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openFrameworks開発者会議 in YCAM 参加レポート

August 21, 2013(Wed)| Article by Atsushi Tadokoro

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はじめに – openFrameworks開発者会議について


2013年8月7日から14日、1週間にわたってopenFrameworksの開発者会議(Developer conference)が開催された。会場は、山口情報芸術センター(YCAM)、アメリカ以外では初の開催となった。筆者もこの開発会議に全日程参加し、多くの開発者と交流する機会を持つことが出来た。ここで、開発者会議の様子をレポートしたい。

※今回のレポートはYCAM Interlabのウェブサイトにて毎日更新された開発者会議レポートを編集・加筆したものとなります。

openFrameworks開発者会議は、第1回はピッツバーグにあるカーネギーメロン大学内にある The Frank-Ratchye STUDIO for Creative Inquiry で、第2回は、デトロイト市内にある OmniCorpDetroit で行われた。筆者は第2回のデトロイトの開発者会議に次いで二度目の参加となる。デトロイトでの開発会議の様子もCBCNETでレポートしているので、こちらもぜひ読んでみて欲しい。


今回の開発者会議には、世界各所から17名の開発者が集まった。


それぞれのメンバーの活動はリンク先のパーソナルWebページから辿ることが出来る。それぞれのWebページを参照するとわかるように、開発者の多くはプログラマーでありながら、同時にアーティスト、デザイナー、研究者、ライターなど多岐にわたる活動を第一線で行っており、文字通り多才なメンバーの集まりであった。活動地域も、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、チリ、オーストラリア、そして日本と、まさに世界中からYCAMに集結していた。

開発会議の様子


「開発者会議」といっても、たとえばApple Developer Conferenceのように巨大なレセプションホールのステージでスライドを駆使した派手なプレゼンがあるわけではない。会議の主眼は開発作業そのものである。時間を区切って話し合いなどを行いながら、あとはひたすらコーディングに打ち込むという内容である。ちなみに筆者は最初に参加したデトロイトの開発者会議で、気楽に客席でプレゼンを聞いていれば良いのかと勘違いして参加して、会場で実際に開発に参加すると知り狼狽したという経験がある。

メインの開発スペースは、YCAMのアトリエの1室。机を繋げた広いスペースを囲んで思い思いの場所でコーディングをするというスタイル。各メンバーは自身のラップトップPCを拡げてコーディング作業に没頭していた。ぱっと見た感じではMac派が8、9割と、圧倒的多数だった。

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会議の内容


会議の大きな目標は、openFrameworksの今後の開発の方針について詳細に話し合うことであった。

まず初日に、簡単なお互いの自己紹介に続いて、openFrameworksへの「夢」を一人一人が発表した。その内容を踏まえて、今後重点的に開発が必要と思われるワーキングチームを作成して、チーム毎に詳細を話合い、その結果をまた全体で討議するという繰り返しで、全体の合意を得ながら個別の開発作業が進められた。

作成されたワーキンググループは以下の通り

  • Shaders: プログラマブルシェーダ(GLSL)のわかり易いサンプルの整備や、様々な技術的な機能の追加など。
  • Sound: openFrameworksではまだ弱い部分が多いサウンド周りの機能の追加と整理、ファイル操作やミキシングなどを簡単に扱うことのできるクラスを開発。
  • ofxAddons.com: 既に存在する「ofxAddons.com」をより使い易くするには? より多くの開発者を魅きつけ、なおかつ自動的にコンテンツが生成されていく仕組みづくり。
  • Typography: 多言語環境の実現(Unicode環境の整備)、2バイト文字の表示、カーニングやハイフネーション、絵文字の表示などより木目細かな文字表示のための基本クラスの構築。
  • Video: 現在のQuickTimeをベースとしたAPIをよりモダンなものへと変更。QTKit, GStreamer, AVFoundation, Windows Media Foundationなどを検討。
  • ofSite: より使い易いopenFrameworksのWebページを目指す。チュートリアル、ドキュメンテーション、コミュニティー、多言語化など。
  • ProjectGenerator: 現状のProjectGeneratorのリデザイン。GUIの変更やアドオンのネットからのインストールなど。

oF 0.8.0 is out!!


