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"まち"のこと #06 with 寺井元一 (NPO法人 KOMPOSITION)

April 23, 2010
Shuzo Okabe
upsetters architectsの岡部修三によるコラム。第六回目はkomposition、マチヅ・クリエイティブを主催する寺井元一へのインタビュー

日本を離れて仕事をするたびに、同世代の友人の、政治に対すると言うよりは、もっと広い意味の世の中に対する意識の高さに驚かされることが多くあります。それは、同時に、日本人の無関心さに気付かされる瞬間でもあります。

今日友達と話したことが、明日には世界中へ広がって行くと言う時代。そんな、可能性に満ちた状況である今、"まち"に対するアプローチは、これまでとは違った結果に到達する可能性を持ち始めていると思います。

今回お話させていただくのは、NPO法人 KOMPOSITIONを主宰する寺井元一さん。
寺井さんは、"表現者に活動の場と機会を提供すること"を理念として、社会の新しい可能性を切り開いているひとりだと思います。

今回は、そんな寺井さんのルーツや、展望を中心に、広い意味での"まち"について、いろいろとお話させていただきました




Shuzo Okabe (以下S) :
こんにちは。寺井さんがどういう活動をされているのかについては、他の媒体でも数多く見てもらえると思うので、今日は少しラフな形でお話させていただきながら、寺井さんの思考の一端を伺えればと考えています。
CBCNETを見ている人は、勝手な想像ですが、広義にクリエイターと呼ばれる人、中でも若くして自分の道を探りながら進んでいる人が多いのではないかと思います。僕も25歳で独立して今に至るのですが、寺井さんは24歳で独立ですよね?今の時代、会社を作ること自体はそれほど珍しくなくなっている様な気もしますが、スタートとしてNPOを選ばれているってことに興味があります。そのあたりの経緯を聞かせてもらっても良いですか?


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左 : 新井 暁 (Satoru Arai), 右 : 寺井元一 (Motokazu Terai)


Motokazu Terai (以下M) :
高校生くらいのときから、自分の好きなものが、いわゆる「みんな」とズレてるなあと漠然と思ってて。まあ、(みんなと言うのを)わかりやすく言えば、マスって言葉になるのかもしれないですが。僕、最近もテレビを3年ぐらいみてなくて、というか持ってすらなくなってるんですけど。マスの媒体に対する違和感、そこで流れている情報に対する違和感が最初からすごくあったんですね。少なくとも、自分のまわりには、同じように違和感を持っている人が結構いるのにと思って、それってストレスフルな環境じゃないですか。
簡単に言うと、自分が良いと思っている音楽が全然世間で良いって言われていない。とか、そのアーティストが全然食えてないとか。まあ、それは後で食えてないってことがわかったのですが。言っちゃえばエゴだと思うんですが、商店街でオリコンチャートの1位から10位まで順繰りに音楽を聴かされたりとか、そう言ったことへの違和感。その違和感に対して何かしなくてはとは思って活動をスタートしました。そう言う意味で、ビジネス面の成功ってことを最初に意識したわけではなくて、むしろその逆のほうに動いていきたいという気持ちが強かったです。


S : その感覚はよくわかります。
僕も、そして僕のまわりにも同じように考えている人は結構いると思いますね。
ある意味今の時代的な考えなのかもしれませんが。

M : 良く言っていることですが、元々は政治をやるんだと言ってたことがあります。それも、政治をやりたいと言うよりは、さっきの違和感に対して、自分が何か変えたいと。そんなとき、ギターを持ったり、絵を描いたり、人それぞれの表現があると思うのですが、僕には何もなかった。唯一僕にあったのは、お受験で(学校に進学したこと)、せっかくなので、それを活かして何かできないかと思いました。自分みたいな価値観の人間がやりたがらないこと、それでいて自分みたいな境遇の人間がやれることって?と考えていって、消去法的に政治ではないか?と思うようになりました。
それで、一時期政治家の学生秘書をやったりすることになるのですが、そのときから別に政治は好きでも何でもなかった。あくまでも、そう言うルートを通ると何かできるのではないか?と思っていました。後でそれも違ってたと気付いちゃうんですが。

