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"まち"のこと #04 with Kamata Hiroshi (EARTHBEAT) 前半

April 8, 2009
Shuzo Okabe
upsetters architectsの岡部修三によるコラム。第四回目はゲストにKamata Hiroshiさんを迎え"音楽"と"まち"について。

音楽とまち。
ひとは古くから、音を奏で、歌を歌い、共に時を過ごしてきました。
あるときは祈りであり、あるときは宴であり、あるときは政治であり、あるときは宗教として。
そんな、紐解くには膨大すぎる歴史の中で、「昔、"クラブ"というカルチャーがあってね。」なんて言う話をする日が、そんなに遠くないのではないかと、思わざるを得ないほど、ここ数年の変化は大きいと感じています。かつては世界一レコード店がある街と言われた宇田川町で、レコード袋を持った人を見かけることは珍しいことになり、いくつかの重要な"クラブ"が長い歴史に幕を閉じました。

そんな中、お話しさせていただくのは、EARTHBEAT RECORDSのKamata Hiroshiさん。
カマタさんは、愛媛県松山市在住、DJ、FMのパーソナリティ、レコード店の運営、レーベル業、音楽評判家として活躍されています。その活動の歴史は、音楽だけでなく、カルチャー全般におよんでいて、カマタさんなくして、今の松山のカルチャーはあり得なかった、といっても過言ではないと思います。
時代が急速に方向転換しているように見える今、"音楽" と "まち" をテーマに、改めてお話しさせて頂きました。


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EARTHBEAT RECORDS店内


Shuzo Okabe(以下SO) :
ここ数年いろんなことが言われてきましたが、昨年あたりから、レコード屋はますます減少し、若者のクラブ離れは一層加速していると思います。そのこと自体は、一概に良い悪いと言う話ではないと思いますが、僕自身、そういったものから受けた影響は計り知れないので、複雑な気持ちではあります。
今日は、そういう背景を前提に、カマタさんの活動についていろいろお話しさせていただく中で、カマタさんなりの"音楽"と"まち"について考えていることが、伺い知れるようなものになればと思っています。

まずは、僕自身カマタさんのことを知るきっかけとなった、FMのことですが。

Kamata Hiroshi(以下HK) :
自分がラジオに関わるようになったのは90年代初め頃で、それまで80年代は普通に洋楽のヒット曲を聴いたり、ロカビリーやパンクやニューウェーブとかなんでも聞いたりして、80年代後半になって、ヒップホップだレゲエだクラブ・ミュージックだって感じで盛り上がってきて、そこから遡るように様々なルーツ・ミュージックと出会って探求するようになって。で、90年代に入ってからは自分と同世代、もしくは少し上の世代の人たちの日本の音楽がとても面白くてなってきて、もう外国産の音楽より圧倒的に共感持つようになった。例えば、ソウルセットとか、スチャダラとか。電グルとかフリッパーズとかもそうだし、オリジナルラブ、スカパラ、UFOとか90年前後に一斉に出てきて。そういった音楽がほとんど地元のラジオでも紹介されていなかったのに驚いて、とにかく自分の好きなものを自由にかけてみようと思った。

SO :
当時高校生だった僕は、何となく、洋楽みたいなのを聞きたいんだけど、どれも何か違うってしっくりきてなくて、ある時、友達に勧められてラジオを聞いた瞬間これだ!と思いましたね。今思うと、あれがFMという間口の広いもので成立してたっていうことが本当にすごいことだし、素敵なことだなと思います。 あのラジオが松山の若い人に与えた影響ってかなり大きいと思いますね。
特にインターネットなんてほとんどなかった時代なので、今みたいに、情報もなくて、エアチェックしては繰り返し聞いて、曲名をメモしたり。

