2010年7月12日、CBCNETでの連載の最後を締めくくるべく行った、Ustream多元中継によるライブ『WORLD JAM BAND “LAST GIG”』。おかげ様で、ライブ用のハッシュタグ#cbcwjbを見るととてもポジティブなレスポンスが多く、ただただ嬉しい限りでした。
という事で、ライブが終わってからだいぶ時間があいてしまいましたが、録画してもらったキャプチャ映像と共に、レポート的にいろいろ振り返ってみたいと思います。

text by MerceDeath

全員違う音を聴いている

まず、久しぶりにキャプチャ映像を見てみて思ったのは、自分がイメージして弾いていた音とけっこう違うという事です。僕が弾いている時にモニタリングしている音は、Ustream経由で聞こえてくる他のメンバーの音(遅延有り)と、タイムラグの無い自分の出音のmixを聞いていたのですが、キャプチャをしてもらったCBCNETの環境では、当然僕の音はそれよりも数秒遅れて聞こえるわけです。なので、かなり頑張ってどんぴしゃのリズムで弾いていたものも当然ずれて聞こえるわけで、この事は頭では理解していたのですが、実際に聞いてみると「なるほど、こうずれるか〜・・」と、ひしひしと感じたのでした。そして、この音のずれは、このサイトにアクセスしている全ての人に起こっていて、さらにそのずれ方は個々のインターネット環境によって異なります。つまり、あのライブに参加していた人々は、全員微妙に違う音楽を聴いていたとも言えるわけです。

という事で、実際の演奏のビデオを当時のメモを見ながら振り返ってみたいと思います。このビデオはCBCNETのスタッフがライブのページをビデオキャプチャしたものです。キャプチャの都合上、だらっと長回しが難しかったようで、素材の時点で抜粋されていたものを、さらに抜粋したのが下のYouTubeです。また、フレームレートも落として録画しているので少しカクカクしていますがご了承ください。上から順にだいたいこんな流れでした、という感じで並べてあります(第1部と第2部がありましたが、それは素材の都合もあり混ぜてます)。

MCがてらの遅延テスト&FUNK



まずはMCで企画意図を説明しながら、皆さんにどの程度遅延があるかを知ってもらおうと思いました。ドラムが4カウントの後にシンバルを鳴らし、他のメンバーはカウントを聴いた時点で、シンバルの音にドンピシャで合うように楽器を鳴らすというテストをしています。どうです?ずれているでしょう?w
そして、遅延テストの後にはWJB的に最も自信のあった、ファンキーなJAMセッションをお届けしています。ファンク系は16ビートで細かく音を刻むので、遅延が気になりにくい事もあって、最初のリハの時からこれ系はけっこううまくいっていました。

Ambient



これもキーだけ決めて、なんとなくアンビエント的な〜という感じで演奏。この感じも、初期のリハから割と良い感じでできていたので、安心して演奏できていました。ビデオはちょっと長めですが、後半に行くにつれ徐々に盛り上がっていくところもけっこういい感じなので、ぜひ聴いていただければと思います。

PUNK?



キーだけ決めてなんとなくパンク風というくらいで、あとは勢いのみで演奏w。実際はこの後、テンポを早めて3回くらい繰り返して演奏していました。

メンバー紹介



タイトルそのまんま。紹介されている演奏者を指差すのは、リハをやっている時に誰かが言い出してやりました。リアルタイム日々の音色だ〜なんてコメントもありましたね。
普段のMerce Deathの活動は基本一人なので、当然メンバー紹介など無いから、テンションを上げるために、なんだか架空のロックンローラーみたいな感じにどんどんなっていっています。モデルはスネークマンショーの伊武雅刀w。

I say HO! You tweet HO!



これは、2008年のWorld Tour from My Roomの時にやっていた”I say HO! You write HO!”の2010年版という感じですね。HO!でTLが埋まったらおもろいし、それを見てまたお客さんも来てくれるかもしれないという事で、2部構成の比較的前半にあえて行ったりしてみました。tweetエリアがうまく作動してないってトラブルもあって、ちょっとシンクロ感が弱いのですが、十分楽しかったです。#cbcwjbをさかのぼっていくと、Hooo!で埋め尽くされている箇所が出てくるかと思います。

FIRE



おなじみ、Jimi HendrixのFIREです。ずれ感をより味わっていただくために、有名な曲をあえて演奏しました。ずれずれだけど一応何の曲だかはわかるというw。リハで試しにFIREを弾いてみたらさすが皆さん一度身体を通った事がある曲らしく、その場で全員が演奏を始めたのは感動した覚えがあります。

IRON MAN(ダバス)



テーマの部分が切れてしまっているので解りにくいですが、ブラックサバスのアイアンマンです(一番最後のベースのフレーズでわかるかと)。ブラックサバスのダブ的な演奏なのでダバスと呼んでいました。見ていただくとわかる通り、僕の画面が止まっちゃっています。その事に僕だけは気づかずに、裏で気持ちよ〜くプレイしていたのですが・・。

HEY JUDE(笑)