一同 :

M : 政治って、というか、多分政治だけではないと思うのですが、何かやろうとするとき、そのためにやらなければいけないことがあると思うんです。政治で言えば、例えば選挙。
こういうことをやりたいんだ、と言うことを実直に言っていれば、その結果選挙に受かって、やりたいことができる。それが理想だし、どうにかそうならないかなと思ってたのですが、実態はそうではなかった。選挙に受かるための活動が必要ってことに気がついて。それで、大学と大学院で、唯一興味をもって真面目に計量政治学というのを勉強するんです。

僕の場合、政治だって決めた所までは感覚なんです。ただ、それからのアプローチには、なぜか計画的なところがあるんです。計量政治学って世論調査の分析なんで......真剣に選挙のプロになろうとしたんですね。笑
ただ、選挙を学問的に分析していくと、僕は選挙に受からないと言う結果になってしまって。なんで政治の道に行かなかったの?と聞かれると、受からないからって言う。もちろん自分がやってきたこととか、やりたいことは変わってないと今でも思っていますが。これまでは、政治の方に話が行くのがいやで、あまり積極的に話してきてはなかったのですが。


S : その不思議なバランス感は一貫してるような気がしますね。笑

M : 真面目なのか、不真面目なのか、その境界のようなことを、真剣にやりたいと思っています。
KOMPOSITIONのスタートは、大学院生の時代で、はじめは緩く、同じ様な考えを持つ友人が集まって、風営法を考えるイベントをクラブで企画したりしていました。実際の現場を見ないで、あれこれ言われてもってことで、政治家にDJしてもらったりしたりして。

いろいろやって一年くらいたった頃、僕は大学院二年目になり、みんな就職して行ったりして。漠然と将来に向けて考え始めました。これもよく話していることなのですが、僕はそのころ、サラリーマン金太郎的な感じで、誰か支援者が現れて3億円くらい持って来てくれるから大丈夫だと言い張っていました。結果、来なかったのですが。笑
そうなってくると、自分で何か会社的なものをやるしかないかなと漠然と思いはじめて、いろいろと調べていくと、NPOと言う仕組みはもしかしたらぴったりなのではないか?と言うことに気がついたのです。自分の方向性も利益だけを求める訳ではないので、普通の会社って自分にはしっくりこなくて。NPOの業界はまだ今よりさらに未成熟だったので、そのときからやってたらトップランナー的なものになれるかも、とか言う計算もあったり。


S : その判断に関して興味深いので、もうちょっと聞かせてもらえますか?

M : 多分、政治を勉強したこともあり、たまたま、というか自然にNPOってこととは接点があったのかもしれないです。これは言うべきかわかりませんが、投票行動ってことを勉強していると、圧力団体が重要だと言うことがわかってきて、つまり政治に影響を及ぼしているのって日本なら農協とか医師会とか、そういう団体だったりするんです。政治家になるよりも、その政治家を動かす圧力団体になれないかなと。ただ、それもお金の問題で続かないなと思っているときに、海外ではNPOが圧力団体的な活動をして実際に社会を動かしていることが多いと言うことがわかって。


S : NPOって聞くとボランティアと言うイメージがあって、なんだか逆にうさんくさいな、とか思ってしまう自分がいたのですが、これを機会にいろいろ勉強してみたら、きちんと経済活動なんだと理解できました。そう言う意味では、寺井さんの思いと、経緯はもっとも自然なNPOの成り立ちなのかなと思いました。
そこまでの話だけだと、ある程度ありそうな話なのかもしれないですが、寺井さんのストリート感と言う共通言語が、僕が今日ここにきてお話させていただいていると言うことの一つでもあると思うのですが。NPOとストリート感と言う、僕の中と言うよりはおそらく世間的にも相反する様なものが同居しているバランス感のルーツってどこにあるのでしょうか?

