あきこの部屋

パリでスリにあったらどうする

前回はテロに追悼の意を示した本ブログですが、
その一ヶ月前、わたしはそのエリアでスリにあってました、、、

あなたはスリにあったことがありますか?
わたしはなかった!!なかったんです。
ロンドンでもローマでもスペインでも上海でも一円もスられず、
スられるという危険すら感じたことがなかった。
だからめちゃくちゃ油断してたんですよね…生きるってことに…

今回、パリについた2日目にはもうスリにあってました。
あれはそう、9月の終わりのこと。
まぶしいな〜青い空が


レアムール・セバストポール駅のホテルに滞在していたわたしは、
メトロに乗って取材先であるアンリアレイジさんのアトリエに通っていました(そして無一文になりお金を借りるという、、、、一生アンリアレイジを着る宣言)。
パリのメトロはクレジットカードでチケットが買えます。
小銭がないのでカードで買って、暗証番号を入力して改札へ。

多分このとき、スリは暗証番号を打つ手元を後ろから見てました。
改札に入る前か、入ったあとにわたしの財布をスッて、
まだわたしがメトロから降りないくらいの速攻さで
ATMでお金を降ろすという手口です。
あとでチェックしたら、めちゃくちゃ降ろされてました。

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SNSで絶叫したら、たくさんの方が慰めてくれました、、
ありがとうインターネット、、
スられたセンパイからのメッセージがしみました。

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田中さん、スられすぎです

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つい2週間前、この人がオーストリアからヴェネツィアに向かう寝台車で財布をスられていたのを「あら大変そうね..」と眺めていた。まさか自分がスられるなんて、、

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この人はフィリピンに短期語学留学に行ったら財布をスられて一文無しになり、見ず知らずのギャラリーに飛び込んでお金を借りたんだそうだ、、すごすぎる、、、、

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スペインには美人局が

有り金をなくしてすごく悲しい気持ちになったので、
他人の不幸なエピソードを求めてみました。


さすがだぜ、こいつら血も涙もない


ほか、海外にすら行けなかった人や、
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インドで強盗に追いかけられた人も…
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世界は広い。みんなが身を切って体験した
ヘビーな想い出がしみます。


新婚旅行はネクストレベルです。
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銃はカンベン
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起きてたのに飛行機乗り過ごした人、、
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外国は家の中ですら油断できない
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3分で置き引きは凹む
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複数回はすごいわ
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昏睡強盗ってのもあるそうです、、
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世界を旅するアーティスト、キンセイさんの冷静な教え
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■それでは正解です
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それでは、スリにあったらどうするのか?!
現在シンガポール在住の、チームラボ・高須さんから教えてもらいました。

スリにあったら、それはこの3ステップ。

ステップ1. カード会社に電話してカードを止める
ステップ2. 最寄りの警察署に行って「盗難届」を作る
ステップ3. 帰国後、盗難届を持ってカード会社などへ

■国際電話はskypeでかけるべし
で、ステップ1.は、普通に国際電話すると一回で
何千円にもなってしまいます。
が、skypeで課金すると国内外の携帯電話や
固定電話に電話をかけることができるんです。
たっぷり話して、一回なんと10円ぐらい。
コレクトコールができないし、
フリーダイヤルでは国際電話だと拒否されたりするので
これはものすごく助かりました。
クレジットカードがない人も、
友達にクーポンをプレゼントしてもらえるので大丈夫。

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ここから

高須氏(そのときNYから移動中)が
現金振込をしてくれたので、
心置きなく電話できました、、
普通にmacbook airのスピーカーで会話。
めちゃくちゃ使いまくったのに全部で50円ぐらいだった。
本来なら1万円以上かかってたと思う。
本当に夢みたいだった。高須ありがとう

高須氏いわく、「外国で外人にまみれた独居中年ライフを送るにはこういうノウハウが必要なのです」
とのこと・・・・・・・



■警察はアタリとハズレがある

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こういうサインが警察。
Google Mapsで「警察」と入れると出てきます。

