Search results for:

db-dbの世界観溢れるピクセルグラフィックのキャラクターたちの洋服を脱がせるゲームアプリ “Super Cool Party”

131135_super_cool_01

db-db.comのFrancis LamによるiPhoneアプリ”Super Cool Party”がリリースされた。

db-db.comは2001年ごろスタートし、特徴的なピクセルグラフィックの世界観とともに複雑なインターフェースのウェブサイトは何度もリニューアルを繰り返し当時のウェブデザイン・ムーブメントの中心的な存在であった。
そんなdb-dbらしいアプリ”Super Cool Party”がリリース。ピクセルの世界観と何種類もある洋服を来たキャラクターたちが登場し、フリック入力で彼らの洋服を脱がしていき、脱がせきると「PARTY!」と大声をあげるなんともスーパークールなパーティ?ゲームだ。自分の容姿や洋服のカスタマイズもでき、ゲームを進めると解除されるパーツや購入できるものもある。カスタマイズできるパーツのバリエーションも400以上とさすがという質と量。ゲームとしてもなかなかクセになる難しさもある。

ピクセルグラフィックの世界観が好きな人にはいじってるだけで楽しめる内容となっている。
現在、無料で配布中。
公式サイトはこちら、iTunes Storeはこちら

131135_super_cool_02

131135_super_cool_04
131135_super_cool_05 追加機能を入れるとバックグラウンドに写真をひくことも可能


http://supercoolparty.info/

http://db-db.com/

https://itunes.apple.com/us/artist/db-db-db/id306025835

オックスフォード大学の出版局が選ぶ2013年注目の言葉に「自分撮り」を意味する「SELFIE」

selfie-oxford-dictionaries-word-of-the-year

オックスフォード英語辞典などを出版するイギリスのオックスフォード大学の出版局が選ぶ今年の注目の言葉が発表され、2013年の言葉は「自分撮り」を意味する「SELFIE」となった。同出版局は毎年、1年間にインターネットの中で使われた英語の単語を調査し、最も注目を集めたことばを選んで発表している。

同賞では昨年、“動詞としてのGIF”が選ばれ大きな話題を呼び、インターネットやテクノロジーにまつわる言葉が選ばれることも増えてきた。「SELFIE」の使用頻度は昨年の同時期と比べて17,000%も増えたという。

ほか候補としては、マイリー・サイラスのMTVでのパフォーマンスで物議を醸し流行語ともなった挑発的な踊りを意味する「TWERK」、また仮想通貨として注目を集めており、現在高騰している「BITCOIN」などが入っている。

過去の注目の言葉は以下となっている。

screen

http://blog.oxforddictionaries.com/press-releases/oxford-dictionaries-word-of-the-year-2013/

NHK ニュース:
ことしの英語の注目語は「自分撮り」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131120/k10013217611000.html

VERGE:
‘Selfie’ is the 2013 Oxford Dictionaries Word of the Year
http://www.theverge.com/2013/11/18/5120390/selfie-is-the-2013-oxford-dictionaries-word-of-the-year

一点突破、全面展開。神田のまちに広がる表現者たちのエネルギー 『TRANS ARTS TOKYO 2013』レポート

tat_flyer_0921.indd
10月19日(土)から開幕した『TRANS ARTS TOKYO 2013』。
昨年のTRANS ARTS TOKYO(TAT)は旧東京電機大学11号館をまるごと1棟(計19フロア)使用して開催されたが、今年は神田の街全域にSTATIONとなる展示会場を設けて展開されている。

今年のTRANS ARTS TOKYO(TAT)のテーマは「一点突破、全面展開。」。大規模な都市開発が行われ、新陳代謝の渦中にある神田を舞台に、アーティストやクリエイターたちが“都市のスキマ”から、まちと関わる最初の一点を突破し、そこから全面展開の希望を見出すことが目的だ。

メイン会場となるのは、旧東京電機大学7号館地下と周辺の空きビル。実はこの地下空間、昨年のTAT開催時にはまだ建物があった場所。1年の間に校舎は取り壊され、現在は駐車場となっている。

TAT2013_01

TAT2013_02

写真上が2012年、下が2013年に撮影されたもの。昨年会場となった旧東京電機大学11号館は現在解体工事中。隣にあった7号館はすでに取り壊されて駐車場に。この駐車場の地下に今年の展示会場のひとつがある。

「デザイン業界の中でも、デザインの枠がどんどん狭くなってきている。
自分たちで枠を決めて不自由にした上で“両方やってます、マルチです”とかいう状況がすごくむず痒い。もっといろんなものが混ぜこぜになればいいのに」


会期中、地下空間で会場周辺に生えている木々を黙々と描き続ける佐藤直樹氏は、オープニングでこう語った。佐藤氏の言葉にあるように、地下空間をはじめ、TATの会場はとにかく“混ぜこぜ”状態。

TAT2013_04

地下空間で木炭壁画《そこで生えている》を会期中描き続ける佐藤直樹氏。オープニングには1本だった木が、次々と生い茂り、壁を埋め尽くしていく。

佐藤直樹氏の木炭壁画《そこで生えている》の隣には、映画監督・CMディレクター石川寛氏がきりとったtokyoのCMが上映され、画家・小林正人氏は窓のない空間で雨風にさらされる《LIGHT PAINTING #3》を展示、ファッションブランド「writtenafterwards」デザイナー・山縣良和氏はスペースシャトルの語源が織り機の「シャトル」に由来することにインスピレーションを受けたインスタレーション《space shuttle from the universe》を発表している。

TAT2013_03

TAT2013_05
展示会場のひとつ、旧東京電機大学7号館地下。昼と夜、そして晴れの日と雨の日でも大きく表情を変える空間で展示やイベントが行われている。

地下空間と同じ区画にある空きビル4棟でも、あちこちで“混ぜこぜ”現象が起こっている。総合案内所がある共同ビルでは、神保町のアートスクール「美学校」、ニコニコ学会β、東京藝術大学大学院美術研究科、そしてJR常磐線およびつくばエクスプレス沿線地域を中心にアート活動を行う作家たちが集結した「ARE(アール)」が各フロアごとに作品を展示。

TAT2013_06
TATのロゴが目印の共同ビル。(写真左:5F「美学校アッパーサイド」竹浪音羽氏の作品/写真右:最上階8Fで来場者を迎えるAREエリアアーティストのひとり松下 徹氏の作品)

篠木ビル1Fで通行人の注目を集めているのは「どくろ興業」。かつて文具店だった場所に摩訶不思議なお店を登場させている。2Fには、黄色&黒のカラーコンビネーションによる作品を発表する有賀慎吾氏が、SNSなどで出品者を募り、公開制作を行っている。そして3Fで展示されている写真家・ただ氏の写真は、かつて印刷会社の事務所として使われていたこの空間で撮影されたものだ。

TAT2013_07
共同ビルの隣にある篠木ビル。(写真上左:1Fではどくろ興業が強烈なインパクトを放つ/写真上右:有賀慎吾氏による《Y/B/E/L/L/A/L/C/O/K/W -The Wonderful Wizard of Black & Yellow-》/写真下:写真家・ただ氏による《3F》)

どのフロアも、場所のエネルギーとアーティストたちの創造力、そしてフロア同士の“混ぜこぜ”感に圧倒されるが、とどめを刺されるのが4F。
篠木ビルの4Fは、以前オーナーの生活空間として使用されており、オーナーが退去した後も家財道具一式がそのまま残されていた。TAT会場となっている空きビルの中で、唯一、人の気配が生々しく残る空間で展示を行うのは、映像作家・大木裕之氏を家長とする「大木家」。長女・エリ(キュンチョメ)、長男・ケンタ(西村健太)、次男・TASK(志水佑)がそれぞれに作品を発表しつつ、大木氏は日々撮影を行い、最終日に発表する。

TAT2013_08
篠木ビル4F。(写真左:篠木ビルで制作を行う「大木家」長女エリこと、キュンチョメ/写真右:インスタレーションでは窓が外され、隣のビルの壁に映像が投影されている)

神田警察署の向かいにあるギャラリー「KANDADA 3331」では、建築家・画家の木下栄三氏による《徳川十五代将軍お菓子づくし》が行われている。これは、木下氏が徳川十五代将軍それぞれにちなんだ和菓子を考案し、紹介するもの。天下統一を果たした家康は「天下餅」、犬公方と呼ばれた綱吉は「御犬様 人形焼」などなど、ユーモアたっぷりのアイデアと独特のタッチで描かれるイラストに、思わずニヤリとしてしまう。また、木下氏の提案は和菓子から江戸三十六見附をメインとする江戸東京の都市環境政策までに広がるという、なんとも壮大なプロジェクト計画なのだ。
会期中には和菓子店が試作した「天下餅」を試食できるイベントも開催される。

TAT2013_09
KANDADA 3331で展示中の木下栄三氏。直筆のスケッチとともに、実際に制作された「天下餅」がお目見え。

今年オープンした大型商業施設WATERRAS(ワテラス)で行われているのは、写真家・浅田政志氏×スタイリスト・髙山エリ氏による《神田ストリートファッション対決!!》。これは神田の大通り(神田警察通り/靖国通り/白山通り/中央通り)に縁のあるモデルが、その界隈にあるお店のアイテムで身を包み、文字通り“ストリートファッション”で対決するというもの。
なぜか異国情緒溢れるお店が多い神田警察通りや、スポーツ用品店が立ち並ぶ靖国通りなど、各通りごとに異なる個性も見どころだが、老舗豆腐店の主人や喫茶店のスタッフなど、年齢も職業も幅広い地元の人々がモデルをつとめていることも興味深い。

TAT2013_10
神田ストリートファッション対決!! 浅田政志×高山エリ(写真はスポーツ店が立ち並ぶ靖国通りチームを撮影したもの)

また、天井には編み師・203gow氏の“へんなあみもの”ワールドが炸裂。吹き抜け空間に出現した巨大編み物は、見ているこちらが小人になってしまったかのような不思議な感覚を味わえる。

TAT2013_11
WATERRAS COMMON(ワテラスコモン)で展示中の203gow《編み師の夢ん中/パンのあのあれ“デカ編み”バージョン。》

この他にも、KANDADA 3331から徒歩5分ほどのところにあるオルタナティブスペース「手と花 TE TO KA」では、『現在絵画展示即売会』を開催。佐藤直樹氏、マジック・コバヤシ氏、水野健一郎氏、横山裕一氏らの作品が壁一面に飾られ、その場で作品の購入もできる。神保町のシェアオフィス「EDITORY(エディトリー)神保町」では、神保町・古本・表現をテーマにリサイクルプロダクトを手がける「NEWSED」などが参加。このどちらのスペースも、2013年にオープンしたばかり。新陳代謝の中で、こうした文化的拠点が生まれつつあるのも現在の神田の姿なのだ。

TAT2013_12
写真上:オーナー自らがリノベーションして誕生したオルタナティブスペース「手と花 TE TO KA」
写真下:神保町のシェアオフィス「EDITORY 神保町」では、会期中TATパスポート持参で4Fワーキングラウンジを無料で利用できる特典も

TATのチケットはパスポート制。滞在制作も多く行われていることから、何度も入場できてその変化を見られることも嬉しい。また、チケット購入者には100軒以上のお店やギャラリーなども紹介されたガイドマップも配布され、まち歩きを楽しみながら会場となるSTATIONをめぐることができる。
TATの統括ディレクター・中村政人氏は、今年の見どころを次のように語る。

「新陳代謝の中で、都市のハード面が大きく変化するとき、解体寸前だったり、老朽化して不動産的になかなか動かない物件が生まれてきます。でも、アーティストには価値を気付かせる役割があり、アーティストたちは“価値がない”と思われているところに価値を見出します。今年のTATはエリアが広がり、MAPを見ながら拠点(STATION)をめぐる構成になっていますが、実はその道中が面白い。TAT開催時期は神田で文化的活動が集中して起こっています。さまざまなイベントやお店、街で起こっていることを見ることで、東京の大きな新陳代謝を感じることができると思います」

11月10日(日)には地下空間でのパフォーマンスイベントも。“100年に一度のスキマ”とも言われるこの空間で行われるパフォーマンスはぜひとも参加しておきたい。会期は11月10日(日)まで。

TAT2013_01_2
旧東京電機大学は昨年のTAT終了時から解体工事が着々と進んでいる。2012年TATの会場となった11号館工事現場の仮囲いにはO JUN氏のドローイングが。会期中にも工事は進み、ドローイングも姿を消していく。


Information

『TRANS ARTS TOKYO 2013』
http://kanda-tat.com/

会期:2013年10月19日[土]– 11月10日[日]12:00〜19:00
会場:3331 Arts Chiyoda, 旧東京電機大学7号館地下, 神田錦町共同ビル等
KANDADA3331, WATERRAS, mAAch ecute 神田万世橋, 錦町TRAD SQUARE, EDITORY 神保町 他
入場料:800円((期間中何度も使えるパスポート制)
*WATERRAS, mAAch ecute 神田万世橋, 錦町TRAD SQUAREは入場無料
*3331 Arts Chiyodaで開催中の『メイド・イン・カンダ』展は11月17日(日)まで開催

<関連イベント(一部)>
■KENTARO!! presents Dance Performance『Trans dance Tokyo』
開催日時:11月10日(日)18:00開演
会場:旧東京電機大学7号館地下
観覧料:1500円(別途TATパスポートチケットが必要)
TAT2012にキューレ−ター・パフォーマーとして参加したダンサーKENTARO!!のディレクションより、コンテンポラリー/ストリートダンス・演劇・音楽まで幅広いジャンルのラインナップが実現。(要申込)
[出演]KENTARO!!×東京ELECTROCK STAIRS/長内裕美/SYMBOL-ISM/國本文平/ワワフラミンゴ/よしむらひらく

*イベントの詳細、申し込み方法はTRANS ARTS TOKYO webサイトにて。
http://kanda-tat.com/pickup

2014年秋 レッドブル・ミュージック・アカデミーは東京へ

RBMA_Tokyo2014

11月初旬、都内の各所で開催したばかりの「Red Bull Music Academy Weekender」。日本と世界の音楽シーンやアートカルチャーにスポットライトを当て、複数の会場で8つのショーが開催され、ジャンルを超えた刺激的なラインアップとイベントは大きな盛り上がりをみせた。

131107_rbma

11月1日に開催されたRed Bull Music Academy Weekenderのオープニング・イベント。築地本願寺の本堂にて、ドイツを代表するエレクトロニック・ミュージックのプロデューサー、ヘンリック・シュワルツと日本の交響楽団に豪華コラボレーションとなった。
ほかのイベントの写真はこちらから。

そして、そのレッドブル・ミュージック・アカデミーの中心となるのは毎年ひとつの都市で過去15年にわたり行われている音楽学校だ。若く才能溢れるアーティストたちを支援する目的で開催され、通常の「アカデミー」のイメージとは一線を画するフェスティバル、ワークショップ、スタジオセッション、レクチャー等などが連日開催される、まさに音楽漬け月間となる。

そんなレッドブル・ミュージック・アカデミーが2014年、ついに東京で開催されることが発表された。

131107_rbma2
今年、ニューヨークで開催された
レッド・ミュージック・アカデミー
1998年のスタート以来、ベルリン、ロンドン、メルボルン、マドリッド、などで開催され、2013年はニューヨークで開催された。CBCNETでも現地に足を運び、その魅力的な内容をレポートで伝えているのでぜひご覧いただきたい。


過去には、Flying Lotus、Hudson Mohawk、Dorian Conceptなど、いま各国で注目を集めるアーティストをRBMAは輩出しており、溢れるクリエイターたちのプラットフォームとなる機関・団体として、世界中にネットワークを広げ、その存在を築いている。

そしてその中心となるレッド・ミュージック・アカデミー東京への参加者は2014年1⽉15⽇(⽔)〜3⽉18⽇(⽕)まで世界中から募集予定となっている。もちろん、一般参加可能なイベントも多数開催される予定だ。

新進気鋭のトラックメーカーやミュージシャンが世界中から東京に集まり、様々なイベントが昼夜に渡り開催される刺激的な日々となるだろう。

ぜひ、日本からも興味ある人は応募をしてほしい。
詳しい情報は今後、公式サイトで公開される予定となっている。

Information

RED BULL MUSIC ACADEMY TOKYO 2014
2014年秋 レッドブル・ミュージック・アカデミーは東京へ

http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/red-bull-music-academy-tokyo-2014

海外公式:
http://www.redbullmusicacademy.com/

「スクロールバーって何ですか?」些細な疑問から生まれる作品たち - オランダ人アーティスト レイチェル・デ・ヨーデ インタビュー

rachel_01

Sculpture In The Space Between Blinds – 2012

2013年の秋、ニューヨークを2週間ほど訪れ、ロウアー・イーストサイドに家を借りた。滞在中はいろいろな人と会うことができたが、その中のひとりに、オランダ人アーティストのレイチェル・デ・ヨーデがいる。
どこにでもありそうな石やブラインド、生々しく歪んだスクロールバーや人間の体の部分を思わせる奇妙な質感の素材。そういったオブジェクトを組み合わせることで、どこかインターネット的でTumblrっぽさを放つ彫刻・写真・インスタレーションを制作している彼女だが、ネットアーティストといえるほど直接的にインターネットを使うわけでもない。