M : 多分ですが、良いなと思ったことを、仲間と世の中に広げていきたい。それに名前を付けたらNPOだったと言うことじゃないかと思います。例えば、世の中にNPOを作りたいって人とか、世の中に良いことをしたいんですって人がいたとして、その人たちが、グラフィティって良いじゃんって言うところまでは距離があると思うんです。僕は、NPOがやりたい訳ではなくて、グラフィティっておもしろくて、新しい表現が生まれてきてるっていう感覚があって、ただ、現状として、それでは生活ができないから、みんなやめていく。それは絶対に違うなって。あと5年でも10年でも続けられれば絶対違ってくるとおもってて、そういうことが可能になる装置が作りたかった、それでNPOを作った。そこは根本的に違いますよね。


S : たしかに。グラフィティって話が出たので、KOMPOSITIONでの活動としてリーガルウォールに関係することで、少し聞いてみたいことがあります。
リーガル/イリーガルって話があると思いますが、イリーガルであるから面白く見えるものが、リーガルになったとたんに、面白くないとか。そもそもNPOでエッジの効いたものをフックアップしていくときのジレンマでもある様な気がするのですが、そのあたりはどう考えていますか?


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リーガルウォール / JUN INOUE
M : 広いテーマでどこから話すべきか難しいですが、基本的な考えとしては、リーガルもイリーガルもはじめはない。それでOKかなと思っています。僕自身はどちらも好きなところがあるし。なんにせよ僕は、例えばストリートアートのような活動がもっとできるインフラが作りたいなと思っています。これは、KOMPOSITIONに託していることでもあるのですが。 昔で言うとインフラと言えば、道路とか、ダムとか、生きていくためのインフラだったと思います。今よく言われる情報のインフラってこともあると思うのですが、僕が考えているのは意識のインフラかなあと、インフラであるというのは、すごいイベントを一発屋的にやるのではなく、何度も繰り返し続くことで、人々の意識を変えていくことだと思っています。繰り返していくとき、リーガルであることが今の渋谷では必要なんですね。対行政とか、対警察とか。でも究極としては、リーガルである必要はなくて、みんなが、善か悪かと言うと善と言えるものであれば、リーガルになっていくのでは?と思っていて、そう言うようにしたいなとも思っています。なかなかうまく言えませんが。


S : 意識のインフラって言葉良いですね。僕が建築に関わっているのもインフラとしても面白さを求めてだと思っているのですが、今の時代、目に見える形ではなく、情報でもない、インフラが大事だと思っているので、すごく共感できますね。


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リーガルウォール / HITOZUKI


M : 僕は歴史小説が好きで、べたべたすぎて恥ずかしいのであまりいつもは言わないのですが、大久保利通的な感じだと思っています。。詳細は省略しますが、ごますりでも、いやなことでも、最終的に何かやりたい、やらなければってことがあるのであれば、それを実現できるようにやるべきと言う様な考え方と言うか。
ストリートの世界で語られる「FUCK THE POLICE」とかそういうアピールも理解できないこともないのですが、風営法とか、グラフィティとか、そこを本気で社会と繋げたい変えたいと思ったら、例えば警察とただ衝突してるだけじゃ絶対だめだと思ってて。そこを変えたいのであれば、まず警察に影響力があるようにならなきゃ、なんなら自分が警察に入って出世したほうがいいんじゃない?と言う方法論ですかね。それが、結果リーガルって手法とつながるような気がします。

S : 同感ですね。アウトローになることが目標ではなくて、本当にやりたいこと、本当にかっこいいことをやるために、ポジションをどう整えていくか、が大事だと思っています。


