CBCNETでも以前紹介し、毎年行われているメディア・アートの祭典、アルスエレクトロニカでゴールデンニカを受賞した『EyeWriter』。
またGraffiti Research LabLaser Tag(動画)などのプロジェクトも以前紹介したり、CBCNET主催のAPMTのためメンバーのEvan Rothには2回ほど出演してもらっているので知っている人も多いだろう。

さて、そんなEyeWriterがKICKSTARTERというウェブサービスを利用し、プロジェクト資金の寄付を募っているの改めて紹介したい。(以下EyeWriterので簡単な紹介のあとにKICKSTARTERの紹介です。)


アメリカ西海岸で活動していたレジェンド的なグラフィティライターTempt1がが2003年にALS(筋萎縮性側索硬化症)という病のため体の自由を失ってしまった。体は動かないが、意識は正常であり、そして、目だけは動かすことができた。

そんな彼がまた絵を描けないかと、このプロジェクトメンバーがロサンゼルスにいるTempt1を訪れ、アイトラッキングができるデバイスとソフトウェアを自発的に開発することになった。
試行錯誤の末、カメラを目に向けたヘッドマウントのデバイスが完成し、7年ぶりにTempt1が自分のアイディアを表現ができるようになったのだ。
そして、彼らのプロジェクトらしく、デバイスの作り方、ソフトウェアも全てオープンソースとしインターネット上で公開している。
デバイスの作りかた:http://www.instructables.com/id/The-EyeWriter/
ソフトウェア:http://www.eyewriter.org/developer/

EyeWriterの主要メンバーは、Tempt1, Evan Roth, Chris Sugrue, Zach Lieberman,Theo Watson, James Powderly。
このプロジェクトが素晴らしいのは、作品だけに留まらず、彼らのコラボレーションの運び方、プロジェクトの派生の仕方だろう。それぞれのメンバーはアーティストやプログラマーとして世界各地で活動をしており、様々なプロジェクトを同時進行で進めている。

EyeWriterに関しては以下の動画や公式のサイトをご覧頂きたい。

The Eyewriter from Evan Roth on Vimeo.



そしてプロジェクトはまだ進化している。
最新のEyeWriter2.0ではヘッドマウントディスプレイは無くなり、机の上などにカメラを設置するものになっている。
また、同時にGraffiti Markup Language(GML)というモーションデータをXMLファイル形式に保存し、共有する仕組みも作りあげ、これによりEyeWriterやGraffiti Analysisなどのソフトウェアで作られた描画のX、Y軸と時間のデータを、他のアーティストやプログラマーが利用することができるようになった。すでに、GMLデータをペンを動かすロボット(動画)やペイント弾ロボットで描いたり(動画)、立体にしたり(動画)など様々な作品が作られている。

GraffitiMarkupLanguage.com (Trailer) from Evan Roth on Vimeo.



さて、長くなってしまったが、そんなEyeWriterがKICKSTARTERというウェブサイトでプロジェクト資金を募っている。

http://www.kickstarter.com/projects/571943958/tempt1-and-eyewriter-art-by-eyes


このサービスは、ある設定の金額まで寄付が集まったら、寄付額に応じた商品や作品がもらえるというもの。
例えば今回のケースの場合、
5ドルでTEMPT1のスクリーンセーバー、10ドルでEyeWriterで制作したTEMPT1のフォント、25ドルでポスター、35ドルでTシャツなどだ。500ドルでカスタムのEyeWriterのハードウェアなどもある。
1ヶ月ほど前にスタートしたのだが、既に目標金額の15,000ドルを超えている。資金のTEMPT1の制作のための費用や治療費に寄付されるとのことだ。

目標額に達しているので、今購入すれば商品はもらえるということになる。
残り4日となっているので、ぜひ気になる方は買ってみたらいかがだろうか。

※ちなみに、自分はTシャツをオーダーしたのだが、決済はAMAZON.comのアカウントが必要。(日本とは別アカウント)

最後に、目標金額に達成した際のTEMPT1のコメントを転載しておきたい。

“Thank you to everyone who has contributed – especially during this current economic crisis. In times such as these it’s up to us at the community level to pull together in order to address the issues that politicians and governments either cannot or will not solve. This eyewriter technology is not about allowing one paralyzed artist to be creative again. Although your contribution will allow me to regain a level of self-autonomy and the dignity of working again, it’s about much more than that. It’s about helping to produce affordable technology for others suffering from total paralysis – and without equal access to healthcare – to literally be able to speak for themselves again; draw, get online and have some level of freedom in spite of being trapped in bodies that have become prisons.”
Tempt

http://www.kickstarter.com/projects/571943958/tempt1-and-eyewriter-art-by-eyes/posts