CBCNETスタッフのtadahiです。
先日、Maker Conference Tokyo 2013に行ってきました!会場は日本科学未来館。
という事で、基調講演を中心に、写真と共にざっと振り返ってみたいと思います。

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基調講演1 マーク・フラウエンフェルダー

基調講演最初の登壇者は、「Make」誌を創刊させ、現在も編集長を務める、マーク・フラウエンフェルダー氏。
プレゼンでは、人々が当たり前のようにもの作りを行っていた20世紀初頭から、消費中心の時代を経て、またもの作りに関心を寄せるようになった現在までの変遷を紹介。またweb登場以降の新たなもの作りの動向についても話してくれた。

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1917-1918年、当時出版されていた雑誌。100年も前の雑誌なのに、現在の「Make」誌と同じようなトピックが扱われていた事に驚かされる。
無線トランスミッション、風力発電、無線でのボートを動かし方、未来の燃料危機に対してどう電力を使っていくか、使用済みの電球をどう再利用するか、、など

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1954年のテレビは現在に比べて70倍も高かった。
当時だったら、故障しても自分で直す人が多かったが、今では新しい物を買った方が早くなってしまった。消費中心の時代に移行した背景にはこういった要因がある。

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昔は組織でなければ高度なもの作りやができなかったが、現在ではweb上のリソースを使って個人でも研究開発ができるようになった。その例として、コーヒー好きのギークがハッキングして作ったエスプレッソメーカーを大手の企業が採用した例を紹介してくれた。

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最後にメイキングのスピリットについて話してくれた。
スコット ウィーバーさんという、ナイフ、接着剤、爪楊枝の3つの道具しか使わずに右写真のような作品を作る人がいて、


make誌に載せたいから写真を撮らせてくれ、とお願いしたところ、、


コスチュームを着用するから少し待ってくれと言われ、右下写真のような衣装で登場。。

こういった、ものを作ることのスピリットも持っているし、自分のパーソナリティにも妥協しない、また、他の人と共有できるできるようなものをつくっている、こういった要素がMakerにとっては重要なのではないかと話を締めくくった。

基調講演2 エリック・パン

エリック・パン氏はMakerのアイデアをプロダクトにすることを支援するオープンソースハードウェアのソリューションとサービスを提供するSeeed Studioを2008年、中国の深センに設立。プレゼンでは、「Indie Products:独立系の製品」と題して、Seeed Studio設立までの経緯や、インディペンデントなプロダクションの開発過程について話してくれた。

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最近は、arduinoのようなオープンソースの開発環境や3Dプリンター等の普及によって、全部イチから開発しなくても、以下のような4つのレイヤーを組み合わることで、スピーディーな開発が可能になった。
「Skin(皮膚)= 布、レザー、シリコン etc」「Skelton(骨格) = 3Dプリンター、レーザーカッター etc」「Guts(内臓)= arduino etc」「Soul(魂) = プログラム」

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昔は大きな組織でも開発に何年もかかっていたような事が、今ではインディペンデントなプロダクションでも数ヶ月で可能に。

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もの作りの変遷を、遺伝子の進化になぞらえて説明。
10年前が恐竜時代(巨大企業が力をもっていた時代)だったとしたら、今は小型の哺乳類(Maker)が力をつけていろいろなニーズに答えられるようになってきた。このことを、product 1.0 から product 2.0 への変化だ、とも語っていた。

最後に、日本のMakerとも積極的にコラボレーションを行っていきたいし、中国でのMaker Faireもよりよいものにしていきたい、と今後の展望を話してくれた。



以下では、基調講演以外で私が見たセッションと、展示についても簡単に紹介したいと思います。

「Makerのためのスペースとコミュニティ ー 作る、維持する」

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左から、岩岡 孝太郎(FabCafe Fab Director/Producer)、渡辺 ゆうか(FabLabKamakura,LLC)、高尾 俊介 : モデレータ(オライリー・ジャパン)


FabLabやハッカースペースといった、個人によるものづくりのためのスペースをよりよい形で運営、維持するにはどういった事に注意すべきか、といった議論を展開。

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このセッション中、清水淳子さんによる東京グラフィックレコーダーがリアルタイムに行われていました。学生時代、ノートまとめがうまい子がいたと思いますが、そのまとめ過程を生で見ているような状況。面白い試みでした。

