震災の影響で延期になっていた、openFrameworks (oF)のユーザイベントopenFrameworks Tokyo (oFT)が満を持して、7月15日六本木Bulletsにて開催された。

出演は、真鍋大度 + 石橋素 (4nchor5 la6)、比嘉了 (structor.jp)、早坂あきら (Nerd)、Dennis Rosenfeldと、そうそうたる顔ぶれがそろい、会場はスタート直後から多くの人々で賑わっていた。
写真と共に、紹介されたプロジェクトも含め、ざっとイベントを振り返りたい。

※openFrameworksについてはこちらの記事などを参照

Dennis Rosenfeld

最初のスピーカーは、カナダ・バンクーバーを拠点に、カメラやビデオを用いてインタラクティブな作品等を制作しているアーティストのDennis Rosenfeld氏。


Dennis氏はデジタル時代にフォトグラファーとして何ができるのか、という事を考えた末、フィルム写真をやめて、ビデオカメラやセンサーを使用したインタラクティブな作品を作るようになった。
openFrameworksを用いて制作したプロジェクトをいくつか紹介してくれた。

Skytrain Windows #1 from Dennis Rosenfeld on Vimeo.


これは、映像のフレームを連続的にづらして表示するソフトウェア。リアルタイム映像や、2つのカメラを使う事もできる。実際に実演も行われた。


[in]security camera from Dennis Rosenfeld on Vimeo.


2010年バンクーバーオリンピックの際、セキュリティーが厳しくなった事をうけて、監視カメラについて考察するプロジェクトを行っていた。
上の作品はその一つで、人が映りそうになると、怖がるようにカメラが後ろを向いてうつむく。かなりアイロニカルな作品で面白い。

this is it, forever from Dennis Rosenfeld on Vimeo.


これもインタラクティブな作品。
カメラの前に人が長くいればいるほど、映像中の道路を歩く人々が増えて、生き生きとした映像になっていく。ビデオはランダムに再生されていて、リピートではないらしい。


早坂あきら

早坂氏はフリーのプログラマとして仕事をする傍ら、コンピュータを使って、作品制作を行ったりもしている。


前半は、仕事で作ったものや趣味で作ったプログラムの紹介。後半はライブコーディングを披露してくれた。


最初にバンククーバーの美術館で行ったプロジェクトの話をしてくれた。
バンクーバーの街の景観、建築物をこれからどんなふうに発展させていきたいかというアンケートの答えをリアルタイムにビジュアライズするプロジェクト。ビジュアライズ部分をoFで制作。大まかなシステムとしては、ダウンタウンに3台のkioskと呼ばれるアンケート集計用のボックスが設置され、ボタンを押してアンケートに答える。その結果がSNS経由で美術館に送られ、リアルタイムにビジュアライズされるというもの。こちらに、プロジェクトの写真がいくつかまとまっている。



この作品はMakerFaireに出品されていたもので、早坂氏のプロジェクトではないが、とてもかわいらしかったという事で紹介してくれた。Tangible Interactionというスタジオが出展したもので、これもoFで作られている。
インタラクティブ演奏モードとオート演奏モードがあって、ビデオのように光って音を出す。

ofxBullet – sweet RagDoll Demo from AKIRA on Vimeo.


こちらは趣味で作ったプログラム。
ofxBulletというアドオン(ゲーム用の3Dで動く物理演算エンジンBulletをoFで使えるようにしたもの)を作り、それを用いて制作。衝突判定を繰り返して、永遠続いていく。単純だが、見ていて飽きない感じ。

Floating Unknown from AKIRA on Vimeo.


こちらのプログラムにもBulletが利用されている。
透明なスライム状の物体(Bulletのオブジェクトでできている)の中で衝突判定を繰り返している。こちらも見ていて飽きない。



後半は、ライブコーディングを披露。
今回のツールはofxLua + GLEditer(from Fluxus)。音源提供pootee さん。
普段は出来上がったものしか見ないので、その場でコードが書かれて実装されるのを見るというのはなかなか新鮮な体験だった。

比嘉了

続いて、フリーランスプログラマーで、アーティストとしても活躍してい比嘉了氏



山口情報芸術センターYCAMにて行われた、梅田宏明(振付家/ダンサー)のダンス公演で使われた映像周りのソフトウェア開発に参加。

当初の要求はとにかくハイスペックだったのだそう。
比嘉氏は、パーティクルの動き、数、密度などをダンサーの梅田さんが操作しやすいソフトウェアを作って、それを使ってもらう事で作品の細部が決まって行く、という方法で作られたのだそう。
上のビデオはインスタレーションの舞台裏のドキュメンタリーとなっている。こちらも充実した内容になっているので気になる方はぜひご覧頂きたい。


