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Adobe MAX 2013 レポート01 – 今年のMAXは「クリエイティビティ」がテーマ

May 13, 2013(Mon)|

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Adobe MAX 2013 は「クリエイティビティ」がテーマ


Adobe Systems社主催のカンファレンス・イベント「Adobe MAX 2013」がアメリカ、ロス・アンジェルスにて開催された。

Adobe MAXは、アドビ社が2005年に買収したMacromedia社時代から親しまられてきた同社主催のカンファレンス・イベントであり、製品の発表はもちろん世界中のユーザーが集い、直接情報交換をする貴重な機会となっている。

MAXといえば、例年はFlashやAIR、FLEX、などのウェブ・デベロッパー向けの側面が大きかったが、今年はより多面的なクリエイティビティ・カンファレンスになると開催前から発表されていた。

今回のレポートでは発表された主なポイントと現地の様子やクリエイティブ関連のセッションを紹介したい。

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40台のプロジェクターを使って演出された巨大な変形スクリーンで構成されたステージ。インパクトのある映像が次々と流れた。

CREATIVE CLOUD への一本化
CSからCCへ


カンファレンスの初日にNokia Centerで基調講演が行われた。同社CEOのシャンタヌ ナラヤン氏やデジタルメディア担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーであるデイビッド ワドワーニ氏らが登壇し基調講演が進行していった。

今回の発表でメインとなるのは2011年に発表された「Creative Cloud」の大幅アップデートだ。Creative Cloudはサブスクリプション型のライセンス形態のサービスであり、月額費用を払うことによってウェブ、プリント、動画など各専門性を持っている同社の多様なソフトウェア群を大半を使うことができるというものだ。

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新たなCREATIVE CLOUDを紹介するデイビッド ワドワーニ氏

2003年よりスタートしたCreative Suiteシリーズとして販売されてきた同社製品であるが、今後はCreative Cloud経由での提供に一本化するということが発表された。それに伴い、今後のバージョン名は「CC」となる、Photoshop CC、Dreamweaver CC、といった具合だ。また現在までの最新版であるCS6はサポートおよびパッケージ形態での販売が継続されるが、新たな機能追加などはCreative Cloudを通じての提供に一本化されることになった。つまり、CS7は無く、今後はCCブランドで各製品が随時アップデートされるようになると思われる。
※なお「Fireworks」「Flash Bulder」「Acrobat」などの製品はCS6までのバージョンが最新バージョンとなり「CC」版はリリースの予定はないとのこと。
Fireworksの今後についてはこちらのブログにまとめられています→ http://cuaoar.jp/2013/05/firewoks.html


デイビッド ワドワーニは、「1年前にサービスを開始したCreative Cloudはこれまで大成功を収めてきました。我々のエネルギーと才能ある人材をCreative Cloudに集中させることによって、Creative Cloudメンバーに対してより迅速にイノベーションを提供できます」と述べている。

簡単にCreative Cloudメンバーシップの費用を記しておくと、個人版は年間契約の場合月額5,000円、法人などグループ版は月額7,000円、ほか、すでににCSシリーズのライセンスを持っているのであれば各種割引料金もある。詳しくはこちら

今まではDesign PremiumやWeb Premiumなどパッケージによってアプリケーションのすみ分けがあったが、今後は1つのアカウントでほとんどのアプリケーションが使用できるようになるため、今まで使用しなかったアプリケーションにも手が出しやすくなる。逆に、低頻度で少数のアプリケーションのみを使う方には悩ましくもなるが、単体アプリケーションのサブスクリプションプランも用意されている。また、ライセンス1つで同時に2台まで使用することができる。

アプリケーションとウェブサービスの境界が曖昧になっていくなか、ユーザーとアドビ製品との関わり方が大きくシフトすることになる。

アドビ社のCREATIVE CLOUDへ一本化した背景には単純に収益の安定化が大きいところだろう。数年ごとにリリースされるシリーズに伴うアップデートの促進やパッケージでの販売形態は現在のアプリ販売の流れからするとコストがかかり、クラウド化は自然な流れとも捉えることができる。また常に悩まされてきたであろう海賊版の抑制にも繋がる点もある。
(参考: http://thenextweb.com/)