M : あと、リーガル/イリーガルの話の前に、ぼくは、そのものに価値があると思っています。例えば、インディーズのバンドが、メジャーになるときに、ファンが離れるとかって、リーガルで行われるグラフィティがつまらないみたいな意見と似ているところがあると思うんですが、ぼくにはその感覚はわからない。別にインディーズであることに意味を求めている訳ではないので。
面白い話があって、あるグラフィティライターに、こう言われたことがあったんですね。リーガルだかなんだか知らないけど、自分の方が良かったら上から描くしって。つまり僕らのやってるリーガルウォールも、イリーガルと同じ目線で扱うからと。そういう扱いって良いなと思っています。リーガルだからイリーガルに上から書かれたくないとか全然なくて、同等に。そう言う意識でずっとやっていきたいですね。




S : ちょっと話は変わりますが、僕らは、建築をデザインしながら、ハードにたよる限界と、ソフトの可能性、正確には、建築のハードとしての可能性をあるところで信じながら、ソフトによって、そのハードがかわっていくと言う様なことに興味があります。そう言う意味で、寺井さんの考えに共感できる部分が多いのですが、そう言った"まち"へ興味、アプローチの原点を聞かせてもらえますか?

M : 率直なところ、「まちづくり」にはあんまり興味がないんです。「まちづくり」だと、まちにいる大量の人の、平均値を作っていく、誰もが納得できる角が全部とれた活動をやる気がして、遠ざけてました。
僕らの活動って、何かしらいまだ知られざる表現を世に出すってこと、花でいうなら日陰の花に光を当てて咲けるようにしたいってのが目的だと思っています。どうすれば、できるだけマスなところへ、オルタナティブなものを認知させられるかと言うことを考えていく中で、まちの外壁がマスそのものとの接点だとしたら、そのむき出しになっている接点にアプローチすることが、一番てっとり早くて、効果的かなあと。汚れている壁に絵があったら少なくとも喜んでももらえるかなと。それは自分でもできそうかなと。それが結果的にリーガルウォールだったのだと思います。
そう言う意味で、はじめは壁と言う意識だけだったのですが、だんだんまち全体に興味が広がっていった感じだと思います。これは、KOMPOSITIONと言うか、個人的なことかなと思います。壁だけじゃなく、公園の一角だけじゃなく、まち全体と付き合って自分なりのまちづくりを切り開けるんじゃないか、そういう感覚でまちに興味があって。エッジであることと、まちづくりを両立できたら、みたいなことを考えています。


S : とても興味深い話ですね。
ちなみに、これからの展望を聞かせてもらえますか?
これまでの話からすると、KOMPOSITIONと個人、それぞれのものがあるかもしれませんが。

M : KOMPOSITIONについては、これまでのイメージというのがやっぱりあると思います。内部では、本当に試行錯誤の繰り返しなんですが。ぼくは、もうちょっと前はKOMPOSITIONがいわゆる会社的な感じになってくるのかなあと思っていました。それが、去年の夏くらいからちょっと違うのかなと思いはじめて。結局、今は、組織と言う概念をなくして、プロジェクトの塊と言う考え方に行き着きました。メンバーも雇用じゃなくて全員フリーランス、お金については外注関係という。
理念はかわっていないくて、あまり知られていない様な表現をしている人に、活動の場所とか、機会とかを提供していくと言うこと。そのためにメンバーそれぞれが持っている得意技でアプローチしていきたいなと、それぞれが興味あることを個人の集合としてチームをつくってプロジェクトにしてはやっていこう、と言うことになりました。そうやって割り切ったおかげで、逆にスムーズに回るようになったと思っています。

例えば、今日一緒に来てもらっているサトル(新井 暁)とかは、もちろんリーガルウォールの初期から一緒にやってきて、SCENEというギャラリーの立ち上げと運営も一緒にやって、今は独立してen one tokyoをベースに、ギャラリー的なノウハウも持ってどんどん活動を立ち上げていってる。とか。それでいて今もリーガルウォールのリーダー格だったりして。
集まる人によって、どんどん変化していく。そう言う意味では、無目的ってことになりますね。笑

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新井 暁 氏が運営するwebサイト "RED ONE PRESS"



S : 個人としてはどうですか?