ここ数年、シーパンクムーブメントやGIFの再流行に代表されるようにコンピュータやネットの世界が、現実空間でも当たり前のように感じられる機会が増えてきた。そんなポスト・インターネット時代とも呼べる今を象徴する彼女の作品や、作家以外にも幅広い活動をおこなっているレイチェルというアーティスト自身の秘密に迫るべくインタビューをおこなった。

TEXT : HAGIWARA Shunya (@hgw)




Q. こんにちは、レイチェル。最初に自己紹介をしてもらえますか?どこでアートを勉強したの?というか、そもそもなぜアーティストになろうと思ったの?

私はオランダで生まれ育って、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーというところでタイムベースドアート(鑑賞に時間性を伴う芸術)を学びました。

2001年に学校を卒業して、2004年からは拠点をベルリンに移し、今でもベルリンを拠点に活動しています。でも2年くらい前からは、仕事のためにメキシコ・シティ、ニューヨーク、フランクフルトなどに住んで、たくさん旅もするようになりました。だいたいは展覧会やレジデンスのためで、今はニューヨークにレジデンスで来ていて、これから半年ほどここに滞在する予定なの。

それで、私がアーティストになったのは、まあアートが好きだから。社会や制度といったものを超えることが出来るアートの可能性に、幼いときから魅了されていました。なんていうか、アートの世界は普通の世界よりも、面白そうで、魅力的で、エキゾチックで、複雑で、なにかすごい世界のように感じていました。アーティストになった理由っていうのはそんな感じなんだけど、今、私が子供の頃に夢見ていたようなすごいアーティストに“本当に”なれたかいうと、そうじゃないと思うけどね。実際のところはアーティストになるってことは、大部分が「アート業界の中で立ち振る舞っていく」ってことなのよね。
でもね、そこできちんと“アーティスト”らしく振る舞う、っていうのは一つの面白い遊びだと思うんです。

rachel_02
Subject Of Labor – 2012

アートってなんかヘンで、うわべだけ見たら何の役に立たないものばかり。それなのに、人は石器時代からずっとアートを作っている。目的も意図もないけど、大勢の人が労力と時間を費やしながら作り出してきた「アート作品」というものには、きっと何かあるに違いない。これは異様なことで、この異様さみたいなものが、私を魅了しているの。

rachel_03
Tongue Piece – 2012
Sculpture of a slime tongue stuck in a piece of Plasticine

Q.レイチェルのバックグラウンドについて聞かせてもらえる?アーティストになってから、どんな展覧会をやったとか今までの活動について聞かせてください。

卒業してから自分の進路を決めるのには何年かかかったわ。いろんな仕事をこなしてきて、アーティストとしての活動を進めるのと同時並行でフリーのフォトグラファーとしても活動をしてきました。ファッション写真は(独学で)スキルを磨くのにすごく勉強になったけど、クリエイティビティやエネルギーを消費しすぎちゃう。コマーシャル写真の仕事よりも、アーティストとしての活動が中心になってるけど、今もこの代償はあるわ。


rachel_04
レイチェルのコマーシャルワークをまとめたサイト “Studio de Joode”
ウェブマガジンやアパレルブランドなどに作品を提供している、コマーシャルといえど彼女独特の作風となっている
http://www.studio.racheldejoode.com/

だから最近は70%をアート活動にして、30%をコマーシャルの仕事に、それでちょうどいいバランスが保ててます。ここ3年はたくさん展示をしたり、作品を売っているから、コマーシャルとアートの折り合いが自分のなかでつくようになってきました。
それ以外にもMeta Magazineというオンラインマガジンのアートディレクターや、アートオークションをしているウェブサイト de Joode & Kamutzki のキュレーターとしての活動もしています。


rachel_05
レイチェルがアートディレクターを務める Meta Magazine
http://www.meta-magazine.com

rachel_06
独特の質感を持つ作品を取り扱うオークションサイト DE JOODE & KAMUTZKI
http://dejoodeandkamutzki.com

Q. 作品を作るとき、影響をうけるものはありますか?

自然・人間・物体・なんであれ、存在するモノに対して湧いてくる「疑問」に影響されて作品を作ります。
たとえば、「自分の肌ってなんだろう?それは一体何を求めているんだろう?」とか「スクロールバーってなんだろう」とか、「ほこり(埃)って何なんだろう」とかね。物質やデジタルとして目に見えるモノへの疑問だけでなく、それらが自分にはどう知覚されているのか、というような少しメタ的な感覚に対する疑問もありますね。

rachel_14
レイチェルのスタジオに貼られたメモ。いろいろなものごとに対する「疑問」がマッピングされている。

そういう「疑問に回答すること」が私が作品を作るときのテーマになっています。私の作品は生々しいけれど抽象的でシュール、そのバランスを保ちながら遊んでいる感じなんです。
私の彫刻作品はときには実際のモノとして、ときにはモノが撮影された写真として世の中に発表されて、存在や物質性ということに対して疑問を投げかけます。私が彫刻作品の発表に写真というメディアを使うのは、「ブツ撮り写真」のような方法で実際にそれらが立派に存在しているかのように見せるためなんです。

rachel_07
Clay Scrollbars And Several Rocks – 2012

Q.僕はレイチェルの作品からどことなく“インターネット”らしさを感じるんです。でも実際には、作品にLANケーブルが接続されているわけでもないし、ディスプレイを使っているわけでもない。どこから、それが面白く感じるんだけどコンセプトはどうやって見つけてきているの?それと、発表した作品はウェブサイトやTumblrを通じて誰かがブラウザ越しに見ることにもなると思うけど、それは意識する?

私の作品は、Googleで(イメージ)検索する感覚によく似ていると思ってます。
私はグーグル検索みたいに、インターネットがハイパーリンクとしてつながっていて、新しい文脈を連れて目の前にやってくる感じが大好きなんです。ググる(googling)っていうのは、新しい意識の流れだと思う。一つの出来事から次から次へとジャンプしていくから、絶えず情報やイメージ、思いや考えが止めどなく流れ続ける。そういうモノに対して疑問を積み重ねながら作ることでインターネットと作品を直接繋ごうとしているんだと思います。

rachel_12
The Imaginary Order – 2012
Googleの画面がガラスにプリントされ、アーティストの名前が検索ウィンドウに入力されている。ガラスを超えることが出来ない身体とGoogleを介したインターネットの非身体性の対比を表現した作品。

rachel_08
Portrait of a Woman – 2011


Q. 最近のレイチェルの作品はホワイトキューブとか展示台とか「作品の周辺」についてをテーマにしていることが多いと思うんだけどそれはなぜ?

私は現実の展示空間そのものにも興味があるの。今作っている作品は “Art Fair Hanging” というものなんだけど、アートフェアのブースを人間にやってもらうという、彫刻的で巨大なパフォーマンスになると思います。

この作品は三面の白い壁と一つの展示台からなる予定なんだけど、この大きなスタイロフォーム (発砲スチロールの一種)の壁は、本物の壁と同じ大きさで、中にはダンサーが入ります。
高さ約2メートル、幅は2〜3メートルでアートフェアに実際に置かれる予定で、この“人間が演じるブース”は全体でタイミングを合わせながらゆっくりと動きます。

擬人化された壁と展示台は、広がったり狭まったりフォーメーションを組んで、すごーくゆっくり歩いたり、回ったり、移動します。ブースを訪れた人たちは、多分すぐには気が付かないんだけど、やがてブース全体が動いていることに気がつく。

‘Art Fair Hanging’ は人間によって演じられたホワイトキューブによって、このアートフェアという形式そのものを扱おうとしています。ホワイトキューブって現代アートを取り囲む外皮っていう感じがあって、だんだん古くなってきてる感じがするの。今はどちらかといえば、オンライン上を巡回・拡散していく作品のドキュメントを撮影するための「写真スタジオ」みたいな意味合いも出てきているんじゃないかって。

実際にアートフェアのブースを作ることで、ホワイトキューブで展示することやアートフェアという制度を重要視する感覚を分解して脱構築したいと思ってるんです。つまりこの作品では、アートフェアや展示スペース、それにアートという経済とそれが産んでいる幻影みたいなものを扱おうとしています。

それから、自分の体のパーツというのもたくさん作品に使います。あくまでもただのモノとして探求するために使うんです。それで、アーティストの社会における役割はなんだろうという疑問を、作品に落としこんでいきます。

rachel_13
Corner In Space – 2012
こちらは2012年の作品。空間を作る「コーナー」が自立移動する作品。ホワイトキューブなどの空間自体とその外部の関連性に着目している。


rachel_09

rachel_10
Various Qualities
一見すると彫刻作品とそれが置かれた展示台のように見えるがじつは写真が貼られたカキワリである。現代美術におけるギャラリーやホワイトキューブといった空間の持つそもそもの意味をテーマとして作品を作っている彼女らしいインターネット感の溢れる作品だ。


Q. 僕たちはニューヨークで会ったけど、レイチェルにとってニューヨークはどう?

ニューヨークに滞在しているのはLMCCというところのレジデンスプログラムで、マンハッタンのすぐ近くにあるガバナーズ島のスタジオに今年(2013年)の8月から来年1月まで滞在予定なんだけど、ニューヨークは最高ですね!私はここに居られるのは本当にいい。単純にエネルギーがある街っていうのはすごいことよね!

Q.最後に、このインタビューは日本のウェブマガジンCBC-NETに掲載されます。何かメッセージをもらえますか?

1. 昨日の夜とっても大きいお寿司の夢を見ました。それは私の顔くらいの大きさの、お米が外側に巻いてあるタイプ巻き寿司でね。中にはサーモンがはいってて、そのサーモンも普通の鮭の切り身くらい大きかったんです。

2. 日本にはすっごく行ってみたいです!まだ行ったことのない場所の中でも、日本にいつか行くことをすっごく楽しみにしている場所なんです!

ありがとうございました、日本で会えるの楽しみにしてます!

レイチェルの作品はウェブサイトにまとまっているので、気になる方はぜひご覧いただきたい。

Infromation


rachel_15Rachel de Joode
http://www.racheldejoode.com/


【個展】
Dust Skin Matter, Diablo Rosso, Panama City (2013);
The Hole and the Lump, Interstate Projects, New York, NY (2013);
Real Things – Explorations in Three Dimensions, Oliver Francis Gallery, Dallas, TX (2012);
Light Trapped in Matter, Kunstihoone, Tallinn, Estonia (2011).

【グループ展】
Notes on Form, 032C Workshop, Berlin
SPRING/ BREAK ART SHOW 2013, Old School, New York, NY (2013)
Open for Business, STADIUM gallery, New York, NY
Wobbly Misconduct, LV3 Gallery, Chicago, IL (2012)
Bad Girls of 2012, Interstate Projects, New York, NY (2012)
Life Is Very Long, Bergen Kunsthall, Bergen, Norway (2012)
Rat Piss Virus Give It To Me at Yautepec Gallery, Mexico City, Mexico (2011).

【レジデンス】
Deutsche Börse Residency Program at the Frankfurter Kunstverein in Frankfurt (2013)
the Sculpture Space funded residency (2012)
the LMCC swingspace program at Governors Island(2013)

初開催のYouTube Music Awards – ミュージックビデオのようにライブを披露する試み、Spike Jonzeが監督するArcade Fireのライブなど

131105_ytma

YouTubeによる初のMusic Awardsが3日にニューヨークで開催された。一般のユーザーが気軽に自作の映像などをアップし、いまやインターネットで有名なプロYouTuberなどが生まれるなど、多くのユーザーを巻き込んで発展してきたYouTube。
そうしたYouTubeを通して有名になったアーティストから世界中で既に名が売れているビッグネームのアーティストが混在するミュージック・アワードとして開催された。
3日に行われた受賞式に先駆け、ソウル、モスクワ、ロンドン、リオデジャネイロでもイベントを開催され、YouTubeを通じ世界中に向けてライブ配信された。

再生回数、共有回数、コメント数などに応じてノミネーションが設けられ、ウェブを通じての投票で決められるアワードもあったのだが、注目を集めたのが、本イベントのクリエイティブ・ディレクターを努めた Spike Jonzeの企画による、ライブを「ミュージックビデオ」風に撮影するスタイルのパフォーマンスたち。

Arcade Fire – “Afterlife” – (YouTube Music Awards)
Dir:Spike Jonze, ft. Greta Gerwig



会場の巨大なウェアハウス内には各パフォーマンスのためのセットが別に設けられ、それぞれの監督によって「ミュージックビデオ」を撮影するかのようにライブが行われた。YouTubeは「つくること」の楽しさを伝えてるサービスであるから授賞式も創造の場所にしたかったと、その意図をインタビューで語っている。また授賞式自体も脚本無しで進むなど、ユニークなアイディアが満載であったようだ。
このパフォーマンス企画への参加アーティストにはアーケイド・ファイア、エミネム、レディー・ガガ、リンジー・スターリング、M.I.A.、アール・スウェットシャツ、タイラー・ザ・クリエイターなど豪華メンバー。

映像機材の高性能化と軽量・小型化にもあり実現可能な企画だろう。ビデオの序盤はセット内で撮影され進行していき、後半に大多数の観客がいる会場内でやっていることがわかるようなシークエンスになっているビデオや物語的に撮られている作品も。
また一見、公式のミュージックビデオとして撮られたようにも見えるシーンが多数あるため、後日ビデオを見ているユーザーには本来の企画意図が伝わっていないことも。

ただ、結果的に授賞式の内容が既に有名なポップ・アーティストを多数フィーチャリングしていることに対して、参加したアーティストから批判的なコメントも出ている。また、アップされた動画がライブ動画にも関わらずワードセンサーシップ(放送規定に適さない言葉をカットすること)が多いことも不評のよう。

現代のインターネットを通したパフォーマンスとして興味深い試みとなっている。撮影されたビデオは以下で見ることができる。


Eminem – “Rap God” (YouTube Music Awards)
Dir: Syndrome



Earl Sweatshirt & Tyler, the Creator – “Sasquatch” (YouTube Music Awards) 
Dir: Wolf Haley



M.I.A. – “Come Walk With Me” (YouTube Music Awards)
Created by Fafi. Live show director John Gonzalez.




Pitchfork : Watch Arcade Fire, M.I.A., Eminem, Tyler and Earl Perform at YouTube Music Awards
・パフォーマンス一覧
・受賞作品一覧
・スパイク・ジョーンズ監督、YouTube Music Awardsへの抱負を語る


http://www.youtube.com/user/YouTubeJapan

対象年齢は8歳から108歳、自分で作れるエジュケーションのためのデジタルカメラ「Big Shot」日本でも発売

131101_bigshot4
話題の組立式デジタルカメラ「Big Shot Camera」日本上陸。

20個のパーツを組み合わせるだけで安全かつ簡単に組み立てられ、お子さまの知育目的や学習グッズとしても、またトイカメラファンの若者から往年のカメラマニアの方まで、幅広い年齢層をターゲットにしている組立式デジタルカメラ。

Bigshotはデジタルカメラを自分で組み立てるという面白さを提供するだけでなく、カメラそのものが普通のカメラにはないユニークな機能を持っているところも魅力。くるくるとフロントのダイヤルを回すだけで ノーマル、ワイド、3D撮影がワンタッチで切り替え可能。LEDフラッシュ内臓。 手動で自家発電可能。普通のデジタルカメラにはないユニークな機能あるのがこのBig Shot。

【主な特徴】
・ダイヤルを回すだけで、ノーマル、ワイド、3D撮影がワンタッチで切り替え可能。
・暗所での撮影に威力を発揮するLEDフラッシュを内蔵。
・ハンドルを回して自家発電できる充電機能搭載
・ ボディの半分がスケルトンになっており内部のメカが確認可能。

131101_bigshot

131101_lastcameraまた今回はスペシャル特典として、組み立て式アナログカメラ「LAST CAMERA」が付属するお得なセットもリリース予定。デジタルのよさ、アナログのよさを一度に楽しむことができる。



価格は単体で8,400円(税込)、セット(LAST CAMERA付き) 9,450円(税込)となっている。なお、11月中旬入荷予定分から順次発送となっており、現在オンラインにて予約受け付け中。
オンラインおよび実店舗でも販売される予定。詳細は以下。

ぜひこの機会に作る楽しさ、撮る楽しさ、カスタマイズする楽しさを体験してほしい。

http://www.superheadz.com/bigshot/

131101_bigshot2





Information

Big Shot
特設サイト:
http://www.superheadz.com/bigshot/


【発売日】 11月中旬
【商品名】 Big Shot Camera
【販売価格】単体:8,400円(税込)
セット(LAST CAMERA付き): 9,450円(税込)

スペック:
■カラー:赤
■有効画素数:300万画素
■静止画記録画素数:2048 × 1536
■ストレージ:内蔵フラッシュ、〜120 JPEGの写真
■カメラモード:オート、フラッシュ、ノーフラッシュ、タイマー
■レンズの設定:ノーマル、パノラマ、ステレオ(3D)
■視野:ノーマル40°、パノラマ80°、ステレオ16°
■フラッシュ:LED
■ディスプレイ:1.4インチLCD
■バッテリー:リチウムポリマー電池
■充電方式:USB、手動充電
■インターフェース:USB 2.0
■サイズ:w129×h72×d40mm

販売店:
実店舗
NECONO とcamera cabaret grand shop(直営店)
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-15-12 秀島ビル2F
tel 03-5428-5162 fax 03-5428-5163 営業時間:12時〜20時
http://www.powershovel.co.jp/cabaret/

オンライン
HeadzShop
http://www.superheadz.com
Amazon
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00FML29R4

TAKCOM、大橋史、TYMOTEらが3DプロジェクションマッピングでGALAXYの世界を表現 『WHITE IMAGINATION展 Inspired by GALAXY』

SONY DSC

大橋史

「TOKYO DESIGNERS WEEK」にて、サムスン電子ジャパンの「GALAXY J」と「GALAXY Note 3」の世界を3Dプロジェクションマッピングで表現した「WHITE IMAGINATION 展 inspired by GALAXY」が開催されている。

参加作家はTAKCOM、名和晃平、奥下和彦、大橋史、TYMOTEなど、CBCNET 読者にお馴染みの面々ばかり。この展示では、総勢10組のアーティストによる “さわれる3Dプロジェクションマッピング” が楽しめるという。さっそく青山の会場へ足を運んでみた。

SONY DSC
参加クリエイター:左から加藤隆、奥下和彦、水尻自子、ルシュカ、大橋史、大八木翼(SIX)、TAKCOM、矢後直規(博報堂)

会場を訪れると「GALAXY」をかたどったホワイトモックが手渡された。今回の展示は、このホワイトモックを手のオブジェにセットすると、ホワイトモックを土台にした3Dプロジェクションマッピングが楽しめるという仕掛けになっている。
最初に見たTAKCOMの作品は、白い背景から次々とオブジェクトが浮かび上がってくるという、実に臨場感のある映像。画面から本当に映像が飛び出してくるように見え、最初から度肝を抜かれた。会場に居たTAKCOM に、今回の作品について聞いてみた。

TAKCOM 「画面を現実と非現実世界の境目に見立てました。冒頭は、非現実の世界から何かが浮かび上がってくる、というイメージですね。全体的に光と影を意識して表現しています」

SONY DSC

SONY DSC
TAKCOM

赤い線によるシンプルな表現が印象的だったのはアートディレクター・映像作家、奥下和彦の作品。GALAXY に閉じ込められてしまった男が脱出を試みているという映像だ。今回、なぜあえてシンプルな表現にこだわったのだろうか?

