[フォトレポート] 梅田哲也、hyslom と共に船で大阪の水路をめぐる探検ツアー /「入船」マガジン出版&記念クルーズ
こんにちは。CBCNETスタッフのtadahiです。
先日開催された、TRANS BOOKS にも出店していた、「入船」マガジンの出版記念クルーズが12月8日、9日と大阪で開催されまして、わたくし、8日の昼と夜の回に参加して来ました。
という事で、当日の雰囲気や出来事など振り返りながら、フォトレポートをお届けしたいと思います!
最初に少し、このプロジェクトについておさらいです。
このプロジェクトは、アーティストの梅田哲也さんが中心となって、2015年からクルージングイベントとして、数回行われて来ました。
2015年「5つの船」の様子↓
5つの船 02 from 7つの船 2016 on Vimeo.
2015年「5つの船」は、5日間、日替わりのコースで、大阪市の水路から大阪湾へと回りながら、途中でゲストが乗船したりするような、実験的な水上ツアー・パフォーマンスだったようです。
こちらは、2016年「7つの船」の様子↓
7つの船 2016/12/11 from 7つの船 2016 on Vimeo.
2016年「7つの船」は、前回の「5つの船」を元に制作された、ナイト・クルーズ作品。水路でしか見ることができない大阪の街裏や工業地帯を巡りながら、道中に仕掛けられたパフォーマンスや展示空間を体験するというもの。
そして、2017年には、パフォーマンス・クルーズに加え、作家と水回りのリサーチに研究員として同行するツアーや、これまで録りためた音源を元にした街中でのインスタレーションとライブ・パフォーマンスも行われたようです。
これらのプロジェクトをまとめた本が今回出版された入船マガジンです。
この本は、夜のクルーズで一度は川に流れてバラバラに散らばったその小さな出来事の断片を、もう一度海の底からすくい上げてホッチキスで閉じたものです。黒い水の底への入り口として。入船。(「入船」マガジンより抜粋 by梅田哲也)
とあるように、プロジェクトの過程で起きた小さな出来事やエピソードが詰まっています。
参考資料
という事で、当日の様子を写真とともに振り返って行きます!
1便目昼ルート : 淀川〜大川〜天満橋
この日の1便目は、淀川〜大川〜天満橋を巡るコース。淀川河川公園八雲地区辺りを12:00に出発しました。
幸いにも、めちゃくちゃ快晴で本当に気持ちの良い日でした。
まず、この小型船YUZU号に乗って、大きい船まで移動します。
この船は、船の修理工の富永さんという方から譲り受けたものらしいです。
2015年からはじめたクルーズの作品の関係で一級小型船舶操縦免許取得し、 造船所に出入りしていたところたまたま船の修理工の富永さんからロシア産小型船”YUZU号”を譲りうける。(梅田哲也プロフィールより抜粋)
(ちなみに、「YUZU」は犬の名前に由来しているらしい…。)
最初は手探りで始めたプロジェクトだったそうですが、今ではメンバーの何人かが船舶免許を取得し、徐々にアップデートされてきました。
YUZU号に乗船する様子。
こんな河原の脇から小型船に乗るような体験をした事がなかったし、結構揺れるので、恐る恐るの乗船でしたが、そのスリリングな感じが冒険の始まりだー!!という気持ちにさせてくれました。
この小型船に乗る過程は、少なくとも3便目(17:00発)の方にはなかったので、貴重な体験だったなぁと後で思いました。
大きい船に搭乗すると、カイロとヘッドフォンが渡されます。昼間はそこまででもなかったけれど、夜は本当に寒かったのでこのカイロは身にしみました。
ヘッドフォンからは、梅田さんやYUZU号に乗っているhyslomの声が、道中のリアルタイム音声ガイド的な感じで聴こえてきます。
これまでの水辺のリサーチや制作でのエピソードを聴くことができました。
船の中の様子です。