HK :
特にソウルセットやスカフレイムスは本人達と知り合う以前からただただカッコイイと思って、ひたすらラジオでかけたり、クラブでかけたりしてた。それはもう布教活動のごとく。
あとはオザワ君(小沢健二)とか、UAとか、フィッシュマンズとか、ブッタブランドとか、クボタタケシのミックステープとか、いま聴いても彼らは間違ったものを作っていなかったんだなと思えるね。
それから、スカイラーキン(というレーベル)の山下さん(*1)と出会ってリンクするようになって、パーティとか、ラジオのDJ MIXの企画とか、次々といろんなことが実現していった。刺激的だったな。

SO :
僕なんて、今でもそのときのDJ MIXのエアチェック音源全部持ってますよ。覚えてるだけでも、KING 3LDK、FORCE OF NATURE、俊美さん(渡辺俊美)とか。あと、なんといっても、クボタさんですかね。

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エアチェックのテープ


HK :
あれは、クボタ自身のリアクションも良かったしね。東京でやればもっと多くの人に聞いてもらえるというのは確実なわけだし、もっと話題にもなったとも思うけど、それが愛媛のみでオンエアされて、しかもNONSTOPで、一年間毎月なんて(*2)。でもその"EXCLUSIVE"感こそが僕らのやりたいことだった。

SO :
いま聞いても当然ながら、カッコイイですね。ラジオを意識して選曲している感じも。

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24 HOUR PARTY PEOPLE(DVD)
HK :
さっきの、まちのことって話だけど、山下さんで意識したって言うのは大きいかもしれない。山下さんも長崎っていう地方出身者の一人だから、その土地土地で生まれる独自のシーンとか、県民性と関連した音楽や文化について常々関心を持ってる人で。[24 HOUR PARTY PEOPLE]って映画あるじゃない?マンチェスターの。「松山ってああいう感じじゃない?」って言われた。
デトロイトテクノとか、ブリストルサウンドとか、めんたいロックとか特定の地名が音の呼び名について来る感じ。いや、別に松山ハウスとかって聞いたことはないけどね。笑


SO :
笑。独自のシーンができていることは事実ですよね。

HK :
面白いことに、四国4県でもそれぞれ全然違う。例えば、ジャマイカの音楽でも、松山は瀬戸内海に面しているからか、穏やかで、どちらかというと、ロックステディやスカやカリプソとか緩めの音が好まれるし、高知だと、ダンスホールみたいなイケイケのがウケたり。もちろんそう言う音楽がかかるパーティやバンドが地元にいるってことは 大きいと思うけど、それだけじゃないと思うね。
以前、北海道から来てた子がブリストル系のサウンドや重厚なダブを好んで聴くようになっていって、やっぱり寒いところから来てる人は冷たい音を嗜好するのかなって(笑)
でも、ホントにジャマイカのレゲエとブリティッシュ・レゲエでも音の質感は全く異なるし、伝わっていく過程で地域の風土や解釈が加わっていく感じは面白い。

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LIFE AT SLITS
SO :
山下さんの話がありましたが、僕は、スリッツを体験した訳ではないのですが、これまでいろんな所で話を聞いたり、一昨年出た本を読んで思うに、結局今のクラブということを超えて、そこにしかない情報がありそうな感じとか、そこから派生していろんなところに繋がってそうな感じとか、インターネット以前にしかあ り得なかったような熱気が、魅力なような気がしています。長く活動されているカマタさんからみて、今のクラブの現状はどうですか?




HK :
どうだろう?今はあまりにも細分化されてしまって、難しいね。
松山に限って話すと、パーティも自分たちとその周辺しかやってないって言う時代もあって、
クラブも無いから、どこか空間を借りて、その日だけのワンオフクラブとして開催したりして。
自分はロンドンに憧れてたから、本を見て、廃墟みたいなところにサウンドシステム持ち込んでいるのを真似したりとか。あとは、洋服屋の店員とか、そういった音楽に興味がある連中がよく遊びにきてくれてたし、そこにくるお客さんも、クラブに行く為の服をショップに買いにいったりとか、そういう良い相乗効果があ って。今そういった繋がりを求めるのはちょっと難しいのかも。