ライブ終了後『泣いた!』の声多数(マジですw)だったHEY JUDE。これもリハでなんか名曲でもやろうって話になって決まった曲。たしか本番ぶっつけでした。しかもなぜか僕がボーカルとってたり。このぐだぐださは、ネットの遅延のせいではなく、ひとえに僕の演奏自体のぐだぐださかとw。ただ、ちょっとビデオではTLがうまくダウンロードされていませんが、一応tweetで歌ってくれてる人もいて、本当にライブのシメに皆で一つの曲を分かち合った気分に浸る事ができました。

という事で、いかがでしたでしょうか?全部観ようとするとえらい時間がかかると思いますが、それぞれ味わいの違う演奏になっておりますので、ぜひゆっくりお楽しみいただければと思います。また、上の順番とは違いますが、こちらの演奏リストならタブで開いておけばずっと流れっぱなしで楽しむ事ができますので、作業用BGM(にしては若干クセのある)としてご活用くださいませ。
>再生リストを開く


印象的だったコメント

何はともあれ、このライブを観てくれたお客さんのwebに対するリテラシーが非常に高く、皆さんがそれぞれの解釈と想像力を持ってこのライブを楽しんでくれた事が非常に良かったのではないかとコメントを見ていて思いました。そんな皆さんのコメントの中で、特に興味深かったものを紹介したいと思います。

@1000b
演奏者もUst経由で繋がってるってことは僕らと同じ環境。演奏者と鑑賞者の距離がゼロ

メンバー同士の距離が離れた事によって、むしろユーザーとの距離に差が無くなり、ゼロになると。なるほど〜、めちゃめちゃ深いですね。インターネット上の『距離』に対する解釈の話、他にもいろいろ拡げて考えられそうですね。

@slnsyndicate
通信が安定しないのが「箱が満員でバンドがよく見えない」感じに近くて面白い!新しい時間軸の発見!

これは、アクセスが集中したため、同時視聴数が300人あたりを最大に、新たに訪れたユーザーは弾かれてしまい、アクセスしづらい状況が続いていまったのですが、その状況に対してのコメントです。あとは、最初から観ていた人が、「繋がりにくい〜」という他人のツイートを見て「最前列にいる優越感を感じる」と言っていたり。物理的にはメンバーもお客さんも違う場所にいるのですが、同じ空間を共有している感覚を持っていました。

@hagitter
やっぱ音楽は「テクノロジーを間違って使う」ところから始まるって感じするよねー。

確かにUstの使い方としてはかなり間違った使い方だっと思うのですが、それによって発生した異質な何かがそこにあったような気がします。ターンテーブルはこすっちゃダメ!エレキギターをアンプに近づけちゃダメ!ゼッタイ!という事ですかね。
一方ではオンラインジャムって分野自体は、ちゃんと開発が進んでいる(よね?>誰)ので、将来的には普通に遅延ほぼ無しで楽しめるようになると思うんですけどね〜。意外にAppleあたりがガレージバンドの拡張機能としてiJamとか、そろそろいいんじゃないですか?

という事で、ネット上で起こる事象はとかく「ヴァーチャル」と言われがちですが、インターネット上で起こっている事だってリアルなんだよな〜と改めて感じさせてくれるような、たくさんの熱いtweetをいただきました。本当にありがとうございました。

投げ銭について

オンライン投げ銭システム『IZONN』。このライブの時に初めて見た人が試しに入れたという事もあるでしょうが、嬉しい事に合計20,000円の投げ銭が入りました!ありがとうございました!
これで打ち上げに行ける!とテンションが上がったものですが、PayPal経由で支払われたお金なので当然手数料がかかります。当時はまだマイクロペイメントのアカウントが無かったので、100円のような小額の場合、手数料で44円も引かれてしまいました。これが1000円の場合は-76円というように値段によって手数料は変動するのですが、投げ銭の仕組み上一人一人は割と小額なので、最終的に手元に残ったのは16000円ちょっとだったかと思います。そしてその残ったお金も、ドラムのためのスタジオ代と駐車場代(それぞれ、リハ×3と本番)でほとんど無くなってしまいましたw。ちなみに、現在はマイクロペイメントのアカウントにしているのですが、手数料はぐっと下がって、100円の場合は-13円となっています(まだちょい高いけどw)。

グッズ販売について

今回のライブで、もう一つ大事なトライとしてグッズ販売というのがありました。ライブの中でメンバーが着ているWorld Jam Band Tシャツは実際に販売されていたのです。これはなにげに今後のオンラインライブで主流になるであろう流れを体現してみたつもりだったのですが・・、ぶっちゃけ全然売れませんでしたw。ちょっとデザインを、ヨーロッパの地方都市で行われるジャズフェスっぽいなんとも言えない微妙なラインを狙ってみたのですが、それが見事に裏目に出たようですねw。マグカップとかいいと思うんだけどな〜w。今からでも遅く無いので、ぜひぜひ皆さん記念にどうぞ!



という事で、またえらい長い記事になってしまいましたが、こうして振り返る事で自分的にも新たな発見などもありました。ライブにリアルタイムで参加いただいた方も、今回の記事で初めてこのライブの存在を知った方も、楽しんでいただけたら幸いです。また、このライブのためにいろいろお手伝いいただいた方々にもお礼申し上げます。

THANK YOU SO MUCH!!!
WE ARE THE WORLD JAM BAND!



MerceDeath
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