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インターネットヤミ市のために、9月中頃にニューヨークへ行ってきました。ヤミ市のイベントレポートですが日本語では、千房けん輔による「white-screen.jp」、自分の書かせてもらった「Vice」。英語圏では「THE CREATORS PROJECT」「Hyperallergic」「Hopes & Fears」「Observer」「FUSION」などのウェブマガジンに掲載されているので、そちらを参考で。かなり反響多かったみたいですね。ついでにいろいろ回ったので、ヤミ市の会場でCBC-NETの栗田さんから「旅行記はどう?」とお話もあり、個人的な視点が多いんですが報告させてください。ネットを使って旅行を満喫できたので、みなさんの参考になればと。

文/写真:高岡謙太郎

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ウェブサービス&アプリ

自分は海外旅行の経験は数回あるけれどニューヨークは初。まず事前準備に情報収集でウェブサイトを巡回。美術館や店舗の情報は「Shift Japan」、生活感ある情報はブログ「ニューヨークの遊び方」、当日のイベント系は「Time Out New York」、最近盛り上がっている地域のブルックリンを中心に紹介する「Brooklyn Magazine」などなどを読んで予習。書籍では、海外旅行での定番の『地球の歩き方』を図書館で借りて持っていくのも良いですね。高城剛が選んだチョイ高めな店がピックアップされた『NEXTRAVELER vol.05ブルックリン』も面白い。これらの参考資料から、行きたい場所にGoogle Mapのピンを立てておくのが旅行前の支度です。

最近の飛行機は、なんと離陸後の機内でもインターネットに繋がる。時速1000キロで空中を移動しているので、衛星を使って通信をしているそうだ。ニューヨークの空港に到着後、宿泊先の友人宅でまずは乾杯。翌日、自分のiPhoneはSIMフリーなので、現地でSIMカードを調達。やはり国外でもインターネットに繋がっていないと不安でしょうがない。日本と同じように街中で使えるWiFiは滅多になく、空港やスターバックスなどのカフェなどでたまにあるくらい。通話とデータ通信できる一週間限定のカードを約15ドルで購入。購入時はクレジットカードではやたらといろいろ聞かれて手間がかかるので、支払いは現金の方が良いですね。スマートフォンがSIMフリーでなければ、海外向けのWiFiを借りるのも一案。とにかく路上でGoogle Mapが使えないと海外旅行はつまらない。

気になる場所が散らばる大都市では、Google Mapは必須。現在地からピンを立てた目的地までのルートを、最短の徒歩と交通手段で自動で割り出してくれる。これは旅の間、かなり重宝した。昔は紙の地図に行きたい場所を書き込んで路線も調べていたけれど、諸々手間が省ける。食事情報は「食べログ」に似た「Yelp」というアプリがある。あと、友人がiPhoneアプリ「UBER」でタクシーを拾ってくれて帰宅することも多かった。「UBER」は、現在の位置情報と目的地を送信するとタクシーが近くまで来てくれるアプリ。支払いもアプリ内に登録したクレジットカード番号で完結する。便利な未来だ……。

平日は友人が仕事でバタバタするのでおじゃまにならないよう、宿泊先をホステルに移動した。安く泊まれるので「airbnb」も話題だけど、素人が部屋を貸し出しているゆえにトラブルが多いと聞いていたので、確実に泊まれるホステルに泊まった。「Hostelworld」は、日程と都市名を入力して検索すればレーティングされた宿がリストアップされるサイト。予約も簡単で予約番号を控えれば簡単に泊まれる。実際にサイト内の評判通りで安心して泊まれた。

ギャラリー&スポット

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インターネットヤミ市以外にも目的の展示はいくつかあり、なかでも見逃せなかったのが、ポスト・インターネットアートを公園に展示する企画。それがCity Hall Parkで行われているパブリックアート展「Image Object」。顔認識の表示が付いた頭部の彫刻や、3Dプリンタで作られた岩石など7点が園内に設置されていた。街中の公園でこういった展示が行われているのは懐が広い街だ。この展示のテーマとなっているArtie Vierkantの「Image Object」の論文の訳文が、雑誌『美術手帖』の特集「ポスト・インターネット」に載っているので、作品の奥深さを理解したいなら御一読を。


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アートとテクノロジーのNPO団体「EYEBEAM」による展示「Re-Making Patterns」もオープニングにお邪魔した。3Dプリンタで作られた繊細なデザインの衣装が数点展示。のちのちSF映画などの衣装として活躍しそうな近未来的な作品をマネキンが身にまとっていた。オープニングパーティは賑わっていて、グリッチの手法で衣服を作るヌケメ君ジェフさんと合流して、ニューヨークで流行っているロブスターロールのレストラン「Ambrose」に移動。さっぱりして美味しい。この後、酔っ払って店に自分のデジカメを忘れてしまうんだけど、保管してくれた良い店なので、みなさん行きましょう。最近、東京にもロブスターロールの店が出来たので食べられますよ。


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デジタルアート専用のディスプレイ「Electric Objects」の展示会があり、会場となるレコードショップのラフトレードへ。まだ発売前なので初めて実物を拝めたんだけど、既存のディスプレイとの差異を考えてしまって、気軽に買える値段でないので買おうか迷いますね。今後、デジタルアートの閲覧や価値付けに一役買う存在になるのか気になるところ。関係者が20人くらいいて酒を飲んでワイワイしていた。ステッカーをいっぱい貰ったので欲しい人いたら連絡ください。