開発作業が続くなか、openFrameworks v.0.8.0が公開された。公開された瞬間、スタジオ内では自然と拍手が巻き起こっていた。

様々な機能の追加や修正が加えられた。主な変更点としては、

  • OpenGLの描画のベースが、GLUTからGLFWに変更
  • Visual Studio 2012をサポート
  • Raspberry Piのサポート
  • XMLを扱うアドオンが、ofXmlとしてコアライブラリに追加
  • Kinectを使用するためのアドオン、ofxKinectをパッケージに同梱
  • GUIを作成するためのオフィシャルアドオン、ofxGuiが付属

など。より詳細の更新履歴は、オフィシャルサイトのChange Logを参照されたい。

ofxAddons.comリニューアル


開発会議中に、ofxAddons.comのリニューアルが行われた。

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ofxAddons.com は、もともとはJames Georgeの個人プロジェクトとして始まったWebサイトで、Githubにアップされたリポジトリから「ofx…」で始まるものを定期的にクロールしてアーカイブし、サイトから直接ダウンロードできるようにしたものだ。

実際に以下のリンクを辿ると、Githubでofxで始まるリポジトリが大量にヒットすることが確認できる。

このデータを収集してレイアウトして一覧表示しているというのが、基本的な仕組みだ。

ジャンルごとにアドオンの一覧が見られるだけでもとても便利なのだが、今回の開発者会議で討議される中で、いくつか問題や要望が出された。

  • アドオン探索の拠点にしたい
  • より自動化できないか?
  • もっと「コミュニティー感」を醸成したい(人、場所)
  • 開発者の貢献を目に見える形にするプラットフォーム
  • アドオンの「標準」形式の推奨、同じような形式で公開するように維持
  • コミュニティーの活動量(鼓動)が見えるように
  • 最後にコミッットした日、閲覧されている回数、forkされた回数の表示など

こうした要望を汲み取ってリニューアルしたのが今回のバージョンだ。

それにしても、他の開発作業や全体でのディスカッションをしながら、ほぼ1日でこのリニューアルを行いさらに公開まで漕ぎつけてしまうスピード感には脱帽させられる。

今回のリニューアルは、James George、Lauren McCarthy、Cyril Diagne、Chris Sugrueが行った。素晴しい仕事に感謝したい。

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アドオンを作成して公開しよう!


今回のリニューアルに際して、アドオンの作成の方法についての丁寧なチュートリアルも整備された。

アドオンとは何か、どうやってインストールするのかといった基本的な解説から、アドオン内部のファイル構造、そしてその公開までの手順までを詳細に記述している。(この資料は近日中に翻訳して公開したい。)

腕に覚えのあるプログラマーは、ぜひアドオンを開発して公開しよう。何か新しい技術や、まだopenFramworksには取り入れられていない機能などを実現した際に、それを開発コミュニティーへ還元する方法として一番早いのは、アドオンとして整備して公開することだ。

openFrameworksのコアな開発メンバーは、こちらが想像している以上に、頻繁に各種アドオンやその開発者についてチェックしている。良いアドオンを作ると、徐々に開発者のネットワークの中での存在感が増して認知されるようになるはずだ。

ちなみに、世界で一番アドオンを沢山公開しているのは、比嘉了(satoruhiga)で、その数なんと52個!!

プレゼンテーションとワークショップ


カンファレンスの開催期間中である8月10日と11日は、Yamaguchi Mini Makers Faireが同じYCAMを会場として開催されていた。openFrameworks開発者チームからも、プレゼンテーションとワークショップに参加した。

まずMaker Faire初日の10日には、プレゼンテーションが行われた。出演したのは、比嘉了、James George、Arturo Castro、Cyril Diagne、米田研一、Lukasz Karluk、Lauren McCarthy、Chris Sugrueという顔触れ。プレゼンテーションの内容は、それぞれ以下のようなものであった。

一番手は比嘉了。最近取り組んでいる、ダンサーとのコラボレーションについて。SonarSound Tokyo Festival 2013で披露されたダンスとコンピュータビジョンの融合したパフォーマンスや、そのシステムを Nosaj Thingの”Eclipse/Blue”のプロモーションビデオで使用した映像、さらには、カンヌライオンで披露されたPerfumeとのコラボレーションのパフォーマンス映像などが披露された。