奥下「プロジェクションマッピングらしい表現から外れて、アナログでコミカルな、チャップリンのサイレント映画のような雰囲気の作品にしたかったんです。アニメーションは自分を撮影し、そこから線を起こして作りました」

SONY DSC
奥下和彦

彫刻家の名和晃平は、無重力空間に浮かぶ液体のようなオブジェクトを表現。「PixCell = Pixel(画素) + Cell(細胞・器)」という概念を機軸に、多様な表現を展開する名和ならではの映像表現だ。

SONY DSC
名和晃平

映像作家の水尻自子は、GALAXY のホームボタンを寿司のシャリに見立てていた。待受画面にひらひらと寿司ネタが舞い降り、シャリ(ホームボタン)に着地。そしてラストは、宇宙空間に寿司の形の星座「寿司座」が浮かぶという、何ともユニークな映像だ。一体なぜ寿司から宇宙に飛躍したのだろうか?

水尻「ホームボタンがシャリの形に似ていたので、これは寿司でいくしかない、と思いました。最後は、米粒がはじけとんで宇宙の星になるんです。作りながら『あ、GALAXY (星雲、銀河)とつながった』と思いました。あまり皆さんに気づいてもらえないんですけどね(笑)」

SONY DSC
水尻自子

見どころはプロジェクションマッピングだけではない。ホワイトモックには ICチップが内蔵されており、会場内にある「THANK YOU BOOTH」にセットすると、タッチパネル上に過去に見た映像が現れる。
さらに好きな画像を選択してQRコード又はURLを取得し、壁紙画像をダウンロードできるようになっているのだ。お土産として、ホワイトモックに貼れる各作家のシールが持ち帰れるというのも嬉しい。

今回の制作には、都市模型への3Dプロジェクションマッピング「TOKYO CITY SYMPHONY」を手がけた P.I.C.S.(3Dプロジェクションマッピング担当)、aircord(プロジェクション/システム構築担当)らが参加している。彼らの最新の仕事にも注目したい。

SONY DSC
THANK YOU BOOTH(手前)

クリエイティブディレクター 大八木翼に聞く
手のひらで起こるプロジェクションマッピングとは?


今回の展示のアイデアは、どのような経緯から生まれてきたのだろうか?
クリエイティブディレクターの大八木翼(SIX)に聞いてみた。

大八木:今回は、スマートフォンという四角い箱が秘めている色々な可能性を、お客さんにまったく新しい形で体験してもらいたかったんです。僕個人としては、今年行った「TOKYO CITY SYMPHONY」という3Dプロジェクションマッピングのプロジェクトでの体験をふまえて、次にやるならもう少し身体に語りかける体験をつくりたい、という思いがありました。それで今回の展示ではお客さん一人一人にプロジェクションマッピングを見てもらい、その記憶を持ち帰って頂く、というところまでをトータルにディレクションしました。

– 参加作家はどのようにセレクトされたのですか?

大八木:シンプルにいうと、僕がどんなものを作ってくれるか楽しみな人たちです。作家には、「広告ではなく作家として表現してくれ」とオーダーしました。
通常は広告的な表現に落とし込むんですけど、今回は僕達が作った流れに作家のクリエイティビティをのせていくことで、もっと伸びる可能性を探ってみたかったんです。結果として、作家にコミッションワークを頼んでいるみたいで面白かったですよ。
正直、インタラクティブって広告的な表現をしてもあまり好かれないんです。シェアされないので。だから僕は、お客さんにGALAXY のことが印象に残る体験をしてもらう、というところまでいければ成功だと思っています。

– 今回の作品の中で、大八木さん自身も驚かされた作品はありましたか?

大八木:水尻さんの作品は「やられたな」と思いました(笑)。TAKCOM の作品も上手かったですね。スマートフォンってハリウッド映画でも何でも見れちゃうし、解像度が高いから単なる映像を流してもつまらないんですよ。今回はそのベースを壊すために、待受画面から映像をはじめてもらうというお題を設けました。ベースを壊すところから展開して、初めて面白くなるので。ありふれた広告やプロジェクションマッピングではつまらないと思うので、これからも新しいことに挑戦していきたいですね。




今回ご紹介した作品のほかにも、モノトーンの世界が美しいTYMOTEの映像や、ルシュカの音楽とシンクロした大橋史の映像など、魅力的な作品が多数揃っていた。ここでしか体験できない展示となっているので、この機会にぜひ会場で体験してみて欲しい。

SONY DSC

また、今年の「TOKYO DESIGNERS WEEK」は従来のデザイン展示会からクリエイティブ・フェスへと進化し、コンテンツの数も過去最多となっている。
全天周型の映像が楽しめる TDW-DOME や MIT Media Lab、THE CONTAINER (コンテナ展)などと、見どころが一杯だ。
会期は11月4日(月・祝)まで。新しいクリエイティビティを探しに、出かけてみてはいかがだろうか。

Article by Yuu Miyakoshi, Akiko Saito

Information

ABLE&PARTNERS TOKYO DESIGNERS WEEK 2013
http://www.tdwa.com/
日時 : 2013年10 月 26 日(土)~ 11 月 4 日(月・祝) (10 日間) 11:00−21:00
場所 : 〒160-0013 東京都新宿区霞ヶ丘町 2-3 明治神宮外苑絵画館前
動員数 : 12 万人(予定)(2012 年実績 101,790 人)
料金 :当日チケット 大人2500円 ナイト割1500円 大学・専門生1500円 高校生1000円 中学生500円
※他に親割・団体割などがあります。詳細は HP をご覧ください。




~GALAXYがあなたの想像力を刺激する~
手元で触れる3Dプロジェクションマッピング展
「WHITE IMAGINATION展 inspired by GALAXY」

http://www.samsung.com/jp/news/productnews/2013/-white-imagination-inspired-by-galaxy

場所:
TOKYO DESIGNERS WEEK 2013 (DESIGN NEXT TENT 展内)

参加作家:
TAKCOM
橋本大祐
加藤隆
水尻自子
大橋史
YKBX
出村拓也
TYMOTE
奥下和彦
名和晃平

ロンドン初のPC持ち込み大規模オフ会「Campus Party」レポート

Exif_JPEG_PICTURE

インターネットユーザーがPC持参で会場に集まり、ひたすらネットサーフィン漬けになるイベント「Campus Party」。会場の近隣には宿泊するためのテントが設営され、1日24時間、7日間にわたって休むことなく続く。同イベントの歴史は長く、スペインで1997年に初開催され、主にゲーマーを中心に旗揚げされた。その後、スペイン語圏から広がりをみせ、アメリカ、コロンビア、メキシコ、エクアドル、ドイツなど各国で毎年行われている。過去のイベント内での講演は、アメリカの政治家Al Gore、科学者Stephen William Hawking、ワールド・ワイド・ウェブの生みの親Tim Berners-Leeなど錚々たるメンツが名を連ねる。ブラジルでは“技術の国際見本市”と称され、2013年には一週間で8千人に及ぶ参加者が集まったそうだ。
今回レポートするイギリスでは初の開催となり、2013年9月2日から7日まで行なわれた。

Exif_JPEG_PICTURE

会場はロンドンの市内中心部から少々離れた多目的商業施設O2。入場料は18ポンド(オンラインで購入すれば15ポンド)で、一日だけ参加した自分にとっては少々高めな価格設定だが、一週間通い続けるヘビーな参加者にとっては安い価格だろう。会場近くにはテントを設営できる場所もあり、寝食の心配をせずネットに延々と没頭できる。

Exif_JPEG_PICTURE

Exif_JPEG_PICTURE

会場には座席が約数百席並び、電源とLANケーブルが用意されている。参加者は好きな席に座ってインターネットをひたすら楽しめる。もちろんネットサーフィンだけでなく、ワークショップやカンファレンス、ハッカソン、企業ブースの出展が行われ、インターネット世代によるフェスティバル感覚が味わえる。

Exif_JPEG_PICTURE

Exif_JPEG_PICTURE

参加者は見たところ、プログラマーやゲーマー、ディベロッパー、デジタル関連職に就こうとする若者が多いようだ。デコレイティヴな自作PC筐体を持ち込んで、見せびらかす連中も多数いた。参加者のディスプレイを覗いてみると、FacebookやTwitterなどのSNSをしている人が約3割。映画を観ている人、ゲーム、プログラミングなど、目的は人によってバラバラだった。

Exif_JPEG_PICTURE

カンファレンスは毎日行なわれ、研鑽された技術が披露される。講演ではMozilla CorporationのCEOであるMitchell Bakerや、Linux Internationalの代表Jon Hall、Atariの創業者Nolan Bushnellなどが登壇。意外なところではワークショップコーナーにて、サンプラーを叩きまくるヒップホップ・アーティストのArrab Musicのライヴも行なわれた。

Exif_JPEG_PICTURE

テクノロジー関連企業の企業ブース。20ほど出展されていたが、日本で馴染みのある企業は少ない。

Exif_JPEG_PICTURE

ネットサーフィンには休息も重要。人目をはばからずに思いっきりゴロゴロ出来る場所もある。

Exif_JPEG_PICTURE

元を辿ればCampus Partyは、LANパーティ(LAN party)という形式のオフ会の発展形だそうだ。LANパーティとは、参加者がコンピュータを持ち寄り、主にマルチプレイヤーコンピュータゲームを行うために、お互いをLocal Area Network(LAN)で接続する集まりのこと。これらは2人からなる非常に小規模なものから6000人以上の大規模なものまで大小様々ある。一般的にBYOC(Bring Your Own Computer/自分のPCを持ってこよう)がルールとなっている。

他の国でのCampus Partyのレポートを読むと、ロンドンでの盛り上がりはまだこれからといった感じではあった。ちなみに現在までに日本でCampus Partyは行なわれていない。海外の街中にあるネットカフェは、日本のように個室で区切られておらず、客同士のコミュニケーションが取りやすいオープンな環境でネットを楽しめる。そういった生活習慣もあってか、持ち寄った技術を共有しあうことが日常茶飯事なのだろう。日本での開催はハードルが高いかもしれないが、文化の発展のためにも巨大な情報共有空間が生まれることが望まれる。


Article by Kentaro Takaoka

http://www.campus-party.org/
http://www.campus-party.eu/


SOURの新曲MV『Life is Music』が公開、「アート・ディスク」も販売中




日本のバンド『SOUR』の新MVへの制作プロジェクトがPARTY川村真司氏、TYMOTE井口皓太氏らにより、複数のクラウドファンディングサービスを利用し実施されていたが、無事に達成し、MVが公開され、撮影に実際に使われた189枚のCDがそれぞれ一枚限定でナンバリングし「アート・ディスク」として特設サイトにて販売中だ。

本楽曲は人生のサイクルと音楽がいつでもそのサイクルのリズムを作っていることを歌っており、このコンセプトから着想を得て、今回はCDのディスクを「フェナキストスコープ*」として使い、CGは使わず、CDの表面に描かれた絵が回転することで生まれるアニメーションだけでミュージックビデオを作られている。また、ファンの方々にミュージックビデオの一部を実際に手にしていただけるよう、このミュージックビデオで使用しているCDを、それぞれ一枚限定でナンバリングし「アート・ディスク」としてこちらのサイトで販売している。 制作にあたって、GreenFundingとKickstarterというクラウドファンディングサイトを活用し、ファン支援のもと今回のミュージックビデオは完成した。

「アート・ディスク」は11/27より順次発送予定、既にSOLDOUTのディスクも出ているよう、特設サイトにてチェックしてみよう。
またメイキングの様子のムービーも公開されている。こちらでは実際にどうやって撮影されたかなどを見ることができる。




content_LIFEISMUSIC


sour_image


INFORMATION


SOUR “Life is Music” 特設ウェブサイト
http://lifeismusic.jp/

SOUR Official Website
http://sour-web.com/

<CD情報>
アーティスト:SOUR
CDタイトル:LIFE AS MUSIC
発売日:2013年12月11日
品番:PECF-3064
価格:¥2,415(税込)/¥2,300(税抜)

CREDIT:
Film Director:川村真司 / Masashi Kawamura
井口皓太 / Kota Iguchi
Tech Director / Programmer: 清水幹太 / Qanta Shimizu
Producer: 相原幸絵 / Sachie Aihara
Production Manager: 島田磨以子 / Maiko Shimada
小笹輪太郎 / Rintaro Kozasa
DOP: 安藤広樹 / Hiroki Ando
Filming Assistant: 沼尾優貴 / Yuki Numao
米沢佳州子 / Kazuko Yonezawa
Gaffer: 重黒木誠 / Makoto Jyukuroki
Assistant Gaffer: 太田宏幸 / Ota Hiroyuki
橋本次郎 / Jiro Hashimoto
Offline Editor: 雨宮信二 / Shinji Amemiya(IMAGICA Corp.)
Online Editor: 前川友里恵 / Yurie Maekawa(IMAGICA Corp.)
Mixer: 鈴木博之 / Suzuki Hiroyuki(IMAGICA Corp.)
Mechanical Engineers: 木村匡孝 / Masataka Kimura(TASKO inc.)
林立夫 / Tatsuo Hayashi(TASKO inc.)
Programer: 渡島健太 / Kenta Watashima

Supporters (in abc order)
A. “Soshi” Tan
BIRDMAN
Godd Kot
萩原幸也
hiroshi koike
井上涼
犬竹浩晴
株式会社IRKA
Jacqueline Lai
角田哲郎
Kotomi Mihara
並木裕之
大里和史
小野崎毅
orie watanabe
佐渡島庸平
Saqoosha
She
Tom Galle
Tsui Ho
Toshiyuki Tanaka
上野崇
Yichen Yang

資生堂 宣伝制作部の活動を紹介するウェブサイト「こちら、銀座 資生堂 センデン部」新コンテンツ「LIFE COLOR CLOCK」を公開

131022_shiseido

資生堂が展開する自社コンテンツ「こちら、銀座 資生堂 センデン部」は「マジョリカ マジョルカ」や「TSUBAKI」など商品にまつわるデザインの制作秘話や宣伝制作部の活動紹介から写真家の荒木経惟や建築家の藤森照信と資生堂クリエイターとの対談記事なども公開しているウェブマガジン。


131022_shiseido2

今回そのウェブマガジンの特別付録として、中村勇吾氏(ウェブデザイナー、インターフェースデザイナー、映像ディレクター)とコラボレーションした新コンテンツ「LIFE COLOR CLOCK」が公開された。自分のFacebook(アルバム単位で表示する写真を選ぶことが可能) やInstagramに投稿された写真を1分間に1枚表示。その写真から1秒毎に抽出した色によって、色時計をつくるデジタルコンテンツとなっている。
スクリーンセーバーとしてインストールすることもできるので、デスクトップ上で日々の色の変化も楽しむことができるコンテンツとなっている。
気持ち良く描画される色時計をぜひ体験してみてほしい。


