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エメラルドの城が一瞬にして灰に帰すような気持ちになることがある。
眼前に広がっていたエメラルドの王国が、メガネを外した瞬間に灰になって崩れていくような気持ち。水風船が割れるような瞬間的な崩壊。あまりにも突然で早急で、目の前の光景を呆然として眺めるしかない。

ただしその崩壊は理由もなく起こっているのではない。長い間にじわじわと、少しづつ少しづつ見えない亀裂が入って、限界に達したときに崩壊が起こる。亀裂の名は不満とその不満が解消されないことによる失望だ。自分の中にうまれた感情を解決せずに見えないふりをしたり、なかったことにしていても、実は音もなく降り積もっていて、ある日突然臨界点に達する。信頼関係が成り立っているなら放置せずに解決できるのかもしれないが、そこまで踏み込める関係性を築くことを諦めてしまうことがほとんどだ。なぜならひどく骨が折れるから。現代社会のひとびとはとにかくいろいろなことでいそがしい。

人間に先入観があるかぎり亀裂をなくすことはできないが、すごく注意深くしていればきっとそれは見える。そして、早い段階なら修復することができる。でもひとはあまりにもたやすく亀裂を修正することを放棄してしまう。そしてある日、突然のようにしか見えない崩壊が起こる。

一度灰になった王国が蘇ることはない。どうか諦めず、大切な王国を灰にしてしまわれませぬようお気をつけください。