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James George。openFrameworksを使い始めたころのインタラクティブな作品、「SNIFF」や、市販のデジタルカメラとKinectを組み合わせたRGBD Toolkitによるドキュメンタリーフィルム「Clouds」、iPhoneを高い場所から落としてその落下時間が長ければ長いほどハイスコアになるというiPhoneアプリ「Freefall Highscore」などが紹介された。

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Arturo Castro。プリンターとコンピュータビジョンを組み合わせたゲームの紹介や、キャプチャーした顔のイメージをリアルタイムに別の顔と入れ替える「Faces」プロジェクトなどをプレゼン。

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Cyril Diagne。彼の所属する研究スタジオ「LAB212」の紹介とそこで生み出された様々なプロジェクトが紹介された。仮想の星空の中でブランコを漕ぐことができる美しいインタラクティブなインスタレーション「Starfield」や、3DプリンターとArduino制御のモーターを組み合わせそこにピコプロジェクターでプロジェクションマッピングする習作「3d print + motor + pico projection mapping」、湖の底をソナーで計測して見えない湖底をビジュアライズするプロジェクト「Bruits de fonds」などを紹介。

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米田研一。水彩の滲みや線画による陰影のスケッチをアルゴリズムでリアルに再現し、絵を描く行為自体をアルリズムにして表現する様々なプロジェクトをを紹介。作品は、Vimeoのページで大量に観ることができる。

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Lukasz Karluk。壁にプロジェクションさせた映像をコンピュータビジョンで解析して障害物をつくり出し、リアルタイムにクラシカルなゲーム「Snake」を街中で遊ぶことができる「Snake the planet」や、音楽に反応して複雑に変化する近日公開予定のiPadアプリを紹介。

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Lauren McCarthy。コミュニケーションや人間関係をテクノロジーによって変容させたり、集合知によりハッキングする様々なアートプロジェクトを紹介。笑顔にしていないと痛みがはしる笑顔養成ギブス(?)「HAPPINESS HAT」や、カップルがコミュニケーションするために次にすべきことを指示する箱「CONVERSACUBE」、ソーシャルネットワークからの指示にしたがってデートしてみるプロジェクト「social turkers:crowdsourced dating」など様々なユニークな作品が紹介された。

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Chris Sugrue。ディスプレイの画面内の虫がその枠を越えてあたかも手の上に溢れでてくるようなインタラクティブなインスタレーション「Delicate Boundaries」、指の選択ではなく指と指の隙間の窪みに注目してインタラクションを行う作品「Base 8」、光を鏡で反射させて生成的な形態を映し出すインタラクティブな作品「Decrypted Reflections」などを紹介。

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どのプレゼンテーションも内容の濃いすばらしいものであった。openFrameworksの開発者の多くが自分自身が表現者であり、作品で使用した技術のエッセンスをopenFrameworksのコアに還元することで、それを元にしたさらに優れた表現の下地になるという、表現のためのエコシステムが構築されている。多く開発者達の知恵をうまく吸収して、次々と進化していく仕組みがopenFrameworksコミュニティーの素晴しさなのだと改めて気付かされるプレゼンテーションだった。

翌日の11日には、Christopher Bakerによる子供のためのワークショップが開催された。会場には8歳から14歳までの子供達が10名ほど集まり、「クリス先生」を囲んで座った。

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ワークショップの大きなテーマは「Drawing(絵を描く)」。といっても、ただ漫然とお絵描きするのではなく「Drawing is thinking (絵を描くということは考えるということ)」という哲学に沿って、絵を描くということの背後にある考え方、その手続きなどについて、実際に絵を描きながら考えていくという内容。

前半は、与えられたアルゴリズムに従って、みんなで絵を描いてみるという実験。
たとえば、次のような「アルゴリズム」が伝えられる。

  • draw a circle. (円を描きなさい)
  • draw a another circle that is a same size. (もう一つ同じ大きさの円を描きなさい)
  • draw a another circle bigger than the last. (さっきよりも大きな円を描きなさい)
  • draw a line. (線を描きなさい)