同じく、YCAMにてダンサーの安藤洋子さんの新作インスタレーション制作にも参加。
制約の中で体はどういう動きをするか、というような問題意識が根底にある作品。

システム的には、kinectを使って、制約の装置をつくったのだそう。kinectをたくさん使っていたので、kinect祭りと呼ばれていたらしい。
制作は大炎上で、東京と山口でデスクトップ共有しながら開発を進め、仕上げで山口入りして完成させたとのこと。そのかいあってか、展示は盛況で、子供たちの反応がとてもよかったらしい。



CBCNETでも紹介した、『TINY RIOT!』の開発にも参加。
iPhoneのセンサーを利用し、振ると音が出て同時に映像の録画をし、激しい質感の動画ができるiPhoneアプリだ。

特徴としては、
・フラッシュをたきながらカメラで撮影するとフリッカーのようなものが発生する
・スピーカーから出た音をマイクが拾い、アプリ自体でハウリングがおこる
という二重のフィードバックによって、激しさを加速させている。
また、音量の変化がフラッシュに同期していて、そこだけでもストラクチャーとして面白い。と語る比嘉氏。
最近やった仕事の中で一番気に入っているとのこと。
実際にiPhoneアプリをゲットして体験してみて頂きたい。


他にも、比嘉氏自作のoFアドオンを紹介。
ofxUIKit
oFでiphoneアプリを作るときのインターフェイス周りの実装を簡単にしてくれるアドオン。

ofxNodejs
node.jsというサーバサイドjavascriptの環境をofで使えるようにしたもの。ブラウザ上のマウスをoFの画面上で共有できたりする。

GitHubにいろいろソースがあがっているので、興味のある人はチェックしてみてほしい。

真鍋 大度+石橋 素

CBCNETでも度々登場する真鍋 大度氏+石橋 素氏。新しいメディアを生かした広告やミュージッククリップ制作、またアーティストとしても活躍している両氏。


二人でoFを使って制作する時は、まず石橋氏がクラスをつくって、真鍋氏にパスし、実際のプログラムに組み込んでいくという流れで作っていくらしい。
oFはマナーが統一されているので、分担してコードを書いても、説明無しでコードを見てすぐ実装できる、という点で優れている、と語る石橋氏。
おかげで、最短コースで開発ができるとのこと。




まずは、pointsという作品について。エアガンで肖像画を打ち抜くという作品。当初はエアガンを使って、立体造形をしようとしていたらしい。

キネクトで三次元の距離情報から人のシルエットの輪郭線を抜き出して、その輪郭線上を1秒間に24発打てるエアガンで打ち抜く。
また、あえてプログラム的に面白そうな事に挑戦してみようということで、とられた頂点を巡回セールスマン問題をつかって、最適な経路を計算して、その経路の順にそって打つという事をした。

制作の手順としては、まず、石橋氏がバックエンドの部分(真鍋氏が遊べるキャンバスのようなイメージ)を作って下地を整え、真鍋氏にパスするという流れで作っていったそう。
石橋氏はこのためだけにofxAirgunというoFのアドオンも作成した。



続いて、YCAMで3月に展示された「particles」について。
CBCNETのこちらで詳細に取り上げているので、チェックしてみてほしい。
この作品でもoFが活躍していた。



続いては、やくしまるえつこ『ルル』のPV。
真鍋氏はビジュアルプログラミング、石橋氏はロボットアームのシステム周りを担当。

模型と映像をリンクさせるために、模型のマスクが必要なのだが、なんと、7200フレーム分手動で作っていったのだそう。本当はスキャンによるマスク作成を考えていたが、締め切り5日前で、上手くいく保証がなかったので、手動で確実にできる方を選んだ。手動マスク作成用のソフトまで作り、大人4人掛かりで2徹して完成させたらしい。
手動のマスク作成だと、ロボットの動きを変えられなくなるので、次回は、スキャンに挑戦したいとのこと。



最後に、このoFイベントのホスト、田所敦氏の顔をtwitterからハックする実演が行われ、会場をわかせた。結構痛いらしい。

まとめ

今回のイベントは、oFを使った様々なプロジェクトの実例、また具体的な仕組み、実装の裏話等、貴重な話を聞けるよい機会となった。
ustreamの記録も残っているので、詳細を知りたい方はこちらをチェックしてもらいたい。

予想以上の大反響でイベントは入場規制がかかってしまったが、今後のopenFrameworks Tokyoの活動、またアーティスト達の積極的な活動も楽しみにしたい。


Report by Tadahi


Information

openFrameworks Tokyo v0.01
http://openframeworks.jp/

2011年7月15日(金)18:00-22:00 @西麻布Bullets
料金:1000円(1ドリンク付き)

出演:
真鍋大度 + 石橋素 (4nchor5 la6)
比嘉了 (structor.jp)
早坂あきら (Nerd)
Dennis Rosenfeld (happyfamilylife.net)