写真中央の土器は、アーティストの九鬼みずほさんが作ったもので、大阪がかつて海だった頃の土で作られたものらしいです。ちなみに、九鬼さんは埋蔵文化財の仕事をしている関係で、日頃からそういう土と関わりがあるようです。
参考:九鬼みずほ個展「野焼土器」レポート記事
この土器の中で、淀川の水を沸かしていました。後で、その水を濾過して入れたコーヒーを飲んだのですが、その感想は後ほど…
もう一台の小型船YUZU号に乗っているhyslomの方は何をしていたかというと、9月に発生した大型の台風21号の被害で投げ倒された川岸の木を拾ったりしながら進んでいました。
順次、「木が2本取れました〜〜」という様なレポートがヘッドフォンから流れてきます。
本船の方では、このコース上の水路で取れたタチウオを焼いて食べたりもしました。結構あっさりとした味わいでした…
毛馬こうもんの前あたりで、どこからともなく楽器の音が聞こえてきました。
キョロキョロあたりを探すと、陸地にトロンボーンを吹くサウンドアーティストの米子匡司さんが登場(写真左の方)。
YUZU号の方でも同乗していたアーティストの阿児つばささんがサックスを吹いていて、水上と陸土を舞台にセッションのような事が始まりました。
ちなみに、この寒さの中、hyslomのうち2人、上半身裸の状態でしたww
水門が開くのを待って、毛馬こうもんをくぐりました。普段、道路の信号待ちくらいしかした事がなかったので、水門の開閉を待ってくぐるみたいな体験はとても新鮮でした。そもそも川って船と免許があればこんなに自由に進んで行けるのか!!という驚きと発見がありました。
この日は大阪の此花地区のアートプロジェクトに参加している中学生たちが何人か乗っていました。
3月にも開催予定のパフォーマンス・クルーズ作品で、彼ら彼女らの今回の体験が何らかの形でフィードバックされるかも!?との事です。
上の映像の最後の方に、「ギャアアー」という叫び声が入っていますが、これは、水門が開いた直後で、水滴がポタポタ滴っていた為で、その瞬間の中学生たちのテンションを物語っています。冒険感が一層深まった瞬間でした。
水門の上げ下げで水位が変化した様子です。
気づいたら、水位がどーんと下がっていて、びっくりしました…!
川の水位変化を船の上で体験することなんてそうそうないので、とても不思議な気分だったし、視点の変化でこんなに見える世界が変わるんだなぁと素朴に感動しました…
川の壁に生えてる雑草を発見した時に「この雑草は一日の半分川の中にいて、水位が下がった時に呼吸しているのかもしれない」という風な話を梅田さんがしていて、ああ、この視点からだとそういう発見や想像ができるのかと、しみじみ感動しました。
冒頭でお伝えした、淀川の濾過した水で作ったコーヒーを(希望者のみ)飲む時間がついに訪れました!
味は….、案外、普通のコーヒーという感じでしたwww。
ちなみに、夜の便でも同じ様にコース上で採取した水で作ったコーヒーを飲んだのですが、かなり海に近づいただけあって、さすがに結構しょっぱかったですwww。
たくさんのカモメとYUZU号。
道中で、川に落ちてしまったボールを自力で取ろうとしていた子供達を発見し、急遽YUZU号が代わりに拾ってあげている様子です。
偶然の心温まる一場面でした。
YUZU号でhyslomが拾ってきた木々たち。
そんなこんなで、偶然と必然が入り混じったちょっとした冒険を終えて、無事、天満橋にたどり着きました。
この後、私はしばしの休憩を挟んで、3便目にも参加しました。
3便目夜ルート : 大正〜尻無川〜大正内港〜木津川〜大正
3便目の夜のルートは 大正〜尻無川〜大正内港〜木津川〜大正。
大阪ドーム前千代崎港を17時に出発しました。
辺りが暗くなり、夕暮れの空が綺麗な時間帯になってきました。
船の移動と光の変化と、冬の冷たい空気…感慨深いものがあります…
この便には、「入船」マガジンの編集を務めた、飯沢未央さんも乗っていました!
