定多数の人々との恊働作品を次々と展開していったアーロン。ほかにも産業革命時の人間心理を鋭くとらえたチャップリンの名画「モダンタイムス」のワンシーンを描いてもらったり、1枚の100ドル紙幣を描いた絵を各1セントの対価で集め、巨大な100ドル紙幣をつくる《Ten Thousands(10,000) Cents》(川島高氏との共同作品)などを発表。それぞれの作品には、制作者たちの描いた痕跡がアーカイブされているため、ひとつずつ眺めていけば、見知らぬ人物の息づかいや感触が生々しくも伝わってくるのがわかるだろう。
(参考:http://www.tenthousandcents.com/



RadioheadのMVで発表され、一躍大きな話題を集めた《House of Cards》はレーザースキャナを使用し、トム・ヨークの顔の軌跡などのスキャンデータのみで構成された映像作品。アーロンはここで開発したデータをツールと共にGoogle Codeで公開し、ファンの間で自由な二次創作が生まれる状況を生み出した。
続く《The Johnny Cash Project》では、2003年に亡くなったシンガーJohnny Cashに対し、ファンたちが個々に描いたJohnnyのポートレートを集積したMVを制作。最終的に2万5千人を超える人々が本プロジェクトに参加し、それぞれのJohnnyへの思いを一枚の絵に込めていったという。



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「このMVでは、1枚1枚のフレームがとてもパーソナルで、人間味を感じるものになっていることがわかると思います。まさにJohnnyの人生に命が吹き込まれたような作品になりました。私たちはガイドラインだけをつくり、あとは自由に描いてもらうことで物語のツリーはどんどんと発展していく。ひとが参加することで、面白いクリエイティブが生まれるんです。テクノジーは物語を生み出し、人々のマインドを伝える媒介になることができる。人間が人間らしくあるためのツールとして、テクノロジーと付き合っていきたいと思っています」

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6名のプレゼンターによる超濃密な6時間強のカンファレンス。いかがだっただろうか?
今までも、これからも、新たなクリエイティブシーンに大きな影響を及ぼしていく人物ばかり。また彼らに出会える日が楽しみだ。



Information


http://www.rhizomatiks.com/event/superflyingtokyo/

第一線で活躍するデジタルアーティストが集結「SUPER FLYING TOKYO」カンファレンスとワークショップを開催

2014年2月1日(土)13:00-19:00 @ラフォーレミュージアム原宿にて

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