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openFrameworks開発者会議 in YCAM 参加レポート

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はじめに – openFrameworks開発者会議について


2013年8月7日から14日、1週間にわたってopenFrameworksの開発者会議(Developer conference)が開催された。会場は、山口情報芸術センター(YCAM)、アメリカ以外では初の開催となった。筆者もこの開発会議に全日程参加し、多くの開発者と交流する機会を持つことが出来た。ここで、開発者会議の様子をレポートしたい。

※今回のレポートはYCAM Interlabのウェブサイトにて毎日更新された開発者会議レポートを編集・加筆したものとなります。

openFrameworks開発者会議は、第1回はピッツバーグにあるカーネギーメロン大学内にある The Frank-Ratchye STUDIO for Creative Inquiry で、第2回は、デトロイト市内にある OmniCorpDetroit で行われた。筆者は第2回のデトロイトの開発者会議に次いで二度目の参加となる。デトロイトでの開発会議の様子もCBCNETでレポートしているので、こちらもぜひ読んでみて欲しい。


今回の開発者会議には、世界各所から17名の開発者が集まった。


それぞれのメンバーの活動はリンク先のパーソナルWebページから辿ることが出来る。それぞれのWebページを参照するとわかるように、開発者の多くはプログラマーでありながら、同時にアーティスト、デザイナー、研究者、ライターなど多岐にわたる活動を第一線で行っており、文字通り多才なメンバーの集まりであった。活動地域も、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、チリ、オーストラリア、そして日本と、まさに世界中からYCAMに集結していた。

開発会議の様子


「開発者会議」といっても、たとえばApple Developer Conferenceのように巨大なレセプションホールのステージでスライドを駆使した派手なプレゼンがあるわけではない。会議の主眼は開発作業そのものである。時間を区切って話し合いなどを行いながら、あとはひたすらコーディングに打ち込むという内容である。ちなみに筆者は最初に参加したデトロイトの開発者会議で、気楽に客席でプレゼンを聞いていれば良いのかと勘違いして参加して、会場で実際に開発に参加すると知り狼狽したという経験がある。

メインの開発スペースは、YCAMのアトリエの1室。机を繋げた広いスペースを囲んで思い思いの場所でコーディングをするというスタイル。各メンバーは自身のラップトップPCを拡げてコーディング作業に没頭していた。ぱっと見た感じではMac派が8、9割と、圧倒的多数だった。

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会議の内容


会議の大きな目標は、openFrameworksの今後の開発の方針について詳細に話し合うことであった。

まず初日に、簡単なお互いの自己紹介に続いて、openFrameworksへの「夢」を一人一人が発表した。その内容を踏まえて、今後重点的に開発が必要と思われるワーキングチームを作成して、チーム毎に詳細を話合い、その結果をまた全体で討議するという繰り返しで、全体の合意を得ながら個別の開発作業が進められた。

作成されたワーキンググループは以下の通り

  • Shaders: プログラマブルシェーダ(GLSL)のわかり易いサンプルの整備や、様々な技術的な機能の追加など。
  • Sound: openFrameworksではまだ弱い部分が多いサウンド周りの機能の追加と整理、ファイル操作やミキシングなどを簡単に扱うことのできるクラスを開発。
  • ofxAddons.com: 既に存在する「ofxAddons.com」をより使い易くするには? より多くの開発者を魅きつけ、なおかつ自動的にコンテンツが生成されていく仕組みづくり。
  • Typography: 多言語環境の実現(Unicode環境の整備)、2バイト文字の表示、カーニングやハイフネーション、絵文字の表示などより木目細かな文字表示のための基本クラスの構築。
  • Video: 現在のQuickTimeをベースとしたAPIをよりモダンなものへと変更。QTKit, GStreamer, AVFoundation, Windows Media Foundationなどを検討。
  • ofSite: より使い易いopenFrameworksのWebページを目指す。チュートリアル、ドキュメンテーション、コミュニティー、多言語化など。
  • ProjectGenerator: 現状のProjectGeneratorのリデザイン。GUIの変更やアドオンのネットからのインストールなど。

oF 0.8.0 is out!!


開発作業が続くなか、openFrameworks v.0.8.0が公開された。公開された瞬間、スタジオ内では自然と拍手が巻き起こっていた。

様々な機能の追加や修正が加えられた。主な変更点としては、

  • OpenGLの描画のベースが、GLUTからGLFWに変更
  • Visual Studio 2012をサポート
  • Raspberry Piのサポート
  • XMLを扱うアドオンが、ofXmlとしてコアライブラリに追加
  • Kinectを使用するためのアドオン、ofxKinectをパッケージに同梱
  • GUIを作成するためのオフィシャルアドオン、ofxGuiが付属

など。より詳細の更新履歴は、オフィシャルサイトのChange Logを参照されたい。

ofxAddons.comリニューアル


開発会議中に、ofxAddons.comのリニューアルが行われた。

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ofxAddons.com は、もともとはJames Georgeの個人プロジェクトとして始まったWebサイトで、Githubにアップされたリポジトリから「ofx…」で始まるものを定期的にクロールしてアーカイブし、サイトから直接ダウンロードできるようにしたものだ。

実際に以下のリンクを辿ると、Githubでofxで始まるリポジトリが大量にヒットすることが確認できる。

このデータを収集してレイアウトして一覧表示しているというのが、基本的な仕組みだ。

ジャンルごとにアドオンの一覧が見られるだけでもとても便利なのだが、今回の開発者会議で討議される中で、いくつか問題や要望が出された。

  • アドオン探索の拠点にしたい
  • より自動化できないか?
  • もっと「コミュニティー感」を醸成したい(人、場所)
  • 開発者の貢献を目に見える形にするプラットフォーム
  • アドオンの「標準」形式の推奨、同じような形式で公開するように維持
  • コミュニティーの活動量(鼓動)が見えるように
  • 最後にコミッットした日、閲覧されている回数、forkされた回数の表示など

こうした要望を汲み取ってリニューアルしたのが今回のバージョンだ。

それにしても、他の開発作業や全体でのディスカッションをしながら、ほぼ1日でこのリニューアルを行いさらに公開まで漕ぎつけてしまうスピード感には脱帽させられる。

今回のリニューアルは、James George、Lauren McCarthy、Cyril Diagne、Chris Sugrueが行った。素晴しい仕事に感謝したい。

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アドオンを作成して公開しよう!


今回のリニューアルに際して、アドオンの作成の方法についての丁寧なチュートリアルも整備された。

アドオンとは何か、どうやってインストールするのかといった基本的な解説から、アドオン内部のファイル構造、そしてその公開までの手順までを詳細に記述している。(この資料は近日中に翻訳して公開したい。)

腕に覚えのあるプログラマーは、ぜひアドオンを開発して公開しよう。何か新しい技術や、まだopenFramworksには取り入れられていない機能などを実現した際に、それを開発コミュニティーへ還元する方法として一番早いのは、アドオンとして整備して公開することだ。

openFrameworksのコアな開発メンバーは、こちらが想像している以上に、頻繁に各種アドオンやその開発者についてチェックしている。良いアドオンを作ると、徐々に開発者のネットワークの中での存在感が増して認知されるようになるはずだ。

ちなみに、世界で一番アドオンを沢山公開しているのは、比嘉了(satoruhiga)で、その数なんと52個!!

プレゼンテーションとワークショップ


カンファレンスの開催期間中である8月10日と11日は、Yamaguchi Mini Makers Faireが同じYCAMを会場として開催されていた。openFrameworks開発者チームからも、プレゼンテーションとワークショップに参加した。

まずMaker Faire初日の10日には、プレゼンテーションが行われた。出演したのは、比嘉了、James George、Arturo Castro、Cyril Diagne、米田研一、Lukasz Karluk、Lauren McCarthy、Chris Sugrueという顔触れ。プレゼンテーションの内容は、それぞれ以下のようなものであった。

一番手は比嘉了。最近取り組んでいる、ダンサーとのコラボレーションについて。SonarSound Tokyo Festival 2013で披露されたダンスとコンピュータビジョンの融合したパフォーマンスや、そのシステムを Nosaj Thingの”Eclipse/Blue”のプロモーションビデオで使用した映像、さらには、カンヌライオンで披露されたPerfumeとのコラボレーションのパフォーマンス映像などが披露された。

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James George。openFrameworksを使い始めたころのインタラクティブな作品、「SNIFF」や、市販のデジタルカメラとKinectを組み合わせたRGBD Toolkitによるドキュメンタリーフィルム「Clouds」、iPhoneを高い場所から落としてその落下時間が長ければ長いほどハイスコアになるというiPhoneアプリ「Freefall Highscore」などが紹介された。

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Arturo Castro。プリンターとコンピュータビジョンを組み合わせたゲームの紹介や、キャプチャーした顔のイメージをリアルタイムに別の顔と入れ替える「Faces」プロジェクトなどをプレゼン。

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Cyril Diagne。彼の所属する研究スタジオ「LAB212」の紹介とそこで生み出された様々なプロジェクトが紹介された。仮想の星空の中でブランコを漕ぐことができる美しいインタラクティブなインスタレーション「Starfield」や、3DプリンターとArduino制御のモーターを組み合わせそこにピコプロジェクターでプロジェクションマッピングする習作「3d print + motor + pico projection mapping」、湖の底をソナーで計測して見えない湖底をビジュアライズするプロジェクト「Bruits de fonds」などを紹介。

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米田研一。水彩の滲みや線画による陰影のスケッチをアルゴリズムでリアルに再現し、絵を描く行為自体をアルリズムにして表現する様々なプロジェクトをを紹介。作品は、Vimeoのページで大量に観ることができる。

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Lukasz Karluk。壁にプロジェクションさせた映像をコンピュータビジョンで解析して障害物をつくり出し、リアルタイムにクラシカルなゲーム「Snake」を街中で遊ぶことができる「Snake the planet」や、音楽に反応して複雑に変化する近日公開予定のiPadアプリを紹介。

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Lauren McCarthy。コミュニケーションや人間関係をテクノロジーによって変容させたり、集合知によりハッキングする様々なアートプロジェクトを紹介。笑顔にしていないと痛みがはしる笑顔養成ギブス(?)「HAPPINESS HAT」や、カップルがコミュニケーションするために次にすべきことを指示する箱「CONVERSACUBE」、ソーシャルネットワークからの指示にしたがってデートしてみるプロジェクト「social turkers:crowdsourced dating」など様々なユニークな作品が紹介された。

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Chris Sugrue。ディスプレイの画面内の虫がその枠を越えてあたかも手の上に溢れでてくるようなインタラクティブなインスタレーション「Delicate Boundaries」、指の選択ではなく指と指の隙間の窪みに注目してインタラクションを行う作品「Base 8」、光を鏡で反射させて生成的な形態を映し出すインタラクティブな作品「Decrypted Reflections」などを紹介。

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どのプレゼンテーションも内容の濃いすばらしいものであった。openFrameworksの開発者の多くが自分自身が表現者であり、作品で使用した技術のエッセンスをopenFrameworksのコアに還元することで、それを元にしたさらに優れた表現の下地になるという、表現のためのエコシステムが構築されている。多く開発者達の知恵をうまく吸収して、次々と進化していく仕組みがopenFrameworksコミュニティーの素晴しさなのだと改めて気付かされるプレゼンテーションだった。

翌日の11日には、Christopher Bakerによる子供のためのワークショップが開催された。会場には8歳から14歳までの子供達が10名ほど集まり、「クリス先生」を囲んで座った。

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ワークショップの大きなテーマは「Drawing(絵を描く)」。といっても、ただ漫然とお絵描きするのではなく「Drawing is thinking (絵を描くということは考えるということ)」という哲学に沿って、絵を描くということの背後にある考え方、その手続きなどについて、実際に絵を描きながら考えていくという内容。

前半は、与えられたアルゴリズムに従って、みんなで絵を描いてみるという実験。
たとえば、次のような「アルゴリズム」が伝えられる。

  • draw a circle. (円を描きなさい)
  • draw a another circle that is a same size. (もう一つ同じ大きさの円を描きなさい)
  • draw a another circle bigger than the last. (さっきよりも大きな円を描きなさい)
  • draw a line. (線を描きなさい)


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この指示に沿って、黙々と絵を描いていく子供達。

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クリス先生の回答例。顔が描かれた。

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後半は、一人一人にiPadが配られ、iPadで絵を描いてみることに。まずは、Golan Levinによる「Yellowtail」で遊んでみる。指で描いた形が次々とアニメーションになっていく様子に子供達は大興奮。夢中で画面上を指でなぞっていた。

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次に、子供達に不思議な鉛筆が配られた。この鉛筆はJay Silverによって開発された「Drawidio」という鉛筆で描いた線から音が出るというガジェットで、鉛筆で線を描きその上を指でなぞっていくと、まるでテルミンのように音を変化させることができるというものだ。これにも子供達は大喜び、芯が折れそうな勢いで鉛筆で画用紙を塗りたくっていた。

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最後にまた、iPadで遊ぶ。先程のDrawidioをソフトウェアで実現したようなiPadプログラムを起動する。これは、声を出しながら画面を指でなぞって絵を描くと、描いた線の中に録音ができるというプログラム。描いた線にどんどん録音される。ただひたすら叫ぶ子供から、ひらがなを描きながら、その音を喋るという使い方まで、様々な「奏法」が開発されていました。

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全体を通して、とてもよく考えられたワークショップで、実際に手を動かしながら「描く」という行為を通して様々なことを学んでいくことができるという仕組みで、とても興味深いものであった。

openFrameworks v1.0に向けてのロードマップ


会議の最終日に、今回の会議での議論や開発作業をふまえて、今後の指針を策定する作業を行いった。Google Documentに全員で書き込みながら、最終的にひとつのドキュメントopenFrameworks v.1.0に向けてのロードマップとしてまとめられた。ドキュメントを見返してみると、この会議で本当に多くのことが話し合われたのだということを改めて実感する。この成果をもとに、今後のopenFrameworksの新たなバージョンv1.0に向けての開発が進められる。

ロードマップの内容は膨大なもので、また、現在の段階では開発チーム内部での情報であり、完全にオープンにすることのできない。本稿では、そのアウトラインのみの公開としたい。しかし、このアウトラインを眺めるだけでも、今後の開発の向かう方向は感じられるのではないかと思う。

  • openFrameworksコア
    • 3D
      • メッシュ
    • グラフィクス
      • Cairo
      • シーングラフ
      • 国際化(Unicode)
      • タイポグラフィ
    • OpenGL
      • テクスチャー
      • ライティングとマテリアル
      • シェーダー
    • サウンド
    • プラットフォームとアーキテクチャー
      • アプリケーションのアーキテクチャー
      • クロスプラットフォーム化
      • C++ 11
    • ライブラリー
    • ビデオ
  • アドオン
    • 3Dモデルのサポート
    • OpenCv
    • ネットワーク
  • ツール
    • プロジェクトジェネレイター
    • アドオンジェネレイター
  • ドキュメント
    • サンプル
    • リファレンス
    • チュートリアル
  • コミュニティー
    • openframeworks.cc
    • ofxaddons.com
  • 議論の場
    • リーダー
    • GitHubへの貢献 Contributions
    • 継続的なテスト環境


議論の中で感じたこと – 多様性と統一性


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会議中一人で占有して喋り続ける人は居らず、また強権的に否定する独裁的なこともなく、とても民主的な雰囲気であった。お互いがそれぞれの開発者をリスペクトしている雰囲気が伝わってきた。

感心したのは、議論の進めかたとその記録について。議論のアジェンダとアウトラインはあらかじめGoogle Driveの書類として共有されていて、議論の最中もその書類を色々な人がどんどん書き込んでいく。複数のカーソルが飛び交い、リアルタイムに議事録が作成されていく仕組み。このやり方は様々な場所で応用できそうなので、今後の参考にしてみたい。

「openFrameworksとは」という問いに対して「様々な機能を繋ぎあわせる『糊』のようなもの」というたとえが用いられる。これはopenFrameworksの本質をよくあらわしている説明だ。しかし、糊だからといってただ闇雲に雑多な機能を貼り合せるだけでは、ただの醜い塊になってしまう。openFrameworksの優れた部分は、多くの機能を貪欲にとりこみつつも、きちんとそれらを統一された方針で整理して、誰にでもすぐに理解できるように翻訳して提供している部分にあると思う。糊の例えでいうと、同じ糊でも用途に応じて「良い糊」と「悪い糊」があり、それを適切に使用することで元の素材の機能を殺すことなく、openFrameworksのコアにとりこむことが可能となる。その作業は一見簡単なようで、実は多くの仕組みについての深い理解がなければ不可能なことであり、またきちんとした意思統一がなされていないと破綻してしまう繊細な作業なのだということが、話し合いの場にいて感じられた。

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また、openFrameworksの開発としてよくいわれるキーワード「DIWO (Do It With Others)」というものも、この場にいるとその本質が見えてきたような感じがする。Zach Liebermanさんや、Theo WatsonさんなどopenFrameworksにはその初期の開発から携わるコアなメンバーが存在する。だからといって彼らが独裁的に全てを決めているわけではなく、そのコミュニティーの運営はとても民主的だ。今回の開発者会議では、Kyle McDonaldさんが全体をうまくモデレートし、大勢の意見をくみとりながら会議を運営している様子が印象に残った。

開発スピードや機能のユニークさを追い求めるのであれば、独裁的に開発する場合の利点もあるのかもしれない。しかし、openFrameworksの目指すものは、一部にだけ尖ったものを追求するのではなく、多様な機能を包括する万能ナイフのようなものなのだとすると、独裁的な開発体制とは馴染みが悪いものであろう。

世界中を開発の舞台として集団的な開発は、Gitを始めとするネットワーク前提として様々な技術があって始めて可能となったものでもあり、開発の手法といった観点からみても、openFrameworksのコミュニティーは面白い存在と思う。

貢献に対する賞賛


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去年東京で開催されたFITCというイベントでKyle McDonaldさんが「How to Give Everything Away (全てを公開してしまう方法)」というタイトルで講演を行った。その内容は、タイトルの通り、作品、コード、行動、考えなど全てを公開することの意義について語るというものであった。

Vimeoで、同じ内容の講演の映像が閲覧できる。
“How to Give Everything Away” – Kyle McDonald at push.conference 2012
ここで彼が発言していた印象的な言葉として「シャイであるということは、自己中心的なのだ」というものがある。これは、自分が恥かしがり屋だからという理由で持っている情報を公開しないという態度は、それを必要としている人へ情報を届けることを怠っていることである。つまり、情報を独占する自己中心的なわがままな行為であるという考えだ。彼はまた「どんな情報でも、それを必要としている人がいるはず」ということも述べていた。

開発会議の中では「コミュニティー」というキーワードが頻出していた。そのことが象徴ように、openFrameworksの開発チームは、いかにして多くのデベロッパー達が開発に貢献したいというモチベーションを高めてくれるかということに対して、色々な知恵を絞っているように感じられた。

実際に開発者会議に参加して印象的だったのは、何か新しいをやろうという提案には賞賛を惜しまないオープンなカルチャーだ。その人が普段何をしているか、開発者としてのそれまでのキャリアなどを問われることはない。それよりも「今、何ができるのか?」ということを重視しているように感じた。