アーチ型の尻無川水門。この水門があったおかげで、台風21号の市内の被害がかなり抑えられたそうです。
夜の方もタチウオを焼いたり、
焼き芋が振舞われたりしました。
楽器の演奏隊が陸の方から現れて、船に乗り込んで来た時の様子です。
ロケーション的にめちゃ絵になる…。
夜のYUZU号の様子です。
(※炎はLEDと花火による演出です)
工場地帯の様子
こんな感じで、色々と仕掛けられた出来事が起こりつつ、夜の工場地帯を眺めたり、台風21号で沈んでしまい引き上げられたがボロボロになってしまった船に遭遇したり。
その合間で梅田さんから、工場地帯で知り合ったおじいさんの話や、無料で利用できる大阪市の渡船の話、水路に関するエピソードをきいたりなどなど。
そんなこんなで、18時半頃、再び出発地点の大阪ドーム前千代崎港に帰ってきました。
まとめ
昼と夜どちらも体験してみた感想としては…
昼の方は公園や郊外の風景の中で、最初にYUZU号で移動したり、水門をくぐったりという非日常的な体験が、小さな冒険という感じで、少年の様な気持ちになって楽しめました。
夜の方は、工場地帯、夜景、ボロボロの船といった要素に加えて、海に近い場所だと少し波があったりして、都会のダークゾーンに入り込む様な少しシリアスな冒険という感じがしました。
また、水を濾過してコーヒーを飲むとか、魚や焼き芋を食べる、楽器を演奏するパフォーマーが出現する、といった仕掛けは共通している事もあったけど、水路や時間帯が違うと見える風景も全然違うし、梅田さんが話す内容やハプニング的出来事も違ってくるので、それぞれで違う発見や面白さがありました。
まさに冒頭で引用した梅田さんの言葉「川に流れてバラバラに散らばったその小さな出来事の断片」を次々に見たり聞いたりしながら、浮かんでは消えたり消えなかったりする思考を巡らすような、そんな冒険のクルーズであったように思います。
という事で、「入船」クルーズをざっと紹介してきましたが、次回のクルーズが決定しています!
次回は、2019年3月28日、29日、梅田哲也さん作の夜のパフォーマンス・クルーズ。
今回のクルーズがフィードバックされた内容になるのか!?どうかはまだわかりませんが、ぜひ、未体験の方もずっと見ている方も、要チェックです。
詳細は公式サイトにて。
Information
「入船」マガジン出版&記念クルーズhttps://newfune.com/
twitter: https://twitter.com/7ships2017
2018年12月8日(土)
①12:00 淀川〜大川〜天満橋
②15:00 天満橋〜東横堀川〜道頓堀川〜大正
③17:00 大正〜尻無川〜大正内港〜木津川〜大正
④20:00 大正〜木津川〜堂島川〜中之島
2018年12月9日(日)
⑤6:00am 大正〜堺~大正(昼頃解散予定)
次回のクルーズ情報
夜のパフォーマンス・クルーズオーディオガイドと共に大阪の水路を巡る、パフォーマンス・クルーズです。
夜の大阪の裏側を眺めながら、日常と非日常が交差します。
作:梅田哲也
2019年3月28日(木) ⑥17:00~、⑦20:00~
2019年3月29日(金) ⑧17:00~、⑨20:00~
上り便 ⑥⑧
本町発、大正戻り
下り便 ⑦⑨
大正発、本町戻り
◉集合・到着場所
大正:大阪ドーム前千代崎港
本町:本町橋船着場
定員:25名
料金:3,000円(1ドリンク付)
<申し込み>/2019年開始(予定)
詳細はこちらより。
主催:7つの船実行委員会
助成:大阪市
Profile
梅田哲也インスタレーションやパフォーマンスの作品を国内外の美術館や劇場で発表したり、自然のなかでのサイトスペシフィックな作品を手がけたりする。2015年からはじめたクルーズの作品の関係で一級小型船舶操縦免許取得し、 造船所に出入りしていたところたまたま船の修理工の富永さんからロシア産小型船”YUZU号”を譲りうける。
https://www.siranami.com/
hyslom
加藤至、星野文紀、吉田祐からなるアーティストグループ。2009年から現在まで、山から都市に移り変わる場 所を定期的に探険する事で得た経験や疑問、人やモノとの遭遇を表現の根底に置いて、様々なプロジェクトを行う。遊びを通して風景、土地を知る行為「フィールドプレイ」を行い、映像・写真・パフォーマンス作品を制作。 その記録/記憶を元に、彫刻作品や舞台、映画の制作も行なっている。2015年から作業場の大家さんである、任氏と共に「任・ヒスロム鳩舎」として日本鳩レース協会に入会。レース鳩のワークショップ・展覧会なども行な っている。2018年11月よりせんだいメディアテークにて個展「ヒスロム 仮説するヒト」開催中。
http://hyslom.com/
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