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15回目を迎えるRed Bull Music Academy 2013、舞台はニューヨーク – レポート前編

June 18, 2013(Tue)|

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Dan Wilton/Red Bull Content Pool

Red Bullによる音楽プロジェクト「Red Bull Music Academy」(以下、RBMA)。日常的に様々な音楽情報を発信し、イベントやラジオ番組RBMA Radioなどのコンテンツを展開してる。
CBCNETでもRBMAによる先進的な音楽ドキュメントシリーズの『H∆SHTAG$ (ハッシュタグ)』などを以前紹介したが、彼らの音楽への取り組みは他に例が無い多様性を見せている。(→紹介記事

RBMAはこうした活発な活動をしているのだが、その中核となるのが世界各地で開催し、今年15回目となるアカデミー月間である。フェスなの?学校なの?その全体像はなかなか伝わって来なかったが、今回、ニューヨークで開催されたRBMAに幸運にも参加することができた。

その全体像とともに、RBMAの中心的なコンセプトと彼らの取り組みを紹介できればと思う。

今年で15回目を迎えるRed Bull Music Academy、舞台はニューヨーク


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234 ARTISTS, 34 NIGHTS, 8000 ANTHEMS, 1 CITY, NEW YORK

RBMAはその名の通り、レッドブルが主催するミュージック・アカデミー。これまでにベルリン、トロント、ロンドン、メルボルン、ケープタウンなどで開催され、一昨年はマドリッドで開催された。そして2013年の舞台はニューヨーク。

そして、その中心となる「アカデミーメンバー」として参加できるのは、世界中から集まった数千通を超える応募者から選ばれた、たった60名程度。この事実はRBMAに注目しているミュージシャンではないとあまり知らないことかもしれない。今回、世界93カ国からあつまったアカデミーの応募者数は4000通以上。音源とともに、約14ページに渡るエントリーシートを答えていき、厳選なる審査の結果、選ばれたのは世界29カ国、6大陸から集められた61名となった。それぞれはすでに独自で音楽活動をしている新進気鋭のアーティストでもある。過去には、Flying Lotus、Hudson Mohawk、Dorian Conceptなど、いま各国で注目を集めるアーティストをRBMAは輩出してる。今回、日本代表としてEMUFUCKAことTAKAFUMI SAKURAIも選出された。

選ばれたアカデミーメンバーは4月末から5月末まで、前半後半と2組に別れ2週間ずつニューヨークに訪れる。その2週間の間は著名なミュージシャンたちのレクチャー、RBMAのために特設されたスタジオでの音楽制作、ニューヨークの名だたるクラブやホールで毎日イベントが開催されるのだ。

自分が訪れたのは5月23日からの一週間。その一週間だけでも濃密すぎるエキサイティングなRBMAの熱気と情熱がニューヨークの街と相まって感じられる内容となった。

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全体の概要は上記の通りだが、あらゆる面でRBMAの取り組みを垣間見れる要素があった。今回はその端々の要素を簡単ではあるが紹介していきたい。

まずアカデミーが開催される1ヶ月間、RBMAの拠点となる場所だが、これは毎回、開催都市に合わせてRBMAにふさわしい場所が新設される。今回の場所はニューヨークのチェルシー地区にあるビル。

4フロア、合計2500平米に渡るこの拠点にはアカデミーの参加者が自由に利用できる音楽スタジオ、マスタリングルーム、食事も振舞われるラウンジスペース、連日行われるレクチャーのためのオーデトリアム、RBMA運営スタッフのオフィス・スペースなどが入っている。

以下は、そのスペースを紹介したビデオ。



アカデミー参加者が毎日を共にするこの施設はRBMAのこだわりの一つであり、会場設計から各スタジオの設備は今回のアカデミーのために用意され、会場の各所にはニューヨークのアーティストを中心としたアートワークが配置されている。
アカデミー会場の内部を軽くご紹介。

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アカデミー会場のラウンジ部分、毎日アカデミーの参加者、スタッフ、世界各国のメディアの人たちがコミュニケーションしている。朝食から料理も振舞われ、夜にはビールも出ていた。


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会場のスタジオ。スタジオは全部で8つあり、それぞれが機材や内装がカスタマイズされている。

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スタジオ制作の様子、写真はアカデミー参加者のPleasure CruiserことNic Liu。
Dan Wilton/Red Bull Content Pool

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会場のマスタリングルーム。

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会場の各所にはアーティストによる作品が展示されている。この作品はブルックリン在住のTom Forkinによるもの。

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地下フロアに設置されているMartin Rothによるインスタレーション。鳥やハ虫類がいる檻のなかにはマイクが設置されており、その環境音はアカデミーの別フロアにあるスピーカーから出力されていた。