今回YCAMで開催された開発者会議は日本での開催ということで、総計4名の日本からの開発者も加わることができた。これまで欧米圏に偏りがちだった開発メンバーの構成もすこし変化しつつある。

とはいえ、openFrameworksの開発者達にとって、日本のopenFrameworksコミュニティーは、ミステリアスな存在のようだ。openFrameworksを使用したプロジェクトが数多く存在し、コマーシャルな現場やアートの現場で発表されているのに、その開発者の顔はなかなか見えて来ない。まだまだ、日本の開発者からの情報発信が足りていないのが現状だ。

先程のKyleさんの言葉を借りるのであれば、日本の開発者は、まだまだ「自己中心的」であるのかもしれない。

1週間を振り返って


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開発者会議にを通して強く感じたことは、openFrameworksコニュニティーのオープンな姿勢とその親切だ。

今回の開発者会議は、Zach LiebermanさんやTheo Watsonさん、さらにはその師匠格のGolan Levinさんという開発の中心人物が都合で参加できず、比較的若い世代が中心となったメンバーだった。前回の会議のリーダー的な存在を欠き、果たして大丈夫だろうかという心配もあった。しかし、蓋を開けてみれば、Kyle McDonaldさんが中心となり、メンバーそれぞれがお互いを尊重し合いながらも、遠慮のない活発に議論が行われる、とても良い雰囲気の場が形成されていた。

残念ながら今回は参加出来なかったZachとは遠隔で打ち合わせ
残念ながら今回は参加出来なかったZachとは
遠隔で打ち合わせ
それぞれの開発者達はもちろん優れたプログラマーばかりなのだが、そうしたギーク達から想像されるような「変人」的なキャラクターは居ませんでした。どの方もコミュニケーションのインターフェイスをきちんと持った、協調性の高い人達が集まっているという印象を受けた。

そして、全体を通して強く感じるのは、そのオープンな姿勢だ。会議への参加資格が明確に定められているわけではなく、openFramworksの開発に参加したいという意思さえあれば基本的には誰でも参加できる。そして初めて参加するメンバーに対しても、とてもオープンで親切な対応をしてくれる。

こうしたコミュニティーの「空気」は、openFrameworksの創始者であるZach Liebermanさんの人柄によるところも大きいのかもしれない。しかしそれ以上に、いかにコミニティーの健全さを維持するのかということを、それぞれのメンバーが常に配慮しながら、活動を進めているように感じられた。

こうしたコミュニティーに通底にある空気やカルチャーのようなものは、集団で開発する際にとても重要な要素だと強く思う。開発者達は、基本的にはopenFrameworksの開発をすることで金銭的な見返りがあるわけではない。それでも積極的に数多くのプログラマーが世界中から集結し開発に参加する理由は、openFrameworks自体がとても便利なフレーワークであるということはもちろんだが、それと同時にコミュニティーへ貢献したいという気持にさせるチームとしても魅力があるのだと思う。

YCAMスタッフの方々への謝辞


また、この場を借りてYCAMのスタッフの方々に、深い感謝の意を表したい。毎回の食事は素晴しく、開発の合間にとても楽しい時間を過ごすことができた。また、多くのスタッフの方々の木目細かなサポートは開発の多大な支えとなった。そして、何といっても、YCAMの強みは、InterLabのメンバーを初めの多くのスペシャリスト達による技術的なサポートだと思う。ここまで規模の設備と人的な資本が充実した施設は、日本国内ではもちろん、世界中を見渡しても数少ないとても貴重な場所であろう。このYCAMで開発者会議を開催できた意義はとても大きいものであった。



おまけ: 会議中の食事

カンファレンスの期間中、YCAMスタッフの方々による、心のこもった手料理が振る舞われた。毎回の食事は素晴しく、開発の疲れを癒してくれるものであった。そのメニューのいくつかを紹介したい。

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うどん、唐揚げ、カレー(茄子のトッピング)、やきそば

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カレーうどん、親子丼、水餃子、そうめん(キンピラ牛蒡のトッピング)
ごちそうさまでした!!


Article and Photo by Atsushi Tadokoro

Information


http://openframeworks.cc/
日本語サイト:
http://openframeworks.jp/

http://interlab.ycam.jp/projects/of-devcon2013

http://www.flickr.com/photos/tadokoro/sets/72157634963315567/

http://www.cbc-net.com/topic/2013/06/beyond_interaction2/

Beyond Interaction[改訂第2版] -クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド
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田所 淳 (@tadokoro)
TADOKORO, Atsushi
http://yoppa.org/

1972年千葉県生まれ。NTT InterCommunication Centerでの技術スタッフ、Webプロダクションなどを経て、現在はフリーランス。Webサイト制作から、openFrameworksを使用したアプリケーション開発など、インタラクションをテーマにデザイン・プログラミングを行なう。また並行して、コンピュータを使用したアルゴリズミックな作曲や、即興演奏を行なっている。2002年から多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師、2011年から東京藝術大学芸術情報センター非常勤講師。著書に『Beyond Interaction -メディアアートのためのopenFrameworksプログラミング入門』田所 淳、比嘉 了、久保田 晃弘(共著)、ビー・エヌ・エヌ新社、2010年。

あなたの“こころの聖地”にスマートフォンからお祈りできるアプリ 「My Holy Place – こころの聖地」

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社会に疲れ、癒やしを求める全ての人に朗報!
林智彦と千房けん輔からなる「nuuo社」から、iPhone向けアプリケーション「My Holy Place – こころの聖地」がリリースされた。

このアプリの主な機能は、自分の聖地に祈って心の安らぎを得ること。

思い入れのあるアニメの舞台、憧れのIT企業の本社、アイドルの出身地など、あなたの心の支えになる場所を登録して祈ることができる。祈ったことや巡礼したことは、その瞬間の写真とともに共有できるので、おんなじキモチの仲間たちと、喜びを分かち合ってみよう。

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【使い方】
アプリを開くと、「グルメ」「音楽」「アニメ」など各ジャンルに分けられた、200以上のプリセット聖地がラインナップ。

鷲宮神社/甲子園/イビザ島/などからお好みの聖地を選択すると、聖地の方角と距離が差し示されるので、その方角に正確にiPhoneを向けると「お祈りモード」が発動。
あとは「お祈りする」ボタンを押し、祈りを捧げるだけ。

お祈りが終わると、あなたの祈りが聖地にカウントされる。
自分のお祈り顔とあわせて、お祈り画像をシェアすることもできる。
また、あるスポットに誰かがお祈りした時に知らせてくれる機能なども。
思い出の音楽の発祥の地などを聖地に登録してみんなで共有したり、
恋人同士がプライベートモードで、二人のムフフな秘密の場所登録するのもいいだろう。

さらに、聖地の1km以内に入ると「巡礼モード」が発動する。
特別な「巡礼ボタン」で、あなたの降臨をカウントしよう。


【クリエイター】
このアプリを作ったクリエイターにも注目したい。
プロデュースは林智彦 、プランニング/ディレクションは千房けん輔。iPhoneアプリのプログラムは千房と萩原俊矢 (semi serif)。UI/Web Designは相川伊知郎 (unodos)と萩原が手がけた。
コンパスのデザインは平林ハジメ、聖地のリサーチを石黒隆之、齋藤あきこが担当。
聖地のレコメンドにはDEVILROBOTS Inc.のヨシムラヨシゾーや木村親八郎が参加している。
※ちなみに冒頭の広報用ビジュアルの手タレは蓮沼執太さんとのこと。



ただいまYouTubeで公開されているプロモーションビデオは、映像スーパーバイザーにはこちらのインタビューでも取り上げたLA在住の細金卓矢を迎えた。映像制作は、「インターネットおじさん」でお馴染みの渋家のクリエイター「としくに」とヤバ男が手がけた。彼らのネットワークを駆使した、リアルな映像に仕上がっている。撮影は細金氏のアドバイスにより、全てiPhoneで行っているとのこと。また、BGMには分解系レコーズのN-qiaを起用。

情報とともに日々を生きる、現代の聖職者たちへ捧げる、ささやかなアプリ。
さぁ、お祈りなさい。

※ ちなみに、My Holy Place は、あくまで「趣味の世界の聖地」を楽しむもの、本物の宗教の聖地は扱わない方針とのことです。

Information

「My Holy Place – こころの聖地」
http://holy-place.com/

APP Store
https://itunes.apple.com/jp/app/my-holy-place-kokorono-sheng/id670354152

【アプリ概要】
対応言語:日本語/英語
対応プラットホーム:iPhone(iOS 5以上)
サービス開始日:2013年8月20日
価格:無料
企画:nuuo

【登録された聖地の例】
鷲宮神社/甲子園/イビザ島/秋葉原/富士山/いせや/竹富島/ラーメン二郎 三田本店/ラーメン二郎 目黒店/ ジュリアナ東京/渋谷109/ブルースリーの墓/天下一品 本店/餃子の王将 1号店/アルス・エレクトロニカ・セン ター/Submergeのオフィス/パラダイス・ガラージがあった場所/天井桟敷跡地/ファクトリー/バウハウス/高円 寺20000ボルト/映画「ゾンビ」の舞台となったショッピングセンター他

【機能一覧】
・設定した「聖地」までの距離と方角をコンパスで表示する機能 ・お祈り機能/祈っている状況を写真で共有する機能/お祈り数のカウント機能 ・巡礼機能/巡礼している状況を写真で共有する機能/巡礼数のカウント機能 ・新規聖地の作成/共有/公開機能 ・設定した聖地がお祈り/巡礼/お気に入りされたことを通知で受け取る機能 ・設定した聖地へ近づいた時に通知を受け取る機能
・こころが安らぐ機能(※ 安らぐ度合いには、個人差があります)

【nuuo社とは】
広告会社出身のWebプランナー・林智彦と、アーティスト・千房けん輔からなる、Webプランニング・ユニット。 これまでにスマートフォンを活用した電子工作ロボット「nubot (http://nubot.me/)」など発売。
nuuo ウェブサイト:http://nuuo.jp/

【Staff】
Produce:林智彦 (nuuo)
Planning / Direction:千房けん輔 (nuuo) Programming:萩原俊矢 (semi serif)、千房けん輔(nuuo) Compass Design:平林ハジメ
UI / Web Design:相川伊知郎 (unodos)、萩原俊矢(semi serif) Research / Edit:石黒隆之、齋藤あきこ
Movie Supervisor:細金卓矢
Movie Direction:ヤバ男 (Shibuhouse)、としくに(Shibuhouse) Special Thanks:木村親八郎、蓮沼執太

デザイン/アート/エンジニアリングを横断するライゾマティクスのIDビデオ、鎮座ドープネスやHIFANAらが登場



デザイン/アート/エンジニアリングを横断するクリエイティブ・スタジオ、ライゾマティクスのID ビデオがリリースされた。

大規模な広告インスタレーションやPerfumeなどのライブ演出から世界中で展示されているアート作品まで、新たなテクノロジーと表現の領域に挑戦する彼ららしく、実験を通じて多くの成果物につながっているプロジェクションマッピング、レーザー、LED,筋電センサー、スクラッチロボットなどが続々登場。

そして「ゾマゾマゾマゾンゾ〜ン」とリリックを奏でるのは鎮座ドープネス、演奏するHIFANAらによる軽快なヒップホップ・チューン(ちなみに楽曲の元ネタはこちらとのこと)が合わさり、なんとも怪しくグルーヴィーなビデオに仕上がっている。プロデュースにはJKD CollectiveGROUNDRIDDIM

「お仕事承ります」、今後もライゾマティクスの手がける表現を要チェック!

いくつかビデオに登場するデバイスの参考ビデオは以下!

130729_rhizomatiks2
Rhizomatiks Circle
http://www.youtube.com/watch?v=mnX6xU2EwJY

Credit
Musicians : CHINZA-DOPENESS, HIFANA, KAKINUMA KAZUNARI
Music Direction & Produce : URBAN & BONZU
Additional Sound : DJ UPPERCUT
Special Thanks : SABO, NOS-EBISU, KOHEI KANAYAMA

Director : GO MATSUMOTO
Assistant Director : TARO MIKAMI
Creative Direction : Rhizomatiks × GROUNDRIDDIM
Produced by BRUCE IKEDA / JKD Collective × GROUNDRIDDIM




口の中にLED


http://www.cbc-net.com/topic/2011/04/geee-face/

フェイストラッキング・プロジェクションマッピング


ロボットアームスクラッチ

Sonarから音楽テクノロジー・シーンの今が見える – レポート後編

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Sonarのコンサート会場が静と動の”動”であるならば、ひたすらコンピューターに向かってハッキングを行ったり、サーキットベンディングのために半田付けをしたりしているSonar D+の会場はまさに”静”。企業の展示やDJによるワークショップなどもありそれなりに賑わっているが、まるで月の反対側に来てしまったようだ。今年のアメリカのSXSWではGoogleグラスのデモンストレーションがあったが、一般の人がなかなか触れる機会のない先進的な音楽のテクノロジーの側面に触れられる場所を音楽フェスティバルの中に大々的に設けたのはSonarがおそらく初めてだったのではないだろうか。




フィジカルな楽器としてのモデルとモバイルアプリの2タイプでリリースされている音楽用インターフェースReactableの新しいタイプ。演奏だけでなくヴィジュアル面でより楽しめるようになっており、ピンチでズームイン/ズームアウトすると、宇宙から地球、地球から地上へとアクセスする。各種パネルを配置すると自然現象が制御でき、例えば雨や雷のパネルを置くと雨や雷が現れて音に包まれ、音量をコントロールするようにパネルを回転することで雨や雷の量をコントロールできる。特にこれという用途は謳われていなかったが、単なるインスタレーションというだけでなく教育用にも使うことができそうだ。



救急車のサイレンの音を使ってDJが曲を作る救急車ディスコ。最初はひたすらノートPCに向かって仕込み作業をしていたが、2日目からコツをつかんだらしく、観客と一緒にサイレンの音で盛り上がっていた。ただし盛り上がりとともにサイレン特有のやかましさを生かしたサウンドで途中から他のブースで進行中のイヴェントの妨げになってしまい、終盤の方ではおとなしめにプレイしていた。

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少し離れた場所にいる2組がお互いの姿がプロジェクションされたスクリーンの上に絵を描いて遊ぶインタラクション・ツール。お互いの顔の上に落書きし合っているような感覚になる。

その他には、最近出始めのプラスチックの糊のような素材で3Dプリンティングするデバイスや音楽用パッドコントローラーやタブレットデバイス向けアプリケーション、果ては科学の粋を集めた高級耳栓まで幅広い展示やDJ機器などのデモンストレーションなどが行われていた。

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Music Hack Day(MHD)は2日間に渡って地元の学生などが中心になって音楽アプリケーションを開発するハッキング・イヴェントで、バルセロナのポンペウ・ファブラ大学のMusic Technology GroupとSonarが共同で開催している。バルセロナのMusic Technology Groupは日本でもお馴染みの初音ミクなどのVocaloidシリーズの技術をYAMAHAと共同で研究・開発しているグループでもあり、日本とも関係が深いと言えるだろう。

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このハッキング・イヴェントは音楽に関係したハッキングなら基本的に何をしてもいいのだが、協賛企業からAPIやデバイスが提供され、特に今回はニューロ・サイエンスをテーマにした脳波を検出するデバイス(http://www.neuroelectrics.com/)(http://www.starlab.es/neuroscience)を用いた音楽用のアプリケーションの開発が行われた。

脳波でユーザーのムードを反映させたカクテル作り、脳波に合わせたリズムでパーカッションによる自動演奏など、様々な試みがなされていたのだが、いざ発表する段になってもうまく作動しないものも多い。脳波をインターフェースとして用いるのはなかなか難しいようだ。

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上のプレゼンテーションでは、参加者数名がステージ上でパッドコントローラーをダクトテープで直列に繋いで、何が始まるかと思ったら、「こんなことをしたかった」という単なるコンセプト紹介だった(何がしたかったのかは結局不明。)

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特定の場所に視点が移動した際に脳が活性化している部位を分析してチューニングした後、見つめた先のドットにアサインされた高さの音が再生されるという仕組みのアプリケーション。



一応ユーザーの女性の視線と連動して音が出力されていたようだ。視線による入力のために昨今アイトラッキングの技術もよく用いられているが、こういった脳波でコントロールするデバイスも興味深い。

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音楽を聴いているユーザーの脳波に合わせて太鼓を自動演奏し、聞いていた元の音楽とリズムをリンクさせようという野心的な試み。一応ぽろぽろ太鼓は叩かれていたがほぼランダムなものに聞こえ、残念ながら現時点では音楽性や統一感は全く感じられなかった。



上の動画はSing4Drinkというカラオケ採点マシーンにカクテルマシーンが付いたもの。ハッキング開始当初は脳波が絡んだ装置になるはずだったが、いつの間にか単なるパーティーグッズ的なものになっていた。お手本の歌のピッチに合わせてうまく歌えるとパッドコントローラーが笑顔になりレシピ通りの配分のまともなカクテルが装置から供されるが、うまく歌えないとパッドコントローラーに苦い表情が表示され、おかしな配分でミックスされたまずいカクテルが出てくるという仕組み。下手に歌えば歌うほど、おいしくないカクテルを飲み続けなければいけない。

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これを開発したRobert Kaye氏(左)とNadine Kroher 氏(右)に「パーティー用には盛り上がるから、いいかもしれませんね」と言ってみたところ、「そうだよ。その通りなんだよ!!これ結局カラオケ自動採点装置なんだ。」と左側のRob氏が語っていた。ほとんどの参加者が短時間に熟れたものを作ろうとしてもあまりうまくいっていなかったようだったので、適当さに逆に潔さと清々しさを感じた。

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カクテルを作る装置は当日に会場のバーから借用して、それをハッキングしていた(!)