「参加者駆動型イベントの未来 ー Makeからニコニコ学会βまで」

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左から、よしだ ともふみ(テクノ手芸部)、江渡 浩一郎(ニコニコ学会β実行委員会委員長/独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員)、田村 英男(オライリー・ジャパン)、高尾 俊介(オライリー・ジャパン)、城 一裕:モデレータ(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]講師)


「Make」と「ニコニコ学会β」という2つの参加者駆動型のイベントについて「空間と時間」「専門家」「スケール」といったテーマごとに比較し、互いの共通点や違いから話を発展。

「Makerのための新しい教科書を作る」

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左から、小坂 貴美男(東京都立科学技術高等学校 主任教諭)、阿部 和広(青山学院大学・津田塾大学非常勤講師)、田村 英男(オライリー・ジャパン)、城 一裕(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]講師)、小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]准教授、f.Laboプロデューサー)、高尾 俊介(オライリー・ジャパン)、久保田 晃弘(多摩美術大学教授、ARTSAT、FabLab Shibuya)、山下 明:skype参加(大阪府立藤井寺工科高等学校 電気系教諭)


Makerのための教科書を作るとしたら、どういう内容、形態になるのか、という事を考える為に、阿部 和広氏(青山学院大学・津田塾大学非常勤講師)、教科書作りを自身で実際に行っている山下 明氏(大阪府立藤井寺工科高等学校 電気系教諭)、Makerが学校の施設を利用できるようにする仕組みを考えている自身もMakerである小坂 貴美男氏(東京都立科学技術高等学校 主任教諭)、の話を聞き、教育という観点から議論を展開。

スポンサー展示「NUC HACK」

手のひらサイズなのに高性能なPC、インテル(R) NUC を使ってアーティストたちが作品を公開。

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NUC プラカード(立て看板)by 森翔太

いつでもどこでもプレゼンテーションができる!?プラカードを制作。
今回も森さんは独特の存在感を放たれておりました。

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こちらも、「NUC HACK」による、Rhizomatiksのインスタレーション作品

映像がドット化されて、球体にマッピングされるという構造のインスタレーション。

その他の展示
 

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ニッティングマシーン・ハックとグリッチニット

CBCNETでも以前紹介した、編み機をハックして、グリッチニットを作るプロジェクト。メンバーは、ヌケメ、菅野創、よしだともふみ(テクノ手芸部)、山本詠美(FabLabShibuya)。
7/16まで、Readyforにてクラウドファンディング実施中

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YCAMチームも展示で参加しておりました。

装着しているデバイスは、YCAM InterLab+安藤洋子 共同研究開発プロジェクト「Reactor for Awareness in Motion」にて開発されたもの。
本プロジェクトの詳細はこちら。(CBCNETレポート記事)

8月10日、11日には「Yamaguchi Mini Maker faire」も予定されているので、こちらもぜひ!




という事で、大雑把ではありますが、Maker Conference Tokyo 2013振り返らせて頂きました。
全体を通して印象に残った事として、2つの基調講演でもふれられていましたが、web上の豊富なリソースや、arduinoのようなオープンソースの開発環境、3Dプリンター、レーザーカッターの普及、FabLabやハッカースペースといったコミュニティができてきた事で、巨大組織でなければ高度な研究開発ができなかった時代は終わり、個人でもアイディアをプロダクトにできる時代になったという点。このような変化が、今後の「Makerムーブメント」にどう影響してくるのか、さらには、数年後の私たちの生活にどんな変化をもたらすのか、などなど未来についていろいろ考えるよい機会となりました。

カンファレンスの録画映像は、ustream、ニコニコ生放送(プレミアム会員のみ)に残っているようなので、詳しく知りたい方は、こちらのページのリンクからチェックしてみてください!

Information

Maker Conference Tokyo 2013
http://makezine.jp/event/mct2013/

日時:2013 年 6 月 15 日(土)
会場:日本科学未来館
主催:株式会社オライリー・ジャパン