131022_lifeclock

以下紹介映像:



Information


URL: http://group.shiseido.co.jp/advertising/
広告、パッケージ、空間デザイン、ウェブサイトなど、資生堂の
様々な「美」が、世の中に生まれるまでのストーリーをご紹介します。


制作:株式会社 資生堂 宣伝制作部
Collaboration with 中村 勇吾(tha ltd.)
https://group.shiseido.co.jp/advertising/special/201310

ベルリンに世界中のギャラリーが集結 – art berlin contemporary (abc) レポート

abc_berlin_01

ベルリンに芸術の秋がやってきた。9月の下旬にさしかかる頃から、様々な展覧会やイベントが開催されている。中心にあるのは「art berlin contemporary(通称abc)」と呼ばれる巨大な展覧会。世界各国のギャラリーが集まり、アーティストの紹介や作品の販売を行っている。このような「abc」は、普通の展覧会ではない。多くのギャラリーが一つの会場に集まって作品を販売するため、アートフェアと言うことができるだろう。だが同時にそれと相反する性格も併せ持っている。そのため定め難い姿。 そんな「abc」を紹介していこうと思う。

abc_berlin_02

abc 2013 Opening Crowd
Artwork: Michael Sailstorfer, Johann König
Credit Stefan Korte

「abc」について語る上で避けられないのは設立された経緯だ。まずはその歴史から始めることにしよう。かつてベルリンにあったのは「art forum berlin」と呼ばれるアートフェア。海外のコレクターを惹き付ける魅力的なアートフェアだった。「abc」立ち上げの理由はそれへの反応と言えるだろう。というのもアートフェアでは芸術の商品化を引き起こし、芸術を貶めてしまう。そこでギャラリーが集まり、アーティストの紹介を目的とする展覧会「abc」を始めたのだ。こうしてベルリンにはギャラリーの集まりが開催する2つの企画が存在することになった。一つは商業美術を取り扱う「art forum berlin」、もう一つは芸術を取り扱う「abc」。二つの企画は商業的、芸術的な盛り上がりをベルリンにもたらした。だが、ほどなくこのバランスは崩れてしまう。2010年を最後に「art forum berlin」は休止してしまったのだ。

abc_berlin_03
abc 2013 Opening
Credit Stefan Korte

ベルリンのアートシーンを盛り上げた「art forum berlin」の休止によって「abc」は二面性を持つことになってしまう。本来持っていた芸術との繋がりだけでなく、「art forum berlin」が持っていた商業美術との繋がりを求められたのだ。その後「abc」が見せたのは分裂した方向性だった。参加するギャラリーは、芸術性を保つために一人のアーティスト(一つのスペースにつき)しか紹介することができない。だが同時に作品の販売を狙い、売りやすい作品を見せようとしてしまう。結果的に生じたのは作品数が少ないアートフェア。そして商品的な作品が見られる芸術性の低い展覧会。つまり、どちらつかずのものとなってしまったのだ。こうした経緯で開催された「abc」だが、本年はどうだったのだろうか。その様子を紹介していくことにしよう。

abc_berlin_04
abc 2013 Opening | Credit Stefan Korte

今年で6回目となる「abc」は、9月19日から22日までの4日間開催された。会場となるのはベルリン中心部にある昔の郵便物用駅舎。ベルリン、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ウィーンなど世界の各都市から133軒の国際的なギャラリーが展示に参加している。会場に並ぶのは各ギャラリーのスペース。その基本的なスタイルは昨年と変ることはない。今まで通り参加ギャラリーは会場で作品を売ることが出来るようになっている。アーティストの紹介を目的とすることや、1スペースにつき1人のアーティストを見せることも変らぬままだ。そのためアートフェアでみられるような、小さく区切られたブースも無ければ、そこに満たされた小さな作品もここで見ることは無い。広大な会場には絵画、彫刻、インスタレーション、映像作品といった様々な作品が並んでいた。

abc_berlin_05
Installation View abc 2013
left: Erik Schmidt, carlier | gebauer
right: Pae White, neugerriemschneider
background: Adriano Costa, Mendes Wood DM
credit: Stefan Korte

abc_berlin_06
abc 2013 Opening
Credit Stefan Korte

紹介されているアーティストは、若手から著名なものまでと広がりを見せている。活躍が期待されるアーティストを紹介したのは、ベルリンのギャラリー「Wien Lukatsch」。そこでは1979年生まれのNina Canellを紹介していた。会場の壁に貼付けられた1枚の紙。その紙は緩やかに動いている。不思議に思って視線を下に向ければ、空調機械が見える。これは僅かな風の存在を気付かせるもので、目に見えないものを感じさせる作品だ。その一方でベルリンのギャラリー「KOW 」とロンドンの「Lisson Gallery」は共同で世界的に知られたアーティストを紹介している。それは政治的な作品で名高いSantiago Sierra。会場の壁には大きく引き延ばされた航空写真が架けられている。写真に写されているのは大地に書かれた巨大な「SOS」の文字。シンプルで多くを語らぬ作品だが、その背景を知りたくなるだろう。そこにあるのはアフリカで起きている領有権問題と巻き込まれた難民の存在。政治問題を取り扱うアーティストの姿勢は、作品が販売される場所であっても変ることはなかった。

abc_berlin_07
Artist: Nina Canell
Works:
Interiors (Condensed), 2013
Carpet, glass, coagulated air

Distance Reduced, 2013
Radiator, paper, tape Photo: Marcus Schneider
Courtesy of Galerie Wien Lukatsch

abc_berlin_08
World’s Largest Graffiti. Smara Refugee Camp, Algeria. October 2012
Installation view abc fair, 2013
C-Print, Diasec, 240 x 450.8 cm and HD video, b&w, 1h 13min
Photo: Alexander Koch
Courtesy of Santiago Sierra and KOW, Berlin

会場で目にするのは巨大な作品や特別仕様の作品ばかり。ベルリンのギャラリー「Esther Schipper」が見せるTomás Saracenoの作品はその最たる例だ。未来都市のモデルを提示するアーティストが見せるのは5メートルを越える巨大な構造物。新しい都市の姿を身体的に感じることが出来る作品だが、よほど大きなスペースがない限り所有することは不可能だろう。同様にベルリンのギャラリー「Tanja Wagner」が見せたPaula Doepfnerの作品も所有することは簡単ではない。作品は氷が溶けて中に閉ざされたものが現れ、溶け出た水が金属の容器を錆させていくもの。変化そのものが意味を持つ繊細な作品だ。ただし絵画や彫刻とは違い所有の仕方を制限させることになる。Tomás SaracenoやPaula Doepfnerの作品は、美術館やギャラリーで展示される作品と同じもの。つまり、「abc」のために売り易い作品を展示しているわけではない。ここではアーティストの表現は守られているのだ。こうしたギャラリーの姿勢は多く見られ、所有が不可能な作品や、販売されることのない作品さえも「abc」に展示されていた。

abc_berlin_09
Tomás Saraceno
Solar Bell L, 2013
Carbon fiber tubes, laminated solar foil, aluminium
5 x 6,12 x 6,12 m
(TS 065)
Esther Schipper

abc_berlin_10
Installation View abc 2013
Paula Doepfner
But it breaks my heart to give it away
2013
Ice, pen on paper, metal
170 x 105 x 25 cm
Courtesy Galerie Tanja Wagner, Berln


リオデジャネイロのギャラリー「A Gentil Carioca」が展示スペースで見せていたのは人間の腕だった。これはLaura Limaの作品で、壁の隙間から出た腕だけを見せるパフォーマンスだ。壁の裏側から伸びる手は置かれた鍵束を必死に拾おうとする。延々と繰り返される目的を果たさない動きは、ユーモアを感じさせるだけでなく、アイロニカルな印象も与える。もちろん作品の所有は簡単でないため、ギャラリーが作品の販売を目的としていないことは明らかだ。こうした作品の販売についての考えはベルリンのギャラリー「Capitain Petzel」の展示で極地に至っている。そして今年の「abc」の方向性を確認出来る展示となっていた。展示されたAndrea Bowersの作品は、段ボールを組み合わせた巨大なコラージュ。描かれた現代社会を風刺するイメージは目を引く。作品は比較的扱いやすいものだが、それに反して購入することは出来ない。ギャラリーはアーティストとの話し合いで作品を一般に販売しないことを決めた。「abc」の会場はギャラリーでの展示を宣伝する場として使うことにしたという。つまり、ここはギャラリーにとって商業美術を追い求める場所ではないのだ。

abc_berlin_11
Laura Lima

abc_berlin_12
Andrea Bowers: “The Capitalist Vampire (Illustration by Walter Crane)”, (2013),
Archival marker on found cardboard, 165 x 119 inches, 
© the artist, Photo: Nick Ash, Courtesy Capitain Petzel, Berlin. 

「abc」の展示を見終わって感じるのは作品を購入したいという欲望ではない。むしろ良い作品を見たという満足感だった。その理由は明らかに展示の方針が定まってきたことにあるだろう。参加するギャラリーのほとんどは販売よりもアーティストの紹介を優先している。かつて見られた商業美術と芸術に引き裂かれた性格はもはや存在しない。ここにあるのは芸術性を追求した展示なのだ。もちろん、ベルリンに商業美術を集めて見せる場は必要とされている。ギャラリーは利益を生み出し、アーティストにお金をもたらさなくてはいけない。それに対して「abc」は展示会場で直接お金を動かすことではなく、むしろ将来的に作品が販売できるよう宣伝や投資の場を提供している。「abc」で満足感を感じたのは私だけではないだろう。多くの人が現代美術に魅了されたはずだ。そして多くの現代美術ファンを生み出したに違いない。そうした人々がいつかコレクターとなって、ギャラリーやアーティストにお金をもたらすことを期待したいと思う。

abc_berlin_13
Installation View abc 2013
Olaf Metzel
Wentrup Gallery
Credit: Stefan Korte

Article by Hayashi Kiyohide

Information


art berlin contemporary (abc)
会期:2013年9月19日~22日
会場:STATION-BERLIN
住所:Luckenwalder Strasse 4-6 10963 Berlin
入場料:10euro
http://www.artberlincontemporary.com

ネットワークが降臨する場『IDPW』のショートドキュメンタリー “Back streets of the Internet”




昨年11月に開催された「インターネットヤミ市」はインターネットが日常化した現代の「裏路地」のような自由とヤミが交差するイベントとなり、今年6月には第2回目が開催された。このイベントを主催していたのが『100年前から続­くインターネット上の秘密結社』、IDPW(通称アイパス)。

インターネットにまつわる実験的なイベントやパーティーを考案・実施し、また彼らによる「どうでもいいね!」ボタンは昨年のメディア芸術祭で新人賞を受賞してしまうなど各方面で話題となっていた。

このユニークな活動を海外に紹介すべく、インタビューを元に作られ­たドキュメンタリ­ーフィルム「Back street of the Internet」がW+K 東京LABよりリリースされた。

ソーシャル・インターネットが大規模化し、「いいね」や「RT」などの指標が入り乱れる中、インターネット本来の楽しさを見つめ直す彼ら。なかなか日本国外には伝わりにくいこうした活動を伝える良い機会となるだろう。



参考リンク:
今年6月に開催されたインターネットヤミ市第2回のレポート

「リアルインターネットおじさん」による「どうでもいいね!」ボタンの解説映像

backstreet
Back streets of the Internet
http://www.youtube.com/watch?v=mjWJsE7B1cs

IDPW
http://idpw.org/

W+K Tokyo
http://wktokyo.jp/blog/

SOUR新曲『Life is Music』ミュージックビデオへのクラウドファンディングプロジェクト – PARTY川村真司氏、TYMOTE井口皓太氏ら

content_LIFEISMUSIC



日本のバンド『SOUR』の新MVへの制作プロジェクトがPARTY川村真司氏、TYMOTE井口皓太氏らにより、ワンモア社が運営するクラウドファンディングサイト『GREEN FUNDING』(GREEN FUNDING Lab)にて実施中。

今回、『SOUR』の新作アルバム「LIFE AS MUSIC」収録曲『Life is Music』のMV(ミュージックビデオ)制作のために資金調達を行っている。

川村氏が手がけた『SOUR』のMV「日々の音色」や「映し鏡」は大きな話題作となり世界中のアワードに輝いたが、過去にもこうしたミュージックビデオの制作ではアメリカのクラウドファンディングサービスKickstarterでプロジェクトを立ち上げていた。

本楽曲は人生のサイクルと音楽がいつでもそのサイクルのリズムを作っていることを歌っており、このコンセプトから着想を得て、今回はCDのディスクを「フェナキストスコープ*」として使い、CDの表面に描かれた絵が回転することで生まれるアニメーションだけでミュージックビデオを作る予定だ。上記のプロジェクト紹介クリップをご覧いただければそのイメージを見ることができる。

今回のプロジェクトでは実際に約300枚のCDにそれぞれ違った絵を描いて撮影をし、アニメーションを作り上げていく。またビデオで使われたCDをそれぞれサイト等を通してアートディスクとして販売され、ミュージックビデオの一部を所有できるというプロジェクトだ。
そして集まった資金は
・CDを一定のスピードで回すための、専用CDプレーヤー制作費用
・約300種類の柄をCDにプリントする費用
・制作スタッフへのギャランティー
などに使用される。

現在も順調に支援者は増えており、2013年10月11日までの受付となっている。
興味ある方はぜひGREEN FUNDINGのページへ。どういった作品となるかも楽しみにしたい。


*フェナキストスコープとは?
回転のぞき絵(ゾートロープ)に先駆けて登場した初期のアニメーション機器。一般的なフェナキストスコープは、軸に垂直に取り付けられた回転する円板である。円板にはアニメーションのコマに相当する絵が順に描かれており、コマとコマの間にスリットがある。この円板を回転させ、絵を鏡に映し、動くスリットから透かして見る。残像現象を利用し、スリットを通すことでブレがなくなり、絵が動いているように見える。(出典:wikipedia)

Information


https://greenfunding.jp/lab/projects/609


GREEN FUNDINGプロジェクトページ:https://greenfunding.jp/lab/projects/609
インターネットを通じて多くの希望者から少しずつお金を募るクラウドファンディングの仕組みを活用します。

モール型クラウドファンディングサイト『GREEN FUNDING』の直営サイト『GREEN FUNDING Lab』にて起案され、 支援者へは支援した金額に応じて「ミュージックビデオの先行視聴権」「限定アートディスク「数量限定のサイン入りポスター」「SOURの特別ライブへの参加権などのお返しがなされます。

<CD情報>
アーティスト:SOUR
CDタイトル:LIFE AS MUSIC
発売日:2013年12月11日
品番:PECF-3064
価格:¥2,415(税込)/¥2,300(税抜)

いままでの作品




Ars Electronica Festival 2013 「The Future Rock Show」レポート & 小川秀明氏インタビュー

20130917_ars-report3_00

Credit: Florian Voggeneder

アルスエレクトロニカフェスティバル 2013では、過去に例のない取り組みとして、23人の幅広いジャンルのアーティストやミュージシャン、キュレーターらが集まり、ディスカッションを行う「The Future Rock Show」が行われました。このレポートでは実験的に開始されたアルスエレクトロニカの新プロジェクトを紹介します。
また、アルスエレクトロニカのここ数年の変化について、フューチャーラボに所属するアーティスト小川秀明さんにインタビューをさせていただきました。現地で活動するアーティスト、またアルスエレクトロニカを支えるメンバーの目線で、貴重なお話を多く伺うことができたので合わせてご覧下さい。

Article by Haruma Kikuchi (Uniba Inc.)