フェス用にカタルーニャ州の旗の模様に髪を染めたかなり奇抜な容貌だが、聞いてみると先述の大学の関係者らしい。スペインからの独立が真剣に叫ばれヨーロッパの中でも最もフリーダムな地域として知られるカタルーニャ州の過激な独立主義者にもこんな髪型にしてしまう人は見たことがないし、学生にもこんな大胆な髪型をしてしまう人はいない。「カリフォルニアからバルセロナに移り住むといったら、席は用意されていたんだ」Music Brainz という音楽のメタデータを扱うサービスを立ち上げた人物で、初期のCDDBにも関わっていたらしいということは以外よくわからないが、大物であるようだ。何しにバルセロナに来た?という感じの人がバルセロナには非常に多い。

他にインド人学生によるあらゆる音楽をマシンリスニングのAPIを利用してインド音楽風にしてしまうHindifyというソフトウェアなど、2日間に渡って正味たった24時間で行われるハッキングのため、技術的にアピールできるかはともかく脱力する内容も多かった。紹介していない入賞作品はHack Dayの入賞者一覧を興味のある方は見てほしい。

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またライヴが行われる大会場ではない別会場のせいぜい100人ぐらいのキャパシティの部屋ではいくつかの著名ミュージシャンによるパネル・ディスカッションが行われていた。Matthew Herbertは自身がクリエイティブ・ディレクターを務め約20年ぶりにオンラインで復活したBBCの番組 Radiophonic Workshop について番組のパートナーを務めるPatrik Bergelと共に壇上に上がり、またオンライン上における音楽のクリエイティビティがどのようにあるべきか、コーポレーショニズムが進む現状の音楽配信サービスの問題点についても具体的に指摘して議論していた。その他にはRichie Hawtin、Skrillex、Lucianoが立ち上げた南アフリカで2ヶ月に渡ってDJなどの音楽ワークショップを行った活動のこれまでの報告とそのディスカッションもあり、どちらも大変興味深いものであった。Sonarでは毎年アーティストが自身の音楽そのものについて語るのではなく、音楽に付随した技術的または社会的な諸問題などをアーティストに討論させる場を設けている。



そしてまた会場の一画では大人が机に向かってひたすら回路に半田付けしている光景も見ることができる。この場所は3日間に渡って様々行われているワークショップのためのスペースで、Arduinoや市販のおもちゃで使われている回路、あるいはオリジナルの回路などを用いて音楽のための電子工作を行う。ヨーロッパ各地から何組かグループが呼ばれているらしく、そのうちの一組にインタビューしてみた。



このLEDディスプレイで顔を隠したお茶目さんはイギリスから来たJohn Richards氏。「アカデミックなシーンとカジュアルなシーンをつなげた方がうまくいくように思ってるんだ」と話す彼は大学の先生をしているそうで過去に日本にも来てレクチャーを行ったとのこと。ロンドンのハッキング・シーンがどのようにオーガナイズされているか話を聞きながら、ふと「そういえばバルセロナのハッキング・シーンはご存知ですか。」と尋ねてみた。「いや、それが全然知らないんだ」「じゃあ隣でやってるMusic Hack Dayとも全然つながりがないんですか?」「彼らとは全く知り合いじゃないんだ」紹介しますよ、そうだねちょっと一杯飲みながら話聞いてもらえる?ロンドンのことも教えてあげたいし、と話が進み、ちょっと取材するだけのつもりが一緒に飲みに行くことになった。

今回取材者として多くの人に話しかける機会があったが、一般にヨーロッパのフェスティバルでは知り合った人と気が合って一緒に飲みに行ったり、フェスティバルを楽しむことがよく起こる。日本で大型フェスティバルに参加しても友人とそれ以外の垣根を越えて不特定多数とコミュニケーションすることはなかなか考えにくいが、もしヨーロッパの音楽フェスティバルを訪れる機会があったら、イヴェント自体を楽しむこともさることながら、色々話しかけたり話しかけられたりすることを楽しんでほしい。そこに様々な人々が訪れ、様々な世界が広がっていることが感じられるはずだ。

Article by Toshinao Ruike

Information

Sonar 13.14.15.16 June 2013
http://sonar.es/en/2013/


[フォトレポート] Sonar 2011 – 世界最大級のアドヴァンスド・ミュージックフェスティバル!
http://www.cbc-net.com/log/?p=2411

細金卓矢と杉山峻輔、tofubeats「No.1 feat.G.RINA」がいかに作られたかを語る

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杉山峻輔(左)、細金卓矢(右)
撮影:@electine さん

アニメ「四畳半神話大系」のエンディング映像から「日本橋高架下R計画」、
NHK Eテレ「デザイン あ」などを手がけ、
新世代の映像作家として国内外から高い評価を受ける細金卓矢と、
グラフィックデザイナーとして数々のアーティストのアートワークを手がけ、
ビデオデッキを用いたVJを行う「VIDEOBOY」としても活動する杉山峻輔(スケブリ)。

同世代からあつい支持を得る、注目のクリエイター2人が共同監督した
tofubeatsのミュージックビデオ「No.1 feat.G.RINA」が公開され大きな話題となっている。

なんともいえない「よさ」を淡々とコレクションした映像は、一見なんということも無さそうだが、
普段見ている世界を、ありのまま姿以上でも以下でもないそのままに記録することは難しく、
編集を経てなおそれを保つのは並大抵のことではない。
果たしてどのようにこの奇跡のような作品が作られたのか、制作の裏側を聞いた。



映像のテンション


ーー「よさ」というものについては伊藤ガビンさん @gabin がズバッとお話されているので読者の方にはこちら(http://modernfart.jp/2013/07/9782/ )を読んで頂くとして、細金くんがRTしていたこの意見、すごく良くわかりました。



細金:外国の人が日本に遊びに来て5Dで映像撮りました、みたいなジャンルがあるんですよ。さらにそれを日本人があえてやる、っていうジャンルもあって。雷門とか撮ってるんですよね。もう、そういうのいいんじゃないかって思ってて。外国の人に片言の日本語喋らせたらオシャレ、っていう価値観というか。

ーーありますね。vimeoが出て5Dが出て、それ以降数えきれないほど出てきました。

スケブリ:それ言うとPara OneのMVが、外人が撮ってるのにそういうのがあんまり出てないんだよ。



細金:あれはそうだね。敢えて普通に撮ろうとがんばってる。ひたすら素数を数えながら撮ってるような。本当は撮っちゃいたい、とかあるんだろうけど、あえてテンションを抑えてる。

スケブリ:「何か入れてやろう」って考えてない、みたいな。まあ、Para Oneは生まれがホンマモンの貴族らしいからね。たまに映画監督もやったりして。

ーーなるほど、映像のテンションの話ですか。そう言われると、この作品の根源にあるpokeやinstagramの映像というものも、基本はテンションが低いというか。

細金:他にもおばあちゃんが普通に生活してるシーンをただ5Dで撮ってる映像もあって。雑炊食べたりしてるのをただ撮ってたりする。5Dはマシンとしてスゴイから、外そうとしていくと、その機械でいかにダメなものを撮るかの戦いになってくるんですよ。

スケブリ:モチーフをいかに雑にするかが勝負になってくる。

細金:だから今回全然海外受けしてなくて。日本人だけなんですよ。それが面白い。

スケブリ:vimeo全然だもんね。

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細金監督の【IA】日本橋高架下R計画

ーーvimeoで大人気の細金さんが。それは珍しい。

細金:やっぱり雷門とか入れないとダメだったのか。

スケブリ:スクランブル交差点の早送りとかね。新幹線、皇居、寺、お参りみたいな。

細金:申し訳程度にしか寺入ってないから。

ーーモチーフの問題なんですかね。

細金:ていうのはどうでもいいんですけど、個人的に作品の発表がソーシャルと切り離せなくなっちゃってるようなところを感じてるんですよね。「センスがいい俺」を見せるのが目的に見えるようなことも多い。だから映像を作る時に匿名性は意識していて、それが結果的にテンションの低さになってるような気はしてます。ふりがな振り過ぎというか、説明過多な作品は見てる人を信頼してない証だと思うので。

スケブリ:今回の作品にはメッセージとかないですから。

細金:意味で感動しましたっていう人はいない。

スケブリ:ここがよかったっていうのはあって、みんな違うのが面白い。

細金:そういえば昨日、目をデカくするプリクラのアイコンの人に「いい」ってRTされてて。これは一線を超えた、そこまでいったかと思ったね。

ーーそこに一線ありますよね。ていうかカンパニー松尾さんも言及してますからね。個人的には川内倫子さんの映像作品に通じる物があると思いましたけど、なんか今回はすごく映像のリアルさということについて考えさせられました。

どのようにしてNo.1は作られたのか


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ーーそれでは作ったきっかけから。始まりは4年前なんですよね。その頃にトーフさんのMVを作り始めたものの頓挫し、今回違う曲で全然違う映像を納品したという伝説になっています。

細金:tofubeatsとは4年前から知り合いで。その時に作ってたのはモーショングラフィックスでした。なぜか広末涼子をひたすらちまちまトレースして。それもスタンプツールで1コマづつ境界線を作ったりしてたら、4年かかって15秒ぐらいしか出来なかった。その残骸はVJの素材に使ってるんですけど。

ーー見せて頂くと、これはこれでかっこいいような。

細金:今回の話でいうと、アルバムが出るので、トーフから「MVを作って欲しい」という依頼があったんです。候補曲が2曲あって、「No.1」は実写で、作らなかった方の曲はモーショングラフィックス系で、という依頼。面白そうなので「No.1」でやってみようと。

スケブリ:僕は細金くんから「tofubeatsのMVで”よさ”映像集を作りませんか」と誘われて、面白そうだなと思ったので参加しました。

ーースケブリくんは、デザイナーやビデオを使ったVJをされていますけど、映像制作の経験はあったんでしょうか?

スケブリ:VJをやっていると、イベントにゲストがいると映像を作らなくちゃいけない。だから5年くらい前にはモーションロゴをAEで作ってました。SO MEが好きだったから、フレンチっぽいうやつを。友達のバスケの撮影とか練習のところの映像も作ったりはしてました。

ーーノーCGですか。

細金:です。カラコレのみ。実写でまともに映像作るのはこれが初めてなのですが、新しい領域でやる時に今までやってきたことを安易に乗っけるような感じでに混ぜてしまうと面白くないなという気持ちがあるので。

スケブリ:CGは不用意に入れると下品な感じになるので、今回は使ってないです。

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ーー共同演出はどのように行われたんでしょうか。

細金:映像の案出しを共同でやって、「どういう風にどんな画を撮るか」を僕が決めつつ、配置などのレイアウト的なところを「グラフィック的にちょっと見てよ」という雑な振りで頼んだりしました。

スケブリ:案出しは2人で。撮影は細金くんに任せて、自分は画面のレイアウトを見て修正するような感じで、お互い得意な所はおまかせスタイルです。あとはその場のノリで、「これやろうあれやろう」みたいになってたので、どっちがどっちかわからない部分も多いです。

ーーハイスピード映像にしようと決めたのはいつだったんですか?

細金:曲がスロー感があったのと、単純にカメラ(ソニーのFS700)が欲しかったから。いいカメラなんですよ。ハイスピード云々を抜きにしても。REDと迷ってこっちにしました。

ーーREDって200万円くらいするやつですよね。

細金:FS700は借りる事も可能でしたが、日常的に持っている事によってしか撮れないものに興味があったのでノリで買いました。あんま後悔してないです。そのほか、一部の小型レールを使ったカットはGH2のファームウェアをハックしたものを使っています。こちらは10秒しか撮れないという制約がある代わりに、画質が価格の割にめっちゃ奇麗という特徴があって、今回の企画にぴったりでした。

ーーアーティストの大島智子さんが出演されてて驚きました。

細金:大島さんは、dommuneで一緒の番組に出たのがきっかけでお会いして、その場でオファーして即OKをもらいました。最初は僕らが「tofubeatsのイベントとか街中でスカウトしようか」みたいな話も出てたんですがよくよく考えたら僕らにそのアプローチは無理なんですよね。

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ーー女優としての大島智子さんはどうでしたか?

細金:大島さんも映像を作っているので、今回の企画はすぐ理解してもらえるなと思いました。何も説明しなくても伝わる、という点ですごく楽でした。演技指導みたいなことは(僕らに出来ないというのもあるのですが)していなくて、素というかお任せ状態です。スタイリストがいないから、「派手目な色の服で」と伝えたらそういうものを買っておいてくれたり。大島さんのキャラクターに映像の性質が自然と近づいて行ったところもあるかも。

スケブリ:後から考えると、出演者を決めた時点でいいものになるのが保証されてるやつでしたね。ジャケ作ってるときに感じる「こんなイイ写真が撮れたらあとは寝るだけ」みたいな感じです。

ーーそれでは実際の制作についてお聞きして行きたいと思います。とりあえず、ものすごく細かいカット割りですよね。

細金:最初はルノアールやらロイホでGoogleスプレッドシートに案を出しまくってその通りに撮影する、ということをやっていたのですが、実際撮り始めると、その場で事故的に「撮れてしまった」ものに良さがあることが多かった。なので、後半になればなるほど成り行きになっていきます。

スケブリ:計画して撮影した映像は4割くらいしか使わなかったのではないでしょうか。使用した映像の選別は、2人ともいいねって思うことが多かったのですんなり進みました。

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燃やしたMBAは貰い物。「easebackの清水さん(@crayon274) から壊れている初代Airを頂いたので、火葬させていただきました。成仏してくれたと思います」(スケブリ)

ーー撮影にはどのくらいの期間がかかりましたか?

スケブリ:1ヶ月半くらいの期間で、2、3日に1回は大量の機材や撮影するモチーフを持って外をウロウロするというのを続けていました。

ーーロケした場所の数って覚えてますか?

細金:細かいところを入れると20箇所くらい?移動含めて3時間くらい掛けて0.5秒しか使わないみたいなのが結構多かったです。人数が少ないゆえの手際の悪さによって、1箇所で時間がすごくかかるのであまり1日でたくさんの場所を撮影できませんでした。


ロケの日にアシスタントの稲垣くんが撮影したメイキングinstagram

ーー撮影隊はどんな体制で行ったのでしょうか?

細金:最初はスケブリ君と二人で撮ってました。その後に大島さん、稲垣豪君という多摩美の学生さんもメンバーに加わりました。撮影は大島さんを含めこの4人でほとんど行っています。

スケブリ:稲垣くんの渉外力がすごくて、そのおかげでロケのOKをもらった場所も多かったです。稲垣くんは古屋蔵人さんの生徒なんですよ。

古屋蔵人(インタビューをしたボストーク社の自席で話を聞いていた編集者):あいつ学科が違うからモグリなんだけど。心が強いんだよ。

細金:MP(マジックポイント)が高い。

スケブリ:僕らMPないから。

細金:稲垣くんが結構いろいろ交渉してくれて。制作としてめっちゃ優秀だった。カプセルホテルは歌舞伎町で撮ったんですけど、果敢に電話して交渉して、お店の人と仲良くなっちゃったりする。タクシー、ガソリンスタンドもそうでしたね。

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ーー撮影のエピソードがあったら教えて下さい。

細金:一番最初に撮ったのは公衆電話のシーン。誰も居ない公衆電話のドアが閉まるのを撮りたくて色々試してたら、慌てて物陰に隠れるところに良さがあったのでそのまま使いました。

スケブリ:一番大変だったのは将棋のシーンかな。

細金:駒を振って放り投げてカメラを上げながらピントをずらす..っていうのを撮影するのが難易度が高くて。投げる系は大体ひどかった。軍手を投げて打ち返すのも、20回ぐらいやってもらってて。

スケブリ:他にはビニール袋が飛ばないからすごい本気で上に投げたり。河原のシーンもあったね。細金くんが電車に乗って撮影して、僕が河原で待ってるんですけど。

細金:「いまから電車に乗ります」っていうLINEを送って、スケブリは写っちゃいけないから隠れて、ずっとタンバリンを叩いてもらったんです。

ーーあの方、素晴らしい存在感ですがどなたなんですか?

スケブリ:スカートというバンドの澤部さんです。バンドも最高なんですが、tumblrでタンバリンを叩く動画( http://www.youtube.com/watch?v=c4tUKk3UiTI )が流れてきてずっと撮りたいなと思っていたので、良い機会だと思ってお願いしたら快諾していただきました。


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Tumblrで4500noteを超えた澤部さんの写真(VJ:スケブリ)

ーー何カットぐらいあるんでしょうか。

スケブリ:150〜200くらいあります。

細金:撮った素材はほぼ使ってるんですよ。ほぼぴったりくらい。一番おいしいところだけをつまんで、似たようなショットを没にしてる。

ーーそれで編集に入るわけですけど、編集はどうやって進めたんですか?

細金:編集の順番は完全に撮影が終わってから決めました。歌詞に映像の意味が被らないように注意しています。「日本橋高架下R計画」の時もそうでしたが、情報量がそちらの方が立体的になるので。あとは音ハメをキックに合わせるところと歌詞の文節に合わせるところを分散させて、説明的になる(映像と1:1対応であると認識される)ことを避けてる。

スケブリ:歌詞と意味が被らないようにしよう、ということは話してて、あとは細金くんにお任せ。細かい部分で口出ししたところはありますが、下手に俺が俺が!感出してもいいものになるようには思えないので。その後のカラコレは自分がやりました。曲を聴いてなんとなく青とか緑っぽい印象を受けたのでそっちに転ばしてます。

ーーMVということで気を使ったのはどのような点ですか?

細金:最初と最後を奇麗に纏めておけばいいんじゃないの、という点ですかね。

ーー最初と最後には鰹節が舞い落ちていますよね。

スケブリ:終わりに本人出しときゃいいじゃん。tofubeatsだから醤油かければいいじゃん。あ、歌ってるG.RINAさんに醤油かけてもらえば完璧じゃん。じゃあ最初は鰹節が舞ってる絵だね。っていうMVのカギ括弧部分が初期の段階で決まっていたので。あとは好き勝手やりました。

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ドリルは細金監督の私物。「amazonで8000円だったんですよ。安いですよね。重さあたりだと相当安い。ドリルの歯も2000円ぐらいだし。全部で1万円だから安いじゃないですか」(細金)

2人の出会い


ーーそもそも2人が出会ったきっかけは?

細金:もともとネット上の活動は見てて、スケブリくんの存在は知ってたけど話す機会がなくて。共通の友人の漫画家(見富拓哉)がスケブリをイベントに呼んで、芋づる式に繋がったんです。

ーーそこから友達になっていったと。最初に2人で組んだのは、VJユニット「チルノのパーフェクトさすう教室」ですよね。

スケブリ:mogra(秋葉原のクラブ)で行われたエヴァンゲリオンのイベント「禁色」でのVJの依頼でした。イベントのコンセプトがB2B(交わりばんこに曲をかけるシステム)だったので、2人でやることになったんです。

細金:「エヴァンゲリオンQ」が公開されてすぐのイベントだったんですよ。映画の中でシンジくんとカヲルくんがキーボードを連弾しているシーンをやろう、とすぐに決まって、会場にでデカい鍵盤を持ち込みました。その上にMIDIコンを置いてVJしてます。

ーー鍵盤、デカいから邪魔だったでしょうね。

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キーボードを使ったプレイの様子。撮影:@fumiyas さん


もうネットはサーフィンされていない


ーー2人ともインターネット的なものが身についてて博覧強記な感じがありますけど、普段はどんな感じで情報収集してるんですか?