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この指示に沿って、黙々と絵を描いていく子供達。

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クリス先生の回答例。顔が描かれた。

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後半は、一人一人にiPadが配られ、iPadで絵を描いてみることに。まずは、Golan Levinによる「Yellowtail」で遊んでみる。指で描いた形が次々とアニメーションになっていく様子に子供達は大興奮。夢中で画面上を指でなぞっていた。

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次に、子供達に不思議な鉛筆が配られた。この鉛筆はJay Silverによって開発された「Drawidio」という鉛筆で描いた線から音が出るというガジェットで、鉛筆で線を描きその上を指でなぞっていくと、まるでテルミンのように音を変化させることができるというものだ。これにも子供達は大喜び、芯が折れそうな勢いで鉛筆で画用紙を塗りたくっていた。

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最後にまた、iPadで遊ぶ。先程のDrawidioをソフトウェアで実現したようなiPadプログラムを起動する。これは、声を出しながら画面を指でなぞって絵を描くと、描いた線の中に録音ができるというプログラム。描いた線にどんどん録音される。ただひたすら叫ぶ子供から、ひらがなを描きながら、その音を喋るという使い方まで、様々な「奏法」が開発されていました。

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全体を通して、とてもよく考えられたワークショップで、実際に手を動かしながら「描く」という行為を通して様々なことを学んでいくことができるという仕組みで、とても興味深いものであった。

openFrameworks v1.0に向けてのロードマップ


会議の最終日に、今回の会議での議論や開発作業をふまえて、今後の指針を策定する作業を行いった。Google Documentに全員で書き込みながら、最終的にひとつのドキュメントopenFrameworks v.1.0に向けてのロードマップとしてまとめられた。ドキュメントを見返してみると、この会議で本当に多くのことが話し合われたのだということを改めて実感する。この成果をもとに、今後のopenFrameworksの新たなバージョンv1.0に向けての開発が進められる。

ロードマップの内容は膨大なもので、また、現在の段階では開発チーム内部での情報であり、完全にオープンにすることのできない。本稿では、そのアウトラインのみの公開としたい。しかし、このアウトラインを眺めるだけでも、今後の開発の向かう方向は感じられるのではないかと思う。

  • openFrameworksコア
    • 3D
      • メッシュ
    • グラフィクス
      • Cairo
      • シーングラフ
      • 国際化(Unicode)
      • タイポグラフィ
    • OpenGL
      • テクスチャー
      • ライティングとマテリアル
      • シェーダー
    • サウンド
    • プラットフォームとアーキテクチャー
      • アプリケーションのアーキテクチャー
      • クロスプラットフォーム化
      • C++ 11
    • ライブラリー
    • ビデオ
  • アドオン
    • 3Dモデルのサポート
    • OpenCv
    • ネットワーク
  • ツール
    • プロジェクトジェネレイター
    • アドオンジェネレイター
  • ドキュメント
    • サンプル
    • リファレンス
    • チュートリアル
  • コミュニティー
    • openframeworks.cc
    • ofxaddons.com
  • 議論の場
    • リーダー
    • GitHubへの貢献 Contributions
    • 継続的なテスト環境


議論の中で感じたこと – 多様性と統一性


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会議中一人で占有して喋り続ける人は居らず、また強権的に否定する独裁的なこともなく、とても民主的な雰囲気であった。お互いがそれぞれの開発者をリスペクトしている雰囲気が伝わってきた。

感心したのは、議論の進めかたとその記録について。議論のアジェンダとアウトラインはあらかじめGoogle Driveの書類として共有されていて、議論の最中もその書類を色々な人がどんどん書き込んでいく。複数のカーソルが飛び交い、リアルタイムに議事録が作成されていく仕組み。このやり方は様々な場所で応用できそうなので、今後の参考にしてみたい。

