先日、某CV研究者の友人がベルリンに遊びに来ていて、ご近所のものづくり同盟の作品、Captured Desireの話していたところCV(コンピュータヴィジョン、画像解析のこと)の研究で同じことをやっている研究がある、というのを聞きました。その研究の論文がこちら。2011年のものです。
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もちろん制作を進めている時も似たような事例や先行事例を調べてはいたのですが、これは見つけることができていなかったものでした。この研究の面白いところはタイトルが「Face Reconstruction in the Wild」というもので最後に「in the Wild」ってなっているところです。どういうことか最初はわかりませんでしたが、研究者の彼曰く、基本的にこういった研究は予め研究者が用意したデータセットを用いて行われるのが一般的で、それに対してインターネットに転がっている整頓されてない画像を用いる、というポイントが「in the Wild」なのだそうです。

ただ、やはりやっている内容が完全にダブっているとはいえ、目的が違うのが面白いところです。
この研究
– 目的に合わせて用意された画像を使わない。
– ネットに転がってる表情やライティングの異なった画像を使う。
– それで如何に3Dモデルを作成するか
僕らのはプロジェクト
– システムを用いてエラーで遊ぶこと
– モデリングできる対象が人間の欲望を反映してると言えるのではないかという視点
– 進歩の早いテクノロジーの途中の状態の標本化

同じような処理をコンピュータにさせていても違う視点を与えることによって見えてくるものが違うという面白いと思います。なのでこれからは研究系の論文も色々漁ってみようかと思います。幸い、一昔前は論文は年会費の要るウェブサイトに登録すると全部見れるとかだったのが、最近は公開していることが増えてきているそうです。今気になるのはSkypeのリアルタイム通訳とかDeep learning系とか、あとはバイオ系はなにか面白いことができそうな気がします…


他の先行事例

Lorna-Barnshaw-Replicants-designboom-09
他の類似する事例としてはLeona Barnshawの作品があります。同様に123D Catchを用いて制作されているようで、そのモデリングの不完全さがフルカラー3Dプリントアウトされることによって浮き彫りにされている印象があります。
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またYuri PattisonのRELiable COMmunicationsという作品は2013年にロシアのチェリャビンスクに隕石が落下するという天災がありましたが、その後ebayでその隕石の欠片と称する石が販売されていたらしく、隕石の画像をebayのページより収集し123D Catchでモデリング、プリントアウトをして作品はPaddles On!で出品されたようで、僕は水野さんのブログから見つけたのですが、ちょっと引用すると

もともとの「石」が本当に隕石なのかどうかわからない.ここでは「隕石」かもしれないという情報だけで,その「石」は売買されている.そして,Yuri Pattisonはその「石」の画像から3Dモデルをつくる.ここではもともとオリジナルかどうかわからないものが,いくらでも複製可能な画像になり,それを使って,またいくらでも複製可能な3Dモデルをつくるわけである.その結果として,エディションが「3」と生産数を限定された彫刻(?)がつくられ,それがいくらでも複製可能な3Dモデルデータとセットでオークションに出品されて,価値がつけられようとしている.

ebayで売られていた石とプリントアウトされた自作の石を比較しているところが非常にうまいな~という感じで、これはやたれたー感がとても強い、妬ける作品だと思いました。

そういえばマテリアライジング展Ⅱのトークでひこひこパイセンに「あざとい」って言われたのが印象的でしたが、要はそのあざとさは実は作品のコアであってそれ故に、個人的に好きかと言われたら別にそうでもなかったJustin BieberやA BATHING APEをモチーフに使っているわけだし、揚げ足を取る様に意図的にテクノロジーから稚拙な部分を抽出しようとしているわけです。

あ、そういえば、文化庁の派遣制度の一年が完了しましたが、日本には帰らずもうしばらくベルリンに居ることにしました。