#tokyo

村上春樹「ノルウェイの森」に出てくる有名なフレーズに
「春の熊」というのがある。

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「ねえ、ねえ、何か言ってよ」と緑が僕の胸に顔を埋めたまま言った。
「どんなこと?」
「なんだっていいわよ。私が気持ちよくなるようなこと」
〜中略〜
「君が大好きだよ、ミドリ」
「どれくらい好き?」
「春の熊くらい好きだよ」
「春の熊?」と緑がまた顔を上げた。「それ何よ、春の熊って?」
「春の野原を君が一人で歩いているとね、
向うからビロードみたいな毛なみの目のくりっとした可愛い子熊がやってくるんだ。
そして君にこう言うんだよ。『今日は、お嬢さん、僕と一緒に転がりっこしませんか』って言うんだ。
そして君と子熊で抱きあってクローバーの茂った丘の斜面をころころと転がって一日中遊ぶんだ」
(村上春樹『ノルウェイの森 下』p.154-155より)
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「春の熊くらい好きだよ」というのは、言葉だけだと
僕が熊に抱く愛情の大きさ=僕がミドリに抱く愛情の大きさ
のように思えるが、そうではない。

この話の中で熊と遊んでいたのはミドリであって、
ミドリが熊に好感を抱くのは理にかなっているが
主人公が好きになる条理がない。

つまり、一度熊と遊んでいることを想像させて、
ミドリが想像上の熊に抱いたのと同じ量の愛情を
僕が君に抱いたので想像してねということとか、
この心あたたまるエピソードを聞いた時に感じる
ようなほっこりした気持ちをミドリといると
感じますよということかもしれない。

わ、わかりにくい。

そしてたとえ空想の話に出てきた熊と同じぐらいの
愛情を君に持っている(=それだけ大事に思っている)
と言われてもミドリはうれしくないだろう。

なんかもっとわかりやすく的確に愛を伝える
言葉というものはないんだろうか。

つまり、ミドリが想像しやすい尺度で
愛情の大きさを伝えればいいのである。

しかし昔からよくある
「海より深く、山より高く君のことが好きだ」
みたいなやつは、水深と愛情の大きさのスケールが
ちょっと違いすぎるのであまりピンとこない。

なので、同じスケールで比べればいいのではないか。

@tksがニコニコ学会を好きなくらい僕は君のことが好きだよ
とか、
@takawoがMakeを好きなくらい僕は君のことが好きだよ
とか、
あとは
ラムちゃん諸星あたるのことを好きなくらい僕は君のことが好きだよ
とか、
さかなクンがさかなのことを好きなくらい僕は君のことが好きだよ
といえば、
愛情の大きさがわかりやすい尺度になるので
相手にも具体的にその大きさを伝えることが
できるのではないだろうか。

でもこれだと分脈を共有出来る人が
だいぶ限られるので、より汎用的にするために
・うさぎが人参を好きなくらい僕は君のことが好きだよ
みたいなのも考えているのですがあまりいいのが
思い浮かばない。引き続き考えます。