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New Museum」で会期中のAlbert Oehlenの展示。デジタルで抽象的なモチーフをあえて油彩で描いた作品が並び、どれも約2メートル四方のキャンバスで存在感に圧倒。この他にも、美術館は数件回った。割引で入館できる方法がいくつかあり、ひとつは窓口に一言言って体験として入れる美術館があるのと、ふたつめは曜日と時間限定で入れる美術館がある。「ニューヨーク 美術館 割引」などで検索するとリストが出てくるので参考にしてみてください。


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ハッカースペース「NYC Resistor」に、一般公開している日に行ってみた。怪しげなビルの4階の室内は、ハッカーらしき10人がノートパソコンを広げてキーボードと叩きなから雑談している。機材がいろいろと揃っていて、棺桶ぐらいの大きさのレーザーカッターなどがあった。日本にはハッカースペースがないので希少な体験だったが、自分は特に話すことが思いつかずにすぐに退散。他には、デジタルアートの学校「POWRPLNT」にも行ったけれど開いていなかった。


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ジン/ミニコミの聖地と言われる「Printed Matter」へ足を運ぶ。店内が印刷物で埋まっていて、いろいろ手に取ってみた。ネイティヴなアメリカ人にしか伝わらないような個人的な表現が多く、購入に至るものが少なかったが50ドルくらい買った。翌週が「New York Artbook Fair」だったので若干賑わっていた。他には、アナーキストが運営するジンのライブラリー「ABC No Rio」にも行ったけど、ここもプライベートな雰囲気。天井まであるデカい書棚にぎっしりと世界中のジンが詰め込まれていた。建物がグラフィティでぐちゃぐちゃに塗られていて危なっかしい感じ。


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ジン/ミニコミの即売会が行われている、オルタナティブスペース「Silent Barn」。ライヴハウスのような建物に約100人集まっていて、15個ぐらいブースが出展。なかでも目を引いたのがGifアニメをプロジェクションするブースで、その場で絵を描いたものを投影してくれる。他はイラスト集が多かったけど、黒人のレズビアンの記事をスクラップしたジンなどがあった。


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ブルックリンにあるコミック専門店「Desert Island」へ。店内はインディコミックを中心にアートブックなどを取り揃えた独特な品揃え。マンガのタブロイド誌「Smoke Signal」が無料で店頭で配られている。店長が自分で編集していると言っていて、いろいろなテイストの作家が参加していて非常に面白かった。


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遠いところでは、宿泊先のカップルと3人で美術館「Dia:Beacon」へ。ニューヨーク市内から特急の電車で1時間半ほど移動した駅にある。道中は海岸線沿いで景色も良く、伊豆まで旅行する感覚に近い。現代美術の巨大な作品を中心に作品が置かれ、2時間以内で全部観れるので日帰りにはちょうどいい。お得な入館料付きの往復チケットが特急の発車する駅で売っているので買いましょう。


クラブイベント

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個人的な趣味だけど音楽イベントもいくつか行った。エレクトロニック・ミュージックのポータルサイト「Resident Advisor」のイベント検索機能で調べておいたパーティ「Lost Soul 3 Year」へ。チケット購入者のみに会場の住所をメールするシークレットなパーティで、Google Mapを元にブルックリンの高級住宅の隅の方に移動すると、会場は廃墟のビル。入口でオンラインチケットをスマートフォンで提示して入場する。入口では楽曲のダウンロードコードを記載したフライヤーを配っているのも今っぽい。かなり広いルーフトップに出られて大勢が談笑している。タイムテーブルがなかったので出演者が誰が誰だかわからずだったけれど、割と賑わっていてニューヨークのローカルなテクノ・シーンを垣間見れた。アングラ!


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美術館の「Moma PS1」で定期的に行われているパーティ「Warm Up 2015」の最終日へ。チケットがソールドアウトする人気っぷりで会場内は満員。テクノ好きにとって新気鋭から古参までを取り揃えたラインナップが毎回素晴らしく、本日の主役はデトロイト・テクノの大御所Derrick May。アート好きっぽい30代が多かったが、満員過ぎて動きづらく盛り上がりに欠けていた気がする。


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ドイツの写真家のWolfgang Tillmansが、なぜかDJをするのでブルックリンのクラブへ。クラブシーンとは密な写真家で、彼の撮った3メートル近い女性器の写真はベルリンの名門クラブ「Berghain」に飾られていて初見の時は唖然とさせられた。現在「Metropolitan Museum of Art」で展示されている、世界中の建築物だけを連続でプロジェクションする作品も興味深かった。店内は代官山Unitに似ていて満員で、ゲイを中心に盛り上がっていた。ティルマンスはドイツ人なのでミニマルテクノをプレイするかと思いきや、多分彼の青春時代に聴いていたであろうハイエナジーのみに絞ったプレイで、けっこうビックリ。


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インターネットヤミ市の前日は、なんと9月11日。世界中のハッカースペースやMaker Fairを行脚している高須さんと落ち合って、ワールドトレードセンターの跡地にも向かった。メモリアルパークには、ぼちぼち人々が集まっている。破壊された2棟の巨大なビルの跡地に巨大な建築物が建立されているかと思いきや、そこには巨大な穴に永遠と水が注がれるモニュメントがあった。何かあるようで何もないようなコンセプチュアルなモニュメントに圧巻され、思わず身震い。日本に比べて現代美術的な感性が日常に馴染んでいて羨ましく思えた瞬間だった。他にもいろいろ回ったけど、こんなところで。旅行中に活用できるウェブサービスをまとめた書籍を作りたいですね。他に便利なサービスなどがあれば教えて下さい。ではまた。