第三回目の「フォルマント兄弟のプレゼンテーション道場」は美術評論家・多摩美術大学教授の椹木野衣さんを迎え、12月18日にIAMAS(情報科学芸術大学院大学+岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)で開催された。フォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康)と椹木さんとのトークの後、ワラビモチ愛好会山路製めんによる入選作品『ワラウドン』を上演した。

過去のレポートは以下から。
第一回:畠中実セレクション
第二回:佐々木敦セレクション

会場は今回もIAMASマルチメディア工房。トーク出演者の後には料理のためのセッティングが。

最終回となる今回のトークは、メディアアート、メディアテクノロジーと芸術についての問題が中心となった。「メディアアートというものは、従来の芸術のジャンルを統合したり関係づけたりするプラットフォームではなく、芸術の一ジャンルとしてあるのだと思う。しかし、ジャンルが細分化していけばいくほど、そのジャンルの表現はひとつに収束してしまう。メディアアートはジャンルにこだわらず、表現をどこに着地させるかということが重要では」(椹木)

右からフォルマント兄弟三輪さん(兄)、椹木さん、佐近田さん(弟)

トークに続き、入選作品『ワラウドン』の上演。ワラビモチ愛好会のPHIRIPさんが、パフォーマンスと作品説明のプレゼンをしながらわらび餅をつくり、山路製めんの山路智恵子さんがうどんを打って茹で上げる。

うどんを打つ山路さん(右)、プレゼンテーションとわらび餅を作るPHIRIPさん(左)

PHIRIPさんがわらび餅をまぜる動作にあわせて、「わらび餅の神様」がカウントしてくれる

完成したわらび餅とうどんを来場者にふるまう

小麦粉やきなこ、揚げ油(うどんのかりんとうを作った)の匂いが漂う中、PHIRIPさん、椹木さん、フォルマント兄弟に加え、アドバイザーの吉岡洋さん(京都大学教授)を交えて作品講評とトークが行われた。

山路さんは引き続き、来場者のためのうどんを茹でている

前後の脈絡のあまりないPHIRIPさんのパフォーマンスが、機材の故障(!)を間に挟みつつ、その独特の間を保ちながら、いい意味でのグダグダな感じのなか行われた。「こんなだめなものを見たのは久しぶりで、新鮮だった」(椹木)「いつもだめなんですが、今回はいつもに輪をかけてひどかったです」(PHIRIP)。
この作品はいったいどういうものなのか?ということを観客も含めみんなで一緒に考えるような後半のトークとなった。
「これはメディアアートというよりも、空間と時間軸とプロセスを共有するアートの『展示』と考えられるのでは」と椹木さんが締めくくった。

PHIRIPさん山路さんのライブ情報は、それぞれのサイトにて告知されています。興味が湧いた方はぜひどうぞ。百聞は一見に如かず、です。)



Photo: Tsukamoto Mina
Text: Kobayashi Keiko

Detail

『フォルマント兄弟のプレゼンテーション道場』
http://www.iamas.ac.jp/mam/

プレゼンテーション道場 椹木野衣セレクション
ワラビモチ愛好会+山路製めん 『ワラウドン』
2010年12月18日(土)
開場:12:40
開演:13:00
出演:PHIRIP(ワラビモチ愛好会)、山路智恵子(山路製めん)、椹木野衣、フォルマント兄弟

Profile

PHIRIP(フィリップ)
http://phirip.com/
1997年よりワラビモチ愛好会発足(会長)。同時に音楽活動もしている。

山路智恵子
http://yamajichieko.blog2.fc2.com/
2001年よりyumboに参加。 打楽器を演奏する。2009年よりソロ演奏をはじめる。 2010年より山路製めん発足。お赤飯を炊くようなきもちでいつもドラムとうどんを打っている。

椹木野衣
1962年生まれ。美術評論家。90年代初頭に東京を拠点に批評活動をはじめる。おもな著作に『シミュレーショニズム』(ちくま学芸文庫)、『日本・現代・美術』(新潮社)、『戦争と万博』(美術出版社)ほか。近刊に『反アート入門』(幻冬舎)。2007ー08年に掛けロンドン芸術大学客員研究員としてロンドンに滞在。現在、多摩美術大学美術学部教授。同大学芸術人類学研究所所員。本秋より大型新連載「後美術論」(『美術手帖』)を開始。

フォルマント兄弟
http://formantbros.jp/j/top/top.html
フォルマント兄弟(Formant Brothers)は、三輪眞弘(兄)と佐近田展康(弟)という父親違いの異母兄弟によって2000年に結成された作曲・思索のユニット。テクノロジーと芸術の今日的問題を《声》を機軸にしながら哲学的、美学的、音楽的、技術的に探求し、21世紀の《歌》を機械に歌わせることを目指す。
また作品と一体となったテクノロジー論/芸術論の言説でも注目を集め、東京藝術大学、ロンドン・グリニッジ大学、東京大学などで講演発表・シンポジウム等を行う。





平成22年度文化庁メディア芸術人材育成支援事業 メディアアートにおける”音楽”の現在