細金:どんどん見る場所が狭くなってます。TwitterとFacebook、InstagramとかのSNSの他にはTumblrとYouTubeくらいしか見てない。ブックマークもここ4年くらい一切使ってないし、ニュースサイトも見ないし。どんどんネットというか自分の観測範囲が狭くなってる。もう今ネットってサーフィンじゃなくなりましたよね。なんかこう、釣り堀感がある。

ーーサーフィンじゃなくて釣り堀っていいですね。SNS以降はそれを強く感じます。

スケブリ:僕もSNSの他はYouTubeでチャンネル登録してる人と、その関連動画くらいしか見てないです。

細金:むしろ「おもしろ動画」で普通に検索すると面白いの出てきますよ。自分で「おもしろ動画」ってタイトルを付けられるのはレベル高い人しかいないから。

スケブリ:狙ってる人だと、そのタイトルつけられないんですよ。

ーーみなさん雑誌とかも読まれないんでしょうね。

細金:定期購読ってしたことないし、漫画雑誌を毎週読もうと思って買ったこともないです。マンガも人並みには読むくらいで。アニメも最近は見てないですね。

スケブリ:僕もアニメは惰性で見てる感はある。

細金:分解系の人たちは好きだよね。

スケブリ:だからなんか新世代とか言われるけど、僕達は旧世代ですよ。カワイイのはカワイイけど、萌えに走れない。特撮は好きなんですけど。自分でもお金がめっちゃあったら特撮やりたいかも。

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スケブリ氏が展覧会「TEAM16 荒川智則個展 presented by カオス*ラウンジ」(2011年3月)で展示した作品。ビデオデッキやDVDプレーヤーが積み重なっていて、プログラムによって荒々しくチャンネルが切り替えられてはアニメや映画の断片がブラウン管に映し出される。実装は @sdr_mdr@syano 。写真引用元:http://ow.ly/n4Kqd


VJってなんだろう


ーーそもそも2人の共通点は「VJ」ということなので、ちょっとVJカルチャーについてお聞きしたいのですが。どのくらいのキャリアがあるんでしょうか。

スケブリ:8年ぐらいですね。

細金:僕もなんだかんだ7、8年やってる。VJってずっとやってるのでもないし、やめてるわけでもないし、経歴が長いからといってどうということはないんですが。上がるのはパソコンのスペックであって、自分はあんまり関係ないというか。

ーなるほど。長年やってるとスキルが上がるというものでもないのかもしれない。スケブリさんは、最初は普通のVJだったんですか?

スケブリ:ビデオボーイを始めたのは東京に引っ越してからです。それが4年ぐらい前。静岡の時は、ノートパソコンを持ってなかったんですよ。だからVJする時は家で作った素材をDVDに入れて、他の人のパソコンに入れてやらせてもらってた。手ぶらで行けるから楽ちんでしたよ。交代も楽だし。

ーーまあ、それでできちゃいますからねえ。

細金:スキャコン(※VJ機材)貸すと最後までいなくちゃいけないから最悪ですよね。

スケブリ:僕はスキャコンなんか持ってないです。

ーーどうしてVJを続けたんですか?

スケブリ:クラブの音楽が好きだし、クラブにタダで入れるし、年下だからみんながお酒をおごってくれるし。

細金:じゃあ、mixiのVJコミュニティとか入ってた?あのGIF凝ってたよね。

スケブリ:ayato@webみたいなね。

ーーまあ楽しいから続けていたわけですよね。

細金:うーんでも、僕らの年代だとあまりVJが華やかだったことって無いと思いますね。90年代後半の、CGがコンピューターグラフィックスって言ってた頃は良かったのかもしれないけど。flapper3がやっぱり転機だったんじゃないすか。

スケブリ:モーションダイブ(※VJソフト)のプリセットですよ。すごいなあ。最初に矢向さん@yako_flapper3 に会った時は秋葉原のmograで酔っ払って倒れて「おれがflapper3だ〜」って寝ながら叫んでて。「これが東京か..」と思いましたけど。

ーー影響を受けたVJはいますか?

スケブリ:筒井さん @masato221 です。ケーブルを借りたら全部きちんと巻いてあって名前が書いてあった。

細金:ケーブルを締める奴も締め直せるやつでちゃんとしてるんですよ。

ーーケーブルじゃなくて映像はどうなんですか。

スケブリ:映像も感動したんですよ。筒井さんのVJを見て「こんな人がいるなら真面目な方にいってもダメだ。やめます」と思ったのがVIDEO BOYを始めたきっかけでもある。マドラウンジでやったREPUBLIC vol.4のことでした。すごいでかい画面でやってて、解像度も高くって。

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tofubeatsのリリースパーティにて。撮影:@electine さん

ーーなるほど、細金さんはVJというものをどう捉えてらっしゃいますか。細金さんが本気を出したVJはものすごくかっこいいですけど。

細金:VJって不思議な言葉で。VJを突き詰めて、職業としてやろうとするとライブや映像の演出家になるんですよ。職業VJというのは成立するのが難しいという。僕は年数はけっこうやってるけど、レギュラーイベントをやったことがない。

スケブリ:レギュラーは僕もほぼない。練習とか全然やらないからなー。

細金:まあ、日々修行ですよ。

スケブリ:よく言うよ。

ーー2人のVJ活動とこの作品に関連するものはありますか?

細金:あると思います。さすう教室でやってることと、インターネットは不可分で、Tumblr、youtubeその他諸々でやっていることとの関係もあると思います。パイレーツオブカリビアン(※1)が鍵でした。

スケブリ:VJでもこのMVでも、選んでいる映像などが似ているので、関係はあると思います。

ーパイレーツオブカリビアンは何が衝撃だったんですか?

細金:僕は前々から、映像においては「でかい」「まぶしい」が正義だと思ってるんです。それに全裸が加わったから、もう最強。

スケブリ:もう勝てない。サスケの全裸(http://www.youtube.com/watch?v=rWkDTG1v-8o )も最高だったし。

細金:最終的に人は全裸にいくしかないんですよ。

スケブリ:森さん @morisatoh も20年ぐらいたったら全裸になってるかも。

細金:ありえる。

ーーそれはないんじゃないでしょうか。最後に今後やりたいお仕事などを教えて下さい。

スケブリ:今回は予算があまりなかったので、次回は予算がたくさんあって、かつ何も言われないというものがあったらいいですね。

ーそんな石油王みたいなことあるといいですね。

細金:トーフの実家に石油が出ればいいんだよね。

スケブリ:それより自分ちの庭から出てほしい。

ーーありがとうございました。細金さんがアメリカに行くのはさみしいですが、ご活躍期待してます。アメリカにいても作品は作れるということなので、またお二人が何か作ってくれることを楽しみにしています。


1 注:ロシアのインターネットポルノスターAleksandr PistoletovさんがYouTubeにアップしている動画。「パイレーツオブカリビアン」や「モータルコンバット」などのメジャーな映像にギリギリの姿を合成して全世界に衝撃を与える。そのビデオのタイトルがなぜか「チルノのパーフェクトさすう教室」だった。Pistoletovさんはある時から完全にアウトの映像をあっけらかんとアップするようになり、さらに衝撃が走っている。名前でググると映像が出てくるので、好事家の方はチェックしてみて下さい。



Article by Akiko Saito


“Sonarはヨーロッパ最高のフェスティバルだ!” 国を越え訪れる観客たち – レポート前編

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今年20周年を迎え、いつもにも増して豪華なラインナップ行われたバルセロナのSonar Music Festival。ヨーロッパを中心に様々な国から観客が6月半ばの初夏のスペインはバルセロナを訪れる。この気持ちよさそうな広い人口芝の上で、太陽を浴びてサンダルを脱ぎ踊ったり寝転んだりしながら音楽を楽しんでいる。そしてSonarはエレクトロニック・ミュージックを中心としたライヴやDJを楽しむことはもちろんだが(今年のラインナップ)、その一方で音楽のテクニカルな面にもスポットを当てているフェスティバルで、様々な団体・企業の展示やワークショップ、アーティストや音楽関係者によるパネル・ディスカッション、音楽のためのハッカソンのようなイヴェントも同じ会場で行なっている。今回は2回に渡りライヴの様子とバルセロナ、あるいはヨーロッパの音楽テクノロジーのシーンについてレポートしてみたい。

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暑くなるにつれ男性の多くは元気よくシャツも脱ぎはじめ、ここはビーチかゲイディスコかという様相に。10組ほどのオーディエンスに声をかけて取材してみたところ、多くはイギリス・フランス・北米などスペイン国外から多く訪れており、スペイン在住者はわずか2組ほど(どちらもバルセロナ。)国外からの観客が増えているのだろうが、例年と比べても今年のスペイン人の少なさは今なお続く経済危機の影響を思わせる。国籍は違うが、一同に「Sonarはヨーロッパで最高の音楽フェスティバルだ」と口を揃える。

太陽の下で行われるSonar Day(12時~22時)と半屋外のホールで夜空の下で行われるSonar Night(22時~翌朝7時頃まで)に分かれ、仮にフル参加すると一日19時間もの長さになる。寝る時間以外一日中行われているようなものだが、市の中心部で行われているのでアクセスは簡単で、電車やバスで行ける町の中のフェスティバルだ。

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昨年まで昼の部であるSonar DayはCCCB(バルセロナ現代美術館)で行われていたが毎年増え続ける観客に対応するには手狭になってしまったのか、今年からはスペイン広場のFira Barcelonaで行われた。「スペイン広場」と言いつつ、画像右上に翻って見えているのはカタルーニャ州の旗。独立運動のシンボルで市内至るところで(住宅のべランダからもよく掲げられていることも)見ることができる。Sonarは全く政治臭のないイヴェントだが(そもそも地元のアーティストがほとんど出ていない)、バルセロナ市の協力も受けていることもあり、パンフレットやHPも英語・スペイン語だけでなく必ずカタルーニャ語併記になっていたり、カタルーニャで行われているということはそれとなく感じられるそんなイヴェントだ。

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そして今年のSonarのイメージであるトランス・セクシュアルなチアリーダーの巨大なポスターが一般の観光客も訪れる広場前に。ヨーロッパのゲイのキャピタル・シティとまで呼ばれるバルセロナだが、かなりのカオスっぷりだ。

それでは、肝心のステージの模様を紹介していこう。

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モーゼのような神懸かったポーズで登場し、ライヴ半ばでステージ上でビール数本(カタルーニャの定番ビールでSonarのスポンサーのEstrella damm)を飲むSébastien Tellier。きちんと演奏はしていたが、パフォーマンスとしてどこまで本気でどこまで酔ってるのかわからないので、観客はもちろんステージ脇のスタッフまで爆笑。しかし代表曲「La Ritournelle」では、うっとりとした表情で酔いしれるファンも見受けられ、ファンもどこまで付いていくつもりなのか計り知れないと感じた。

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ソウルフルな歌声を聞かせながらも手元では機材を巧みにコントロールするJamie Lidell。名人芸は健在。Sonarに何度も出演しているので今回の20周年への祝福と彼の直前にDJとしてプレイしていた盟友Matthew Herbertへの感謝を口にしていた。今まで彼をライヴで三度ほど見ているが、80年代のプリンスに通じるような雰囲気をびしびしと感じるようなこれまでで最もエネルギッシュなステージだった。

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過去の名曲を演奏するだけではなく、視覚効果で観客を魅了していたKraftwerkの3Dショー。しかしそれだけで終わらなかったのが、テクノシーンに40年も君臨し続けたベテラン。1975年発表 の楽曲「Radioactivity」中で「フクシマ 放射能」と文字を大写しにし、「いますぐ やめろ」と確固たる原発反対のメッセージ。ヨーロッパでは情報が少ないこともあり、日本の原発問題について現在進行形の問題として捉えている人はかなり少なく、まさかバルセロナで今この問題が取り上げられるとは思いもせず不意を突かれた。賛否両論あるだろうが、Youtubeには個人により撮影されたビデオが多数アップロードされているのでチェックしてほしい。



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今回出演したアーティストで最もおいしいところを持っていったのは、Major Lazerとして、そしてDJとしてダブルで出演していたDiplo。エレガントなスーツ姿で現れながら、中盤にはおもむろにシャツを脱ぎ「さあ男はみんなシャツを脱いでもらおうか!それからそのシャツを思い切り振り回すんだ!!」と観客を煽り、女性ダンサーを男性の観客の上に跨らせたり、あまりのお下劣さの数々に会場は大盛り上がり。品のなさを計るメーターがあったらきっと振り切れるだろうと思うようなライヴで、逆に感服させられた。

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ヒューマンビートボクサーのBeardyman。リアルタイムでボーカルを重ねる手法に長けているアーティストだが、ループ用に使うだけでなく機材を駆使しながら彼の声を元にダブステップのような独特なサウンドを作り上げていた。だが、ステージの最後にはマイク一本でフリースタイル、ドラッグに関したジョークをかましながらお茶目に会場から退散。思わず心を奪われてしまうような素晴らしいパフォーマーだ。

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この戦闘機のようなセットでDJしていたのはSkrillex。見た目そのままにサウンドの方向性も中二病のようにワンパターンで狂的だった。バルセロナを訪れた観光客のようにバルセロナのサッカーチームのバルサのTシャツを着ている。

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Skip & Die というオランダのグループ。女性ボーカリストの衣装や踊りが美しく個性的なことに加えて、バンドの演奏も安定感がある。まだそれほど知られていない新人だが、観衆もかなり盛り上げられていたので、すぐに人気が出るだろう。

これらの他にも重鎮のDerrick May、Richie Hawtin、そしてJusticeやEd BangerのBusy PやLaurent GarnierといったフランスのDJ陣がプレイして朝の7時までラウドなサウンドで聴衆を盛り上げる(最終日は朝8時を過ぎても終わらず、スタッフ一同もステージに上がり、全員拍手をしながら朝日を浴びて家路に着く。)

そして後編ではライヴアクトのような派手さはないが、Sonar Dayの会場で催されるテクノロジーやメディアアートの展示やイヴェントについてはお伝えしようと思う。

後編に続く


Article by Toshinao Ruike

Information

Sonar 2013 13.14.15.16 June 2013
http://sonar.es/en/2013/

Cuusheの新しいミュージック・ビデオ「Airy Me」久野遥子による渾身のアニメーション作品



2006年に設立された東京発のレコード・レーベル「flau」より京都出身の女性アーティストCuusheのアニメーション・ミュージック・ビデオ「Airy Me」がリリースされた。

当時大学生だった久野遥子が3000画、約2年の歳月をかけて手描きで完成させたという渾身の作品。揺れ続けるカメラワークとキャラクターの存在感、表現力に圧倒される5分間となっている。イギリスのカルチャーマガジンDazed & Confused Magazineがプレミア公開するなど海外からも大きな注目を集めており、その引き込まれる世界観をぜひご覧になってほしい。

また、本アニメーションは今週末7/20、7/21に南港インテックス大阪にて開催されるSNIFF OUT 2013にて上映される他、海外のアニメーション・フェスティバルなどでも多数上映が決まっているとのこと。

本楽曲「Airy Me」は現在国内外から注目を浴びるドリーム・ポップ・アーティストCuusheのデビュー作『Red Rocket Telepathy』に収録されている。また、今年9月には久野遥子がジャケット・デザインを担当した4年ぶりとなるニューアルバム『Butterfly Case』のリリースも予定されているのでこちらもチェックしてほしい。


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Information

Cuushe「Airy Me」
TITLE:Airy Me
ARTIST:Cuushe
Video directed by 久野遥子

Red Rocket Telepathy
http://www.flau.jp/releases/12.html

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Butterfly Case
http://www.flau.jp/releases/36.html
Cuushe
cat#: FLAU36
Release Date:
Japan – September 11th.2013
Europe/USA – September 23th 2013
Format: CD/Digital

artwork: Yoko Kuno
mastering: Geskia


プロフィール

Cuushe
京都出身の女性アーティスト。ゆらめきの中に溶けていくピアノとギターのストローク、 空気の中に浮遊する歪んだシンセサイザー、数々のアーティストがフェイバリットに挙げる拙くも圧倒的な存在感を持った歌声。
2009年にデビューアルバム 『Red Rocket Telepathy』を発表後、The Boats、Kanazu Tomoyukiら様々なアーティストの作品に客演、Grouper のJapan Tourのサポートアクトを務める。
Julia HolterやTeen Daze、Blackbird Blackbirdらがリミキサーとして参加、Demdike Stareがマスタリングで参加したEP『Girl you know that I am here but the dream』はリリース後瞬く間に完売。たった3曲の新録にも関わらず、英ガーディアン紙やDazed and Confused、The 405などで取り上げられ、TIMEOUT Tokyoのベストアルバムに選出されるなど、海外メディアを中心に高い評価を得た。
アメリカの人気アーティストSlow Magicが手がけた最新リミックスは、すでにyoutubeでの再生回数48万回を突破するなど大きな注目を集める中、今夏4年ぶりとなるニューアルバム 『Butterfly Case』をリリースする。

”Cuusheはこういった音楽をネクストレベルまで持って行っているとどこかで読んだが、彼女はそれ以上だ。彼女の作る音楽には究極の何かがある” – Guardian

”Cuusheは波打ち際の海岸のようなエレクトロメランコリアに僕らを誘う。これ以上無く美しい” – Dazed and Confused

バッファロー・ドーター ベストアルバムより「New Rock 20th featuring KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS) In The Studio」ムービーを公開



結成20周年を迎え、ベストアルバム『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』を7月24日にリリースするバッファロー・ドーター。

”再発見”をテーマにしたこの作品では、アドロック(ビースティ・ボーイズ)、小山田圭吾、日暮愛葉 (THE GIRL)、有島コレスケ (told)、Avec Avec、KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS)、立花ハジメなど、豪華アーティストを迎え、新録音源やリミックス、貴重なライブ音源を披露。一般的なベストとはひと味ちがうユニークな内容に、注目が集まっている。

そんな彼らとKAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS)とのムービー「New Rock 20th featuring KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS) In The Studio」が公開された。

本ムービーはエンジニアであるzAkのホームスタジオ“ST-ROBO”で収録。テイクワンOKという演奏とKAKATOによるラップ+レコーディング後のライブ・セッションを素材に編集されたセミ・ドキュメンタリー映像。レコーディング・スタジオでニュー・トラックが生まれる瞬間の、メンバー/ゲストの表情が生々しく切り取られている。

またKAKATOは先日、ウェブサイトで新曲追加とバッファロー・ドーターとのフリースタイルセッションを公開しておりこちらも話題を呼んでいる。(フリーダウンロードアルバム『KARA OK』も配信中、クリッククリッククリック!!)

http://kakato-kara-ok.tumblr.com/



また7月26日(金)より、バッファロー・ドーター結成20周年及びベストアルバムの発売を記念したエキジビションがトーキョーカルチャート by ビームスでも開催される。
http://www.beams.co.jp/labels/detail/tokyo-cultuart


またまた、KAKATOは1年半も遅れてのリリースパーティ!? を兼ねた環ROY主催のイベントも7月16日に渋谷WWWで開催。
http://www-shibuya.jp/schedule/1307/003955.html

アルバム、ライブ、展示会などなど注目の活動から目が離せない!