次にCREATIVE CLOUDのいくつかの特徴を簡単に記していく。

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CLOUD APP – クラウドの管理をするデスクトップ・アプリ


各アプリケーションがクラウド経由で提供されるわけだが、その方法として新たに「CREATIVE CLOUD Desktop App」がリリースされる。この常駐型アプリでは、各種アプリケーションのインストールはもちろん、フォントやソフトウェアの各種設定などをクラウド経由で共有することができる。また、CREATIVE CLOUDではクラウド上のディスク・スペースが提供されるので、各種ファイルやアセットはデスクトップ、クラウド、およびモバイルデバイス間で自動的に同期される。
Dropboxをはじめ、クラウドファイルサービスは製作者にとっては欠かせないものとなっているが、アプリケーションと連携したCREATIVE CLOUDがもたらすワークフローの可能性はぜひ試してみたいところだろう。

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Kulerのデモ、iPhoneのカメラを使ってカラーパレットを作成。photo by akihiro kamijo

またカラーパレットを作成・共有するAdobe Kulerもアップデートされ、iPhone版もリリースされる。タブレットデバイスを使用して写真などから取り入れたカラーパレットをクラウド経由でデスクトップなどへ同期することができる。

Typekitがデスクトップに

クラウド連動となることで魅力的なポイントとなるのがAdobeのウェブフォントサービスであるTypekitをデスクトップアプリケーション上で直接利用できるようになったことだろう。現状は欧文フォントのみとなるが、多くのフォントを利用できるようになり、同様にCREATIVE CLOUDに登録している共同制作者であれば、フォントの有無よるトラブルは軽減されることになる。

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上の図ではCREATIVE CLOUD の主要要素を示している。

各種アプリケーションの新シリーズとなるCC APPS, 各種設定やアセット、ファイル共有などを通じての共同制作者(コントリビューター)、そしてコミュニティ、個人ポートフォリオや実際の作品たち。

今回のMAXではこの後半3つである「コミュニティ」要素が大きく扱われていた。その中心となるのが、昨年Adobe社が買収をしたオンライン・ポートフォリオ・コミュニティーである「Behance」との連携である。

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Behance、クリエイティブ・コミュニティーとの連携


Behanceは世界の140万人を超えるクリエイティブプロフェッショナルが参加しているオンライン・ポートフォリオ・サービスだ。日本も徐々に認知はされユーザーも増えているが、簡単にいえばCMS機能を持ったデザイナー・アーティストのためのソーシャルサービスだ。特徴としては、プロダクト、建築、グラフィックデザインなど幅広い分野のクリエイターが世界中から多く参加していることやリクルーティング機能が充実している点などだ。

今回、この世界有数のオンラインクリエイティブコミュニティであるBehanceがCreative Cloudと統合されたことで、ユーザーは作品を全世界に公開し、作品へのフィードバックを集め、作品と作者である自分自身をグローバル規模で展開できるようになる。たとえば、Photoshop CCではアプリケーション内からBehanceに直接ファイルを投稿できるようになる。

「CC」デスクトップアプリケーションとデバイス間のコラボレーションおよびパブリッシング機能によって新たなクリエイティブ・プロセスを提案している。

日本ではまだ馴染みがあまりないBehanceというのもあり、この連動がどういった可能性をもたらすのかは未知数のところもあるだろう。しかし、こうしたコミュニティーを意識したアプリケーション設計は今回アドビ社が強く打ち出したいメッセージとなっていた。新たなCREATIVE CLOUDのコミュニティー機能を世界中のユーザーたちがどのように使っていくのか、その動向も注目したい。

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PROJECT MIGHTY


次に、アドビが取り組む新たなプロジェクトが紹介された。アナログとデジタルの空間をどうつなげていくのかという命題を対して多くのアイディアや開発が進められるなか、今回はアドビ初となるハードウェア・プロジェクトである「PROJECT MIGHTY」が発表された。