SO :
山下さん、スリッツとくると、青山のMIX(*3)に辿り着くと思うのですが、僕が知っているちょうど2000年になる前くらいのMIXでも、かなりそう言った感じは薄れていましたね。
もちろんそう言った中でも、端々に垣間見れたものが今の自分を形成していることは間違いないですし、やっぱりそういったものを求めてしまったりもします。

HK :
いまのウチらのまわりに関して言えば、おとなしい人が多すぎるね。別に暴れろって訳ではないけど。
昔はダサイ格好では遊びにいけない、みたいな気持ちがどこかにあったような。もっと見た目が今より解りやすかったかもね。今は、ファッションと音とが結びつかなきゃおかしいとかは思わないかな。もしかしたら、今も一部ではあるのかもしれないけど、記号としてのファッションは単にコスプレになってくるよね。モ チロン、ルードボーイ風に正装?してスカやスキンヘッド・レゲエをプレイしたりすることへの憧れは一生なくならないけど。

SO :
カルチャー的なこともそうですが、今は、危なっかしい感じとか全然ないじゃないですか。その危なっかしさがカッコイイって言うのは少なからずあるのかなと思ってて。悪いことじゃないと思いますが、クラブというものが一般化して少しずつ意味が変わってきてますよね。

HK :
話はちょっとそれるけど、高知のクラブとか朝5時に、そこら辺のバーに行く感じでふらっとお客さんが入ってきたりするからね。早起きして来たのかって(笑)
生活の中にクラブに行くっていう習慣が普通にあったりして、それは理想的な形ではあるよね。
県民性もあると思うけど。

SO :
松山ではそう言う感じはないですか?

HK :
全然違うかな。きっちりパーティとして告知しないと集まらない。
あと、若い世代があまり増えてなくて、一方で10年以上前から遊びにきてくれている人もいたりしてどんどん平均年齢が上がっていってる。
話は戻るけど、例えば、ちょっと前だったら、他県で街のレコード屋に行って、置いてあるレコードやフライヤを見れば、その街のシーンの様子とか何となくいろんなことが解ったりしたんだけど。
今はネットがあるからか、ローカル色というかその辺の違いもなくなってきてるね。

SO :
たしかに。それは、音の話だけではないですよね。

HK :
まさに。
愛媛の松山以外の街でも画一化されてる。新居浜とか、宇和島とか、八幡浜とか、いろんな所に行ってるけど、とにかく均一化されててびっくりするね。同じファストフードに、ファミレスに、ショッピングモール。どこいっても同じものがある。で、ショッピングモールにはいっぱい人がいるのに商店街はガラーンとして どんどん寂れてる。個人でやってる専門店とか古くからあるお店が淘汰されていってて。
本当にどこの地方都市も同じで、地域性みたいなのはどんどん希薄になってる。

SO :
それは僕もいろんなところに行くたびに感じています。
こういう仕事をしている以上、しょうがないと言うことでは済まされないなと思っていて、向き合っていきたいと思っています。

HK :
ささやかな抵抗を続けていきたいね。
レコードだって買う人が少なくなっているのは事実だけど、自分たちのスタイルを持って続けたい。
もちろん店を続けることは大変だけど、意欲を失わない限り続けていきたいよね。

SO :
ちなみに、ネットと実店舗の違いってどう捉えてますか?

(次回へつづく)


shuzo02_05.jpgKamata Hiroshi (EARTHBEAT)
http://imag002.exblog.jp/

DJ / 音楽評判家
クラブDJとして長いキャリアを持ち、クボタタケシとのパーティ[Hottest Neo Classics]や、Ska Flamesが主宰する[Down Beat Ruler]、EGO-WRAPPIN'のLiveツアー etc。各都市のクラブ、ライヴ会場にて積極的に選曲活動中。
「カリブ海発世界経由混血抵抗音楽集」と題したMIX-CDシリーズ[Hottest Hits Outernational](EARTHBEAT)を毎年リリース中。
ライターとして、TOKYO No.1 SOUL SET,THE ZOOT16,RUB-A-DUB MARKET,EKDなど
多数のアーティストの公式プロフィール編集、インタヴュー、ライナーノーツ、レヴューを担当、
コラムの連載や自身が選曲を手がけるラジオ・プログラムなど、あらゆるメディアを駆使してグッドミュージックを紹介し続けている。 現在レーベル兼ミュージックストア [EARTHBEAT RECORDS]を運営中。