20130917_ars-report3_01
The Future Rock Show ブレインストーミング中の会場風景。
Credit: Florian Voggeneder

「The Future Rock Show」


2013年9月8日、ブルックナーハウスのコンサートホール内に大きな円卓が用意され、23人のパネリストが集まりました。
アルスエレクトロニカのディレクター、ゲルフリート・シュトッカー氏、フューチャーラボのディレクター、ホルスト・ホートナー氏、シカゴのバンドOK Goのダミアン・クーラッシュ氏、ネットテレビIkono.org(アイコノ)のエリザベス・マルケビッチ氏とジャック・パム氏、日本人ではフューチャーラボの小川秀明氏、アーティストのスズキユウリ氏、真鍋大度氏、博報堂の鷲尾和彦氏らが参加して、「The Future Rock Show」と題した1日がかりのパネルが開始されました。

テーマは、シアター、コンサートホール、その他さまざまなライブ形式における、パフォーマーと観客の関係(「Show」)の再デザイン。
午前の部は10時30分から「Future Entertainment Inspiration」というタイトルで、パネリスト自身の取り組みについて次々と5分のショートプレゼンテーションが行われました。なかでも新しい「アート・テレビジョン」プログラムであるikono.orgについて特別に45分のプレゼンテーション・ディスカッション枠が設けられ、午後の部への導入となっていました。

20130917_ars-report3_02
Credit: Florian Voggeneder

昼休みを挟んで、14時からは「Future Entertainment」と題したブレインストーミングが開始。冒頭、ゲルフリート・シュトッカー氏みずから議論をリードし、「このパネルの目的は、ひとつの答えを得ることではありません」と強調しながら、それぞれの発言に丁寧にコメントをして会場を盛り上げます。

次々と、各パネリストの視点で問題提起がされていきました。どのようにしてパフォーマーとオーディエンスはつながることができるのか、自分が確かにそこにいる/いたと実感できるのはどうしてなのか、演じる人とそれを観る人のあいだの役割が変化していく(双方向になる)ことはできるのか、観ることや参加することへの欲望の根源はどこにあるのか、など。1時間30分の充実した意見交換が行われました。

途中、シュトッカー氏が観客にブレインストーミングに参加するように呼びかけを行う場面が印象的でした。「パフォーマーとオーディエンスの境界を乗り越えることが、簡単でないことはよくわかっているけどね」と、にこやかに観客の参加を誘う姿に、次回以降の「The Future Rock Show」の発展の方向性が示唆されていたように思います。

アーティストとオーディエンスの関係の変化が、たとえばikono.orgにおいては、技術的に新しい文脈(ネットとテレビが融合した新たなプラットフォーム)の上に、再構想すべき対象として問題になっているのでしょう。エリザベス・マルケビッチ氏の発言のなかに「grab attentions of people without entertaining(エンターテイメントでない方法で人々に注目してもらう)」という表現がありましたが、アルスエレクトロニカが新しく踏み出していこうとしている領域が、まさにそのような方向なのではないでしょうか。
そしてそれは、議論の内容として目指されているというよりも、「The Future Rock Show」に集まる人々自身が体現していくものとして、期待されているのかも知れません。

http://www.aec.at/totalrecall/en/2013/07/29/the-future-rock-show/




博報堂 鷲尾和彦氏とアルスエレクトロニカ


20130917_ars-report3_03
鷲尾和彦氏
Credit : tom mesic
博報堂のクリエイティブディレクター・プロデューサーの鷲尾和彦氏は、2007年から毎年フェスティバルを訪れています。当時のWeb2.0やセカンドライフの流行に疑問をもち、テクノロジーがどのように暮らしの中に入っていくべきなのかを知りたい、という動機で初めてリンツへ調査旅行をして以来、雑誌「広告」へのレポート寄稿や、ゲルフリート・シュトッカー氏へのインタビューなど、継続してアルスエレクトロニカとの橋渡しに取り組んで来られました。最近では日本企業のR&Dを目的として、フューチャーラボと共同のプロジェクトを実施するなど、広告の本業との融合を果たしています。

「The Future Rock Show」はそのような取り組みを続けてきた鷲尾氏と、アルスエレクトロニカが公式にコラボレーションすることによって始まった新プロジェクトです。アルスエレクトロニカの運営サイドから、今までのフェスティバルにはない新しい形式を試みたい、という打診があり、実現することになったとのこと。カタログやウェブサイトの「The Future Rock Show」の紹介ページには、スポンサーとして博報堂の名が入っていますが、そこに表れている通り、内容だけでなく企業のスポンサードという形式においても、実験的なプロジェクトだということがわかります。

鷲尾氏はその目的について、アートシンキングとデザインシンキングを融合させたい、という言葉で語っておられました。広告のコミュニケーションが、アートの在りかたに近づいて行かざるを得ない、という時代認識のなかで、アートを買ってきて広告に使うという水準ではなく、思考方法や社会との関わり方の水準でアーティストの取り組みを理解し、企業活動の中でデザインやプロモーションに入れ込んでいくということが目指されています。

また、このプロジェクトのネーミングについて鷲尾氏は、人々が感情をぶつけ合う場所という意味の “Rock” で、特定の音楽ジャンルとしての “Rock” のことではない、と説明してくれました。またアルスエレクトロニカは、ごく一部のアーティストとサイエンティストのためのハイコンテキストな内容にとどまらず、広く社会へ浸透していこうとしていて、それが新しい場を必要としたのではないかという背景についても言及されていました。

社会の中に、人と人が出会う場所をつくる新しい方法を見いだそうとする広告社の努力と、アルスエレクトロニカの社会に根ざそうとする強い意志、そして橋渡し役としての鷲尾氏の熱意が「The Future Rock Show」の実現の背景にあることが理解できたとき、この試みの将来は非常に明るいものだと感じられました。




20130917_ars-report3_04
ゲルフリート・シュトッカー氏
Credit : tom mesic

未来を描く額縁としての「TOTAL RECALL」


アルスエレクトロニカの総合ディレクターであるゲルフリート・シュトッカー氏とクリスティーナ・ショップ氏による毎年のフェスティバル・テーマを解説するテキストには、同時代の社会についての、アルスエレクトロニカ独自の洞察と問題提起が凝縮されています。アルスエレクトロニカの「アート・テクノロジー・社会」という不変のテーマが、その時代における具体的な問題提起となって、そこに表現され続けています。

今年のテーマは「TOTAL RECALL – The Evolution of Memory」。テキストでは、記録にまつわる人類の営みがデジタル技術によって加速度的に肥大化していくときに何が起こるか、という課題を提示している一方、脳の記憶の仕組みについては、必ずしもコンピュータのそれと同じではなく、絶え間ない外部との関係の再生成なのではないかということを示唆しているにとどめています。(テキストは小川秀明氏による日本語訳もあります。http://ogalog.blog.so-net.ne.jp/2013-05-25 )

「TOTAL RECALL」の意味するところを考えるとき、完璧な記憶という直訳、あるいは人間が生来の能力として持っている「記憶」よりは、映画トータル・リコールとかけられた、人工的で、外部化された記憶と脳の関係、なかでも、本当の記憶のありかに疑問を突きつけるような技術的な事態を取り上げているように思います。
記憶とは何か、記録とは何か、そしてその「あいだ」には何があるのか。外部記憶の巨大化と人間社会の未来について、楽観的な態度を保留し、投げ出すことによって、未来の社会をそこに描き込むにふさわしい「額縁」がそこに形づくられているのだと思います。

2011年の「Origin – how it all begins」でサイエンスが明らかにするヴィジョンに接近し、2012年の「The Big Picture – New Concepts for a New World」で社会(人と人のつながり)に焦点を当てた流れのあとで、記憶の進化に注目するのは、ある意味ではアート(人工物と認知の様式の問題)へ、ひとまわりして戻ってきた、とも言えるのかも知れません。

私たちが向かい合うことのできる事実の限界、あるいは、私たち人間同士をつなぎあわせる方法、あるいは、私たちと自然界や機械との対話、それらは人にとっての外部を志向する問題のように思えます。記憶に取り組むことは、言語をもち、人工物を創造する知性そのもの、つまり私たちの内部の問題へと向かいながら、その「進化」がどのようにあり得るのか、という問題提起なのではないでしょうか。

長年アルスエレクトロニカフェスティバルを訪れている鷲尾氏は、アルスエレクトロニカは年々どんな作品をつくっているかよりも、ソサエティのほうを向いてきている、今のほうが面白いと感じる、という印象を語っておられました。
新しいテクノロジーがもたらす新しい世界は、私たちの在りかたの深いところまで入り込みつつあるようです。アルスエレクトロニカが取り組もうとしていることは、インターネットやエレクトロニクスなどが普及しきって、まったく珍しくなくなり、意識にのぼらなくなった以後にも、私たちにとって取り組むべき課題は多く残されている、という呼びかけではないでしょうか。

デジタルテクノロジーの変化の速さ、はかなさを強調するあまり、新しいのでなければ、進歩しているのでなければつまらない、と認識が反転してしまう危険があるかも知れません。新しいものは確かに刺激的ですが、重要なのはそれだけではなく、人々が何かを伝え合うための方法であり、人々が集まって感情をぶつけあうための方法であり、人々が協力しあって社会を形成するやり方そのものであり、それらが、現代の環境にふさわしいものであるために、柔軟であり続け、創造性を持ち続けることなのではないでしょうか。




アルスエレクトロニカ フューチャーラボ 小川秀明氏 インタビュー


アルスエレクトロニカフェスティバルの会場のひとつであるブルックナーハウスで、フューチャーラボ所属のアーティストで、「The Future Rock Show」にもパネリストとして参加している小川秀明氏へのインタビューを行いました。2年前の2011年のインタビューに続き2回目になるので、そちらも合わせてご覧ください。

インタビュー中に登場する作品やプロジェクトについては、多くが小川秀明氏の個人ブログで紹介されています。




20130917_ars-report3_05
小川秀明氏 (左)
Credit : Uniba Inc.
菊地:去年は大変お忙しそうでしたけど、今年はいかがですか。

小川:去年はヤバかった…今年はだいぶ余裕があります(笑)。去年はおかしかったですよね。文字のプロジェクト(Klangwolke ABC / クラングボルケABC : 毎年行われる大規模なショーで、フェスティバルのハイライト。2012年はリンツ市民が手作りのLED文字を持って参加する大規模なプログラムがあった。全てのLED文字はラジオコマンドで点灯など制御可能な仕組みになっている。)と、クアドロコプター飛ぶプロジェクト(Spaxels / スペクセルズ : フューチャーラボが開発した49機のマルチクアドロコプターシステム。空中に巨大な立体映像を映す)と…やったことない、どうなるかわからない企画だらけで。

菊地:しっかりとお話伺えるのは2年ぶりなので、環境や取り組まれていることの変化について伺えると嬉しいです。アルスのテーマの変遷だけ見てても、結構変わってきているかと思います。

小川:2年前が「Origin -how it tall begins-」で、去年が「Big Picture -New Concepts for a New World-」でしたね。ここ数年は、参加型でライブにフォーカスしたものがフューチャーラボでの大きな仕事だったなと。やっぱりマジックモーメントをどう社会に出すかというのが、フューチャーラボの仕事です。去年は、空間の中に立体映像を映し出す「スペクセルズ」と、市民が参加して大きなピクチャを作ろうという「クラングボルケABC」のふたつで、とてもシンボリックだったなと思います。美術館では作品の額縁の枠が鑑賞者に対話のモードを生み出すけれど、アルスはまさにその枠から作っていて。新たなアートを作っているんだなと思います。その枠は目に見えなくて、スペクセルズは空に広がって、クラングボルケはここ(インタビュー場所 : 毎年クラングボルケ会場となるドナウ河畔の公園)に広がっている。見ている人の対話のモードも含めて社会の中にどう「枠」を置くかというところに関わっていると思います。

チェスタートンという劇作家がいるのですが、アートで何が一番美しいかって言ったときに「額縁の枠だ」って(笑)。その枠=メディアは当時なら写真だったり、最近まではテレビだったりですけど。社会の文脈の中にどうやって対話のモードを作って埋め込んで行くか、新しい枠を作って開発して行くか、というのが面白い。だからさっきの2つのプロジェクトはとても象徴的だなと思います。

20130917_ars-report3_06
Klangwolke ABC (2012年)
Credit : rubra

20130917_ars-report3_07
Klangwolke ABC (2012年)
Credit: rubra


Spaxels (2012年-)


20130917_ars-report3_08
Spaxels (2012年-)
Credit: rubra


20130917_ars-report3_09
クアドロコプター
Credit: Michael Kaczorowski

あとウィーンの空港に巨大なインスタレーションを設置しました(“Zeitraum” 2012年)。これもある意味、空港っていう普通のインフラストラクチャーの中にそういう新しい風景の形が作られている。僕らはアートがどういう力を持って社会の中に入って行くのかというのを、いろんな領域とコラボレーションしながら探求している。なので、もし近年の(アルスの)変遷がダイナミックに見えるなら、それは僕らの探求の現れかもしれないですよね。


Zeitraum (2012年)

20130917_ars-report3_10
Zeitraum (2012年)
Credit : Ars Electronica

2年前のテーマ「Origin」ではサイエンスを扱っています。アーティストとサイエンティストって似てるなと思うんです。CERN(欧州原子核研究機構)では、素粒子を見るための超巨大施設を運用しているけれど、素粒子自体を見ることはできない。痕跡を可視化して、「みる」んですよ。それはすごくアーティスティックな作業。一方で去年のテーマ「Big Picture」は社会。世の中の仕掛けがどういう風に構成されてどんな新しいビジョンを生み出しているかということです。近年のソーシャルメディアによる人の繋がり方を見てみると、人と人の多様な繋がりがパッチワーク的に新しい「ビジョン」を生み出してゆきます。出来上がったパッチワークも次の瞬間には違う模様になって、またあらたな絵が生み出されて行く。

このように、アートとサイエンス、アートと社会というのが一昨年と去年で探求されてきて、今年の「TOTAL RECALL」が「記憶」をテーマにしています。「僕がいま話していることは、何を参照して話しているのかな」「記憶ってなんなのだろう」、ということです。脳は最大の不思議。メディアを通じて、どう自分の記憶を外部化していくかをヒトはやってきた。そういった意味だと、アルスはアート・テクノロジー・社会の変遷を追いかける活動をしているという意味で一貫しているというか、共通するものが見えてくると思います。

菊地:2年前に「サイエンス」と「カタリスト」をキーワードにお話されていたのを思い出します。去年、Facebookの存在をあまり強調しないエジプト革命のドキュメンタリーが受賞していたことにもあらわれていると思いますが、やはりインターフェースでなく、ヒトとヒトをどうやって結び合わせるかであったり、現象と現象が出会うところが問題になってきていると感じます。なので、情報とヒト、機械とヒトのあいだの問題ではなく、社会の中でそれがどういうふうに起こるかという問題が、今年までの流れなのかなと思いました。2年前におっしゃってたことが起こってるなと。サイエンスと社会を経由することが、記憶をどういうふうに扱うかということと深く結びついてるなと感じます。
ところで、去年のクラングボルケABCを見ていて、リンツの社会はアルスエレクトロニカの挑戦的な取り組みに対して、寛容だなと感じました。フェスティバル後、どのようなリアクションがありましたか?

小川:「クラングボルケABC」の後で考えたのですが、結局浮き上がったのはソーシャルメディアを含む社会の風景。アルファベットって、誰かと出会いたいもの。「J」だけだとただのキャラクター だけど、「J」と「A」をあわせると「JA」でドイツ語で「YES」、というメッセージになります。このシンプルなルールが街中に広がって大きな絵になった。この20万人弱の町のスケールもフィットしたし、都市の構造やコミュニティともつながっている話だと思います。東京ではあのプロジェクトはフィットしないかも知れない。
でも日本なら20万人くらいの町はたくさんあって、そこでカタリスト=触媒になる人やプロジェクトがあればユニークなビッグピクチャーが出来るかもしれない。クラングボルケABCをやってみて面白いことがいろいろありました。例えば、ジョンという亡くなられた仲間を追悼するグループが出来たり。プッシー・ライオットというバンドの逮捕に対する抗議活動とかも起こったけど、アルスはいっさい関与してないんです。日本だとオーガナイザーが許容できないようなことも、リンツでは拍手。そこまで参加者のインスピレーションをプロモートできたことに満足してます。人々が自由な発想で自分のアバター(投影)を表現して、それが集まって一個のメッセージになるっていうのは、社会自体を投影するものですし、それらが物理的に集まって生まれる力を表現できた部分があるのかな、と。

菊地:ビルに写っていた画の中にアノニマスの仮面の絵が出てきたりとか、すごい内容だったなと思っています。

小川:アノニマスは現象なんだと思います。ネット時代では実名であれ無記名であれ、ネットワークを介して個が集合・協調したり離散して様々な現象を生み出しています。アルスは善し悪し決めずに、起こっている事実を一貫して扱っています。

菊地:日本と比べるとすごいなというか、ギャップを感じました。

小川:日本はたぶん、「メディアからのメッセージの裏を読み取る」という文化が弱いと思います。こっちの人は自分で判断することが当たり前で、その上で、多様な文化とのコミュニケーション能力が求められます。お互い空気が読めない中で、何が創作行為としてリスペクトされるのか。社会や政治に対するメッセージとしてのアートの役割が求められています。


20130917_ars-report3_11
Klangwolke ABC (2012年) 市民は自由にメッセージを作り上げていく、上記はプッシー・ライオットの逮捕に対する抗議活動。
Credit: rubra

20130917_ars-report3_12
アノニマスの仮面が映し出されたビル
Credit: rubra

菊地: 「スペクセルズ」ではクアドロコプターが何台も飛んでてすごかったですね。成功ですよね。

小川:フューチャーラボの所長Horst Hörtnerともよく話すのですが 、アルスは「ファンのためにリスクを取る」という選択の仕方をしているよね、と。確かにそういうのは日本では難しいかもしれないけど。
結局、見たいものを見たいという欲求なんだと思います。多くのアーティストはそのためのリスクを取っている。自分が見てみたい世界のために一生懸命やるのは当然のことです。

菊地:クアドロコプターはロンドンにも行ってましたね。

小川:ぼくは実際には行ってないんですけど、やっぱりライブの価値が増していると感じます。こうやってみんなで会う時間ってすごい重要でしょう。人生は有限なのに、限られた時間に対してインターネットは時間泥棒で、気づいたら1時間とか経っちゃうんだけど、僕はこうやってみんなで話しているほうがすごいインスピレーション受ける。本質的に人間は、ライブのコミュニケーションに興味を持っていると思う。だから広告やインスタレーションなどにもウェブとか新しいメディア体験から回帰する形で、ライブのニーズが出てきている。メディアでは再生「できないもの」(ライブ)とは何かという問い掛けです。