M : 言葉にすると恥ずかしいですが、個人的に宮古島が好きで。といっても特に関係がある訳でもなく、あるきっかけで飲み会に入れてくれた漁師がいて、その人がいつか独立すると言ってたんです。笑
日本国から。笑

一同 :

M : おっちゃん、文字の読み書きができなくて、魚しかとれない。東京の何がダメって、海が汚いって言ってて。「海」っていう価値観で一本筋が通ってる感じで。それで、目指すは独立。その心意気がすごく面白いなと思ってインスピレーションをうけて、他にも宮古島のその飲み会には好きな思い出がたくさんあるんですが、いつかその独立を可能にする様なノウハウを学びたいです。笑
それって、社会全体のリーガル/イリーガルを作ることでもあるかな?とか。まあ無理やり言いましたが。。

S : それは共感できないかも知れないです。笑

M : 具体的なところでは、最近は千葉の松戸に通っています。日本の地方都市って、価値観が少なくて、特にこの100年でかなり均一化したと思っています。東京みたいになりたいっていう意識が未だにあると言うか。でも、有名な会社、学校が良いって言う価値観、都市が良い、東京最高みたいなのは、東京から見たら崩壊していますよね。そして、どうやっても松戸は六本木や渋谷や新宿にはなれない。ヒルズも建たない。じゃあ、どうするべきか?と言う新しい道探しの取り組みをはじめています。この方向性なら、突っ走ってるのは松戸だよねって言われるような請負人になりたい、と。
今までと新しい物差しで街を活性化させる、まちづくりとクリエイティブの融合として、僕はその松戸で動いてるチームにマチヅ・クリエイティブ(http://www.machizu-creative.com/)と名前を付けています。

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マチヅ・クリエイティブ


S : 具体的にはどのような活動をイメージしていますか?

M : いくつかあるけど、今取り組んでいる一つは不動産です。
地方は空き物件がかなりあって、みんな壊して新しくて高いビルにしないと人は入居しないと言うサイクル、ある種の既成概念ができていると思います。建物を取り壊すのでなくて、古ければ古いほど、廃墟であればあるほど逆に価値があると言う風にできないかと思っています。きれいであれば制限がある。そして歴史やストーリーや裏話はない。制限があって改造できなかったり、使い方が決まっているものって面白くないのではと思っていて、地方でみんながどうでも良いと思っている場所ほど、むしろ可能性があるのではないかと思っています。リーガルウォールでやってきたことを、不動産でもやってみたいなあと。グラフィティの合法がリーガルウォールなら、次はスクワット(不法占拠)の合法をやる不動産屋になれたらなとか思って。東京では活動できないなと思っている、クリエイター向けのフリーダム物件。改造してOKと言うより、むしろ中をいじった方が価値が上がるみたいな発想で。
あとは、空き地を使ったイベントや、PR活動等を軸とした、地域活性化みたいなことですかね。


S : 意外ですが、僕らのテーマと重なる部分は多いです。
僕たちが活動を始めたとき、いわゆるリノベーションとか、デザイナーズマンションとか、そう言った浮ついたフレーズがちょうどもてはやされはじめた時期でした。リノベーションって、本来価値を転換して、新しい可能性を見つけることに意味があると思っているのですが、実態として起こったのは、もともと価値のある場所へ実体のない付加価値を着けてお金儲けをすると言う、表層の操作でした。本来真剣に考えられるべき、価値が見いだせなくなってしまったこ所が置き去りにされてしまうと言う。
今日は省略しますが、僕たちが蒲田へ事務所を移したのもそう言った状況に対する意思表示であったりもします。蒲田でやりたいこと、やるべきことは、一通り経験して、心境の変化と言うか、できることできないことも良くわかって、さっきの話ではないですが、やりたいことをやるために、引っ越しを決めたのですが。僕らがやりたいのは、考え方が広がっていく様な、フォーマット作りなので。