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Information


Buffalo Daughter
『ReDiscoVer. Best, Re-recordings and Remixes of Buffalo Daughter』

http://www.umaa.net/what/rediscover.html

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【CD情報】
2013年7月24日 RELEASE
UMA-1022-1023
¥2,600 (tax in)

●1CD+書き込み可能な生CD-R付
●バンドヒストリーを綴った24P カラーブックレット+解説・歌詞・対訳付
●初回のみICカードステッカー*付
*交通機関用非接触型ICカードに貼ってデコレーションできるステッカー


トラックリスト:
1. New Rock 20th featuring KAKATO (環ROY×鎮座DOPENESS)
2. Beautiful You 20th featuring 日暮愛葉&有島コレスケ
3. LI303VE
4. Great Five Lakes 20th featuring 小山田圭吾
5. Dr. Mooooooooog
6. Discothéque Du Paradis
7. Cold Summer
8. Peace Remix by Adrock
9. Socks, Drugs and Rock’n’roll Live (Sax, Drugs and Rock’n’roll) featuring 立花ハジメ
10. Volcanic Girl
11. A11 A10ne
12. Cyclic Live
13. バルーン Remix by Avec Avec
14. ほら穴  
Compiled by Nick Luscombe (Flomotion/ BBC Radio 3/ Musicity)

【BIOGRAPHY】

シュガー吉永 (g, vo, tb-303, tr-606) 大野由美子 (b, vo, electronics) 山本ムーグ (turntable,vo)
1993年結成。雑誌『米国音楽』が主催したインディー・レーベル、Cardinal Recordsより発売した『Shaggy Head Dressers』、『Amoebae Sound System』の2枚がたちまちソールドアウト。ルシャス・ジャクソン東京公演でメンバーに音源を渡した事がきっかけで1996年にビースティ・ボーイズが主催するレーベルGrand Royalと契約。同年1stアルバム『Captain Vapour Athletes』(Grand Royal/東芝EMI)を発表、アメリカ主要都市のツアーも行い、活動の場は東京から世界へ。1998年に発表した2ndアルバム『New Rock』(Grand Royal/東芝EMI)では、アメリカ・ツアーの車移動の際に見た同じ景色の連続とジャーマンロックの反復感にインスパイアされた内容となり、大きな反響を得て瞬く間に時代のマスターピースに。その後もアメリカ中を車で何周も回る長いツアー、ヨーロッパ各都市でのツアーも行い、ライブバンドとして大きな評価を得る。2001年『I』(Emperor Norton Records/東芝EMI)発売した後、2003年『Pshychic』、2006年『Euphorica』は共にV2 Recordsよりワールドワイド・ディールで発売される。2006年には、雑誌『ニューズウィーク日本版』の”世界が尊敬する日本人100人”に選ばれるなど、その動向は国内外問わず注目を集めている。2010年夏、自らのレーベル”Buffalo Ranch”を設立。ゲスト・ドラマーに松下敦を迎え、前作より約4年ぶりとなるアルバム『The Weapons Of Math Destruction』を発表。結成20年にあたる今もなお、精力的な活動を続けている。

【関連URL】

Buffalo Daughter official web site
http://www.buffalodaughter.com/

Buffalo Daughter Facebook
https://www.facebook.com/pages/Buffalo-Daughter/193641457353149

国内外のアーティストとコラボレーションTシャツを制作・販売するオンラインショップ「North East」がオープン

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日本を拠点に、国内外のグラフィックデザイナー、イラストレーター、フォトグラファーとコラボレーションし、Tシャツを製造、販売するオンラインショップ「North East」がオープン。

バルセロナを拠点とするデザインスタジオ「Hey」やタイポ好きなら知っているであろうベルリンの「Neubau」などのグラフィックTシャツを制作・販売している。
サイトは日英対応となっており、また決済方法はPaypal経由となる。

今後も新たなデザインが追加される予定とのことで楽しみにしたい。
FacebookTwitterInstagramでも情報発信中。

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No Futura
Designed by Neubau

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97 Dots
Designed by Give Up Art

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Photography by Jason Koxvold

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Geisha
Designed by Hey


http://www.northeast.jp/

インターネットの自由とヤミが交差する「インターネットヤミ市2」レポート

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インターネットヤミ市

6月30日(日)、昨年の「TRANS ARTS TOKYO」で開催され話題を呼んだ「インターネットヤミ市」が今年も開催されました。今回の会場は神楽坂にあるカイブツ社オフィス。打放しコンクリートの広々としたスペースに渋家や、ギークハウス、伊藤ガビンさん、森翔太さん等、今回もパワフルな出店者が揃いました。それではさっそく当日の模様をレポートしたいと思います。

インターネットヤミ市とは
インターネット界隈の人々があえて直接プロトコルする“わざわざ行かないと買えない、残念なECサイト”。自由な雰囲気が失われつつある今日のインターネットにアンチテーゼをとなえ、“手と手の触れ合う生暖かいデータを直リンク”するためにネット上の秘密結社IDPWを中心とする人々によって始まった。会場ではデジタルデータや作品から、パフォーマンスや“記憶”といったその場でしかシェアできないものまで販売。おもしろいモノやレアな情報が取引されるが、“違法なものや危険なものは扱わない明るいヤミ市”を基本コンセプトとしている。


開場時間の14時を過ぎると、前回のヤミ市で生まれた名物キャラクター、インターネットおじさんがオープンを宣言。その後、1時間もたたないうちに会場は満員になりました。


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出店者に人気だったのがドリタ (@doritab)さんの「インターネットタトゥー」(100円)。インターネットブラウザのアイコンや、インターネット用語をおでこや腕に貼れるというもの。写真は懐かしのネスケです。


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photo by @gabin
オープン後、即完売してしまったのが伊藤ガビンさん、竹田大純さんによる「インターネットカレー」。Cookpadのレシピの平均を取ることにより理論上の「インターネットの味」を出すという試みのもとにつくられたカレーだそうです。噂によるととても美味しかったとのことで、今となっては幻のカレーです。カレーの詳細はMODERN FARTにも。




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こちらはオルタナティブ・スペース、渋家ブース。「VideoBomber」でエキソニモとコラボレーションしていたYAVAOさんが指先からレーザを発射できるレーザーグローブを紹介していました。同ブースには、齋藤桂太さんの「浅漬け」や、ちゃんもも◎さんの「手作りタトゥーシール」なども並んでいました。

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1990年代前半生まれの3人組によるデザインチーム、アソビトブースでは「ねっとのやりすぎTシャツ」(3,500円)が完売に。

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こちらも人気だったグッドデザイソ振興会@dezaisoによる「デザイン関連ダジャレ」(100円)。購入すると、Twitterでその人に向けたダジャレを届けてくれます。開催時間内にもどんどんダジャレを送っていました。

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またその隣の「あの日システムズ(仮)」ブースでは書体デザイナーの西塚涼子さんによる「直筆かづらきフォント」が出店、隣で購入した「デザイン関連ダジャレ」を書いてもらうという豪華コラボレーションも実現!

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オーダーメードケースなどを販売し、ごく普通のフリーマーケットの雰囲気を醸し出していたをコリントブース。でも、よく見ると”タイに引越した元同居人「いしいこうた」が大量のゴミ袋とともに家に置いていった忘れ物”を“格安・処分品”として売っていました(!)。ご本人の了解は得ているそうです。

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会社員/研究者/映像作家の@ssugeさんはステッカーや「10分100円で知恵を貸すサービス」等を販売していました。好評だったのはssugeさんのリアルメモ帳のレプリカ。ウェブ連載AA’=BB’等でも定評のあるひらめきのヒントがその一冊に・・!?

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PARTYの清水幹太さんは奥様、息子さん、清水さんのお父さんと家族参加していました。全面的に父、清水鱗造さんをフューチャーしており、鱗造さんのチョコやうまい棒のほか、なんとご本人との5分間トーク(200円)まで用意。対面式ブースを見ていると「すごく楽しかったです!ありがとうございました」とお客さんが出て来たので、筆者もトークを体験。ブースに入ると「私は詩や批評を書いていまして・・」と鱗造さんが語って下さり、すっかり癒されました。ちなみにこの日は息子さんも活躍。商売熱心な様子に新たな才能と家族の結束力を感じました。

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アーティストの谷口暁彦さんが並べていたのは、「無修正◯口画像.jpg」のバイナリデータを額縁に入れたもの。この文字をバイナリエディタで入力し、jpgとして保存すると元の画像を見ることができるようになっています。どんな画像か見てみたいですが、手入力するには相当な根性がいりそうです。

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今後の動きが気になったのが、アーティストの多田ひと美さん、飯沢未央さん、山本悠さんのブースで紹介していたプロジェクト「タダ飯を山で食う」。神保町の試聴室で公開制作を行うという同プロジェクトでは、8月30日までの間、上映会など様々なイヴェントが予定されているそうです。有機的なデータ凝縮の「高尾産おにぎり」(150円)が魅力的でした。

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ネットアイドル、池袋はくるさんは、はくるさんと一緒にチェキで写真を撮れる権利を販売。はくるさんと間接的にだっこできる権利が売られていたり、仙台からはくるさんに会いに来た女性がいたりと、熱狂的な人気を得ていました。

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こちらは映像作家の細金卓矢さんによる「ハイスピードGIF」(300円)。ハイスピードカメラで撮影した映像をその場で編集し、highspeedgifに公開してくれるというGIF動画作成サービスです。下は仕込みiPhoneの森翔太さん&デザイナーの萩原俊矢さんのGIFです。

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ちなみに、森翔太さんもPOKEと プロモーション動画「脊振ILCハイスクール」の絵コンテなどを販売していました。POKE(500円)は三名の方に売れたそうですが、サービス精神旺盛な森さんのこと、全力投球のPOKEを送ってくれそうです。



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夕方からはイヴェントも多発。“ヤミ献金”を提供した方々の逮捕や、思い思いのお宝を持ちよったオークション「ヤミオク®」、歌手の菅原やすのりさんによる「インターネットの歌」など、インターネットならではの企画がつづき熱気を帯びました。途中、インターネットおじさんの司会に会場が盛り上がり過ぎ、ビルの大家さんからお叱りをうけたという一幕もありました。

このほか、Cookedブースの文学集や、グリッチ・ニットゆかいの池田晶紀さんによるサザン相談室、斎藤あきこさんのアーティストの不要ファイル、関根優子さんの肉T、記憶を売り歩いていた渡邉朋也さん、ヤミ市の開祖ともいうべきエキソニモさん等々・・とり上げたい事柄は収拾がつきません。

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ヤミオクの様子

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会場の様子

インターネットという共通項をもつ人たちが一堂に会し、それぞれの文脈が融合して異様なグルーヴを生み出していたヤミ市。ネットの自由なクリエイティビティを後押しする、とてもリアルでとてもインターネットなイヴェントだと思いました。実行委員の皆さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。次回はどんな形で開催されるのか、楽しみにしています!


インターネットヤミ市2 事後談


① ダジャレの受注販売をしていたグッドデザイソ振興会さん(@dezaiso)への支払いを忘れ、謝りのメッセージを送ったところ、「借金ー、文字文字! 」というクオリティ高いダジャレを納品して下さいました。dezaisoさんは現在もダジャレを納品中です。



② 谷口暁彦さんの無修正◯口画像.jpgの内容が明かされました。



③ 清水鱗造(@shimirin)さんのブースで購入した詩が涼やかで良かったです。

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当日の様子の動画はこちら〜



センボーのブログ » インターネットヤミ市とか


Text by Yu Miyakoshi

Information

インターネットヤミ市2
http://yami1.biz/

日時:2013年6月30日(日)14:00-20:00
会場:カイブツ社オフィス(東京都新宿区東榎町10-3)

出店者(抜粋):
渋家/Julie Watai/ギークハウス/マルチネレコーズ/borutanext5/GXEB/グッドデザイソ振興会/なかよしインターネッツ/森翔太/ヌケメ/清水幹太/細金卓矢/池田晶紀/伊藤ガビン/よシまるシン/市原えつこ/水野勝仁/ドミニク・チェン/cooked.jp/スケブリ
…他多数出店(約70店舗)

出品物(例):
HTML5.1ステッカー / インターネット生写真 / グリッチニット / 自主制作アニメーション / Twitter安産祈願 / 読み終えたPDFのデータ / インターネット考古資料 / 物理ZIPファイル / 弁当と体重計のトレーディングカード / デザイン関連ダジャレ / 裏URL / インターネットの気配 / インターネットおじさん / インターネットおにぎり / インターネットおもち / 人間Siri / サザンのモノマネ / 実家 / 韻 / 父 / 記憶 / 夏 など

ヤミ献金
by
CBCNET
W+K Tokyo
nuuo
Uniba Inc.
+SANOW LABs.
声優の携帯電話


しんひろと / DJ薄着 / 2get / BUY NOW / 蔵人古屋 /
グッドデザイソ / ほそがねあすか(旧姓わたなべ) /
ゴッドスコーピオン / 市江竜太 / noscooter /
醤油を1リットル飲むと死ぬ /
ㄜㄘこ a.k.a ㄘωㄜっ / さえき たくや /
まるちゃん / NA_geek / STRLabel /
ジェットストリーム・しんやぁ / hatako / jojporg /
ヤミ位置 / カガリユウスケ /
シティライツ法律事務所 / このまま眠りつづけて死ぬ /
大岡寛典事務所 / interphotoreceptor-matrix /
トぅイッター / ゴミマーケット事務局

主催:インターネットヤミ市実行委員会
会場提供:カイブツ
機材協力:文明
企画:IDPW
Web歌舞かせ:
Cheap Lobster (@hnnhn) x Skirt Ocean (@sskhybrid)
Web制作:
Gray Seastar (@hgw)

クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド「Beyond Interaction」[改訂第2版]BNN新社より刊行

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インタラクションデザイン/メディアアート制作のためのオープンソースのツールキット、openFrameworks の解説書「Beyond Interaction」の改訂第2版がBNN新社より刊行される。

2次元/3次元の図形の描画、アニメーション、サウンドの録音・再生、動画のキャプチャ・再生、マウスやキーボードによるインタラクション、ネットワークの活用などなど、マルチメディアコンテンツを制作するための様々な機能をすぐに利用できる、C++をベースにしたフレームワーク「openFrameworks」。本書では、そのプログラミングの初歩から実践的な応用手法までを、わかりやすく解説している。

また、今回の改訂版では、ソースコードやサンプルを最新版に合わせてアップデートしているだけにとどまらず、openFrameworksの開発者のZachary Lieberman氏やKyle Mcdonald氏、久保田晃弘氏、真鍋大度氏、YCAM InterLab、等々、開発のスペシャリストたちの協力のもと更にパワーアップした内容となっている。

著者は以前CBCNETにopenFrameworks開発者会議 in デトロイト レポートを寄稿してくれた田所 淳氏、編集はCBCNETブログでもおなじみ、齋藤あきこ氏。

openFrameworks初心者から上級者まで、本書を手に、更なるバージョンアップを目指そう!

また、今回は本誌の刊行を記念してCBCNETの読者2名様へプレゼント、詳しくは記事後半へ。

Beyond Interaction[改訂第2版] -クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド
田所 淳 齋藤あきこ
ビー・エヌ・エヌ新社
売り上げランキング: 3,273


openFrameworksの紹介ビデオ –


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openFrameworksの事例とコミュニティ

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openFrameworksプログラム 導入

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Kyle Mcdonald(プログラマー/アーティスト)インタビュー

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透視体験 by 早坂あきら

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ofFaceTracker、ofxSPKなど、openFrameworksのアドオンを紹介




CBCNETの読者へ本書を2名様へプレゼント。
詳細は以下を御覧ください。

読者プレゼント : 「Beyond Interaction[改訂第2版]
クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド」

本書を、抽選でCBCNETの読者2名様へプレゼントいたします!

プレゼント概要
応募手順:
CBCNET Facebookページの応募用ページよりご応募ください。

応募用Facebookページ

※Facebookへのログインが必要です。
※キャンペーンのFacebookアプリは「Crocos懸賞」を利用しております。
※当選者にはFacebook経由でご連絡いたします。

応募締切:2013年7月4日 18:00
協力:BNN新社

ご応募お待ちしております!



Information

Beyond Interaction[改訂第2版]
クリエイティブ・コーディングのためのopenFrameworks実践ガイド

http://www.bnn.co.jp/books/title_index/web/beyond_interaction2openframewo.html

定価:3,150円(本体 3,000円+税)
仕様:B5判/288ページ
発売予定日:2013年6月25日
著者:田所 淳、齋藤あきこ

参加メンバー:
久保田晃弘 / Zachary Lieberman / Memo Akten / Kyle McDonald / 真鍋大度 ( Rhizomatiks ) / 堀宏行 ( Rhizomatiks ) / 比嘉了 ( Rhizomatiks ) / 堀井哲史 ( Rhizomatiks ) / 緒方壽人 (takram) / 神田竜 / maxilla / 早坂あきら / YCAM InterLab / ひつじ (TELESCOPE)

著者/編著者プロフィール

田所 淳
1972年、千葉県生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科非常勤講師。東京藝術大学芸術情報センター非常勤講師。アルゴリズムを用いた音響合成による音楽作品の創作、ラップトップコンピュータを用いた音と映像による即興演奏などを行う。大学では、openFrameworks、Processing、Arduino、Pure Data、SuperColliderといった「クリエイティブ・コーディング」についての講義を行う。講義資料はWebサイトhttp://yoppa.orgで公開、多くの学生やクリエイターに活用されている。

齋藤あきこ
宮城県生まれ。宮城学院女子大学日本文学科卒。青山ブックセンター六本木店書店員、white-screen.jpライター、A4Aコーディネーターなどを経て現在フリーランスのライター/エディター。寄稿にSWITCH「テクノロジー+カルチャーネ申ラボ1oo」(2013年2月号)ほか、連載にWeb Designing「肖像」、マガジンハウスcolocal「コロカルニュース」、CBCNETほか。トークやライブなどのイベントやワークショップの開催、FITC Japanese Ambassadorなど、海外と日本のデジタル・クリエイティブを繋げるための活動も行う。

AKQAによる世界中の学生を対象としたアイディアコンペ『Future Lions 2013』今年の受賞作品たち

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国際的なクリエイティブエージェンシーAKQA主催による世界中の学生を対象としたアイディアコンペ『Future Lions』。60回目を迎えたカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにて、その受賞者およびアイディア・コンセプトが発表された。(→こちらCBCNET内記事

『Future Lions』は8年連続で行っているもので、昨年度は、世界40カ国から1,100件を超える応募が集まり、新しい才能にとって世界規模で影響力のあるプラットホームとなっている。

今年のテーマは「Destiny Awaits (運命が待ち受ける) 」。このテーマのもと、学生達には「5年前には実現不可能であった形でブランド広告アイディアを展開させる」という課題が与えられている。

以下は今年の受賞プロジェクトたちのコンセプト・ビデオ。


by Konomi Tashiro: Tokyo Institute of Technology; Tatsuki Tatara,
Kenji Shimo and Taichi Nihei: Keio University; Tomoki Hayashida: Waseda University, Japan

Amazonを利用し、世界に780,000,000いると言われている読み書きが出来ない子供たちへ本を届けるというサービス「awaken by Amazon」。ユーザーはAmazonを通じて不要な本を送り、その変わりに電子書籍版を受け取り、本はインドなどの本が十分に無い国へ送られる。

Condé Nast – Editorialist from Alexander Norling on Vimeo.

by Alexander Norling and Sara Uhelski: Miami Ad School San Francisco, USA

キュレーションサービスはひとつの流れとなっているが、「Editorialist」はメジャーな雑誌から記事単位を抜粋し、自分の編集によって新たに雑誌を作るというもの。


by Jarrett Jamison and Verenice Lopez: The Creative Circus, USA

「IBM Project Accel」は交通渋滞の改善のため、飛行機の管制塔のような役割を果たすアプリ・コンセプト。


by Alejandro Ladeveze and Caroline Escobar: Miami Ad School Hamburg, Germany

小銭の管理はどの国でも現代人には面倒になりつつあるもの。「Keepit」はそれを解決するべく、小銭を電子マネー化するアプリ案。近距離無線通信可能なレジや販売機(※通称、NFC対応機器)などで商品を購入した場合、お釣りの小銭をアプリ経由で電子マネーとして受け取ることができる。受け取る方法は銀行口座、Paypalアカウント、チャリティーへ、など選ぶことができ、またその配分率を自動設定することも可能というもの。


by Thomas Bender and Thomas Corcoran: School of Communication Arts 2.0, UK

「The Pebble」は聴覚障害がある方へ火事や強盗などの災害/緊急時の注意喚起をする時計型のデバイス案。最近のアラームなどのデバイスはインターネットに接続することができるため、インターネット経由でこうした緊急時の情報をより多くのひとに送ることを可能にするというもの。

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今年の受賞者たち。カンヌで行われた受賞セレモニーにて。

以上が受賞作品たち、どれも紹介ビデオがシンプルにコンセプトを伝えてるのが印象的。
また最終ラウンドに達した応募作品数が最も多い学校に贈られる、フューチャー・ライオンズ・スクール・オブ・ザ・イヤーは3年連続でハンブルグにあるマイアミ・アド・スクール・ヨーロッパが受賞。


Future Lionsでの過去の受賞者たちは世界各国のクリエイティブ・エージェンシーなどで活躍しており、登竜門としても機能している。
ぜひ興味ある学生たちは来年のFuture Lionsに参加いただきたい。


Information

AKQA主催:学生向けコンペティション「Future Lions」
http://www.futurelions.com/
https://www.facebook.com/futurelions

大友良英+青山泰知によるインスタレーション作品『withot records』の作品集、電子書籍と紙本で刊行!

