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行った誰もが「すごかった」と言って帰ってくる、
あの伝説の「SXSWインタラクティブ」に行ってきました。



SXSWインタラクティブって何?


SXSWインタラクティブ(以下SXSW)は、
テキサス州オースティンで開催される
インディー音楽の見本市「The South by Southwest」の一部。
The South by Southwestは
地元の音楽関係者が自主的に開催したカンファレンスとして
1987年にスタート。
ヒッチコックの映画「North by Northwest」(北北西に進路を取れ)
をもじって名付けられました。

最初は音楽のイベントのみが開催されていました。
映画とインタラクティブの部門「フィルム&マルチメディア」
が始まったのは1994年。個人用コンピュータの普及とともに、
CDロムなどのマルチメディアでのクリエイティブが注目されるように
なりました。

その後、インターネット時代突入を目前にした1997年に、
マルチメディア部門が「インタラクティブ」として名前を変えて独立。
最初の基調講演は、トーマス・ドルビーと
ジャロン・ラニアーが行いました。

現在のイベント形態が確立されたのは、
インターネット時代の到来と時を同じくした1998年より。
Webやデジタルデバイスなどのデジタル・クリエイティブが
存在感を増すにつれ、SXSWも重要度を増していきます。

SXSWは常に時代の鏡となる
ジャーナリストやファウンダーらを招聘して
セミナーやイベントを行い、参加者を倍増させてきました。

有償参加者の数は、
2008年に9,000人、
2010年には14,000人、2013年には30,000人と激増。
オースティンの街への経済効果は
190億円以上と言われており、
イベント自体がオースティンの重要な産業になっています。

何が行われるの?


たった5日間のイベントに、星の数ほどイベントが詰め込まれているのが
SXSWの特徴。
3000人は入るホールを擁するオースティンの巨大コンベンションセンターをメイン会場に、
近隣のホテルなど17箇所をサテライト会場として設定。世界中から集まった人が
デジタルクリエイティブについてのあらゆることをしているのです。
2013年に行われたイベントの一部はこんな感じ。

・2,000プログラム以上の講演・セミナー・勉強会
・参加者のためのミートアップイベント
・スタートアップのコンペティション「SXSW Interactive Accelerator」
・スタートアップ企業と投資家の出会いの場「SXSW Startup Village」
・スタートアップ企業らが出展する見本市
・革新的な作品を表彰するアワード「SXSW Interactive Awards」
・コンシューマーゲームの見本市「SXSW Gaming Expo」
・プロフェッショナルが7分間だけマンツーマンで教えてくれる「Mentor Session」

その他にもSXSWと時期を同じくしたイベント
・Googleやマイクロソフト、Yahoo、サムソン、Spotify
らのIT企業による自社パビリオン
・Twitter主催のナイトパーティ(フライングロータスなんかが出演)
が街中で行われるというわけです。

誰が来るの?


SXSWに来るのはどんな人?

・講演を行うインターネット・セレブたち
・来場者に向けてプロモーションしたいIT企業
・投資家を探すスタートアップ企業
・「SXSW Interactive Awards」の革新的な受賞者
・魅力的なスタートアップを青田買いしたい投資家
・それを報道するWired、mashableなどのテクノロジー系メディア
・ブロガー
・新しいプロジェクトのヒントを探す代理店のプロデューサー、ディレクター
・セミナーを聴講し勉強するデザイナー、デベロッパー、マーケター、リサーチャー

などなど。

何がすごいの?


SXSWがすごいところは、
広告賞のように業界人の集う機会であり、
学会のような学びの場であり、
見本市のように新しいモノと出会う場でもあることです。

デジタル・クリエイティブに関わることであれば、
学術的な研究から商業的な広告、
学生によるスタートアップ、
Webデザインからエコロジー問題まで、
あらゆることに関するセッションが行われる。

参加チケットは6万円〜10万円と高価なのに、
新しい情報や知的刺激を求める
起業家からプログラマ、ジャーナリストら、
ITリテラシの高い人々が一同に介する機会になりました。

SXSWが世界的にその名を轟かせたきっかけは、
2007年にTwitterがSXSWアワードを受賞し、
世界的にブレイクしたこと。
2008年にはFacebookのマーク・ザッカーバーグが
講演を行い、これも熱狂的な評判になりました。

このブレイクに導いたのはそもそも、
Webメディアによる報道が大きな要因です。
WiredやMashableなどのWebメディアがSXSWを大きくフィーチャーし、
新しいガジェットやWebサービス、アプリの情報をリアルタイムで
報道することにより、世界中でセンセーションが起きました。
従来のテレビやラジオなどのマスコミでは、各国に配信される情報に
タイムラグがあるため、このような動きは起きにくかったでしょう。
そうして、Webやアプリなどインタラクティブ分野の
最新情報が発信されるメッカとしてSXSWが認識されるようになり、
さらに人が集まるようになったのです。

