第二回目の「フォルマント兄弟のプレゼンテーション道場(CBCNET内記事)」は、批評家の佐々木敦さんを迎え、IAMAS(情報科学芸術大学院大学+岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)にて12月11日に開催された。フォルマント兄弟(三輪眞弘+佐近田展康)と佐々木さんとのトーク、入選した松本祐一さんの『twitter音楽』の上演が行われた。

フォルマント兄弟と佐々木さんによるトークは、メディアテクノロジーの発達と関連する音楽作品やシーンの変化について、90年代〜00年代の電子音楽の流れを例に紹介。また、ミュージシャンを美術館に取り込んだ「サウンドアート」企画とその後の状況などから、「メディアアートと音楽」の問題にも迫った。

右からフォルマント兄弟三輪さん(兄)、佐々木さん、佐近田さん(弟)。

松本祐一さんによる入選作『twitter音楽』は、テキストの品詞を分解して、その種類を音程に、単語の長さを音符の長さとしてメロディを作る前作『アンケート・アート』で使った手法を、twitterのつぶやきに応用して構成したものだ。

ハッシュタグを使ってつぶやいた6人分のテキストを使って音楽が作られる。音程や音色もハッシュタグで変更できる。

Ustreamの画面を見つめる松本さん。

上演後、松本さん、佐々木さん、フォルマント兄弟による作品講評とトークが行われた。アドバイザーの吉岡洋さん(京都大学教授)は、今回はUstream中継越しでトークに参加。


今回の応募作品は、さまざまなタイプの作品があったが、それぞれ狙いがはっきりしていて、「メディアアートと音楽」というテーマについてよく考えられたものばかりで良かった、また、松本作品は審査の際の作品説明ビデオがとくに秀逸だったと佐々木さん。前作「アンケート・アート」は政治的な問題を扱う、メッセージ性の強い作品だったため、同じシステムをベースにしたこの作品には、そのコンセプトへの質問が多くあった。
「エンターティメント、というものへのあこがれがある。今回はtwitterのもつリアルタイム性と参加性を重視し、楽しんでもらえる作品を目指した」(松本)。

今回も、表彰状とフォルマント兄弟特製のTシャツと高音キン(#)による、コブシの効いた「おめでとう」メッセージが贈られた。

#高音キン/フォルマント兄弟が「せんだいめでぃあヲどり」プロジェクトのために制作した人工音声キャラクター

Photo: Tsukamoto Mina
Text: Kobayashi Keiko

Information

『フォルマント兄弟のプレゼンテーション道場』
http://www.iamas.ac.jp/mam/

プレゼンテーション道場 佐々木敦セレクション
松本祐一 『twitter音楽』
2010年12月11日(土)
開場:17:40
開演:18:00
出演:松本祐一、佐々木敦、フォルマント兄弟

松本祐一
1975年生まれ。茨城大学工学部卒業。電源制御機器開発会社の研究員を経て、IAMASに入学。コンピュータ音 楽等を学ぶ。作曲を早川和子、三輪眞弘に師事。アンケートを行い、その回答の文章から音楽を作るアンケート・アートを中心に、アーティストのサポートや、数多くの映像作品に楽曲を提供。

佐々木敦
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌エクス・ポ/ヒアホン編集発行人。早稲田大学、武蔵野美術大学非常勤講師。著書として『批評とは何か?』『文学拡張マニュアル』『ニッポンの思想』『(H)EARーポストサイレンスの諸相』『ex-music』『テクノイズ・マテリアリズム』など多数。

フォルマント兄弟
http://formantbros.jp/j/top/top.html
フォルマント兄弟(Formant Brothers)は、三輪眞弘(兄)と佐近田展康(弟)という父親違いの異母兄弟によって2000年に結成された作曲・思索のユニット。テクノロジーと芸術の今日的問題を《声》を機軸にしながら哲学的、美学的、音楽的、技術的に探求し、21世紀の《歌》を機械に歌わせることを目指す。
また作品と一体となったテクノロジー論/芸術論の言説でも注目を集め、東京藝術大学、ロンドン・グリニッジ大学、東京大学などで講演発表・シンポジウム等を行う。



平成22年度文化庁メディア芸術人材育成支援事業 メディアアートにおける”音楽”の現在

過去の記事:
『フォルマント兄弟のプレゼンテーション道場』 第一回 畠中実セレクション