現在スペイン・バルセロナで武者修業中のCBCNETスタッフ、ヤンツくんから届いたスペインレポート。(彼の滞在ブログもチェックチェック。)



スペイン出身の有名なアーティストと言えばピカソ。そのピカソの作品をコレクションするピカソ美術館の目の前に最近オープンした(らしい)Disseny HUB (DHUB)という先進的なデザインのためのギャラリーとラボが併設されたスペースがある。そこで開催されていた展示及びデザインの試みが非常に興味深かったのでご紹介。



開催されていた展示及びワークショップ、併設されているラボは”Fabrication Laboratory”というくくりの基での活動で、最近世界中に広がりつつある”パーソナル・ファブリケーション”というムーブメントの実践と言える。

”パーソナル・ファブリケーション”は簡単に説明すると「ほぼなんでも(自分で)作ろう、ほぼなんでもプリントしよう」的な考え方。その活動は1998年からMITでスタートしていて、現在のテクノロジーによって開発された3Dプリンタや切削機など、3Dプリンティングの技術を駆使して自分が欲しいハードウェアは自分で作ろうという試みだ。

そして一般の人には敷居の高いそれらの高額&ハイテクマシンをオープンなものにして誰でも使えるラボをつくろうという動向が”Fabrication Labratory (FabLab)”。
パーソナル・ファブリケーションを手っ取り早く理解するには以下のビデオが分り易い

FULL PRINTED from nueve ojos on Vimeo.


日本にも最近FabLab Japanなるものが組織されて、まだ実際のスペースはないものの、いろいろと活発に活動している様子。

FabLab Japan
http://fablabjapan.org/



Full Print3D. Printing Objects
そのFabLabでの実践成果を発表する展示がいくつか開催されていたわけだが、本当に個人でなんでも作ろうとしている本気な姿勢に驚いた。以下の写真は”Full Print3D. Printing Objects”展の展示作品で、全て3Dプリンターで作られたプロダクト。








単なる複雑な構造体から家具、衣服、楽器、靴など。金属の加工も出来るようだ。そして…


なんと食べ物までプリンティング。これは素材を入れるだけでスイーツを作ることが出来るマシン。



医療関係にも応用が試みられている。

以前からパーソナル・ファブリケーションのことは知っていたけど、いまいちリアリティーがないといかその試みが身近に感じられずピンとこなかったわけだが、これらのプリントされた実物のオブジェクトを一同に目の当たりにして、近い将来全てプリントする日が来るのだなという実感が初めて沸いた。




(FAB)BOTS
同じフロアの隣のスペースで開催されていた(FAB)BOTS展は、IAACという今年開設されたばかりの建築専門の大学院大学に在学する学生の成果発表展。ここで紹介されていたプロジェクトはメタデザイン/メタクリエイション的な領域で、ある目的をもったデザイン/ものづくりのための3Dプリンタを自作しようという試み。

まだ実用レベルまでには達してはいないものの、どのプロジェクトもかなりユニークでありながら、それを実践するための緻密なリサーチと、高い技術力が伴っていて、非常にハイレベルな展示であったと感じた。以下、一つずつ詳細説明は出来ませんが、いくつか写真で紹介。


時間が経つと固まる特殊な溶剤を用いて構造物をプリントする試み。ディバイスを吊ることによってコントロールしようとする機構はHector:からアイデアを得ている。


海の砂で構造物を作るためのマシン


巨大なレンズを搭載して自走するこのマシンは、太陽光を利用して段ボールを設計通りに焼き切り、簡単に段ボールで構造物を作れるようにするための装置。災害時などに役立つマシンを想定して作られている。



自動でテトラポッド状に構造体を編んでいく装置。編む素材となるのはスーパーやコンビニなどで使われるいわゆる”レジ袋”を細く切ったもの。編み機の機構の部分はハローキティーのニッティングマシーン



液体の中に入れると固形化する溶剤を用いて立体物を構築するロボット。





他にも興味深い自作プリンタが数点。
ほぼどのマシンにもArduinoが使われて、Arduinoのポテンシャルの高さを実感。







一階ではRepair Manifestoというくくりでいくつかのワークショップが開催されていた。おそらく今年のアルスエレクトロニカのコンセプトと同様の試み。椅子をテープや結束バンドで修復したり、レンガの隙間をレゴブロックで埋めてみたり、割れたお皿をくっつけてみたり。(アルス・エレクトロニカのレポートはこちら


ということでDHUB、スペインに訪れた際は是非、ピカソ美術館と合わせてオススメしたスポットです。日曜の午後3時からのみ入場無料。

Disseny HUB
http://dhub-bcn.cat

Text and Photo by Takahiro Yamaguchi