この夏、絵を書くロボットを展覧会3つ分、作っていました。
センサの調整をしたりして機械が認識している位置と実際の位置をなるべく近づける、キャリブレーションという作業があって、そこに多くの時間を費やしました。

やんつくんが入居したアトリエが京都にあって、そこでほとんどの制作が行われたのですが、そこは古い小学校をアーティストに貸出している施設で、グラウンドは近隣の中学校のテニス部が部活しに来たり、消防隊員が訓練してたりと、わりと色んなことに使われているのですが、ある時幼稚園生が運動会の練習をしていました。
みんなでラジオ体操とかなんとか体操とか、前にいる先生の動きをみながら幼稚園生が真似しているのを見ていると、本当に下手くそでみんなバラバラの動きをしていて、本当に可愛らしいのですが、僕の持った主な感想は「あいつらキャリブレーション済んでねえな」でした。

ロボットを作っていると人間のことをロボットの構造で理解しようとしたりすることがあります。
子供は、大人ができるような細かい作業や動きができなかったりしますが、まだしっかりとした身体の使い方ができていなくて、フィードバック制御の訓練の最中というか、長い時間をかけた身体のキャリブレーションをしているところなのかなーとぼんやりと思いました。

最近ヌケメ君に誘われてカポエラに行きました。
先生の動きを真似しようと頑張りましたが、身体が固いのもあって足は先生の半分程度しか上がらないし、さっぱり足は回らず蹴りも決まらず、体操のできない子供を全然バカに出来ないくらいに僕の身体はキャリブレーション不足でした。

某展覧会のオープニングで大岡さんと会ってそんな話をしていたらイチローが如何に自分の身体のコンディションを把握しているか、人間は鍛えればそこまでいけるという話を聞いて、僕はむしろイチローは超高級なロボットアームみたいなもんなんかなーとか思ってしまいました。

ロボットのキャリブレーションはある程度以上は設計から変えないと精度上がっては行かないけど、人間のキャリブレーションは訓練でかなり精度が出るというか、そこは人間と機械の違いだなーと思いつつ、とりあえず精度!精度!って方向に行かないで、ヘタウマみたいなものとか味とかクセのある感じがコンピュータとかロボットに発生してくれば面白いなーと思うのです。乗り物の場合、クセのあるエンジンとかはよく聞くけど。
ただヘタウマな人とかは別に狙ってそれやってるんじゃなくて、がんばって描いてるけどそういうふうにしかならないって人が多いと思うので、僕は確信犯的にロボットにヘタウマ的な何かが発生することを期待しつつ、自分の設計で出来るだけ精度は出るように調整します。

というわけで展覧会が3つ進行しています。よろしくお願い致します。
ICC Open Space ~2016/3/6
21_21 DESIGN SIGHT 動きのカガク展 ~2015/9/27
茅ヶ崎市美術館 正しいらくがき展 ~2015/8/30