菊地:なるほど。小川さんご自身の最近の活動について聞かせていただけますか。

小川:アートが持っているパワーが、どうやったら日常になるかを考えていて、そのグラウンドを作りたいと思っています。いわゆる広告として消費されるアートではないものとして。それに関連して、今年のアルスエレクトロニカフェスティバルには、「The Future Rock Show Panel」という試みがあります。いくつかのパネルから構成されていて、その1つはインスピレーショントークです。日本からは真鍋大度さんとか、ライブに通じた人たちに、プレゼンテーションしてもらいます。もうひとつカタリストラウンジというもの。アーティストがいろんな人たちと出会える場で、ブレインストーミングをやります。このパネルは、博報堂さんと共同開催になっていて、広告会社とアーティストが従来とは異なる形で近づいて循環して行けそうな仕組み、グラウンド作りをまさにやっている。

菊地:ぜひ参加したいです。

小川:それとは別にアーティスト個人の観点としては2つあって、ひとつはアルスセンターのいろんな場所に作品を置いていく、というのを続けています。Project Genesis展の会場に置いた、矢印の作品(Momentriumシリーズ)とか。

20130917_ars-report3_13
Momentrium (2012年-)
Credit : h.o

あとはアルスエレクトロニカセンターのブレインラボで、東京の日本科学未来館のパネルを使った「Your-Cosmos」という作品のアートディレクションやりました。未来館にある球体ディスプレイ(Geo-Cosmos)は世界で一番きれいなインスタレーションのひとつだと思うんですけど、あのLEDパネルがリプレイスされるのを機に、古いパネルを再活用出来ないかということでアルスと未来館でコラボレーションしています。僕らのミッションは未来館で見えてくるものと違う視点をどのように提供していくかというところです。「Geo-Cosmos」は引いた目線で地球を見てみようという視点ですが、「Your-Cosmos」はその逆。戦略的には沢山の「◯◯コスモス」というのを作っていこうとしている。それはブレイン・コスモスかもしれない。この視点は、2012年のアルスエレクトロニカフェスティバルのステートメントである、「ビッグピクチャー」にすごく似ていて、違う視点が一個一個つながり合って見えてくるコスモス、というものをいろんな形で提案したかった。このように、僕としては自分自身の作品だけでなく、アルスの一員としてどんなステートメントが表現できるか探求しています。

20130917_ars-report3_14
Your-Cosmos ライブパフォーマンス (2013年)
Credit : Florian Voggeneder

20130917_ars-report3_15
小川秀明氏、比嘉了氏、真鍋大度氏
Credit : Florian Voggeneder

菊地:今回のフェスティバルのテーマ、「TOTAL RECALL」とのつながりはいかがですか?

小川:僕がイメージしたのは「アタマの中に入る」。たぶんアタマの中って何もないんじゃないかなって思っていて。

菊地:なにもない(笑)

小川:この空間(アタマ)の中に何があるのかなって。「Your-Cosmos」も俯瞰でなく囲まれている感じなんだけど。街の構造と、アタマの構造とかDNAとか似てるんじゃないか、というイメージがあって。そう思ったときに「TOTAL RECALL」という観点よりは、ブレイン、アタマって何なんだろうなと。アタマってものがどんな可能性もってるのかを対話する場を作りたい、というのがありました。そういった意味だと「TOTAL RECALL」と関連があって、記憶というものに対して違うアプローチをしたいという意味で、つながりがあると思います。

菊地:小川さん個人として、いろんな視点が合わさってひとつの宇宙になるというビッグピクチャー的なイメージに、いろんなレベルで取り組まれてらっしゃるのかなと感じました。社会的なレベルでは去年の「クラングボルケABC」もそうですよね。

小川:高松でやっているトライアスロンのプロジェクトもあります。アスリートがつけているタグを追っていくことで、個人の動きを集合としてトラッキングできる仕掛けで、アスリートがゲートをくぐるタイミングでTwitterのボットがつぶやいてくれたり、最後にゴールしたときにそのロギングをもとに自動的な物語を生成する、「 TRIART」というプロジェクトをやっています。これも個別の人たちが集合して、ライブをシェアして、また分散しいくというところは似ているし、取り組みとして一貫しているかも知れません。

菊地:ツイートの交換というか、ツイッターで別の町とつなぐプロジェクトもやられていますよね。

小川:そう、「Connecting Monsters」という社会を怪物に見立てるシリーズ作品があって世界中の建物やファサードにモンスターを生み出すプロジェクトです。リンツのアルスエレクトロニカセンターに夜現れるモンスターは、バーチャルなアクセスを「見る」怪物。東京からアルスセンターのウェブサイトにアクセスすると、センターのファサードに映ったモンスターが東京の方向をグーって向くというもの。「Kazamidori」と同じなんだけど。これは社会の力によって動くモンスター。今回発表した新しいモンスターは、イスタンブール市内の大きなスクエアのディスプレイにあらわれる予定です。ツイッターと連携してつぶやかれた言葉から「??? Of Istanbul」というプラカードを自動生成して、それをモンスターが市民に見せたかと思うとパクパク食べるっていう仕掛け。背景的にセンシティブなプラカードが生まれるかもしれないし、何でもないような日常を浮き上がらすプラカードが生まれるかもしれない。何が出るか分からないライブがあります。

20130917_ars-report3_16
Connecting Monsters (2013年-)
Credit : h.o

20130917_ars-report3_17
Connecting Monsters (2013年-)
Credit : h.o




菊地:以前ロボティニティ(ロボットらしさとは何かというヒューマニティの対となる造語)というキーワードを出されてたと思うんですけど、なにか目に見えないものが実際にそこに姿をあらわすとか、機械を相手にインタラクションするというところは、小川さんの個性としてあるような感じがします。アニミズムというか。

小川:ヨーロッパではユニーク(個性)かもしれないですね。やっぱりクリエーターは自分を投影したいんじゃないですか。そのときはやっぱりロボティニティの話になります。石黒さんのアンドロイドも彼自身だと思うし。アンドロイドを介して自分自身や人間を知る、という活動だと思います。アートの活動はそれだと思う。

菊地:そろそろ時間ですが、今後のプラン、こちらへ向かっていきたいみたいなものがありましらお願いします。

小川: どうやったら新しい創作のグラウンドを作れるかなというのが自分の興味だし、アルスの興味でもあると思います。それをしながら作品を継続的に作り続けることはすごく重要だと思うし、最近バランスもとれてきたと思います。こっちにきて7年目で、余裕も出てきました。アルスでは常に最先端を追い求めなければならない、自分を否定し柔軟にならなければならない宿命があるので、「本質を問う作品作り」と両方の視点を持っておくと、ちょうどいい感じに動いてくかなと思っていて。それを継続的にやっていきたいなと思っています。

菊地:ありがとうございました。

2013年9月6日 於ブルックナーハウス

h.o
http://www.howeb.org/

Information

アルスエレクトロニカフェスティバル 2013
http://www.aec.at/totalrecall/


uniba
Uniba Inc.
ユニバ株式会社は、”さわれるインターネット(Embodied Virtuality)”の会社です。
インターネットとコンピュータを、道具ではなく、見て、触れて、遊びたおすためのメディアととらえています。
メディアアートとオープンテクノロジに根ざすプロダクションとして、その楽しさを追求しながら、
ブランディング、キャンペーン、プロモーションの制作をしています。
http://uniba.jp/

アルスエレクトロニカ・ フェスティバル 2013 クイックレポート 後編

みなさんこんにちは。ユニバの小松です。クイックレポート 後編では、今回リンツを訪問したユニバのメンバーそれぞれが注目した、フェスティバルでの展示やイベントの様子をお伝えします。

Text by Mori Koichiro, Tetsuro Shimura and Sei Kataoka(Uniba Inc.).
Edited by Jun Komatsu (Uniba Inc.).




Project Genesis


今年のアルスエレクトロニカでも特にフィーチャーされているバイオアートを集めたエキシビジョン “Project Genesis” の様子をお伝えします。

“Project Genesis” エキシビジョンはフェスティバルよりも一足早く、8月1日にオープンしています。
アルスエレクトロニカセンターの Level 1 / 2 にわたって展開されていて、作品の多さからもこの分野への力の入れ様がうかがえます。
今年の全体のテーマが “TOTAL RECALL” という事で記憶や記録といったテーマで構成されていますが、中でも生命の記憶としてバイオ/バイオテクノロジーに焦点を当てている展示でしょう。

20130913_ars-report2-01

まずギャラリーで出迎えてくれるのは、エキシビジョンのシンボルと言ってもいい Patricia Piccinini の作品。
とても精巧に作られた愛らしくもおぞましいクリーチャー。毛穴とか作り込まれています。

20130913_ars-report2-02

20130913_ars-report2-03

二つの光りの矢印が方向を示す Momentrium という Futurelab の Hideaki Ogawa 率いるアートユニット h.o (エイチドットオー)と Takeshi Kanno による作品。一つは上の階に設置されていて常に地球の中心、私たちが今居る現在を表しています。もう一つは回転していて常に未来を示していて、そこは現在の私たちのを眺める場所として常に動き続けています。バイオっぽくはない作品ですが、エキシビジョンのコンセプトとして重要な位置を占める作品です。

20130913_ars-report2-04

Rüdiger Trojok による Gene Gun Hack という作品。高価な実験装置であるGene Gun(金属の粒子と一緒にDNAを射出して細胞内に打ち込む装置、遺伝子組み換えに用いる)をたった50ユーロで作るというプロジェクト。ボディーが流木でできているのがチープ!家のキッチンで遺伝子操作ができる時代が来るのかもしれないですね。

20130913_ars-report2-05

国際的に活躍する Shiho Fukuhara と Georg Tremmel の Common Flowers / White Out という作品。 飲料で有名な会社サントリーが開発した青いカーネーション(ムーンダスト)を培養して白いカーネーションに戻すというプロジェクト。遺伝子情報の所有権や著作権などリーガルな問題に言及しています。バイオ版 ‘Jailbreak’ ! とのことでした。生きてる状態で展示するのすごく大変そうですね。

20130913_ars-report2-06

Hideo Iwasaki と Oron Catts Biogenic による Timestamp という作品。 こちら今年の2月にアキバタマビで開催された「BIOART.JP ー バイオメディア・アート展」でも同じシリーズでしょうか、展示されていたのでご覧になった方もいるかもしれないですね。シアノバクテリアが電子回路を腐食させる様子が私たちの日常とは違ったタイムスペースを感じさせます。

などなど、ここに挙げた作品がすべてではありませんがざっと紹介してみました。”Project Genesis” に限らず他のエキシビジョンでもバイオ/バイオテクノロジーをテーマにした作品は数多くあり、通してみると大きなテーマが見えてくる展示になっていたと思います。

Text by Mori Koichiro (Uniba Inc.)




Featured Artist: HR Giger


20130913_ars-report2-07

20130913_ars-report2-08
Necronom IV from 1976. / HR Giger

今年のFeatured ArtistはHR Giger。
エイリアンのデザインやメタルバンドのジャケットなどが有名なアーティスト。レントス美術館の地下で大きく展示されていました。
意外にも日本の墨絵のような作品があったりと、白と黒の対比が美しいものが多くいい意味で予想を裏切られました。
今回がきっかけで私自身も彼のファンになりました。(帰ったら画集買いたい)今年は脳科学や微生物を扱うようなバイオアートの分野での作品が多く展示されていました。また、リドリー・スコット監督の「プロメテウス」が取り上げられていたりと、脳や人体に体するハッキングとも言える作品がありました。その流れにすごくはまっていて、見る前は疑問を感じていましたが納得できるようなものでした。

IL(L) MACHINE – Ars Campus Israel


次はイスラエルの学生による企画展。
完成された選出作品とは少し違った、Makeなどにあるような初期衝動がありました。また、扱う素材も独特のチョイスで、テクノロジーとその土着性の衝突みたいなものを感じました。

20130913_ars-report2-09

タイプした言葉を、フォーマルなのかカジュアルなのか判定してそれに合ったフォントで表示する「Fontify」という作品。
いろいろ試したけど合っているかどうかはいまいち分からず。。スラングとか試してみたいです。

20130913_ars-report2-10
 
単機能を持った、アクリルキューブがたくさん。ノックをすると仕返してきたり、回転したり、数字を表示する「CUBES」。
とてもシンプルに機能が削りだされていて、デザイン「あ」を連想した。小さな動きに注目できます。
作り方をオープンソースとして、http://idho.org.il/cubes/ で公開しています。

Schizophrenia Taiwan 2.0


台湾の若いコンテンポラリーアーティストの作品を紹介する企画展。
社会的な問題を扱った作品が多かった印象ですが、その表現方法も見た目に面白いものが多く全体としてとても充実しているなと感じました。この企画展は、今後カナダやロシアなど世界中を回って展示されるそうです。

20130913_ars-report2-11

時代の変化により廃れて行く台湾の家庭内工業にスポットを当てた「Goodbye Little Factory」。
ノスタルジアと、機械の感傷のない無機的な造形の対比が面白いです。

20130913_ars-report2-12

「The World of Fatigure」
ねじまきを巻くと、起き上がるオブジェ。何かを暗示しているような、かなり皮肉な作品。

Retro/per/spektiven


40年にも渡るコンピューターゲームの歴史を体感出来る展示。実際にたくさんのゲームを遊ぶ事ができました。
懐かしいものから、知らないものまであり、つい夢中になってしまいます。
ゲーム内のグラフィックの面白さと、プロダクトのレトロフューチャー的な質感がとても良いです。

20130913_ars-report2-13

初期のテニスゲーム。コントローラーによる操作も奥が深い。

20130913_ars-report2-14

かなりクラシックなアーケードゲームもプレイ可能。

voestalpine Klangwolke 2013 – Bruckner lebt!


最後にフェスティバルのお楽しみの一つである、河岸で行われる大規模なエンターテイメントショー。
花火が上がったり、パフォーマンスがあったり、レーザーによる演出があったりとにかくド派手。
昨年は立体化した文字を市民が持ち寄るなど、ただ鑑賞するだけでなくインタラクティブになるような試みが行われています。
今年はiPhone Appによる演奏が試みとして行われました。

20130913_ars-report2-15
Photo by: tom mesic

音楽とともに、否応無しに気分がぶちあがる花火。
破壊的なテクノビートと花火の組み合わせに笑ってしまいました。

20130913_ars-report2-16
Photo by: tom mesic

このアプリを合図に合わせて皆で鳴らす場面がありました。
インターネットに繋ぐのかとか、色々思案していましたがスマートフォン本体から直接音を鳴らすシンプルなものだったので驚きました。

Text by Tetsuro Shimura (Uniba Inc.)




FabLab Workshop – Glitch Embroidery


ヌケメ氏による「Glitch Embroidery」という刺繍の入った T シャツを手作りできるワークショップ。

刺繍といっても、ただの刺繍ではありません。
第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門の審査員推薦作品にも選出された「グリッチ刺繍」という作品です。

20130913_ars-report2-17

刺繍データにグリッチを入れた後、ソーイングマシンにデータを読み込ませればオリジナル T シャツのできあがり。 

作業内容は裁縫ではなく、刺繍データの編集です。
というわけで、早速、アルス・エレクトロニカのロゴ画像用の刺繍データにグリッチを入れていきます。

20130913_ars-report2-18

グリッチを入れるといっても、作業自体はそれほど難しいものではなく、
刺繍データをバイナリエディタで開いて、16 進数の値を自由に書き換えていくだけです。

20130913_ars-report2-19

しかし、なかなかコツがつかめず、すこし編集しては見た目を確認しての繰り返し…

20130913_ars-report2-20



20130913_ars-report2-21

そして完成したアルスエレクトロニカのグリッチロゴ T シャツ。
グリッチが入り過ぎてもはや原型をとどめていません。

Text by Sei Kataoka (Uniba Inc.)



今回のクイックレポートでは取り上げられませんでしたが、世界中のアーティストによるライブパフォーマンスや、カンファレンスでの興味深いディスカッション等もあり、6日間の会期の中身は非常に濃いものでした。

追って、弊社菊地による今年のフェスティバル全体の振り返りや、Futurelabの研究員の小川氏へのインタビュー等もお届けして参ります。


Information

アルスエレクトロニカフェスティバル 2013
http://www.aec.at/totalrecall/


uniba
Uniba Inc.
ユニバ株式会社は、”さわれるインターネット(Embodied Virtuality)”の会社です。
インターネットとコンピュータを、道具ではなく、見て、触れて、遊びたおすためのメディアととらえています。
メディアアートとオープンテクノロジに根ざすプロダクションとして、その楽しさを追求しながら、
ブランディング、キャンペーン、プロモーションの制作をしています。
http://uniba.jp/

イギリス発のグローバル情報誌『Monocle』による初の書籍 “The Monocle Guide to Better Living”

themonocleguidetobetterliving_pressphoto_side


過去10年間で成長して最も成功した雑誌のひとつとなったイギリス発のグローバル情報誌『モノクル (Monocle)』。確かな美的感覚とジャーナリストならではの粘り強さを武器に外交関係からデザインまですべてに興味を持つグローバルな読者に刺激を与え続ける知性派のマガジンとして世界中に根強い人気がある。編集長のタイラー・ブリュレ氏は英国BBCで記者として勤めた後、『Wallpaper』を創刊したことでも知られ、世界中を飛び回り、幅広い知見をもつ彼が見る現代のグローバルな視点を凝縮した内容が特徴だ。

そして今回、ドイツの出版社ゲシュタルテンより400ページを超えるモノクル初の書籍版がリリースされる。モノクル編集チームが目を向けたテーマは雑誌を通じて一環しているコンセプトでもある、”How to live well” (豊かに生きる方法) だ。

themonocleguidetobetterliving_pressphoto_pages2

最高に質の高い生活が出来る街は?良い学校を作るためには?どのように街を走るか?最高に美味しいコーヒーを作るのは誰か?どのように自分自身の刺激的なビジネスをスタートするか?

