毎年9月にオーストリア・リンツで開催されるアルスエレクトロニカ・フェスティバル。
今年も既に日本から何人ものアーティストがこの地に集結し、展示やパフォーマンス、カンファレンスなどが目白押しの数日間がスタートする。そんな中でひとつ注目のプログラムについてご紹介したい。9月4日〜7日の計4日間で開催される今年のアルスのメインイベント、「Future Innovators Summit」だ。
「Future Innovators Summit」は今年春に正式発表された博報堂×アルスエレクトロニカの共同事業「Future Catalysts」のオーガナイズによるサミットである。と、のっけからこの異色の組み合わせに首を傾げるひとも多いかもしれない。日本の広告代理店とオーストリアのアートセンター。つまり、博報堂はメディアアートを使った広告を作りたいのだろうか?
様子をうかがうと、答えはそれだけではないらしい。ここでのポイントは、アルスエレクトロニカというアートセンターが、20年以上にわたってリンツという都市の発展(産業・教育・行政・観光)に貢献してきたバックグラウンドにある。また、アルスのFUTURELABなどでは、都市のみならず欧州企業を相手に共同プロジェクトを進め、新たな産業のイノベーションを促すような試みに取り組んでいる。「Future Catalysts」とは、こうしたアルスにおける数々の実践例を参照しながら、アートとビジネスや社会をつなぐフレームワークや、彼らの思考・哲学そのものを日本社会に実践していこうという試みのようだ。
アルスエレクトロニカ・センター photo: Nicolas Ferrando, Lois Lammerhuber
こうした背景から、社会・文化的イノベーションを目指し、新たな対話と創造のプラットフォームを生む試みとして開催されるのが、今回の「FUTURE INNOVATORS SUMMIT」だ。
さて、このサミットで一体何が行われるのだろうか? テーマは「What it takes to change(変化を促すもの)」。これから先の社会において、「変化」のシーズを探していくという(なんとも壮大な)ミッションが設けられている。これは今年のアルスエレクトロニカ・フェスティバル全体におけるテーマの副題でもあり、アルスが提案するひとつの世界観を体現するものとも言えるだろう。ちなみに、フェスの全体タイトルはアルファベットの「C」。Creativity, Communication, City, Catalyst……等々、変化をうながす様々な「C」が街中に登場することを意味している。

セッションは6つのグループに分かれ、各グループが2日間ずつワークショップタイプのセッションを行う。計4日間のプログラムだが、ここで注目したいのが参加者の面々。アーティスト、社会活動家、科学者、デザイナー、エンジニア、アントレプレナーまでさまざまな国籍・ジャンルの人々が集まるなかで、日本人も複数参加している。


なんと、あの仕込みiPhoneの森翔太さんが登場である。何を隠そう、森さんは今年のアルス受賞者だ。そのほか、今年特別展示を行うOpen Reel Ensembleの和田永さんや慶應SFC准教授の筧康明さん、日本在住のメディアアーティストEric Siuさんなども参加する。この異色なラインナップを見ておわかりの通り、当日になるまで何が起こるか全くわからないのが面白いところ。当日は一部プログラムがUST中継されるようなので、日本の皆さんもぜひチェックしてみよう。
サミットの模様はUSTREAMでも中継され、アーカイブも記録される予定だ。
USTREAMやプロジェクトの詳細は特設ウェブサイトにまとめられており、Twitter(https://twitter.com/FISummit2014)でも最新情報を発信している。
4日間に渡ってどのような議論や展開となるか楽しみにしたい。
Text by Arina Tsukada
Information
FUTURE CATALYSTS Hakuhodo × Ars Electronicahttp://www.future-catalysts.com/
FUTURE INOVATORS SUMMIT
http://www.aec.at/c/en/future-innovators-summit/