「openFrameworksとは」という問いに対して「様々な機能を繋ぎあわせる『糊』のようなもの」というたとえが用いられる。これはopenFrameworksの本質をよくあらわしている説明だ。しかし、糊だからといってただ闇雲に雑多な機能を貼り合せるだけでは、ただの醜い塊になってしまう。openFrameworksの優れた部分は、多くの機能を貪欲にとりこみつつも、きちんとそれらを統一された方針で整理して、誰にでもすぐに理解できるように翻訳して提供している部分にあると思う。糊の例えでいうと、同じ糊でも用途に応じて「良い糊」と「悪い糊」があり、それを適切に使用することで元の素材の機能を殺すことなく、openFrameworksのコアにとりこむことが可能となる。その作業は一見簡単なようで、実は多くの仕組みについての深い理解がなければ不可能なことであり、またきちんとした意思統一がなされていないと破綻してしまう繊細な作業なのだということが、話し合いの場にいて感じられた。

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また、openFrameworksの開発としてよくいわれるキーワード「DIWO (Do It With Others)」というものも、この場にいるとその本質が見えてきたような感じがする。Zach Liebermanさんや、Theo WatsonさんなどopenFrameworksにはその初期の開発から携わるコアなメンバーが存在する。だからといって彼らが独裁的に全てを決めているわけではなく、そのコミュニティーの運営はとても民主的だ。今回の開発者会議では、Kyle McDonaldさんが全体をうまくモデレートし、大勢の意見をくみとりながら会議を運営している様子が印象に残った。

開発スピードや機能のユニークさを追い求めるのであれば、独裁的に開発する場合の利点もあるのかもしれない。しかし、openFrameworksの目指すものは、一部にだけ尖ったものを追求するのではなく、多様な機能を包括する万能ナイフのようなものなのだとすると、独裁的な開発体制とは馴染みが悪いものであろう。

世界中を開発の舞台として集団的な開発は、Gitを始めとするネットワーク前提として様々な技術があって始めて可能となったものでもあり、開発の手法といった観点からみても、openFrameworksのコミュニティーは面白い存在と思う。

貢献に対する賞賛


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去年東京で開催されたFITCというイベントでKyle McDonaldさんが「How to Give Everything Away (全てを公開してしまう方法)」というタイトルで講演を行った。その内容は、タイトルの通り、作品、コード、行動、考えなど全てを公開することの意義について語るというものであった。

Vimeoで、同じ内容の講演の映像が閲覧できる。
“How to Give Everything Away” – Kyle McDonald at push.conference 2012
ここで彼が発言していた印象的な言葉として「シャイであるということは、自己中心的なのだ」というものがある。これは、自分が恥かしがり屋だからという理由で持っている情報を公開しないという態度は、それを必要としている人へ情報を届けることを怠っていることである。つまり、情報を独占する自己中心的なわがままな行為であるという考えだ。彼はまた「どんな情報でも、それを必要としている人がいるはず」ということも述べていた。

開発会議の中では「コミュニティー」というキーワードが頻出していた。そのことが象徴ように、openFrameworksの開発チームは、いかにして多くのデベロッパー達が開発に貢献したいというモチベーションを高めてくれるかということに対して、色々な知恵を絞っているように感じられた。

実際に開発者会議に参加して印象的だったのは、何か新しいをやろうという提案には賞賛を惜しまないオープンなカルチャーだ。その人が普段何をしているか、開発者としてのそれまでのキャリアなどを問われることはない。それよりも「今、何ができるのか?」ということを重視しているように感じた。

今回YCAMで開催された開発者会議は日本での開催ということで、総計4名の日本からの開発者も加わることができた。これまで欧米圏に偏りがちだった開発メンバーの構成もすこし変化しつつある。

とはいえ、openFrameworksの開発者達にとって、日本のopenFrameworksコミュニティーは、ミステリアスな存在のようだ。openFrameworksを使用したプロジェクトが数多く存在し、コマーシャルな現場やアートの現場で発表されているのに、その開発者の顔はなかなか見えて来ない。まだまだ、日本の開発者からの情報発信が足りていないのが現状だ。

先程のKyleさんの言葉を借りるのであれば、日本の開発者は、まだまだ「自己中心的」であるのかもしれない。

1週間を振り返って


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開発者会議にを通して強く感じたことは、openFrameworksコニュニティーのオープンな姿勢とその親切だ。