2013年のトレンド


それでは2013年、SXSW全体で目立ったトピックを簡単にご紹介します。

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1. パーソナル・ファブリケーション


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デスクトップ3Dプリンタで知られるメーカー
MakerBotが、デスクトップ3Dスキャナー「Digitizer」
を2013年後半に発売すると発表。
これで、自宅でファブリケーションできる環境が
揃ってしまうというわけです。
3Dプリンタやスキャナに関する講演も目立ちました。

2. Google Glass




ほか、Google Glass、Android家庭用ゲーム機「OUYA」などが
講演でその全貌を明かしました。どちらも実機を体験できるわけでは
なかったので、参加者はちょっと残念。

3. Leap Motion


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Leap Motionはデモンストレーションを
複数の会場で行い、デモゲームが展示されています。
これは落ちてくる果物をコントローラー(なんと割り箸)
で切っていくゲーム。

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Leap Motionはデベロッパ登録者に
無償配布を行なっていました。
体験するQosmoの徳井直生さん。

4.Napsterを描いた映画「Downloaded」


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音楽共有サービスNapsterの
ドキュメンタリー映画「Downloaded」が
Film部門でプレミア上映され、面白いという評判で持ち切りでした。

ほか、Lytroは特設ブースで販売されたり、
ARドローンの飛行ショーも開催されるなど2013年の
トレンドを総ざらいといった感じです。

面白いプロジェクトに国境なし


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日本からも、アーティストの真鍋大度さん、
電通のクリエイティブ・テクノロジスト菅野薫さん、
電通ビジネス・クリエーション局の山本浩一さんが
オープンソースをキーワードにした自らのクリエイティブを紹介しました。

真鍋さんは「Perfume Global site」、「氷結 SUMMER NIGHT」、
「NHK杯フィギュア 復興支援関連イベント」について。
またクリエイティブ・テクノロジストの菅野さんは、
Hondaインターナビ「CONNECTING LIFELINES」
やHondaの名車のエンジン音を擬似的に鳴らすアプリ「Sound of Honda」
など。

テクノロジーの知識とプログラムのスキル、独創的なアイディアを
併せ持つ真鍋さんと、クリエイティブ・テクノロジストとして
テクノロジーを専門にした広告の企画、ディレクションを行う菅野さん。

どれも大変ユニークで、クリエイティビティとテクノロジーが
高いレベルで融合するプロジェクトでした。

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すごく印象的だったのは、彼らの仕事が、
海外クリエイターにとっても
「どうやってクライアントを説得して実現したの?!」と
思えるくらい刺激的だったこと。

終了後、彼らの元には名刺交換を求める
行列が出来ました。本当に面白いクリエイティブには
国境はないんだなと、目頭がちょっと熱くなりました。

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Nike+ Fuel Bandなど、Nikeのインタラクティブな
プロダクトやコマーシャルプロジェクトの開発を手がける
デジタルエージェンシー、R/GAによるセッション「Brainstorming Technology First」。
テクノロジーの観点から、
新しいプロダクト、キャンペーン、サービスなどを生み出すための
ブレインストーミング法を語りました。
こちらに音声がアップされているほか、
ブロガーさんによる詳細なレポートも公開されています。

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SXSWの名物ともいえる、星の数ほどもある講演。
2012年にオライリー社から出版された
ベストセラー「インフォメーション・ダイエット」の
著者Clay A. Johnsonによるスピーチ。
ネットに接する時間が多い人にとっては、
情報過多になってしまう時代。
いまこそ、体重を減らすダイエットのメソッドのように、
自分の目に入る情報を取捨選択して、健康的な生活を送ろう!と提唱しています。

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ビッグ・データをどうビジネスにするか?
2012年は「Nike Fuel」が、2013年には「jawbone UP」が安価に発売され、
人体データを取得して健康管理に役立てることが身近になりました。
国民健康保険制度がなく、肥満問題を抱えるアメリカでは、
ビッグデータを活かした
健康管理ツールなどに関心が集まっているようです。

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「How to Solve the World’s Problems(世界の問題の解決の仕方)」
という大変大きな問題を扱った講演。
「ウィキノミクス」や「デジタルネイティブが世界を変える」などの
著書で有名なドン・タプスコットだけに、
とてもわかりやすい内容でした。
「世界はいまターニングポイント、機構や組織の
かたちを考えなおす時に直面している。
ネットワークでつながった世界の知を正しく活用すれば、
貧困や争いを少なくすることができる」
というとてもまっとうなメッセージが心にしみました。

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こちらはユーモアコミック「The Oatmeal」作者、
マシュー・インマンの基調講演。
「バズるコンテンツを作り、さらにクラウドファウンディングで
支援してもらう秘訣」を、コミックを交えて披露。
本を読め、友達を作れ、落ち込むからネットのコメントは見るな、
ネットではなく自然の中にネタを探せ、ニコラ・テスラを尊敬せよ、などなど。
3000人のキャパシティが満員になった会場を
爆笑の渦に巻き込んでいました。
講演会場がこんなに爆発的に盛り上がっているのを
見たのは初めてでした。

次回は、SXSW2013で初登場し注目を浴びた
スマホアプリをご紹介します。