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大友良英+青山泰知による、古いポータブル・レコード・プレー ヤーを使ったインスタレーション作品「without records」の作品集が電子書籍と紙本でBCCKSにて刊行された。

「without records」は、大友良英がライブパフォーマンスや録音で実験をかさねてきたノイズ/即興/アンサンブルという概念を、空間を使ったダイナミックな作品として展開した作品。レコードをセットせず、金属、プラスチックなどの素材を工作したポータブル・レコード・プレーヤーを空間に配し、鑑賞者はその間を自由に行き来しながら作品を鑑賞/聴取する。

今回発売された『without records 2005-2012』は、最初の京都 Shin-bi ギャラリーでの展示から2012年の東京都現代美術館「アー トと音楽-新たな共感覚をもとめて」展まで、7年間8カ所での展示の記録集となっている。
展示風景の写真のほか、大友良英による展示の記憶をたどりながらポータブル・レコード・ プレーヤーに対する愛着を綴ったエッセイ、せんだいメディアテークの展示から参加してきた青山泰知による音と視覚、空間の関係性ついてのエッセイが収録されている。
デザインは数多くの写真集をてがけ、音楽にも強いこだわりを持つ松本弦人が担当。

また、この本には、大友良英の最新ソロ音源(全7曲、54min. wav ファイル)も付随している。 (2014年3月31日までの限定で、専用サイトよりダウンロード可能)
音源は2002年から2012年にかけてライブ/スタジオ録音された大友良英によるレコードなきターンテーブルの実験の軌跡。インスタレーション作品が持つ音楽とは異なるが、ターンテーブルそのものを楽器として扱うアイデアの源泉を共有するものである。

データ本の立ち読みとして最初の20ページ分は閲覧可能なので、ぜひチェックしてみてほしい。
詳細はこちら

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2007 年 せんだいメディアテーク 撮影:伊藤トオル


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2007 年 せんだいメディアテーク 撮影:伊藤トオル


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2008 年 (山口情報芸術センター[YCAM] )「OTOMO YOSHIHIDE / ENSEMBLES」展 
撮影:丸尾隆一(山口情報芸術センター[YCAM] )


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2012 年 東京都現代美術館
「アートと音楽-新たな共感覚をもとめて」展
大友良英リミテッド・アンサンブルズ「with “without records”」
撮影:丸尾隆一(山口情報芸術センター[YCAM] )



Information

『without records 2005-2012』
http://bccks.jp/bcck/111004/info

著者:大友良英+青山泰知
編集・発行:golightly inc.(株式会社ゴーライトリー)
デザイン:松本弦人
Powered by BCCKS
価格:データ本(電子書籍) 2,100 円(8.8MB / ePub 版 7.8MB)
   紙本 2,951 円(128 ページ、A5 変形版)
構成:写真 78 点、大友良英/青山泰知によるエッセイ、大友良英によるターンテーブルソロ音源、展覧会歴など
URL(インフォメーション、販売):BCCKS ゴーライトリー書店
http://bccks.jp/bcck/111004/info

[構成]
1)カラー写真 78 点
2)大友良英・青山泰知によるエッセイ
3)展覧会歴(各展示での会期、規模、スタッフリストなど)
4)アーティスト略歴
5)付属音源(専用サイトからのダウンロード)

[撮影者] 伊藤隆之、伊藤トオル、伊奈英次、今井正由己、宇壽山貴久子、大谷健二、下道基行、 濱哲史、松本弦人、丸尾隆一

[展覧会歴]
2005 年 Shin-bi ギャラリー(京都)
2007 年 せんだいメディアテーク(宮城)
2008 年 山口情報芸術センター [YCAM](山口)
2009 年 Vacant(東京)
2010 年 水戸芸術館現代美術センター(茨城)
2011 年 ジャパン・ソサエティー(アメリカ合衆国・ニューヨーク) 2012 年 ナム・ジュン・パイク・アートセンター(韓国・京畿道) 東京都現代美術館(東京)

Profile

20130619_without-records7 大友良英+青山泰知(2007 年 せんだいメディアテーク 撮影:伊藤トオル)
大友良英(おおとも・よしひで)
1959 年生まれ。ギタリスト/ターンテーブル奏者/作曲家/プロデューサー。 ONJT、FEN など複数のバンドを率いて活動する一方で、Filament、I.S.O.、音遊びの会、千住フライングオーケストラなど数多くのバンドやプロジェクトに参加するなど、多くのアーティストと積極的にコラボレーションを行っている。近年は美術 の領域にまたがる作品も多く、また映画音楽家としても、数多くのサウンドトラック を制作している。 近年は「アンサンブルズ」というキーアイディアをもとに、音楽家や美術家に限らず様々な道のプロフェッショナルからアマチュアに至るまで、多種多様な人たちとの協働を軸に展開する音楽展示作品や特殊形態のコンサートに力を入れている。 2011 年、東日本大震災を受け設立された「プロジェクト FUKUSHIMA!」では、 遠藤ミチロウ、和合亮一とともに共同代表を務める。
今年 4 月から放送の NHK 連続テレビ小説「あまちゃん」のオープニングテーマ曲と劇伴を担当。

青山泰知(あおやま・やすとも)
1960 年生まれ。美術家として活動するかたわら、ライブ企画、DJ 等の音楽活動も 行う。1995 年から続く大友良英とのコラボレーションには、音楽ユニット「DJ TRANQUILIZER」やインスタレーション作品「without records」等がある。

音楽のために作り上げられた1ヶ月 – Red Bull Music Academy New York 2013 – レポート後編

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(C) Red Bull Music Academy

連日開催される豪華イベント


Red Bull Music Academy (以下RBMA)New York 2013、レポート後半は連日行われたイベントなどについてご紹介していきたい。

アカデミー参加者によるスタジオでの音楽制作や豪華なレクチャーが開催される一方、RBMAの大きな魅力は毎晩のようにニューヨーク各地で開催されるイベントたちだ。1ヶ月間にわたり、37の公演・イベント、230ものアーティストが出演した。ブライアン・イーノ、エリカ・バドゥ、フライング・ロータス、DFA Records12周年イベント、坂本龍一+アルヴァ・ノートによるオーディオ・ビジュアルセット、ジャスト・ブレイズやヤング・グールーなどが参加したRBMA Culture Clashなど、ジャンルを超え、怒涛のラインアップとなっている。今回は後半の一週間で自分が参加してきたイベントを中心に簡単にご紹介。
以下が全体のイベントリスト。




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Tony Blasko / Red Bull Content Pool

ブライアン・イーノによる音と映像のインスタレーション「77 Million Paintings」。 32nd Stとマンハッタンのど真ん中の大きなスペースで開催され、繊細かつ緻密な音と映像で構成されたインスタレーション。一瞬、静止画かと思ってしまう映像はゆっくりとその様相を変え、音と相まって空間を作り出していく。来場者のひとたちは床に寝そべったり、各々の楽しみ方で空間を味わっていた。




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Christelle de Castro / Red Bull Content Pool

2000年代前半、ロンドンから始まり世界のクラブシーンへ広まったダブステップ、NO SLEEP TILL CROYDON: THE ROOTS OF DUBSTEPではSkreamやHatchaなどシーンを牽引してきたアーティストたちが会場を盛り上げた。




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当日の出演者リスト
2001年にニューヨークで設立されたレコード・レーベル「DFA Records」。LCD Soundsystemとして数々のヒットもリリースしている設立者のジェームズ・マーフィーはもちろん、レーベルのファミリーが一堂に会し、設立12周年記念のイベントとなった。会場はブルックリンのProspect Hall、この巨大な会場は通常は結婚式場として利用されているようだが、この日は数千人のDFAファンが集まり、大いに盛り上がっていた。

また、RBMAによるDFAのショートドキュメンタリーもリリースされた。
DFAらしいユーモアに溢れ、見応えたっぷりの13分間。






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(C) Red Bull Music Academy

BBC Radioで10年ほど番組を担当し、自身もDJとして世界中を周っているBenji Bによる定例イベント「Deviation」のRBMAスペシャル版、ホストはJust Blaze。昨年Ninja tuneから移籍第一弾作を発表し注目されるFalty DL(真鍋大度氏が手がけた“Straight & Arrow” ビデオも話題となった)やmicroKORG使いのオーストリア人Dorian Conceptなどが会場を沸かせた。

以下のビデオは今回のRBMAで収録されたDorian ConceptによるmicroKROGの解説及びデモ。





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ブルックリン・ブリッジが見渡せる野外のビア・ガーデン会場で行われた「THE DO-OVER」。前の週は天候が不安定だったが、この日は快晴の日曜日ということもあり多くのひとが集まった。

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Tony Blasko / Red Bull Content Pool

また今回のRBMAへ日本代表として参加したEMUFUCKAこと、TAKAFUMI SAKURAIによるライブ・セッションも実現!




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Tony Blasko / Red Bull Content Pool


長年コラボレーションを続けている坂本龍一とALVA NOTOのオーディオ・ビジュアル・セット、「summvs」のニューヨーク初公演。会場はメトロポリタン美術館内の講堂で開催された。
ビビットなビジュアルとともに、美しく重なりあうピアノの旋律と電子音。会場は静かな興奮に包み込まれた。


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Tony Blasko / Red Bull Content Pool

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Tony Blasko / Red Bull Content Pool



音楽のために作り上げられた1ヶ月


自分が参加した後半の一週間だけでもこの豪華さであり、こうしたイベントが1ヶ月間、ノンストップで開催された。イベントはもちろん一般にも公開されているのだが毎回イベントに来るお客さんの層が違うのも印象的であった。



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Dan Wilton/Red Bull Content Pool

会期中にはRBMAによるラジオ番組も配信。
RBMA Radioのサイトにはイベントの録画や番組のアーカイブもまとめられている。こちらはiPhone アプリも。

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こちらは会期中ほぼ毎日、合計22号発行されたDAILY NOTE。毎回、ニューヨークの音楽カルチャーを切り取り、多様なジャーナリストたちが寄稿している。このDAILY NOTEはニューヨークの街中で配られていた。


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ニューヨークの街に貼りだされたRBMAの告知壁。これは1ヶ月のスケジュール版、毎日イベントが終了するとともに赤い線で更新されていた。

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メディア関係者に配布されたキット。アカデミー参加者のプロフィールからアーティスト・ブック、トラベルガイドまで同封されていた。RBMAチームの細部までのこだわりが見て取れる。





こうして1ヶ月に渡って開催された2013 Red Bull Music Academy New York。全体を網羅するのは到底無理と思えるほど詰まりに詰まった濃密な日々、どこを取ってもRBMAらしさが感じられる内容となった。また、アカデミー参加者たちは皆、刺激的な毎日を過ごし、コラボレーションや新たな出会いに創作欲を触発されているようであった。

これら全てはRBMAチームの音楽への思いと情熱からから成り立っており、こうしたイベントを継続的に世界中の都市で開催しているRBMAへの信頼と期待を感じさせられる。15回目となった今回だが、来年以降も開催が予定されおり、アプリケーションは全世界から受け付けている。詳細はまだ発表されてないが、音楽活動をしているひとは一生に一度の貴重でエキサイティングな日々を味わえるはずなので、ぜひ応募をしてほしいと思う。

今後のRBMAのアップデートも伝えて行く予定。一般の参加者としてもこれからの開催を楽しみにしたい。


追記(2013/0701):
RBMA Newyork 2013を総括したショートビデオが公開されました。



http://www.redbullmusicacademy.com/

(日本語サイト)
http://www.redbullmusicacademy.jp


Text and some photo by Yosuke Kurita ( @yskkrt )

15回目を迎えるRed Bull Music Academy 2013、舞台はニューヨーク – レポート前編

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Dan Wilton/Red Bull Content Pool

Red Bullによる音楽プロジェクト「Red Bull Music Academy」(以下、RBMA)。日常的に様々な音楽情報を発信し、イベントやラジオ番組RBMA Radioなどのコンテンツを展開してる。
CBCNETでもRBMAによる先進的な音楽ドキュメントシリーズの『H∆SHTAG$ (ハッシュタグ)』などを以前紹介したが、彼らの音楽への取り組みは他に例が無い多様性を見せている。(→紹介記事

RBMAはこうした活発な活動をしているのだが、その中核となるのが世界各地で開催し、今年15回目となるアカデミー月間である。フェスなの?学校なの?その全体像はなかなか伝わって来なかったが、今回、ニューヨークで開催されたRBMAに幸運にも参加することができた。

その全体像とともに、RBMAの中心的なコンセプトと彼らの取り組みを紹介できればと思う。

今年で15回目を迎えるRed Bull Music Academy、舞台はニューヨーク


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234 ARTISTS, 34 NIGHTS, 8000 ANTHEMS, 1 CITY, NEW YORK

RBMAはその名の通り、レッドブルが主催するミュージック・アカデミー。これまでにベルリン、トロント、ロンドン、メルボルン、ケープタウンなどで開催され、一昨年はマドリッドで開催された。そして2013年の舞台はニューヨーク。

そして、その中心となる「アカデミーメンバー」として参加できるのは、世界中から集まった数千通を超える応募者から選ばれた、たった60名程度。この事実はRBMAに注目しているミュージシャンではないとあまり知らないことかもしれない。今回、世界93カ国からあつまったアカデミーの応募者数は4000通以上。音源とともに、約14ページに渡るエントリーシートを答えていき、厳選なる審査の結果、選ばれたのは世界29カ国、6大陸から集められた61名となった。それぞれはすでに独自で音楽活動をしている新進気鋭のアーティストでもある。過去には、Flying Lotus、Hudson Mohawk、Dorian Conceptなど、いま各国で注目を集めるアーティストをRBMAは輩出してる。今回、日本代表としてEMUFUCKAことTAKAFUMI SAKURAIも選出された。

選ばれたアカデミーメンバーは4月末から5月末まで、前半後半と2組に別れ2週間ずつニューヨークに訪れる。その2週間の間は著名なミュージシャンたちのレクチャー、RBMAのために特設されたスタジオでの音楽制作、ニューヨークの名だたるクラブやホールで毎日イベントが開催されるのだ。

自分が訪れたのは5月23日からの一週間。その一週間だけでも濃密すぎるエキサイティングなRBMAの熱気と情熱がニューヨークの街と相まって感じられる内容となった。

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全体の概要は上記の通りだが、あらゆる面でRBMAの取り組みを垣間見れる要素があった。今回はその端々の要素を簡単ではあるが紹介していきたい。

まずアカデミーが開催される1ヶ月間、RBMAの拠点となる場所だが、これは毎回、開催都市に合わせてRBMAにふさわしい場所が新設される。今回の場所はニューヨークのチェルシー地区にあるビル。

4フロア、合計2500平米に渡るこの拠点にはアカデミーの参加者が自由に利用できる音楽スタジオ、マスタリングルーム、食事も振舞われるラウンジスペース、連日行われるレクチャーのためのオーデトリアム、RBMA運営スタッフのオフィス・スペースなどが入っている。

以下は、そのスペースを紹介したビデオ。



アカデミー参加者が毎日を共にするこの施設はRBMAのこだわりの一つであり、会場設計から各スタジオの設備は今回のアカデミーのために用意され、会場の各所にはニューヨークのアーティストを中心としたアートワークが配置されている。
アカデミー会場の内部を軽くご紹介。

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アカデミー会場のラウンジ部分、毎日アカデミーの参加者、スタッフ、世界各国のメディアの人たちがコミュニケーションしている。朝食から料理も振舞われ、夜にはビールも出ていた。


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会場のスタジオ。スタジオは全部で8つあり、それぞれが機材や内装がカスタマイズされている。

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スタジオ制作の様子、写真はアカデミー参加者のPleasure CruiserことNic Liu。
Dan Wilton/Red Bull Content Pool

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会場のマスタリングルーム。

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会場の各所にはアーティストによる作品が展示されている。この作品はブルックリン在住のTom Forkinによるもの。

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地下フロアに設置されているMartin Rothによるインスタレーション。鳥やハ虫類がいる檻のなかにはマイクが設置されており、その環境音はアカデミーの別フロアにあるスピーカーから出力されていた。


また、少し変わったパフォーマンス・アートもこの会場で行われていた。

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ネット・アーティストとして有名なRyder Ripps、OKFOCUSといデザイン・チームとしても活動しており、リアルタイムのイメージシェアリング・サービス「dump.fm」や過去の忘れ去られるgifアニメーションやイメージを集めているInternet Archaeologyといったユニークなサイトを多く制作している彼だが、今回はこのアカデミーの会場で「Hyper Current Living」というパフォーマンスを行った。これは会場に設置されたオフィス・スペースで、一週間に渡りレッドブルを飲みながらアイディアをひたすら絞り出していくという彼らしいハイ・テンションなもの。その模様はサイトで中継され、アイディアはTwitterへ#hypercurrentlivingというハッシュタグとともに投稿された。


Ryder Ripps自身によるプロジェクトと場所の紹介、RとIしか無いキーボードで、レッドブルを飲んだらRを叩き、アイディアを投稿したらIを叩き、リアルタイムにウェブが更新されるとのこと。

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スタジオのフロア、廊下は入り組んでおり、各スタジオの様子などが垣間見れる設計となっている

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会場の各所にはレッドブル冷蔵庫が、いつでも補給可能!