キーワード解説 by Kamata Hiroshi

(*1) 山下直樹 SKYLARKIN代表 http://www.skylarkin.com
88年より95年まで下北沢に存在したクラブZOO / SLITSにて企画兼代表を務める。そこから生まれたパーティや多くのDJ、バンドのその後の活動によって今も伝説的なクラブとして語り継がれ、2007年には伝説の証言集『ライフ・アット・スリッツ』(ブルース・インターアクションズ刊)が出版された。97年にスリッツの様々なパーティを音で具現化するレーベルとしてスカイラーキンを設立。現在もクボタタケシらの情報やマネージメントを中心とした業務を行っている。
「僕のラジオ・プログラム[STALAG](2000年)やZOOT SUNRISE SOUNDSの設立にも大きく関わっている人物。人と人を繋ぐ重要な役割を無意識に担ってきた人。知り合う前から雑誌[Barfout]なんかで語ってるのを読んで勝手に共感していたけど、知り合ってからはその考え方や物の捉え方に全面的にガツンとやられて、それこそ毎日長距離電話してました。」

(*2) ラジオ・プログラム[GT02 SOUND DIMENSION]にて99年4月より毎月最終週、約1年間(全11回)に亘ってオンエアされたDJクボタタケシのノンストップ・ミックス。タイトルは[BONJOVIJOVA](本人命名)で、毎回趣向を凝らした選曲だった。当時ミックステープ[CLASSICS]シリーズの大ヒットで全国のDJ、音楽好きに熱狂的フォロワーを生んだクボタ君の選曲がFM愛媛だけで聴けるという事件が話題を呼んで、オンエアを録音した海賊版カセットがなぜか渋谷の路上で売られていたりしたらしい。
「毎回クボタ君からMIX音源を送ってくるのがギリギリで大変だった。もう雑誌の編集者と作家先生みたいな締め切り前の攻防を繰り広げて(笑)。けど、結果として本当に面白い物を届けてくれたし、いま振り返ってもあれほど楽しい選曲がラジオの電波に乗ってた事実は忘れがたいです。」

(*3)88年にオープンし、2005年まで実に17年もの長きに渡って存在したクラブ。クボタタケシも川辺ヒロシもカリビアン・ダンディもラバダブ・マーケットもみんなここでパーティを繰り広げていた。「何度かプレイさせてもらう機会があったけど、ブースに立った時の興奮は忘れられない。音の良さも含めて特別な空間だったなと。」

Information

shuzo02_06.jpgSKATTER BRAINS / Valve-Tone Ska (EBCD-0002)
2006 Manufactured by EARTHBEAT RECORDS

「93年から活動してる松山のパーティ・スカ・バンド。
もう昔っから僕の主宰したパーティやライヴや、ラジオにも出てもらったりしてて。滅多にライヴもやらないし、このCDも長くやってて唯一リリースした公式音源というマイペースな活動で。ライナー・ノーツも書かせてもらったし、この作品をリリースする際に付けたレーベル名がそのまま店の名前になったりして自分にとって特別な作品でもあります。
スカってジャマイカで生まれてイギリスでブームになって、今は日本でも根付いてる。そうやって島国を渡って伝来してるところが面白いなと。四国も島国だからスカ好きなのかな(笑)」


SKATTER BRAINS presents
COOL WISE MEN Tour '09 "RUNDOWN"

2009/07/12/SUN
@Live House SALON KITTY- Matsuyama
Live : COOL WISE MEN, SKATTER BRAINS & more
Info : http://www.myspace.com/skatterbrainsfrommyc

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