今回の開発者会議は、Zach LiebermanさんやTheo Watsonさん、さらにはその師匠格のGolan Levinさんという開発の中心人物が都合で参加できず、比較的若い世代が中心となったメンバーだった。前回の会議のリーダー的な存在を欠き、果たして大丈夫だろうかという心配もあった。しかし、蓋を開けてみれば、Kyle McDonaldさんが中心となり、メンバーそれぞれがお互いを尊重し合いながらも、遠慮のない活発に議論が行われる、とても良い雰囲気の場が形成されていた。

残念ながら今回は参加出来なかったZachとは遠隔で打ち合わせ
残念ながら今回は参加出来なかったZachとは
遠隔で打ち合わせ
それぞれの開発者達はもちろん優れたプログラマーばかりなのだが、そうしたギーク達から想像されるような「変人」的なキャラクターは居ませんでした。どの方もコミュニケーションのインターフェイスをきちんと持った、協調性の高い人達が集まっているという印象を受けた。

そして、全体を通して強く感じるのは、そのオープンな姿勢だ。会議への参加資格が明確に定められているわけではなく、openFramworksの開発に参加したいという意思さえあれば基本的には誰でも参加できる。そして初めて参加するメンバーに対しても、とてもオープンで親切な対応をしてくれる。

こうしたコミュニティーの「空気」は、openFrameworksの創始者であるZach Liebermanさんの人柄によるところも大きいのかもしれない。しかしそれ以上に、いかにコミニティーの健全さを維持するのかということを、それぞれのメンバーが常に配慮しながら、活動を進めているように感じられた。

こうしたコミュニティーに通底にある空気やカルチャーのようなものは、集団で開発する際にとても重要な要素だと強く思う。開発者達は、基本的にはopenFrameworksの開発をすることで金銭的な見返りがあるわけではない。それでも積極的に数多くのプログラマーが世界中から集結し開発に参加する理由は、openFrameworks自体がとても便利なフレーワークであるということはもちろんだが、それと同時にコミュニティーへ貢献したいという気持にさせるチームとしても魅力があるのだと思う。

YCAMスタッフの方々への謝辞


また、この場を借りてYCAMのスタッフの方々に、深い感謝の意を表したい。毎回の食事は素晴しく、開発の合間にとても楽しい時間を過ごすことができた。また、多くのスタッフの方々の木目細かなサポートは開発の多大な支えとなった。そして、何といっても、YCAMの強みは、InterLabのメンバーを初めの多くのスペシャリスト達による技術的なサポートだと思う。ここまで規模の設備と人的な資本が充実した施設は、日本国内ではもちろん、世界中を見渡しても数少ないとても貴重な場所であろう。このYCAMで開発者会議を開催できた意義はとても大きいものであった。



おまけ: 会議中の食事

カンファレンスの期間中、YCAMスタッフの方々による、心のこもった手料理が振る舞われた。毎回の食事は素晴しく、開発の疲れを癒してくれるものであった。そのメニューのいくつかを紹介したい。

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うどん、唐揚げ、カレー(茄子のトッピング)、やきそば

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カレーうどん、親子丼、水餃子、そうめん(キンピラ牛蒡のトッピング)
ごちそうさまでした!!


Article and Photo by Atsushi Tadokoro

Information


http://openframeworks.cc/
日本語サイト:
http://openframeworks.jp/

http://interlab.ycam.jp/projects/of-devcon2013

http://www.flickr.com/photos/tadokoro/sets/72157634963315567/

http://www.cbc-net.com/topic/2013/06/beyond_interaction2/

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田所 淳 (@tadokoro)
TADOKORO, Atsushi
http://yoppa.org/

1972年千葉県生まれ。NTT InterCommunication Centerでの技術スタッフ、Webプロダクションなどを経て、現在はフリーランス。Webサイト制作から、openFrameworksを使用したアプリケーション開発など、インタラクションをテーマにデザイン・プログラミングを行なう。また並行して、コンピュータを使用したアルゴリズミックな作曲や、即興演奏を行なっている。2002年から多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師、2011年から東京藝術大学芸術情報センター非常勤講師。著書に『Beyond Interaction -メディアアートのためのopenFrameworksプログラミング入門』田所 淳、比嘉 了、久保田 晃弘(共著)、ビー・エヌ・エヌ新社、2010年。


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