また、少し変わったパフォーマンス・アートもこの会場で行われていた。

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ネット・アーティストとして有名なRyder Ripps、OKFOCUSといデザイン・チームとしても活動しており、リアルタイムのイメージシェアリング・サービス「dump.fm」や過去の忘れ去られるgifアニメーションやイメージを集めているInternet Archaeologyといったユニークなサイトを多く制作している彼だが、今回はこのアカデミーの会場で「Hyper Current Living」というパフォーマンスを行った。これは会場に設置されたオフィス・スペースで、一週間に渡りレッドブルを飲みながらアイディアをひたすら絞り出していくという彼らしいハイ・テンションなもの。その模様はサイトで中継され、アイディアはTwitterへ#hypercurrentlivingというハッシュタグとともに投稿された。


Ryder Ripps自身によるプロジェクトと場所の紹介、RとIしか無いキーボードで、レッドブルを飲んだらRを叩き、アイディアを投稿したらIを叩き、リアルタイムにウェブが更新されるとのこと。

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スタジオのフロア、廊下は入り組んでおり、各スタジオの様子などが垣間見れる設計となっている

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会場の各所にはレッドブル冷蔵庫が、いつでも補給可能!


豪華アーティストによるレクチャー


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アカデミー参加者はこうした刺激あふれるスタジオを毎日利用することができ、自身の作業や他の参加者とのコラボレーションに没頭できる空間となっている。

その一方、連日オーディトリアムでは講師として招聘された著名なミュージシャンやプロデューサーたちのレクチャーが開催される。このレクチャーはアカデミー参加者のためだけのもので30名程度しか入れない。

レクチャーの講師には、マンハッタンにて音楽映像インスタレーションも発表したブライアン・イーノ、長年コラボレーションをしておりニューヨーク公演も行った坂本龍一+Alva Noto、ニューヨークのレコード・レーベル「DFA Records」の創立者であり、LCD Soundsystemとしての活動も有名なジェームズ・マーフィー、ザ・ルーツのドラマーであり数々の顔を持つQuest Love、ヒップホップのレジェンドMCであるRAKIM、などなど、数多くの功績を残してきた偉大なアーティストたちが名を連ねる。

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現在シーンを賑わす、気鋭のアーティストも数々登場する。こちらはNinja Tuneに所属するFaltyDLことDrew Lustman。レクチャーは対話形式で行われ、対話役もそのシーンの見識が広いメンバーが担当する、上はBBC Radioで10年ほど番組を担当し、自身もDJとして世界中を周っているBenji B。


現場でレクチャーを聞けるのはアカデミー参加者だけとなるが、その模様は映像で丁寧にウェブサイトにまとめられている。

どのレクチャーも濃い内容になっており関心する要素が多く詰まっているのが印象的だ。英語のみとなっているが英語の文字原稿もレクチャーによっては上がっている。

ここでは2つほど個人的にもとても興味深かったレクチャーを紹介したい。


Lecture: Brian Eno (New York, 2013) from Red Bull Music Academy.
一ヶ月間に渡りマンハッタンにてインスタレーション作品を展示していたブライアン・イーノ。若い時のニューヨーク生活の話からコラボレーションや時代に対する見識など思慮深い内容。「どうやって作品の完成を決めるのか」という質問に対して3000曲近い未発表曲があるというイーノは「デッドライン(締切)が決めてくれる」と答えたのは印象的だった。



Lecture: Q-Tip (New York, 2013) from Red Bull Music Academy.
ドキュメンタリー映画も公開されたア・トライブ・コールド・クエストのメンバーであり、自身もソロやプロデュース活動を行うQ-Tip。初期のビートメイキングの話やN.W.Aの影響、貴重なJ Dillaとの思い出話、DJ Premierによる未発表のNasの “Memory Lane” を流してくれたりと満載の内容。後半にあるKRS-Oneのモノマネは個人的に必見。


これはごく一部となるが、他のアーカイブも随時アップデートされているようで、知らないアーティストでも興味深いレクチャーが多数。
アカデミー参加者たちはこうしたレクチャーに参加し、多くの刺激を受けているようであった。設けられる質問タイムでも、毎回積極的に参加者が手を挙げていたのも印象的であった。ぜひ興味ある人は気になるアーティストのレクチャービデオを探していただきたい。


さて、ここまでメインのアカデミー会場で行われている内容であったが、もうひとつのRBMAの主要な要素は、連日に渡りニューヨークの様々な会場で開催されるイベントやコンサートだ。1ヶ月間、毎日開催されるイベントは多種多様であり、小さなクラブからメトロポリタン美術館までニューヨークならではのスポットで開催された。

こちらの紹介はレポート後編で!



Text and some photo by Yosuke Kurita ( @yskkrt )


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