書籍『TheMonocleGuide to Better Living』では、街、ビジネス、教育、カルチャー、喜び、健康、住宅、サービス、トラベル、という10のカテゴリーを設け、独創的で、有益で、楽しませてくれるエッセイやリポート、アドバイスが詰まったガイド本となっている。

一時的な流行や次のトレンドについてではなく、継続したいキャリアや一生物の家具といった永続的な価値を見いだす一冊となっており、重厚感ある立派な装丁の本となっている。

日本のことも多く取り上げられており、例えば「健康」の章では”All together now(いまみんな一緒に) “として、日本のラジオ体操も取り上げられている。

こうしたモノクルが見たグローバルな視点が詰まっており、手に取るたびに新たな発見や訪れてみたい場所が見つかるような幅広い内容になっている。ぜひ本棚の片隅に置いておきたい一冊となるだろう。

そして、今回の出版記念のイベントとして9/5のベルリンを皮切りに、ロンドン、アムステルダム…と7都市まわっており、東京では代官山蔦屋にて9月14日に開催される。イギリスからモノクル・チームが来日し、編集長のタイラー・ブリュレ氏によるサイン会も開催される。モノクルの世界観に触れるチャンスとなるのでぜひ参加いただきたい。また先行発売で購入された方には、モノクル x ゲシュタルテンのコラボトートバッグもプレゼントされる。詳細は以下。

themonocleguidetobetterliving_pressphoto_pages1


monocleguidetobetterliving_web_15 (1)


monocleguidetobetterliving_web_21


monocleguidetobetterliving_web_33
“from The Monocle Guide to Better Living, Copyright Gestalten 2013”

書籍紹介ビデオ


Information


MONOCLE
http://monocle.com/

monocle_front
The Monocle Guide to Better Living
編集: Monocle
頁数: 408 ページ 判型: 20 x 26.5 cm
仕様: オールカラー版 / ハードカバー
定価: EUR 45.00 / USD 60.00 / UK 40.00 発売: 2013 年 9 月 ISBN: 978-3-89955-490-8 出版: Gestalten
販売: 嶋田洋書 (tel: 03-3467-3863)
取扱: 全国大型書店


banner_nl_monocle_yl

開催日時:2013年9月14日 (土) 19時~21時
会場:蔦屋書店1号館 1階 総合インフォメーション
主催:代官山蔦屋書店
協力:Gestalten
お問い合わせ:代官山蔦屋書店2号館1階アートカウンター (tel: 03-3770-2525)
http://tsite.jp/daikanyama/event/002319.html

 
[参加方法] 代官山 蔦屋書店店頭またはオンラインストアにて9月初旬先行発売の『The Monocle Guide to Better Living』をご購入、ご予約のお客様先着150名様に整理券を配布致します。
店頭予約:代官山蔦屋書店2号館1階アートカウンター
電話予約:03-3770-2525
オンラインストア (tsite.jp/daikanyama/

[定員] 150名様
 
[注意事項] ご遠方のお客様の御予約頂いた書籍はイベント当日にお渡しいたします。
     ご予約は定員に達し次第終了とさせていただきます。


Profile

Tyler Brûlé (タイラー・ブリュレ)
モノクルの創刊者であり、元従軍記者、『Wallpaper』誌の創刊編集長、『Financial Times』紙のコラムニスト。ロ ンドンを拠点に世界的に高い評価を受けている『モノクル (Monocle) 』誌は世界情勢、ビジネス、カルチャー、デザ インに関して国際的でユニークな解説を提供。また雑誌と平行して、モノクルはラジオの24時間ネット配信、豊富な 映像コンテンツをもつウェブサイトのほか、東京やロンドンにショップやカフェを展開。


Gestalten (ゲシュタルテン)
ゲシュタルテンはドイツ、ベルリンを拠点に1995年に設立。これまでに400冊以上ものデザイン、イラストレーション、建築、タイポグラフィ、アーバンアート、現代アートの書籍を出版、現在100カ国近い国に流通されている。

最近では各国の新進気鋭な作家のインタビューやイベント映像をGestalten.tv (http://www.gestalten.tv) で配信するほか、2011年春にはベルリンのミッテエリアに、ゲシュタルテン初のフラッグシップとなるGestalten Space (http://gestaltenspace.tumblr.com/) をオープン。これまでに出版されたゲシュタルテンのリリースのコンプリート・コレクションが並ぶほか、関連作家によるデザイナーグッズも販売。併設されたギャラリー・スペースでは展覧会やレクチャー、サプライズイベントなどが行われており、世界中から注目を集めるビジュアル・カルチャーのスポットとなっている。また出版のほかにシンクタンクとしての国際的評価も高く、これまでにDesign Hotels、Diesel、MTV、Nokia、Redbull、Smart、ユニクロ、フォルクスワーゲンといった企業によるクリエイティブ・プロジェクトのキュレーションなども行なっている。

Gestalten http://www.gestalten.com
ゲシュタルテンに関する国内問い合わせ先:Gestalten Japan (tel: 0422-30-9326)

アルスエレクトロニカ・フェスティバル 2013 クイックレポート 前編

20130909_ars-report01

みなさんこんにちは。ユニバの小松です。本年も昨年に引き続きユニバのメンバーは、オーストリアのリンツにて開催されているアルスエレクトロニカフェスティバルに来ています。

フェスティバルの今年のテーマは「TOTAL RECALL」。9月4日~9月9日の6日間、リンツ市内に点在する各会場にて、展示、イベント、パフォーマンス、カンファレンス等ぎっしり盛りだくさんの内容で開催されています。

ユニバでは、今回リンツを訪れたメンバーそれぞれの視点でフェスティバルの様子をレポートしていきます。まずは展示の様子からクイックレポートとしてリンツよりお伝えします。

Article by Jun Komatsu(Uniba Inc.).




Cyber Arts 13 Exhibition / OKセンター


20130909_ars-report02

OKセンターにて開催されているCyberArts13は、Prix Ars Electronicaの主要各部門の受賞作品を扱う、Ars Electronica Festivalの中心的な展示です。

20130909_ars-report03

20130909_ars-report04

Hybrid Art部門でGolden Nicaを獲得したThe Cosmopolitan Chicken Projectの展示。ケージの中には立派な鶏が。

20130909_ars-report05



Hybrid Art部門の佳作で展示されていた、The Blind Robot という作品。正面の椅子に座ると、体の形、頭の形を指先でそっとなぞられます。目をつぶって触られていると、指先の感触とサーボモーターの音にざわざわさせられます。

20130909_ars-report06

20130909_ars-report07

Hybrid Art部門の入賞作品のFive Variations Of Phonic Circumstaces And A Pause。 オルガンに繋がっているタイプライターを打鍵するとオルガンが音に載せてタイプライターで打鍵した内容が聞こえてきます。


20130909_ars-report08

宙に浮いたスピーカーの間を歩くと、移動したことに応じてそれぞれのスピーカーから音が流れてきます。AHORA. A song in the Hypertemporal Surfaceという作品。こちらはInteractive Art部門の佳作。

TOTAL RECALL Exhibition / ブルックナーハウス


ブルックナーハウスで開催されている、今回のフェスティバルのテーマである「TOTAL RECALL」のコンセプト展。記憶や知覚を扱った作品から、脳そのものを扱った作品が目につきました。



20130909_ars-report09

20130909_ars-report10

MRIの情報を分析して脳の神経繊維だけを抽出した3Dモデルと、 MRIのデータを立体モデル化し、iPadでインタラクティブに扱えるようにしたもの。希望者はリンツの総合病院で自分のMRIを撮影しにいくツアーにも参加できるとのこと。(有料:10ユーロ)

20130909_ars-report11

The Table of Gaze という、人の顔を見るときの視点移動をトラッキングしてそれがテーブル上にノートのページをペンで塗りつぶしたように可視化される作品。

20130909_ars-report12

来場者がそれぞれ、紙とペンを渡され、記憶を頼りに世界地図を書いていく体験型の作品。私も書いてみましたが、難しいですね。。

20130909_ars-report13

波形データが物体化。紙に色々な大きさの円として切り出され、ロープに中心を通して吊るされるとこんな形に。Wave Form Mediaという作品。

20130909_ars-report14

20130909_ars-report15

ブルックナーハウスの1Fスペースには、日本から文化庁メディア芸術祭の出張展示のコーナーも。

20130909_ars-report16

20130909_ars-report17



Interface Cultures: Use at your own risk と題される展示の一角に、クアドロコプターとエアプランツの可愛らしい組み合わせのThe Dream of flyingという作品。植物の電位信号に基づいてクアドロコプターの空間上の位置を制御しているとのことでした。

Ars Electronica Center


20130909_ars-report18



 Ars Electronica Center 正面入り口からすぐの吹き抜けのスペースには、鈴木康広氏のBlinking Leaves(まばたきの葉)が展示されていて、たくさんのまばたきが宙を舞っていました。

20130909_ars-report19



地下の常設展の奥のBrain Labの裏のスペースには、日本科学未来館のGeo Cosmosで使われていたパーツが再利用されているというYour Cosmosが展示されています。

20130909_ars-report20

20130909_ars-report21

Level1-2のスペースには、Project Genesisという展示。バイオアート系の作品がたくさん並んでいます。写真は、Biotricityという微生物から発せられる電気エネルギーを音やビジュアルで体験するインスタレーション作品。




こちらで紹介したのはごく一部ですが、他にも各所で様々な展示が行われています。また、展示以外のイベントやパフォーマンス、ワークショップ等も日々開催されています。引き続きクイックレポートその2では片岡が参加したワークショップについてのレポートをお送りします。


Information

アルスエレクトロニカフェスティバル 2013
http://www.aec.at/totalrecall/


uniba
Uniba Inc.
ユニバ株式会社は、”さわれるインターネット(Embodied Virtuality)”の会社です。
インターネットとコンピュータを、道具ではなく、見て、触れて、遊びたおすためのメディアととらえています。
メディアアートとオープンテクノロジに根ざすプロダクションとして、その楽しさを追求しながら、
ブランディング、キャンペーン、プロモーションの制作をしています。
http://uniba.jp/

YCAM10周年はアート・環境・ライフにフォーカス 10周年記念祭レポート(後編)

ycam02-01

2003年の開館以来、メディアアートの制作・発表を行うと共に、ギャラリーツアーや上映会、教育普及にも力を入れてきたYCAM。記念祭レポート後編では、そのYCAMがより地域と生活にアプローチしたコンペ企画「LIFE by MEDIA」受賞作品展の内容を中心にお届けします。


このコンペでは、「ぼくたちの生活のなかから、さらに彩り豊かな生活の姿を出現させてくれる道具」(※1)、すなわちメディアによるこれからの生き方と暮らしの提案を募集。10か国以上の国から140件の応募がよせられ、音楽家の坂本龍一さん、建築家の青木淳さん、メディアアーティストの江渡浩一郎さん、ファッションデザイナーの津村耕祐さん、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、greenz編集長の兼松佳宏さんによって3つの作品が選ばれました。

今回街を案内してくれたのは、「LIFE by MEDIA」に企画段階から参加するYCAMの田中みゆきさん。
まずは本館から徒歩20分程度の所にある山口市中心商店街にあるDOMMUNEのサテライトスタジオ「YCAMDOMMUNE 」へ連れていってくれました。

※1 同展に寄せられた審査員・青木淳さんのコメントより

ycam_10th_map
YCAM10周年企画展の周辺マップ。山口市中心商店街の各所で展示や上映企画などが行われている。


ライブストリーミングチャンネルDOMMUNEをインスタレーション化


ycamdommune

ネットで見ていたDOMMUNEの空間がどんな風になっているのか、興味津々で現地へ。すると写真のように、意外と唐突に出現。この建物はスタジオとして機能するほか、過去の放送分から厳選されたアーカイブが見れるスペースになっています。DOMMUNEは生放送でしか見れないので、これは貴重です。

ycam02-03

1階はバーカウンターのあるDJ/ライブ・アーカイブ、2階は番組のIDと呼ばれるグラフィックを中心に構成されたグラフィック・アーカイブ、3階はトーク・ライブが見れるトーク・アーカイブ兼配信スタジオ。1階の入口では、ジョン・ケージの等身大フィギュアが迎えてくれます。
夕方以降はベジタブル喫茶TOYTOYによる、クラフトビアバー「TOYTOYDOMMUNE」もオープン。この建物全体が宇川直弘さんのインスタレーション作品という感じでした。

また、こちらの会場では今後も放送を予定しているので、タイミングが合えば実際の配信をスタジオ観覧することもできます。プログラムはYCAM DOMMUNEのサイトへ。


街に出たワードロープ、PUBROBE


ycam02-17

YCAMDOMMUNEを出たら、そのまま商店街のアーケードの中を歩いてLIFE by MEDIAの展示会場へ。
展示作品はすべて同じアーケード内の空き店舗や広場に展示されています。
中ほどまで歩いていくと、青空の下に洋服が陳列された広場がありました。「装い」の行為に着目するアーティスト、西尾美也さんの作品「PUBROBE」です。この作品は、今年の7月までアフリカのナイロビに滞在しアーティスト活動を行っていた西尾さんが、現地のマーケットから着想を得て制作したもの。

ycam02-05
ナイロビのマーケットの様子

ycam02-06

展示会場は一見するとフリーマーケットか古着屋のように見え、見ているそばから町の人が「これいくら?」とたずねています。でも、ここにある服を着るためには、その場で着替えてレンタルする、というルールがあります。西尾さんはこれまでにも老若男女問わず、あらゆる人に参加を促すような参加型インスタレーションを手掛けてきましたが、「PUBROBE」にも利用者の人に作品の一部(参加者)なってもらいたい、という意図があるそうです。この日は、会場に西尾さんの姿も。今回の作品について、少しコメントをいただきました。

西尾「単体の服そのもののデザインではなく、人々が服を着る環境をデザインするという活動を、アート的な観点からここ10年くらい続けてきました。ファッション環境デザインとかファッションスケープデザインという言葉を使っていたこともあります。今回のPUBROBEでも、すでにあるもの=古着を使ってその使い方を変えることで、生まれ育った文化や時代に大きく規定されているある種の『服の着方』というものを、共同的に楽しみながら逸脱しようという提案になっています。」

ycam02-07

ycam02-08
山口に滞在している間はPUBROBEを利用しているという西尾美也さん。会場の様子は公式tumblrサイトからも見れます

活動当初から服を媒介とした表現をつづける西尾さんは、中高生の頃は、いわゆるモードファッションが大好きだったそう。しかしながらその作品は、どんどんブランド志向や市場価値、所有欲や作家性といった、従来のファッションの特性から離れていくようです。これからどんな「服」のかたちや、消費の在り方を見せてくれるのでしょうか。記念祭の一期終了後は、集めた洋服をパッチワークの作品に作りかえていくとのことです。今回の作品は西尾さんが帰国後、初の大型プロジェクト。インスタレーションを通してたくさんの人が関わった服たちが、これからどんな変化をとげていくのか楽しみです。

「とくい」をつなげる、とくいの銀行


ycam02-09

ycam02-10
引き出しイベント”に参加した子どもたち
と深澤孝史さん(右)
みずほ銀行の向かいにあったのは、日常を再設定するプロジェクトを手掛けてきたアーティスト、深澤孝史さんによる「とくいの銀行 ななつぼし商店街支店」。
この銀行では「とくいなこと」を無形財産として預けたり引き出したりすることができます。
システムはシンプルで、自分の預けた「とくい」にリクエストがあったり、誰かの「とくい」にリクエストをすると、銀行員が仲介し、“引き出しイベント”をコーディネートしてくれるというもの。
引き出しイベントとは、「とくい」を預けた人と引き出した人が出会い、ちょっとしたパーティーやワークショップの形式をとることが多いようです。

ycam02-11
預けられた「とくい」は公式サイトのちょとくリストに掲載。利用者は、店頭やウェブで好きなとくいを見つけ、リクエストすることができます。

例えば「コーラのいっきのみ」がリクエストされた時は、引き出した方の誕生日も祝おうということで、イベントが「コーラのいっきのみバースデー大会」に発展。
子どもDJやホーミー、くす玉割りなど、他の方の「とくい」も集まり、とても盛り上がったそうです。

ycam02-12
コーラのいっきのみバースデー大会

ycam02-19
とくいを預けるともらうことのできる「ちょとくつうちょう」

預けられた「とくい」はジーパンの修理やダンス、○○教えます、といったわかりやすいものから、「ずっーーーーーーーーと公園で遊べる」、「チョコレートが大好き」、「いもうととけんか」といった曖昧なものまで登録されていますが、そんな「とくい」も生かしてしまうのがこの銀行のすごいところです。

