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“Sonarはヨーロッパ最高のフェスティバルだ!” 国を越え訪れる観客たち – レポート前編

July 22, 2013(Mon)|

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今年20周年を迎え、いつもにも増して豪華なラインナップ行われたバルセロナのSonar Music Festival。ヨーロッパを中心に様々な国から観客が6月半ばの初夏のスペインはバルセロナを訪れる。この気持ちよさそうな広い人口芝の上で、太陽を浴びてサンダルを脱ぎ踊ったり寝転んだりしながら音楽を楽しんでいる。そしてSonarはエレクトロニック・ミュージックを中心としたライヴやDJを楽しむことはもちろんだが(今年のラインナップ)、その一方で音楽のテクニカルな面にもスポットを当てているフェスティバルで、様々な団体・企業の展示やワークショップ、アーティストや音楽関係者によるパネル・ディスカッション、音楽のためのハッカソンのようなイヴェントも同じ会場で行なっている。今回は2回に渡りライヴの様子とバルセロナ、あるいはヨーロッパの音楽テクノロジーのシーンについてレポートしてみたい。

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暑くなるにつれ男性の多くは元気よくシャツも脱ぎはじめ、ここはビーチかゲイディスコかという様相に。10組ほどのオーディエンスに声をかけて取材してみたところ、多くはイギリス・フランス・北米などスペイン国外から多く訪れており、スペイン在住者はわずか2組ほど(どちらもバルセロナ。)国外からの観客が増えているのだろうが、例年と比べても今年のスペイン人の少なさは今なお続く経済危機の影響を思わせる。国籍は違うが、一同に「Sonarはヨーロッパで最高の音楽フェスティバルだ」と口を揃える。

太陽の下で行われるSonar Day(12時~22時)と半屋外のホールで夜空の下で行われるSonar Night(22時~翌朝7時頃まで)に分かれ、仮にフル参加すると一日19時間もの長さになる。寝る時間以外一日中行われているようなものだが、市の中心部で行われているのでアクセスは簡単で、電車やバスで行ける町の中のフェスティバルだ。

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昨年まで昼の部であるSonar DayはCCCB(バルセロナ現代美術館)で行われていたが毎年増え続ける観客に対応するには手狭になってしまったのか、今年からはスペイン広場のFira Barcelonaで行われた。「スペイン広場」と言いつつ、画像右上に翻って見えているのはカタルーニャ州の旗。独立運動のシンボルで市内至るところで(住宅のべランダからもよく掲げられていることも)見ることができる。Sonarは全く政治臭のないイヴェントだが(そもそも地元のアーティストがほとんど出ていない)、バルセロナ市の協力も受けていることもあり、パンフレットやHPも英語・スペイン語だけでなく必ずカタルーニャ語併記になっていたり、カタルーニャで行われているということはそれとなく感じられるそんなイヴェントだ。

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そして今年のSonarのイメージであるトランス・セクシュアルなチアリーダーの巨大なポスターが一般の観光客も訪れる広場前に。ヨーロッパのゲイのキャピタル・シティとまで呼ばれるバルセロナだが、かなりのカオスっぷりだ。

それでは、肝心のステージの模様を紹介していこう。

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モーゼのような神懸かったポーズで登場し、ライヴ半ばでステージ上でビール数本(カタルーニャの定番ビールでSonarのスポンサーのEstrella damm)を飲むSébastien Tellier。きちんと演奏はしていたが、パフォーマンスとしてどこまで本気でどこまで酔ってるのかわからないので、観客はもちろんステージ脇のスタッフまで爆笑。しかし代表曲「La Ritournelle」では、うっとりとした表情で酔いしれるファンも見受けられ、ファンもどこまで付いていくつもりなのか計り知れないと感じた。

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ソウルフルな歌声を聞かせながらも手元では機材を巧みにコントロールするJamie Lidell。名人芸は健在。Sonarに何度も出演しているので今回の20周年への祝福と彼の直前にDJとしてプレイしていた盟友Matthew Herbertへの感謝を口にしていた。今まで彼をライヴで三度ほど見ているが、80年代のプリンスに通じるような雰囲気をびしびしと感じるようなこれまでで最もエネルギッシュなステージだった。

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過去の名曲を演奏するだけではなく、視覚効果で観客を魅了していたKraftwerkの3Dショー。しかしそれだけで終わらなかったのが、テクノシーンに40年も君臨し続けたベテラン。1975年発表 の楽曲「Radioactivity」中で「フクシマ 放射能」と文字を大写しにし、「いますぐ やめろ」と確固たる原発反対のメッセージ。ヨーロッパでは情報が少ないこともあり、日本の原発問題について現在進行形の問題として捉えている人はかなり少なく、まさかバルセロナで今この問題が取り上げられるとは思いもせず不意を突かれた。賛否両論あるだろうが、Youtubeには個人により撮影されたビデオが多数アップロードされているのでチェックしてほしい。



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今回出演したアーティストで最もおいしいところを持っていったのは、Major Lazerとして、そしてDJとしてダブルで出演していたDiplo。エレガントなスーツ姿で現れながら、中盤にはおもむろにシャツを脱ぎ「さあ男はみんなシャツを脱いでもらおうか!それからそのシャツを思い切り振り回すんだ!!」と観客を煽り、女性ダンサーを男性の観客の上に跨らせたり、あまりのお下劣さの数々に会場は大盛り上がり。品のなさを計るメーターがあったらきっと振り切れるだろうと思うようなライヴで、逆に感服させられた。

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ヒューマンビートボクサーのBeardyman。リアルタイムでボーカルを重ねる手法に長けているアーティストだが、ループ用に使うだけでなく機材を駆使しながら彼の声を元にダブステップのような独特なサウンドを作り上げていた。だが、ステージの最後にはマイク一本でフリースタイル、ドラッグに関したジョークをかましながらお茶目に会場から退散。思わず心を奪われてしまうような素晴らしいパフォーマーだ。

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この戦闘機のようなセットでDJしていたのはSkrillex。見た目そのままにサウンドの方向性も中二病のようにワンパターンで狂的だった。バルセロナを訪れた観光客のようにバルセロナのサッカーチームのバルサのTシャツを着ている。

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Skip & Die というオランダのグループ。女性ボーカリストの衣装や踊りが美しく個性的なことに加えて、バンドの演奏も安定感がある。まだそれほど知られていない新人だが、観衆もかなり盛り上げられていたので、すぐに人気が出るだろう。

これらの他にも重鎮のDerrick May、Richie Hawtin、そしてJusticeやEd BangerのBusy PやLaurent GarnierといったフランスのDJ陣がプレイして朝の7時までラウドなサウンドで聴衆を盛り上げる(最終日は朝8時を過ぎても終わらず、スタッフ一同もステージに上がり、全員拍手をしながら朝日を浴びて家路に着く。)

そして後編ではライヴアクトのような派手さはないが、Sonar Dayの会場で催されるテクノロジーやメディアアートの展示やイヴェントについてはお伝えしようと思う。

後編に続く


Article by Toshinao Ruike

Information

Sonar 2013 13.14.15.16 June 2013
http://sonar.es/en/2013/


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