簡単にいうと、タブレット用のスタイラスであり、高精度の圧力センサーとBluetoothによる通信機能が備わっているのだが、大きな特徴としてはクラウド連動での個人認証をするというところだ。つまり、アプリケーションの各種アセットや設定などをスタイラス側から呼び出すことができる。例えば、iPadで自分専用のカラーパレットを使用するのはもちろん、ほかのユーザーのiPad上でもこのペンに接続すると同様のパレットや設定が継承される。

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続いて紹介されたのが短い定規のような「Project Napolean」。

こちらはデモ・ビデオを見てもらえばどういった機能をするかわかるだろう。



いくつかの機能が実装されており、Napoleonをスクリーン上に置き、ボタンを押すことによって直線や曲線などをスムーズに描くことを可能にしてる。

実際に利き手の反対に物理的なオブジェクトを操作することによって得られる身体的なフィードバックが自然に受け入れられるようで、タブレットやクラウド時代のハードウェアの在り方を模索するプロジェクトとなっている。

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また、次世代のパブリッシャーのためのワークフロー提案として「project context」のコンセプトも披露された。パートナーシップを組むWIRED誌とともに研究開発されているプロジェクトで、複数台のマルチタッチモニターを利用して、デジタル時代の新たな編集・校正のワークフローを提案している。

これらのハードウェアは試作段階であり、具体的な製品化の時期などは発表されていない。


MAX全体の印象


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基調講演が行われたNOKIA Theatre

初日の基調講演の主な発表は以上となるが、アプリケーションの新機能も満載なので、具体的なプリケーションのアップデートは公式サイトをチェックしてほしい。

今回のMAXは冒頭にも書いたように「クリエイティビティ・カンファレンス」と題されているのもあり、アドビの主力アプリである、Photoshop、Illustrator、After Effects、Premier Pro、など表現全般に焦点を当てている。そのため3日間に渡って行われるセッションも幅広い内容になっているのが印象的であった。

今ままでのMAXはウェブ・テクノロジーに主軸を置き、デベロッパー向けの発表やセッションが多かったので以前のMAXに参加したことがある人には大きな変化を感じたことだろう。もしくは、ウェブ・テクノロジー主軸のカンファレンスを期待しているひとには少し物足りないと感じたかもしれない。実際に1日目、2日目の基調講演ではFlash、Dreamweaver、Fireworksなどの話はほとんど出なかったのは顕著な兆しであった。
もちろん、オープンソースエディターであるBracketsやHTML5アニメーション用のEdge Animation、レスポンシブデザインなどマルチデバイスにおけるウェブデザインに注力しているEdge Reflowなど各ソフトウェアも新機能が発表され、多くのウェブデベロッパーが注目していた。

今回のMAXへの一般参加者の50%がデザイナーとなったように、このあたりからもアドビが打ち出したいメッセージが汲み取れる。ユーザーコミュニティーが活発なアドビだけあって、更に多様なクリエイターが参加するイベントとなったMAXの今後も楽しみにしたい。

新たなCREATIVE CLOUDのリリースは6月。各アプリケーションはもちろん、新たなワークフローやクラウドから制作環境が新たなフェーズに入っていくことになる。

さて、続いてのレポートでは、2日目に行われた基調講演や新技術のちょい見せのSNEAK PEAKの様子や、気になったデザイン関連のセッションを紹介していきたい。


基調講演 1 日目速報レポート (ADC PLUS)
アドビ、Creative Suiteの新バージョン開発を終了 -今後はCreative Cloudのみで最新ツールを提供(マイナビニュース)
Adobe MAX 2013 基調講演レポート、Photoshop CCの手ブレ補正ツールは Cloud のエンジンにも搭載され、将来的にOpenAPI として公開される予定(MACお宝鑑定団Blog)

基調講演を含めて、MAX 2013のセッションの映像アーカイブ
MAX 2013 – The Creativity Conference


Text by Yosuke Kurita


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