M : なるほど。近い部分がある様な気がしますね。

S : 数十年かかってやる大規模開発も当然必要だとは思います。ただ、不動産的な視点に振り回されて、その存在そのものを疑わない様な開発ではなくて、もっと自然な、自発的な活動ができればと思っています。渋谷駅まわりのペンシルビルの有効活用とか、これまでも、いろいろ企画してみているのですが、結局、設計だけではどうにもならなくて、僕たちは広意義にデザインと言う言葉を使っていろいろな作戦を練っているところです。そう言う意味で、KOMPOSITIONさんの様な別の流れからの共感できる活動にはとても興味があります。


M : そう言う部分では、多分、おぎなえる部分は結構あると思います。
ちなみに僕も、渋谷の初台で、街をいろいろ回ってみたけど、なかなかうまく行かなかった経験があります。根本的な問題は、そこに住んでいたりする地元の人々の危機感の薄さかなと思ったんです。渋谷、東京というのは、究極的な弱点として成功体験を忘れられないと言うことがあると思います。なかなかすっぱりと新しい時代に進めない。もしかしたら、いずれ東京で新しいと思っていたことが、全部古くなってしまう様な時代が、あり得るのではないかと思っています。そうなってしまうと、不動産的な話を飛び越えて、町内会をもう一度全く違う形で作るためにどうするかとか、そう言う話にさえなる様な気さえします。結局、まちを作っているのは人なんで、そこにいる人の気持ち・価値観が重要だなあと。

S : 結局は人なんですよね。当たり前のことを、どれだけ真剣に考えるかってことかなと。
ただ、考えるまではできても、実際に行動に移せる人ってほんの一握りだと思います。あと、繰り返しになりますが、バランス感もある。そう言う意味で、寺井さんの今後には興味があるし、すごく期待しています。

M : ありがとうございます。多分計算しているつもりが、計算できていないいろんな部分の力でこうなっているのかな?と思います。何ですかね?

Satoru Arai : 寺井君が作っている土台の上でみんなが暴れている。それが良いのかも。

S : その感じって面白いですよね。管理されているものはわかりやすいけど、そうでないもののほうが、結局は面白いことはよくありますよね。

M : 今のKOMPOSITIONは、企業体としての成長を割り切ったことで、今の組織があると思っています。それがよいか悪いかはわからないけど。正々堂々と、活動としてピュアなものをやりたいです。そう言う意味で、ボランティアのボランティアはしたくないですね。自分の価値観で、良いと思うことをやれたら。
例えるなら、溺れている人がいたら単純に助けにいきたい。そのきもちを説明できないのと同じで、細々数値で評価とかそう言うのってややこしいかなと。溺れてたら助けたい。ただ、それだけの話に近いかな。後は僕一人じゃなくてチームになってる、周りのみんなの補正が効いてくるのかなと。それがバランス感なのかなあ。どうなんだろう、わからないな。笑

S :ぜひ、なにか一緒に形にしてみたいですね。
今日はお忙しいところありがとうございました。


2009年末@KOMPOSITIONオフィス




寺井元一/Motokazu Terai
1977年兵庫生まれ。政治学を研究する大学院時代にKOMPOSITIONを設立。アートからスポーツまで、知られざる新たな分野を見つけ出しては、公園空地やビル壁面を活用して活動の場を提供するプロジェクトを運営している。横浜・桜木町のグラフィティ描き変えプロジェクト「桜木町 ON THE WALL」、ストリートバスケ大会「ALLDAY」など多数を展開。現在、まちづくりとクリエイティブの融合を目指す「マチヅ・クリエイティブ」を進行中。

http://komposition.org/
http://www.machizu-creative.com/

※「マチヅ・クリエイティブ」が手がけた松戸の"MAD WALL" Projectのレポートはこちら。 http://www.cbc-net.com/article/2010/04/mad_wall.php

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