豪華アーティストによるレクチャー


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アカデミー参加者はこうした刺激あふれるスタジオを毎日利用することができ、自身の作業や他の参加者とのコラボレーションに没頭できる空間となっている。

その一方、連日オーディトリアムでは講師として招聘された著名なミュージシャンやプロデューサーたちのレクチャーが開催される。このレクチャーはアカデミー参加者のためだけのもので30名程度しか入れない。

レクチャーの講師には、マンハッタンにて音楽映像インスタレーションも発表したブライアン・イーノ、長年コラボレーションをしておりニューヨーク公演も行った坂本龍一+Alva Noto、ニューヨークのレコード・レーベル「DFA Records」の創立者であり、LCD Soundsystemとしての活動も有名なジェームズ・マーフィー、ザ・ルーツのドラマーであり数々の顔を持つQuest Love、ヒップホップのレジェンドMCであるRAKIM、などなど、数多くの功績を残してきた偉大なアーティストたちが名を連ねる。

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現在シーンを賑わす、気鋭のアーティストも数々登場する。こちらはNinja Tuneに所属するFaltyDLことDrew Lustman。レクチャーは対話形式で行われ、対話役もそのシーンの見識が広いメンバーが担当する、上はBBC Radioで10年ほど番組を担当し、自身もDJとして世界中を周っているBenji B。


現場でレクチャーを聞けるのはアカデミー参加者だけとなるが、その模様は映像で丁寧にウェブサイトにまとめられている。

どのレクチャーも濃い内容になっており関心する要素が多く詰まっているのが印象的だ。英語のみとなっているが英語の文字原稿もレクチャーによっては上がっている。

ここでは2つほど個人的にもとても興味深かったレクチャーを紹介したい。


Lecture: Brian Eno (New York, 2013) from Red Bull Music Academy.
一ヶ月間に渡りマンハッタンにてインスタレーション作品を展示していたブライアン・イーノ。若い時のニューヨーク生活の話からコラボレーションや時代に対する見識など思慮深い内容。「どうやって作品の完成を決めるのか」という質問に対して3000曲近い未発表曲があるというイーノは「デッドライン(締切)が決めてくれる」と答えたのは印象的だった。



Lecture: Q-Tip (New York, 2013) from Red Bull Music Academy.
ドキュメンタリー映画も公開されたア・トライブ・コールド・クエストのメンバーであり、自身もソロやプロデュース活動を行うQ-Tip。初期のビートメイキングの話やN.W.Aの影響、貴重なJ Dillaとの思い出話、DJ Premierによる未発表のNasの “Memory Lane” を流してくれたりと満載の内容。後半にあるKRS-Oneのモノマネは個人的に必見。


これはごく一部となるが、他のアーカイブも随時アップデートされているようで、知らないアーティストでも興味深いレクチャーが多数。
アカデミー参加者たちはこうしたレクチャーに参加し、多くの刺激を受けているようであった。設けられる質問タイムでも、毎回積極的に参加者が手を挙げていたのも印象的であった。ぜひ興味ある人は気になるアーティストのレクチャービデオを探していただきたい。


さて、ここまでメインのアカデミー会場で行われている内容であったが、もうひとつのRBMAの主要な要素は、連日に渡りニューヨークの様々な会場で開催されるイベントやコンサートだ。1ヶ月間、毎日開催されるイベントは多種多様であり、小さなクラブからメトロポリタン美術館までニューヨークならではのスポットで開催された。

こちらの紹介はレポート後編で!



Text and some photo by Yosuke Kurita ( @yskkrt )

iPhoneで街中に散りばめられた仮想的な通貨「MaM」を集めよう – エキソニモ × MaM × GYRE「MoneyFinder Harajuku」ワークショップレポート

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5月12日(日)と5月26日(日)、お金をめぐるアートの展覧会「Money after Money | 信用ゲーム 2013」のスペシャルプロジェクトとして、エキソニモが開発したiPhoneアプリ「Money Finder」のワークショップが開催されました。
このワークショップは、同アプリを使って街に仮想的にお金を埋めたり掘りおこしたりするというものです。筆者は2回目のワークショップに参加してきました。今日はさっそく体験レポートをお届けしたいと思います。

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会場となったのは、「Money after Money」展が開催された表参道GYREの地下。 最初に、講師のエキソニモのお二人からアプリの説明などを聞きます。

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「みんながシリアスになってしまいがちなお金と街をゲーム化して、遊びと生活の境界を壊したい」と語るエキソニモ 千房けん輔さん。

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参加者の方からアプリの感想を聞いていたエキソニモ 赤岩やえさん。すでにアプリのアップデートを構想中。

ここでちょっと「Money Finder」の使い方をご説明。
「Money Finder」は5月11日からAppleのApp Storeで配信がはじまったばかりのアプリで、
地図にマッピングされた場所から仮想通貨MaMを掘り出したり、好きな場所に埋めたりすることができます。

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アプリを立ち上げると、すぐにマップが表示され、あちこちに「M」のマークが立ちます。
このマークのある所がMaMの埋まっている場所です。

街の中を歩きながら地図にマッピングされた場所に近づくと、MaMが近くにあることを知らせる文字が点滅しはじめます。10m、5m・・と距離を縮めていき、まさに埋められた地点に立つと、Getボタンが赤に。その状態でボタンを押すと、MaMがGetできます!

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このマネーを取得中・・という画面ですが、じつはこの時、獲得した人は自分のiPhoneカメラで映像を撮られています。

その映像はご覧のようなショットで、埋めた人のところに届くようになっています。
画面の方(あの「仕込みiPhone」の方!)の何気ないショットはとても珍しいですね。
この隠し撮りしたようなショットを送ってしまうのがこのアプリの重要なカラクリで、エキソニモのサイトによると

探す人は自分の情報と引き換えにMaMをゲット。
埋める人はMaMを奪いに来る人の情報をゲット。

ーー とのことです。MaMはタダで貰えるという訳ではないんですね。
この交換価値が「Money Finder」のキモとなっているんです。

20130605_ exonemo_money-finder_ws-10 お金を埋める時は、街を歩いている時にPutボタンを押し、任意の金額を入れれば、自分が今立っている場所にMaMが埋められます。
この時に、獲得者の方に向けてメッセージを入れることもできます。


こうしてMaMを埋めると、誰かがGetした時にその人の映像が送られてくるという訳です。

ひと通り説明を受けた後は、「それでは、実際に街へ出てMaMをとってきてみてください!」
というわけで、iPhoneを片手に原宿の街を歩いてきました。

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実際に遊んでみると、MaMをとるために普段は通らない道を通ったり、意外な場所を発見したり、都市の隙間に入り込んだような感じが楽しめました。
また、誰かから映像が送られてくるのもスリリングで面白かったです。

今回のリリースはテストバージョンとのことで、アプリの改良点などもディスカッションされました。
既に2回目のワークショップの時点でも、1回目のワークショップのフィードバックを生かし、お金を埋める人がメッセージを残せるなどの機能が追加されていました。今後のアップデートも楽しみです。
ユーザの使い方も、意図的に映像を送ったり埋める場所に凝ったりと、色々発展できそうですね。
また、このアプリはもともと本当の「通貨」を使う計画だったのが、諸事情により実現できなかったとのこと。いつかはリアルマネーを使うバージョンもリリースされるかもしれません。





「Money after Money | 信用ゲーム 2013」の展示の方についても少しご紹介・・
メディア・プロデューサーの桝山寛さん、キュレーターの四方幸子さん企画による同展は2001年にICCで行われた「信用ゲーム」展の続編。アンディ・ウォーホルのシルクスクリーン「1$」や、ドイツの連邦財務省に毎日1セント振り込むというクリスティン・ラールの「マハト・ゲシェンケ:資本論」、ウーバー・モルゲンの「Everything is Always」などの作品が並んでいました。

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上の写真はエリー・ハリスンの「金融危機の歴史」。1929年の世界大恐慌にはじまる経済危機を11台のポップコーンマシンになぞらえています。

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会場の隅には経済危機の負債さながら、ポップコーンの山が。千房さんが「みんながシリアスになってしまいがちなお金と街をゲーム化して、遊びと生活の境界を壊したい」と語っていましたが、展示全体が常々「もっと見なきゃ」と思っている経済とお金の問題をユーモラスに見せてくれたようでした。展示の様子やアーティストのインタビューはFacebookページにまとめられているので興味ある方はぜひ。






20130605_ exonemo_money-finder_ws-14 ちなみにこの「Money Finder」、日本以外でも少しづつ広まっていて、
すでにヨーロッパでもお金を埋めている人がいるとか(右画像参照)。MaMは本当にそこに行った人にしか埋められないので距離感がリアルに感じられてきます。それにしても、埋めた人の顔も見てみたくなります!

以上、ワークショップレポートでした。
参加者の皆さん、エキソニモさん、ありがとうございました!

ぜひみなさんも「Money Finder」でMaMをゲットしてみてください!
https://itunes.apple.com/app/money-finder-harajuku/id639790516?mt=8


Text by Yu Miyakoshi



Information

MaMスペシャルプロジェクト
エキソニモ×MaM×GYRE 《MoneyFinder Harajuku》

http://exonemo.com/iPhone/mfh/

会期:2013年5月11日(土)~26日(日)
開催場所:GYRE館内および周辺エリア

Money after Money | 信用ゲーム 2013
http://mamjp.org/art/

会期:2013年5月2日(木)~26日(日)
会場:EYE OF GYRE (GYRE3F) +GYRE館内および周辺エリア
東京都渋谷区神宮前5-10-1 Tel: 03-3498-6990 >>website

参加アーティスト:アンディ・ウォーホル/ウーバーモルゲン/エキソニモ/エリー・ハリスン/クリスティン・ラール/ニティパク・サムセン/フィリップ・ハース/フリエタ・アランダ+アントン・ヴィドクレ/ヨーゼフ・ボイス

主催:一般社団法人 MAM、特別協力:JTQ、協力:HiRAO INC
エグゼクティブプロデューサー:桝山寛、キュレーター:四方幸子

後援:オーストリア大使館/文化フォーラム、東京ドイツ文化センタ—
ベネファクター:黒澤一夫


MoneyFinder Harajuku iPhoneアプリ:itunes store
MoneyFinderウェブページ:http://exonemo.com/moneyfinder
「Money after Money|信用ゲーム2013」ウェブページ: http://MAMjp.org/art/

博報堂のクリエイティブ・ディレクター6人が新会社「SIX」設立。
記憶に残るクリエイティブを手がける面々

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大手代理店の博報堂から、マス広告/デジタル・クリエイティブにおいて世界からも注目される気鋭のクリエイティブ・ディレクター(CD)ら6人が独立し、新会社「SIX」を設立。社名にちなみ、6月6日より営業を開始した。

SIXのメンバーは野添剛士、大八木翼、本山敬一、坪井卓、斉藤迅、日野貴行ら。ギャラクシー「SPACE BALLOON PROJECT」や「TOKYO CITY SYMPHONY」、「Google Chrome初音ミク」などのプロジェクトのプランニングやディレクションを手がけた面々。カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルなど世界的な広告賞においても常連であり、新世代を牽引するデジタル・クリエイターらが名を連ねる。彼らに共通しているのは、SNS以降のマス広告/デジタル・プロモーションにおいて、プロモーションする対象の特性と、ひと目で”面白い”と思えるアイデアを合致させ、クリエイティブのバランスを絶妙にとっていること。それぞれのメンバーについてご紹介しよう。





20130610_six2-200 野添剛士
Creative Director / CEO


約30,000メートルの成層圏までバルーンでスマートフォンGALAXY S IIを飛ばし、フライトの一部始終をUSTREAMで中継したダイナミックなプロジェクト 「SPACE BALLOON PROJECT」(文化庁メディア芸術祭グランプリ受賞)が記憶に新しい。見かけによらず茶道をたしなみ、好きな言葉は「和敬清寂」の元高校球児。マスメディアでのブランディングから、ソーシャル、体験デザインまで、統合的にデザインを手掛ける。


SPACE BALLOON PROJECT
クライアント:SAMSUNG ELECTRONICS JAPAN / GALAXY



20130610_six4-200 大八木翼
Creative Director / Interactive Creative Director


森ビルの都市模型に投影した 3D プロジェクションマッピングと音楽を組み合わせた映像を、ユーザーがパソコンから操作して音楽をつくることができるプロジェクト「TOKYO CITY SYMPHONY」では総合プロデュースを手掛けた。OK GOの「ALL IS NOT LOST」制作にも携わる。「広告は、ひととひととをつなぎ、世界を良き方向へと向かわせる、最大のメディア・アートである」という考えのもと、表現における自分なりのソーシャルグッドを探し求める。夢は、ボリス・ヴィアンのカクテルピアノのような装置をつくること。


TOKYO CITY SYMPHONY
クライアント:Mori Building / Roppongi Hills



20130610_six6-2 本山 敬一
Creative Director / Interactive Creative Director


初音ミクを起用したChromeのCM「Google Chrome Hatsune Miku」、ソニーのハンディカムで子どもの成長する思い出を映像として残す疑似体験をするキャンペーン「Cam with me」を手がける。”A fusion of Technology with Humatniy”をテーマに、人の心に残る体験をつくるべく試行錯誤中。


Google Chrome Hatsune Miku
クライアント:Google Japan / Chrome



20130610_six8-2 坪井卓
Creative Director / Copy Writer


ユーザーがコミックの中から選んだ1コマを合わせて一つの作品として完成させる”ソーシャル漫画”キャンペーン「ソーシャルキングダム」や、「暴君ハバネロ ハズレキャンペーン」、「JOJO 25th Anniversary Project 」を手掛けた。JOJOがバイブルでマンガの普及も自らのテーマだという。

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JOJO 25th Anniversary Project
クライアント:SHUEISHA / JOJO



20130610_six10-2 斉藤 迅
Creative Director / Music campaign director


壊すことだけを目的とした、5250円の「破壊専用ギターSMASH」プロジェクトは、Cannes Lionsのダイレクト部門で金賞、銀賞をダブル受賞した。広告の枠にとどまらず、商品やサービス開発、音楽を中心としたブランデッドエンターテイメントキャンペーンを得意としている。

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SMASH
クライアント:K’s Japan / SMASH



20130610_six12-2 日野貴行
Creative Director / Interactive Creative Director


YouTube、Google Maps、GoogleカレンダーなどのWebサービスを舞台に展開する“謎解きパズル「The Google Puzzle」やドラえもん生誕100年前記念 Google「みらいサーチ」を手がける。The Google Puzzleはサイトオープン後、1ケ月で100万人が挑戦する人気ゲームとなった。メンバー随一のほっこりキャラクターである。

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Google Puzzle
クライアント:Google Japan / Chrome





20130610_six14 デザイン界の大御所ストーム・ソーガソンによるロゴ

コーポレートロゴは、アート集団ヒプノシスでの活動やピンク・フロイド、レッド・ツェッペリンなどのジャケットで知られる巨匠ストーム・ソーガソンがデザイン。黄金比に内包される“6”をメインビジュアルに、無限の螺旋が生み出すうねりやパワーがシンプルに表現した。「S」は時代との同期・シンクロを表す“SYNC”、 「I」は人の心を着火し動かしていく“IGNITE”、「X」は新しいコミュニケーションへの冒険心=“EXPLORE”をそれぞれ意味している。

社名の「SIX」は、6人の繋がりを介せば世界中の誰とでも繋がることはできるスモールワールド現象や、”第六感”などの由来を持つ。クリエイター主導型の会社として独立したことで、純粋にクリエイティブの面白さを追求するコンテンツを生み出してくれそうだ。

Information

「株式会社SIX」会社概要
社   名:株式会社 SIX
本社所在地:〒107-6310東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
※2013年10月に新オフィスオープン予定(港区青山)
資 本 金:90,000千円(博報堂100%出資)
役   員:代表取締役社長 野添剛士(博報堂より出向)
http://sixinc.jp/

Adobe MAX レポート02

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5月初旬に開催されたAdobe MAX 2013、CREATIVE CLOUDの大幅なアップデートがメイントピックとなったが、3日間に渡り、技術セッションやクリエイティブセッションなど多岐にわたるテーマのセッションが開催された。
その中でいくつかのセッションやイベントを簡単にピックアップしたい。


http://www.cbc-net.com/topic/2013/05/adobe-max-2013-report01/

2日目の基調講演では、例年のアドビ社からの発表ではなく、様々な分野で活躍するデザイナーやアーティストが登壇し、制作のフィロソフィーなどをプレゼンテーションする内容となった。こちらも今年のMAXを象徴する大きな変化となった。


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グラフィックデザイナー、美術家であるポーラ・シェア。アルバム・カバー、表紙、シティバンクのロゴなどを手がけるベテランのデザイナーであり、91年よりPentagram Design Consultancyのニューヨーク・オフィスの主任を担当している。

「一番やりたいのは、誰もやりたがらないことにチャレンジすること」そう語る彼女は立体駐車場への大胆なグラフィックデザインやワシントンD.C.のマウント・ヴァーノン・スクエアの多機能施設へのサイン計画などに参加している。大胆な発想の転換こそ新しいものを生み出すエネルギーとなると語った。


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TEDなどでも大反響となったアーティストのPhil Hansenによるプレゼンテーション。膨大な作業量を要する作品が特徴で、ブラシだけではなく、空手チョップだけでブルース・リーを書いたり、はたやハンバーガーでもモナリザを描いたり、驚いてしまうような手法で見事な絵画を描いていく。もともと彼は手が震えてしまう障害があり、常に葛藤をもって作業していたが、その制限を受け入れることによってさらなる境地でのクリエイティブが可能になったと語った。こちらのYoutubeなどで彼の作品過程などをみることができる。

現在は自分の電話番号を公開し、一般の人に「人生における制限」についての話をしてもらい、そのストーリーを使い文字で画を描いていくプロジェクトが進行している。


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フォトグラファー、レタッチャーであるErik Johansson。摩訶不思議な世界観を創造する彼の作品たちの制作の過程を紹介。「Photoshopはマジックじゃない」と素材の大事さを語り、見事な作品のレイヤー構造を紹介しながらその過程と仕組のシンプルさを伝えた。彼のサイトに多くの作品があるのでぜひご覧頂きたい。

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Fishy island by Erik Johansson


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デトロイト出身で現在はポートランドを拠点に活動するグラフィックデザイナーのAaron Draplin。そのエネルギーあふれる怒涛のプレゼンで会場は笑いと熱気に満ちた雰囲気となり大盛り上がりのセッションとなった。生い立ちからデザインをするようになった背景、また大手クライアントの仕事を多数請け負ったのち、身近な良い人に良い仕事をしたい、という自然な動機から、思いやりのあるデザイン姿勢が見て取れた。
愉快で真摯な姿勢のプレゼンテーションは有名なようで、アメリカを中心に数多くのカンファレンスに招かれている。

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プレゼンテーションではロック音楽に載せて怒涛の101のロゴのスライドショーが上映された。