プロフェッショナルな特技でなくても、ちょっとだけ自慢したいキャラクターや「とくい」を持っている人と、その「とくい」に興味ある人をつなぐサービスは、地域コミュニティの活性に適しているといえそう。
人それぞれの特技が生み出す曖昧な魅力や、日常に潜む面白さに気づかせてくれる作品でした。

時間を超えて、徒競走。スポーツタイムマシン


ycam02-13

3つめの展示は、「アナグラのうた 消えた博士と残された装置」の制作などで知られるゲームクリエイターの犬飼博士さんと、インテリアデザイナーの安藤僚子さんによる「スポーツタイムマシン」。スクリーンに映し出された過去の記録=影と駆けっこができるという作品です。
駆けっこの相手には、自分と同じ年齢や体格の人や、坂本龍一さん、YCAMDOMMUNEの「ヒップホップっこども新聞」にも出演した伊藤ガビンさん、YCAM館長、地元サッカーチーム「レノファ山口FC」の選手、「山口市陸上スポーツ少年団」の小学生選手など、アーカイブされたデータの中から好きな選手を選ぶことができます。

ycam02-14
人間だけではなく、象やチーター、山口のゆるキャラ「ちょるる」などのデータも登録されています

ycam02-15
犬飼博士さん(左)、安藤僚子さん(右)

面白いのは「選手カード」をつくり会場を走ると、自分のデータも登録されること。
登録者の数は、7月6日から8月現在までの間で、約2,100 人。データは公式サイトにアーカイブされており、ログインすると自分のデータを管理することもできます。


犬と一緒に走った方の3Dデータ

記録されたデータは、実は3Dデータで記録されています。ゆくゆくはユーザがデータをダウンロードし、3Dプリントできるようにしたいそうです。

ycam02-16

上の画像は、7月のオープン時は歩けなかった、はるま君という男の子の3Dデータです。
歩けるようになったということでご両親がデータを記録しに来たそうです。
二人が提案するのは、過去・現在・未来を横断した身体コミュニケーション。
安藤僚子さんは「コンピューターの中にあるバーチャルな情報空間と、自分たちの身体が存在するフィジカルな実空間の間に境目をなくして行きたいと考えています。未来に向けてデータを登録すれば、子どもが自分の親のデータを現実のサイズで取り出してかけっこをするなんてこともできるかもしれません。」と語ってくれました。

以上、受賞作品をご紹介しました。
「LIFE by MEDIA」は、さまざまな人を取り組む集合知的なアプローチと、メディアと人/メディアと生活というものに対する問いかけが、街へ波及した試み。
その試みが街の人たちに受け入れられ、実際にアートを介したコミュニケーションが生まれていたことに驚きました。

今回レポートした「LIFE by MEDIA」に限らず、YCAMが提供する作品はオリジナルの為、アーティストが滞在生活をしながら、スタッフや開発チーム「YCAM InterLab」、キュレーターなどと共同で作品をつくり上げていくそうです。その制作環境はアーティストからも評判がよく、YCAM GUIDEBOOKの中でも、アーティスト/プログラマのカイル・マクドナルドさんが「最高の技術とサポートがあり、リラックスして深く考えることができる。ある意味“巡礼”に来るようだ」(※2)とコメントしていました。
2日間滞在しただけでもたくさんのつくり手と出会い、ここはすごいクリエイターが集まってる所だから面白いんだ、ということを実感しました。アートをつくる理想的な環境を見れて、とても充実した2日間でした。案内してくださった田中みゆきさん、YCAMの皆さん、ありがとうございました!

※2 美術手帖2013年6月号増刊 YCAM GUIDEBOOK 山口情報芸術センター[YCAM] アートと社会をつなぐ、メディアの実験場 P.24より転載

YCAM周辺案内:湯田温泉の街


これから山口へ行ってみようという方へ、周辺の情報も少しだけご紹介。YCAM周辺の宿といえば湯田温泉エリアです。YCAMから徒歩15分ぐらいの所にあり、足湯スポットや立ち寄り湯、魅力的な料理屋もあって、温泉街の雰囲気を楽しめます。
裏通りに入れば、ちょっとした飲屋街も。今回訪れたのは、夜中でも美味しいうどんが食べられる、晩酌処 沖 。地元のお客さんも多く、深夜の憩いの場という感じでした。

ycam02-18
舞う女将
滞在アーティストにも人気の宿、西の雅 常磐もぜひ訪れておきたいスポット。YCAMDOMMUNEにも出演した名物女将による総合エンターテインメント「女将劇場」は、宿泊客でなくても無料で観覧できます。そのほか、天気が良ければYCAMや駅周辺で借りられるレンタサイクルもおすすめ。温泉街からYCAM、商店街まで一気に回れます。YCAM GUIDEBOOKにも、厳選されたおすすめスポットが掲載されています。




今回ご紹介したYCAM10周年の第一期展示は9月1日まで。第二期は11月1日からとなっており、ひきつづきYCAMDOMMUNEやバージョンアップした「LIFE by MEDIA」の展示が楽しめます。さらに、坂本龍一さん + 高谷史郎さんによる新作インスタレーションやワークショップなど、新たな企画も予定されているとのこと。詳細は随時公式サイトにアップデートされます。この機会に、ぜひYCAMへ足を運んでみてはいかがでしょうか。


Article by Yu Miyakoshi



Information


YCAM10周年記念祭
http://10th.ycam.jp/

実施期間
第1期:2013年7月6日(土)~9月1日(日)
第2期:2013年11月1日(金)~12月1日(日)

開館時間:10:00 – 20:00 ※夜間イベントのある日は22時まで開館
休日:火曜休館・閉場 祝日の場合は翌日(10月22日(火)のみYCAM 開館)

主催
山口市、公益財団法人山口市文化振興財団

展示エリア
山口情報芸術センター [YCAM]
山口市中央公園
市内各所(山口市中心商店街、一の坂川周辺)

YCAM10周年はアート・環境・ライフにフォーカス 10周年記念祭レポート(前編)

ycam_10th_17

魅力的な展示/イベントを企画し、常々メディアアート好きに「なぜ山口にあるの?」と歯がゆい思いをさせてきたYCAM。
今年で10周年を迎え、7月から12月にかけて、アート・環境・ライフといった概念を中核に、さまざまなイベントを展開しています。というわけで8月10日から11日にかけて、弾丸ツアーを決行!「Yamaguchi Mini Maker Faire」や、6組のアーティストによる国際グループ展、坂本龍一 + YCAM InterLabによるインスタレーションなど、見どころを堪能してきました。それではさっそくレポートをお届けします。

Article by Yu Miyakoshi




湯田温泉駅からタクシーでYCAMに向かうと、遠くに山が見える盆地に突如として近代的な建物が見えてきました。こちらが磯崎新氏による、YCAMの建物YCAMの建物。外観だけでもテンションが上がります。

ycam_10th_02

ycam_10th_03
坂本龍一 + YCAM InterLab「Forest Symphony」

エントランスを入ると、右手にある吹き抜け空間(ホワイエ)に、 天井からいくつものスピーカーがぶら下がっていました。 耳をすますと清流のような電子音が聞こえ、森閑とした空気が漂っています。じつはここが、坂本龍一 + YCAM InterLabによるインスタレーション「FOREST SYMPHONY」の展示スペース。スピーカーから聞こえたのは、樹木の生体電位から生成した音楽でした。この作品はウェブ( http://forestsymphony.ycam.jp/graph/ )でも展開しており、世界各地からデータを集めるため、樹木から電位を取得するツールキットをオープンソースデバイスとして公開しています。さらに、11月からは坂本龍一 + 高谷史郎による新作インスタレーション( http://10th.ycam.jp/term2/526/ )も発表される予定となっています。

西日本初の開催「Yamaguchi Mini Maker Faire」


つづいてD.I.Yの祭典「Yamaguchi Mini Maker Faire」へ。電子工作や3Dプリンティング、ロボットなどを自分の手でつくる“メイカー”たちが出展するフェアです。

ycam_10th_18
Yamaguchi Mini Maker Faire

ycam_10th_19

ycam_10th_05
YCAMの研究開発チームである「YCAM InterLab」のブース。Interlabが開発に携わっている「The Eyewriter」、「RAMプロジェクト」、「TECHTILE」などが紹介されデバイスも体験可能となっていた。

ycam_10th_06
丸尾龍一「龍一丸」

上の写真は、インパクトNo.1だった丸尾龍一さんのデコチャリ、「龍一丸」。丸尾さんは小学生の時に装飾がほどこされたトラック「デコトラ」に魅了され、現在はトラックドライバーが集う無線クラブ「幸友會」に所属し、自らも「龍一丸船団」というクラブを設立。しかし、免許がなくトラックを運転することはできないため、デコトラの自転車版をつくっているそうです。デコチャリは、日本古来のアウトロー文化、かぶき者や、ヤンキー文化の流れも感じさせます。走行シーンも見たいという方はこちら( http://youtu.be/yNkDYf3gKRY )からどうぞ!

ycam_10th_07
中政人「未来丸」

隣に展示されていた初音ミク一色のデコチャリ「未来丸」は、弟分の中政人さんの作品。ボーカロイドも使うんですか?とたずねると「ボーカロイドは、ソフトなどを揃えるのが大変なので、今はこれに力をそそいでいます。先輩(丸尾さん)からLEDをもらってつくりました」とのこと。ものづくりの原点を感じさせられました。



城一裕「Laser Cut Record」

IAMAS(情報科学芸術大学院大学)ブースでは、研究者・アーティストの城一裕さんによる「cutting record」を展示。バウハウスのマイスター、モホリ=ナギが提案した「あらかじめ吹き込むべき音響なしにいきなり必要な溝をそこに掘り込み、そのレコード盤上で音響という現象じたいを発生させるようにすること」というアイデアを現代的に実現したものです。展示のほか、城さん本人によるライブ・パフォーマンスも行われました。


古山善将「Ubi-Camera」Via DigInfo News Japan

こちらは古山善将さん(IAMAS)の「Ubi-Camera」。 上の写真のように指で構図を決め、指先に装着したカメラでそのまま撮影することができます。距離センサーが搭載されており、顔に近づけて撮ると広角、離して撮るとズームした写真が撮れ、見たままの視覚が撮影できるようになっています。

ycam_10th_21
ライブ会場では出展者によるパフォーマンスが行われていました。プログラムはこちら。写真はブレッドボードを使って演奏をする”The Breadboard Band”のパフォーマンスの様子。


同時期にYCAMでは、openFrameworks開発者によるカンファレンスも開催されていました。このカンファレンスについては、以下の田所淳さんによるレポートにまとめられています!

SONY DSC
今回のMaker Faireは西日本初の開催だったそうですが、東京からの出展者も多く、西日本と東京の交流の場になっており、暖かい雰囲気だったことも印象的でした。

当日の様子を撮影したクリップ動画 by yang02さん、雰囲気がわかりやすいので合わせてご紹介。



子どもたちが創造する屋外メディア公園「コロガルパビリオン」


公園側の出入り口から外へ出ると、すぐ目の前が中央公園。芝生が広がり、ケータリング出店エリアでビールやフードを買ったり、メディア公園「コロガルパビリオン」で遊べたりします。

ycam_10th_09
assistant + YCAM「コロガルパビリオン」

「コロガルパビリオン」は2012年に展示された、子どもが体と頭で遊びを創るための公園「コロガル公園」を、建築家ユニットassistantがバージョンアップさせたもの。
すり鉢状の床やすべり台のようになっている床にスピーカーやLEDなどが仕掛けられており、大人が遊んでも楽しい!

ycam_10th_10

ycam_10th_11

ycam_10th_12



このほか、7〜9月にかけては子ども向け教育プログラム「YCAMサマースクール( http://yschool.ycam.jp/ )」の開催もあり、子ども向け企画が充実しています。

国際グループ展「art and collective intelligence」


館内に戻り、国際グループ展「art and collective intelligence」へ。「集合知」をテーマに、今後の芸術表現が、社会・環境・思想・コミュニケーションのあり方とどのように関わり、そしてどのような変革が起こせるのかを考える展覧会。タレク・アトウィ、コンタクト・ゴンゾ、ハックデザイン+リサーチ、平川紀道、ダフィット・リンク、 ムン・キョンウォンの作品が並び、ゆっくりとメディアアートが観賞できる空間になっています。


Norimichi Hirakawa, the versions [ a – z ] 2013 Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

映像音響インスタレーションを手掛けるアーティストとして知られる平川紀道さんの新作は、無音で仕上げたインスタレーション作品「 the versions [ a – z ]」。その音から解放された空間は、時空を超えた超空間とでもいうような、不思議な空間。高精細・高解像度な映像と光、周期性の生み出す世界観に圧倒されました。

ycam_10th_13
ムン・キョンウォン「プロミス・パーク」2013

韓国生まれのアーティスト、ムン・キョンウォン(Moon Kyungwon)の作品は初見だったのですが、2面の映像で構成された空間は圧巻。今回の作品は、「なぜ人々は「公園」を必要とするのか」という問いを出発点に、2070年の世界を都市と公園のリサーチを元に制作したものだそうです。


contact Gonzo + YCAM “hey you, ask the animals. / studies on territories and movements.” Teaser

殴る/ぶつかるといった激しい「接触 」に基づいたパフォーマンスで注目を集めるアーティストグループ、contact Gonzo(コンタクト・ゴンゾ)は、新作「hey you, ask the animals./テリトリー、気配、そして動作についての考察」を展示。観賞ツアーに参加すると、普段は入れない地下室と空調電源室に展示された映像インスタレーションを観ることができます。彼らが身ひとつで山を滑走する「山サーフィン」や、トレイルカメラが撮影した野生動物などの映像は、凄い!の一言。 究極のメディア、身体をフルに活用した表現に驚異を感じました。

ycam_10th_14

ycam_10th_15
塚原悠也(contact Gonzo主宰/ダンサー)


ycam_10th_20
地下のインスタレーションの様子、山ごもりしてた際の手記や道具などをインスタレーションとして展示、インパクトのある壁画はcontact GonzoのメンバーでもあるNAZE氏によるもの。


また、8月24日 (土)~ 26日 (月)にかけて、この作品を体験できる参加型アウトドア・プロジェクト( http://gonzoycam.tumblr.com/ )が開催されます。
内容は山口市内の山間部にて、「山サーフィン」、contact Gonzoが全神経を研ぎすまし参加者を探し出す「かくれんぼ」、DJ BIOMANを迎えたバーベキューパーティー「森の中のパーティー」などを体験するというもの。「かくれんぼ」など本気で恐そうですが、身体性を喚起される貴重な体験ができそうです。

ちなみにこのプロジェクトには、中村キース・ヘリング美術館で個展「untitled 2」を開催中のyang02さんも参加しています。菅野創さんとのコラボレーション作品「SENSELESS DRAWING BOT #2」で、機械から野生の匂いを感じさせたyang02さんが参加しているというのは、何とも興味深い縁。「我も!」という方はぜひチェックしてみてください。参加方法、スケジュールは以下より。


※またyang02さんが制作しているセンサーカメラの詳細についてはこちらのブログで紹介されています。

真夏の夜の星空の下で見る映画


ycam_01

夜は、3夜にわたってYCAM前の中央公園で「真夏の夜の星空上映会」が行われていました。YCAMでは毎年恒例の屋外上映会です。この日の映画はウェス・アンダーソン監督の「ムーンライズ・キングダム」。
雑談をしたり、寝転んだりしてもOKな雰囲気の、とても気持ちいい上映会でした。

以上、10周年記念祭レポート(前編)でした。後編は商店街を舞台にした、コンペ「LIFE by MEDIA」、「FILM by MUSIC」受賞作品展の内容を中心にお届けします。お楽しみに!




YCAMの魅力と10周年のプログラム、市内のスポット紹介などが詰まったガイドブックが美術手帖別冊として発売中です、こちらも合わせてどうぞ!


そうだ、YCAMへ行こう!YCAM10周年記念祭 – おすすめイベント&展示をザッとご紹介!!

Information


YCAM10周年記念祭
http://10th.ycam.jp/

実施期間
第1期:2013年7月6日(土)~9月1日(日)
第2期:2013年11月1日(金)~12月1日(日)

開館時間:10:00 – 20:00 ※夜間イベントのある日は22時まで開館
休日:火曜休館・閉場 祝日の場合は翌日(10月22日(火)のみYCAM 開館)

主催
山口市、公益財団法人山口市文化振興財団

展示エリア
山口情報芸術センター [YCAM]
山口市中央公園
市内各所(山口市中心商店街、一の坂川周辺)


山口情報芸術センター [YCAM]
住所:山口県山口市中園町7-7
TEL:083-901-2222
Access(http://10th.ycam.jp/access/

Links