とにかくスリにあったら警察に行くこと。
「スリ(pickpockets)にあった」と言うとどこかしらに案内してくれます。
外国の警察は働かないと言われますが、
多分警察署にもアタリとハズレがあります。
わたしは最初に行った警察署がハズレで、ひたすら「待ってろ」と言われて
イスに座って待ってたけどなにも起こらず1時間半。
諦めて、また次の日に違う警察署にいってみたらちゃんと対応してくれて、
30分ぐらいで調書がもらえました。

1.入り口にいる人に「スリ(pickpockets)にあった」と言う
2.受付で「スリ(pickpockets)にあった」と言う
3.個室に呼ばれて「いつ、どこで、なにを、いくら分」取られたかを話して書類を作ってもらう
4.その場で書類を渡される

という感じです。

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これがもらえる調書

これを面倒がると、日本に帰ってから保険が降りないそうなので
必ずもらうようにとみんなに言われました。

実際帰国後に、カードのキャッシング被害にあったとカード会社に言ったら
「キャッシングは暗証番号を入れるから本来保険の対象外」と言われて
焦りました。

でもスリの手口を説明して、盗難届を提出したら保険の適用内にしてくれたので
ほんとによかったです。ホッ


■スリは文化
パリは呼吸をするようにスリがいました。
瘴気のようなものだったのかもしれない。
そういうところに行ったのなら、
そもそもちゃんと対策をしておかなければならないわけで。
郷に入っては郷に従えということで、
スリが文化なのならこちらもそれなりの応対をしなければならないのであります。
最低でもこれくらいはしておきたい。

・そもそも財布を持ち歩かないのがベター。
 ホテルに金庫があったら、必要最小限の現金とクレジットカード1枚、
 緊急連絡先などを簡易的な袋などに入れて、
 バックアップを作っておく
・クレジットカードもいっぺんに全部を持ち歩かない
・財布とパスポートは別に持っておくこと
・なるべく身体に密着するものに財布類は入れる。
 ただし背中側に中身をまわさないこと

【旅行前にやっておくこと】
・クレジットカードの旅行保険の条件を確認、
たいていは「飛行機チケットか、空港までの交通費をそのカードで払う」なので
満たしておくこと。そうでなければ掛け捨ての旅行保険に入る。
こんなの→http://www.sjnk.co.jp/kinsurance/leisure/off/
Webサイトからだと安い。空港でも出発前なら加入できるのでやっておくこと。
・skypeはアカウントをとって、500円ぐらい振り込みしておくこと

ちなみにスペインのホテルの部屋に置いておいたmacを盗まれるという人
いたので、ホテルの部屋も日本と違って油断は禁物。
わたしはむかしロンドンのホテルで、部屋の清掃時に
友達が作ってくれたネグリジェと太宰治の文庫本を盗まれたことがあります。
なんでそんなものがほしいんだ。謎すぎ

■芸ができれば小銭を稼げる
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しかし現金もカードもない世界の新鮮なこと!
世界が変わって見えました。(何も関与できないという意味で)
そして「もしわたしが歌えたり踊れたりするなら、道でお金を稼げるのに」
と痛切に思った。ここでは日本語が書けても何の価値もない。
でも歌とか踊りとかマジックだったら通用するんだ。
そう思って自分の非力さを思い知った。
スリに対抗する最善の方法はノンバーバルな芸かも。
折り紙とか民謡とか覚えようかなあ。


赦すということ “あなたたちは私の憎しみを得ることはできない”

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2015年11月13日、フランス・パリ市街で同時テロが起こり、
劇場やレストラン、スタジアムなどで少なくとも127人が死亡、
約300人が負傷した。

ドミニク・チェンさんが、このテロで奥さんを亡くした男性が書いた
テキストを日本語に翻訳されていたものをブログにアップされていて、
その感動的な文章に胸を打たれた。こんな文章だ。
こちらのリンクから全文が読める。

“あなたたちは私の憎しみを得ることはできない”

金曜の夜、あなたたちは私にとってかけがえのない存在であり、人生の最愛の人である、私の息子の母親の命を奪ったが、あなたたちは私の憎しみを得ることはできない。あなたたちが誰なのかは知らないし、知りたくもないが、あなたちの魂が死んでいることはわかる。
〜略〜
もっともあなたたちはそのことを望んだのだろうが、憎しみに対して怒りで応えることは、今のあなたたちを作り上げた無知に屈することを意味する。あなたたちは私が恐怖におののき、同じ街に住む人々に疑いの目を向け、安全のために自由を差し出すことを望んでいるのだろう。あなたたちの負けだ。何度やっても同じだ。