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セッションは多様で、映像関連のセッションも多く行われた。
Jacob RosenbergはBANDITO BROTHERSというロス・アンジェルスを拠点にする映像プロダクションのディレクター。HotWheelやBMWの迫力ある車のフッテージが特徴の映像を多く手がけており、最近ではネイビー・シールズの現役隊員が出演する劇場映画 ”Act Of Valor”’(邦題:ネイビー・シールズ)などを手がけたプロダクション。非常に大きな規模の作品が多いが、その背景はプロダクションの姿勢やチームの結束が生んだものだという。また5D MarkⅡをきっかけに、プロダクションの機材の変容が大きかったといい、最近では最低限の機材でロケ地に乗り込み撮影をする制作フローの変化などが興味深かった。
Jacob本人はスケートビデオの撮影から映像に興味を持ち、最近ではレジェンドスケーターの一人であるDanny Wayのドキュメンタリーフィルムも手がけた。





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アントレプレナー、ウェブデザイナーとして広く知られるJeffery Zeldmanによる「モダン・ウェブデザインにおける10の鉄の掟」と題されたセッション。「Thou shalt entertain」(なんじは人を楽しませるべき)「IV. Thou shalt ship」(まずはリリースすべき)「Thou shalt prioritize」(優先順位をつくるべき)などZeldman節のユーモアと切れ味あるトークで近年のウェブデザインで必要とされる要素を紹介。98年からウェブデザイナー向けのコラムなどを展開するウェブサイト “A LIST APART“で展開される話なども紹介し、最後は「Remember, This is Design, Not Religion」という言葉で締めくくられた。




他にも、最近ステファン・サグマイスターとタッグを組んで新しいスタジオ “Sagmeister & Walsh.“として活動するJessica Walsh、バルセロナを拠点に多様なビジュアルを展開しサッカーチーム・FCバルセロナのユニフォームのタイポデザインも手がける VASAVA、 ニューヨークを拠点に活動するドイツ人二人組の”karlssonwilker”、などのトークも行われた、この三者は今年のMAXのメインビジュアルも手がけている。

こうしたグラフィックデザインやクリエイティブ関連のプレゼンが多いのも今回のMAXの特徴となっていた。


さて続いて、会場の様子やイベントの様子などを簡単にご紹介。

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コミュニティースペース。様々な企業やプロダクトのブースやCCシリーズのアプリを試すことができるスペースなどがあり、昼食も参加者へ振舞われる。


注目を浴びていた、霧を使ったディスプレイ。( 映像は via clockmaker )



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アドビによる学生ビジュアルアートコンテスト、Adobe Design Achievement Awardsの2012年の受賞作品の紹介コーナー。現在2013年の応募を受け付けている。
http://www.adobeawards.com/jp/

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アドビグッズや書籍の販売コーナー。Creative CloudのConverseもあったり。


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2日目の夜に行われたSneak Peek。このセッションでは将来プロダクトに実装かれるかもしれない、アドビの研究している新しい機能を「チラ見せ」するもので、毎回目玉のイベントになっている。
今回はアドビのBen Forta氏、俳優のRainn Wilson氏、そしてテレビドラマ『24』のクロエ役でもお馴染みのChloeMary Lynn Rajskub氏が参加して行われた。


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Sneek Peekのあと、参加者全員が参加できるパーティー、MAX Bash。サーカスのようなアトラクションや演者など、数千人が参加することもあり大盛り上がり。最後にはグラミー賞を受賞しているロックバンド The Black Keysによるライブ演奏で締めくくられた。


新たなCreative Cloudの発表があり、クリエイティビティがテーマとなった今回のAdobe MAX。セッションの幅の広さはデザイナー、エンジニアともに参加できる充実した内容となった。興味ある方はぜひ来年のMAXに足を運んでほしい。
また、ほとんどのセッションの模様はビデオでアドビの公式サイトで公開されているので気になるセッションなどあればこちらもぜひチェックしてほしい。
http://tv.adobe.com/show/max-2013/



Clockmaker.jp : Adobe MAX 2013で受講したセッションのまとめ
http://clockmaker.jp/blog/2013/05/adobe-max-2013-sessions/

今後、アドビ製品に搭載されるかもしれない12の新機能 -Adobe MAX2013 (マイナビ)

Adobe MAX 2013 レポート01 – 今年のMAXは「クリエイティビティ」がテーマ

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Adobe MAX 2013 は「クリエイティビティ」がテーマ


Adobe Systems社主催のカンファレンス・イベント「Adobe MAX 2013」がアメリカ、ロス・アンジェルスにて開催された。

Adobe MAXは、アドビ社が2005年に買収したMacromedia社時代から親しまられてきた同社主催のカンファレンス・イベントであり、製品の発表はもちろん世界中のユーザーが集い、直接情報交換をする貴重な機会となっている。

MAXといえば、例年はFlashやAIR、FLEX、などのウェブ・デベロッパー向けの側面が大きかったが、今年はより多面的なクリエイティビティ・カンファレンスになると開催前から発表されていた。

今回のレポートでは発表された主なポイントと現地の様子やクリエイティブ関連のセッションを紹介したい。

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40台のプロジェクターを使って演出された巨大な変形スクリーンで構成されたステージ。インパクトのある映像が次々と流れた。

CREATIVE CLOUD への一本化
CSからCCへ


カンファレンスの初日にNokia Centerで基調講演が行われた。同社CEOのシャンタヌ ナラヤン氏やデジタルメディア担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるデイビッド ワドワーニ氏らが登壇し基調講演が進行していった。

今回の発表でメインとなるのは2011年に発表された「Creative Cloud」の大幅アップデートだ。Creative Cloudはサブスクリプション型のライセンス形態のサービスであり、月額費用を払うことによってウェブ、プリント、動画など各専門性を持っている同社の多様なソフトウェア群を大半を使うことができるというものだ。

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新たなCREATIVE CLOUDを紹介するデイビッド ワドワーニ氏

2003年よりスタートしたCreative Suiteシリーズとして販売されてきた同社製品であるが、今後はCreative Cloud経由での提供に一本化するということが発表された。それに伴い、今後のバージョン名は「CC」となる、Photoshop CC、Dreamweaver CC、といった具合だ。また現在までの最新版であるCS6はサポートおよびパッケージ形態での販売が継続されるが、新たな機能追加などはCreative Cloudを通じての提供に一本化されることになった。つまり、CS7は無く、今後はCCブランドで各製品が随時アップデートされるようになると思われる。
※なお「Fireworks」「Flash Bulder」「Acrobat」などの製品はCS6までのバージョンが最新バージョンとなり「CC」版はリリースの予定はないとのこと。
Fireworksの今後についてはこちらのブログにまとめられています→ http://cuaoar.jp/2013/05/firewoks.html


デイビッド ワドワーニは、「1年前にサービスを開始したCreative Cloudはこれまで大成功を収めてきました。我々のエネルギーと才能ある人材をCreative Cloudに集中させることによって、Creative Cloudメンバーに対してより迅速にイノベーションを提供できます」と述べている。

簡単にCreative Cloudメンバーシップの費用を記しておくと、個人版は年間契約の場合月額5,000円、法人などグループ版は月額7,000円、ほか、すでににCSシリーズのライセンスを持っているのであれば各種割引料金もある。詳しくはこちら

今まではDesign PremiumやWeb Premiumなどパッケージによってアプリケーションのすみ分けがあったが、今後は1つのアカウントでほとんどのアプリケーションが使用できるようになるため、今まで使用しなかったアプリケーションにも手が出しやすくなる。逆に、低頻度で少数のアプリケーションのみを使う方には悩ましくもなるが、単体アプリケーションのサブスクリプションプランも用意されている。また、ライセンス1つで同時に2台まで使用することができる。

アプリケーションとウェブサービスの境界が曖昧になっていくなか、ユーザーとアドビ製品との関わり方が大きくシフトすることになる。

アドビ社のCREATIVE CLOUDへ一本化した背景には単純に収益の安定化が大きいところだろう。数年ごとにリリースされるシリーズに伴うアップデートの促進やパッケージでの販売形態は現在のアプリ販売の流れからするとコストがかかり、クラウド化は自然な流れとも捉えることができる。また常に悩まされてきたであろう海賊版の抑制にも繋がる点もある。
(参考: http://thenextweb.com/)

次にCREATIVE CLOUDのいくつかの特徴を簡単に記していく。

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CLOUD APP – クラウドの管理をするデスクトップ・アプリ


各アプリケーションがクラウド経由で提供されるわけだが、その方法として新たに「CREATIVE CLOUD Desktop App」がリリースされる。この常駐型アプリでは、各種アプリケーションのインストールはもちろん、フォントやソフトウェアの各種設定などをクラウド経由で共有することができる。また、CREATIVE CLOUDではクラウド上のディスク・スペースが提供されるので、各種ファイルやアセットはデスクトップ、クラウド、およびモバイルデバイス間で自動的に同期される。
Dropboxをはじめ、クラウドファイルサービスは製作者にとっては欠かせないものとなっているが、アプリケーションと連携したCREATIVE CLOUDがもたらすワークフローの可能性はぜひ試してみたいところだろう。

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Kulerのデモ、iPhoneのカメラを使ってカラーパレットを作成。photo by akihiro kamijo

またカラーパレットを作成・共有するAdobe Kulerもアップデートされ、iPhone版もリリースされる。タブレットデバイスを使用して写真などから取り入れたカラーパレットをクラウド経由でデスクトップなどへ同期することができる。

Typekitがデスクトップに

クラウド連動となることで魅力的なポイントとなるのがAdobeのウェブフォントサービスであるTypekitをデスクトップアプリケーション上で直接利用できるようになったことだろう。現状は欧文フォントのみとなるが、多くのフォントを利用できるようになり、同様にCREATIVE CLOUDに登録している共同制作者であれば、フォントの有無よるトラブルは軽減されることになる。

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上の図ではCREATIVE CLOUD の主要要素を示している。

各種アプリケーションの新シリーズとなるCC APPS, 各種設定やアセット、ファイル共有などを通じての共同制作者(コントリビューター)、そしてコミュニティ、個人ポートフォリオや実際の作品たち。

今回のMAXではこの後半3つである「コミュニティ」要素が大きく扱われていた。その中心となるのが、昨年Adobe社が買収をしたオンライン・ポートフォリオ・コミュニティーである「Behance」との連携である。

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Behance、クリエイティブ・コミュニティーとの連携


Behanceは世界の140万人を超えるクリエイティブプロフェッショナルが参加しているオンライン・ポートフォリオ・サービスだ。日本も徐々に認知はされユーザーも増えているが、簡単にいえばCMS機能を持ったデザイナー・アーティストのためのソーシャルサービスだ。特徴としては、プロダクト、建築、グラフィックデザインなど幅広い分野のクリエイターが世界中から多く参加していることやリクルーティング機能が充実している点などだ。

今回、この世界有数のオンラインクリエイティブコミュニティであるBehanceがCreative Cloudと統合されたことで、ユーザーは作品を全世界に公開し、作品へのフィードバックを集め、作品と作者である自分自身をグローバル規模で展開できるようになる。たとえば、Photoshop CCではアプリケーション内からBehanceに直接ファイルを投稿できるようになる。

「CC」デスクトップアプリケーションとデバイス間のコラボレーションおよびパブリッシング機能によって新たなクリエイティブ・プロセスを提案している。

日本ではまだ馴染みがあまりないBehanceというのもあり、この連動がどういった可能性をもたらすのかは未知数のところもあるだろう。しかし、こうしたコミュニティーを意識したアプリケーション設計は今回アドビ社が強く打ち出したいメッセージとなっていた。新たなCREATIVE CLOUDのコミュニティー機能を世界中のユーザーたちがどのように使っていくのか、その動向も注目したい。

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PROJECT MIGHTY


次に、アドビが取り組む新たなプロジェクトが紹介された。アナログとデジタルの空間をどうつなげていくのかという命題を対して多くのアイディアや開発が進められるなか、今回はアドビ初となるハードウェア・プロジェクトである「PROJECT MIGHTY」が発表された。

簡単にいうと、タブレット用のスタイラスであり、高精度の圧力センサーとBluetoothによる通信機能が備わっているのだが、大きな特徴としてはクラウド連動での個人認証をするというところだ。つまり、アプリケーションの各種アセットや設定などをスタイラス側から呼び出すことができる。例えば、iPadで自分専用のカラーパレットを使用するのはもちろん、ほかのユーザーのiPad上でもこのペンに接続すると同様のパレットや設定が継承される。

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続いて紹介されたのが短い定規のような「Project Napolean」。

こちらはデモ・ビデオを見てもらえばどういった機能をするかわかるだろう。



いくつかの機能が実装されており、Napoleonをスクリーン上に置き、ボタンを押すことによって直線や曲線などをスムーズに描くことを可能にしてる。

実際に利き手の反対に物理的なオブジェクトを操作することによって得られる身体的なフィードバックが自然に受け入れられるようで、タブレットやクラウド時代のハードウェアの在り方を模索するプロジェクトとなっている。

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また、次世代のパブリッシャーのためのワークフロー提案として「project context」のコンセプトも披露された。パートナーシップを組むWIRED誌とともに研究開発されているプロジェクトで、複数台のマルチタッチモニターを利用して、デジタル時代の新たな編集・校正のワークフローを提案している。

これらのハードウェアは試作段階であり、具体的な製品化の時期などは発表されていない。


MAX全体の印象


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基調講演が行われたNOKIA Theatre

初日の基調講演の主な発表は以上となるが、アプリケーションの新機能も満載なので、具体的なプリケーションのアップデートは公式サイトをチェックしてほしい。

今回のMAXは冒頭にも書いたように「クリエイティビティ・カンファレンス」と題されているのもあり、アドビの主力アプリである、Photoshop、Illustrator、After Effects、Premier Pro、など表現全般に焦点を当てている。そのため3日間に渡って行われるセッションも幅広い内容になっているのが印象的であった。

今ままでのMAXはウェブ・テクノロジーに主軸を置き、デベロッパー向けの発表やセッションが多かったので以前のMAXに参加したことがある人には大きな変化を感じたことだろう。もしくは、ウェブ・テクノロジー主軸のカンファレンスを期待しているひとには少し物足りないと感じたかもしれない。実際に1日目、2日目の基調講演ではFlash、Dreamweaver、Fireworksなどの話はほとんど出なかったのは顕著な兆しであった。
もちろん、オープンソースエディターであるBracketsやHTML5アニメーション用のEdge Animation、レスポンシブデザインなどマルチデバイスにおけるウェブデザインに注力しているEdge Reflowなど各ソフトウェアも新機能が発表され、多くのウェブデベロッパーが注目していた。

今回のMAXへの一般参加者の50%がデザイナーとなったように、このあたりからもアドビが打ち出したいメッセージが汲み取れる。ユーザーコミュニティーが活発なアドビだけあって、更に多様なクリエイターが参加するイベントとなったMAXの今後も楽しみにしたい。

新たなCREATIVE CLOUDのリリースは6月。各アプリケーションはもちろん、新たなワークフローやクラウドから制作環境が新たなフェーズに入っていくことになる。

さて、続いてのレポートでは、2日目に行われた基調講演や新技術のちょい見せのSNEAK PEAKの様子や、気になったデザイン関連のセッションを紹介していきたい。


基調講演 1 日目速報レポート (ADC PLUS)
アドビ、Creative Suiteの新バージョン開発を終了 -今後はCreative Cloudのみで最新ツールを提供(マイナビニュース)
Adobe MAX 2013 基調講演レポート、Photoshop CCの手ブレ補正ツールは Cloud のエンジンにも搭載され、将来的にOpenAPI として公開される予定(MACお宝鑑定団Blog)

基調講演を含めて、MAX 2013のセッションの映像アーカイブ
MAX 2013 – The Creativity Conference


Text by Yosuke Kurita

Romantic Geographyをテーマに、都市やそこに集う人々の変化を取り上げるインディペンデント・マガジン「TOO MUCH Magazine」最新号発売

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Romantic Geographyをテーマに、都市やそこに集う人々の変化を取り上げるインディペンデント・マガジン「TOO MUCH Magazine」の最新号(第4号)が5月中旬に発売される。

過去最大のボリュームとなった最新号の特集は「ブラックボックス」。1940年代に登場したブラックボックスという考え方は、スマートフォンに代表されるように21世紀の現代社会に溢れかえっている。入力の方法さえわかれば、例え中の仕組みなどわからなくても誰でも使うことができる。そうしたブラックボックスの考え方を、電子機器だけではなく都市の中に置き換えてみるとどうなるのか?と考えたのが今回の特集。

内容的には「石川直樹、ミイラの少女を追い求めたインカの旅」、「ブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトが語る空間の新しい考え」、「イギリス人リサーチャーヴィクトリア・ヘンショウによる論考、都市に隠された匂いの可能性」、「杉本博司が建築家として語る、日本文化の遺産」、「皇居に立ち込める打ち消しのマイナスガスとは?写真、花代」、「ニューヨーク在住のアーティスト、建築家、ヴィト・アコンチの私的ニューヨーク案内」、「ホンマタカシが撮る、コズミック・ワンダーの最新コレクション」などなど、興味深いトピックが多数。

さらに、付録として、次回ヴェニスビエンナーレ日本代表アーティスト田中功起によるポスターがもれなくついてくる。
全196ページ(B5サイズ)日本流通版には日本語訳冊子付き。

都市の中のブラックボックスを、ぜひお楽しみ頂きたい。

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皇居に立ち込める打ち消しのマイナスガスとは?写真、花代


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石川直樹、ミイラの少女を追い求めたインカの旅


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ブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトが語る空間の新しい考え


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杉本博司が建築家として語る、日本文化の遺産


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付録:ヴェニスビエンナーレ日本代表アーティスト田中功起によるポスター


Information

TOO MUCH Magazine Issue 4
http://toomuchmagazine.com/

– 石川直樹、ミイラの少女を追い求めたインカの旅
– 「風水」「鬼門」による江戸の都市計画
– ブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトが語る空間の新しい考え
– 写真家、春木麻衣子によるファッションストーリー
– イギリス人リサーチャーヴィクトリア・ヘンショウによる論考、都市に隠された匂いの可能性
– イギリス人グラフィックデザイナー、ケイト・マクリーンによる都市の中の感覚マップ
– ファッションハウスの香水に見る都市と香水の関係
– 写真家アンダース・エドストロームによる午後の歌舞伎町
– 杉本博司が建築家として語る、日本文化の遺産
– 皇居に立ち込める打ち消しのマイナスガスとは?写真、花代

その他の記事
ニューヨーク在住のアーティスト、建築家、ヴィト・アコンチの私的ニューヨーク案内
ホンマタカシが撮る、コズミック・ワンダーの最新コレクション
隈研吾一家のつくるシェアハウス、シェア矢来町から東京の住宅事情を考える。写真、平野太呂
オランダのリサーチャー集団Monnikによる32ページに渡る東京リサーチ「Still City Tokyo」
社会学者南後由和による、アーティストコンスタントの都市計画「ニューバビロン」論考

付録
ヴェニスビエンナーレ日本代表にも決定したアーティスト田中功起によるポスターがもれなく付録として付いてきます

全196ページ
B5サイズ
日本流通版には日本語訳冊子付き

定価1890円(税込)

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