テロの目的とは、無差別に人を傷つけ、
社会を混乱と恐怖に陥らせること。
復讐に走ったら、テロリストの意思に沿うことになってしまう。
だからあなたたちに「憎しみ」は与えない、
という宣言。

この文が感動的なのは、愛する妻を失い、
17ヶ月の息子とたった二人で取り残されるという
身体に風穴が開くような大きなダメージを受けながら、
相手を傷つけようとしていないことだ。
ものすごい精神力だと思う。わたしなら絶対にできない。

フランスは理性の国だ。
中世の迷信にまみれた社会から、理性によって近代国家を作った。
だから、振りかかる大きなものを
人間の知によって克服していこうという意識が強いのかもしれない。

テロはおそろしい。
それはまったく根拠がないからだ。
どんなに清く正しく生きている人でも関係ない。
暴力というものが突然目の前に現れ、
なんの権利もないのに、全てを奪っていく。

振りかかること、奪われること、
いずれも自分で選ぶことができない。

■奪われたあとのことは自分で決めることができる

だが、奪われてからどうするのかは、
自分で決めることができる。

そもそも「目には目を、歯には歯を」
っていうハムラビ法典や旧約聖書に出てくる
有名な言葉は、やられたらやりかえせ、という
ことに聞こえるが、実はそうじゃない。

目を攻撃された人がエスカレートして、
相手の生命をも奪ってしまわないように、
「目を攻撃されたら相手の目を攻撃するだけにとどめなさい」
ということだった。

それが旧約聖書の頃で、
その後の新約聖書になるとイエス・キリストは
「右の頬を打たれたら左の頬を差し出しなさい」
と言った。

私はあなたがたに言います。悪い者に手向かってはいけません。
あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい。
あなたを告訴して下着を取ろうとする者には、上着もやりなさい。
あなたに一ミリオン(1.5km)行けと強いるような者とは、一緒に二ミリオン行きなさい。
(マタイ福音書5章38節から41節)


右の頬を打たれるのは降りかかってきたこと。
でも左の頬を差し出すのは自分の自由意志でやったこと。
最初の1ミリオンは人から強いられた距離だけど、
自ら歩くもう1ミリオンは、自分の意思で歩くもの。

受難に遭った時に、それを逃れられないものとして嘆くのではなく
相手を責めることなく、積極的に世界に関わっていくことが、
「赦し」ということなのかもしれない。

この「赦し」という概念はキリスト教でやたらと出てくる
言葉で、普通に生きてるとあんまり意識しないものなんだけど、
ドミニクさんが訳した文章を見て、
ああそういえばそういうものがあったなって
ひさびさに思い出した。

でもいままではその「赦し」というものが
具体的にどんなものなのか、全然理解できなかった。
聖人のような人が、何をされてもその人を咎めることなく
愛します、みたいなことなのかと思っていた。
そんなの全然現実味がないから、
わたしには関係のないことだと思っていた。

でももし「赦し」というものが自発的なものならば、
わたしにもそれが出来るかもしれない。
なにかが降りかかってきたときに、
恨みや憎しみという感情を選択しないこと。

それこそが、わたしたちの人間性と幸福という
ささやかな矜持を守ってくれるものなのかもしれない。

このいくらでも恐ろしいことが
起こりえる残酷な世界において、
その知恵と意思こそが、
まるで悪意や雪崩のように起こる
悲惨なできごとから、
傘のようにわたしたちを守ってくれる。

わたしたちがこの世界の広さと未知さに怯えて
立ちすくむことのないように、
そのすべてを愛することができるように。

この小さな男の子はこれからの一生の間、自らが幸せで自由でいることによって、あなたたちに立ち向かうだろう。なぜなら、そう、あなたたちは彼の憎しみを得ることもできないからだ。
“あなたたちは私の憎しみを得ることはできない”



“あなたたちは私の憎しみを得ることはできない”