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"まち"のこと #02 韓国ソウル 清渓川(チョンゲチョン)

October 1, 2007
Shuzo Okabe
upsetters architectsの岡部修三によるコラム。第二回目は、韓国ソウル 清渓川について。

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清渓川は、1394年に朝鮮王朝の都がソウルに定められて以来、都城の中部を地理的に分け、そして政治、社会、文化的に区分する象徴的な境となっていた総延長10.92kmの都市河川であり、ソウルの中心部を流れていた川であるが、20世紀の半ば、急激な経済発展の中、5.4kmにわたって高架道路がかけられ、ふさがれてしまっていた。
2002年のソウル市長選に出馬した李明博(イ・ミョンバク)氏が選挙公約の一つとして、「清渓川の復元」を掲げ、2003年7月に着工すると、わずか2年半と言う短期間で、実現してしまったその思い切りの良さと、スピード感には驚くばかりである。
では、川を復元するとはどういうことだろうか?実感がわかないと思うので、写真を見ていただきたい。


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参照 ) 清渓川復元事業 (ソウル市運営HP) http://japanese.metro.seoul.kr/chungaehome/seoul/main.htm

向かって左が、復元前の様子、向かって右が、復元後の様子である。要するに一度埋め立ててしまった川を、人工的にもう一度作ってしまおうということであるが、水深40センチ、毎秒0.25mの流れを維持するためには、1日12万トンの清水を供給する必要があり、15km下流のハンガン(漢江)から10万トンを、地下鉄のトンネル経由で2万トンを引いて、適正水質になるまで浄化した上で、上流、および、噴水や滝のかたちで途中から放水していると言う。ますます実感がわかないような気もするが、事実工事は、2年半と言う短期間で終了し、現在では、ずっと変わらず流れていたかのようである。


shuzo_02_03.jpg遊歩道には滝などの演出も随所に見られる。

最終的な計画では、「5.4kmにわたって覆っていたコンクリートと高架を取り払い、5.7kmの遊歩道を整備し、河川による街の分断を避けるために22本の橋(うち4本は歩行者専用)を建設すると同時に、2車線ずつの道路と歩道を商店街に沿った両岸に確保している。また、河川側にも幅1メートルの歩道を整備し、一定区間ごとに眺望スペースを設置し、河川と遊歩道へのアクセスとしては、階段17箇所と車いすでも利用できるスロープを7箇所用意している。」とのことだが、実際の復元された川辺は地上道路とはフェンスで遮られ、ほぼ垂直の5mの壁を降りて行く必要があり、隔離された空間とさえ言える。また、デザインコンテストで選ばれたと言う22の異なるデザインの橋は、お世辞にも良いと言えるものではない。


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お世辞にも良いとは言い難い周辺との関係性。
さらに、「全体は2km毎に3区域にゾーニングされていて、各ゾーンは生態基本計画に基づき、歴史、文化、自然の3つの大きな時間軸に沿って計画されていて、上流ゾーンは歴史と過去がテーマ、中流ゾーンのテーマは文化と都市、下流ゾーンは自然と未来がテーマ」だというが、誤解を恐れずに言うなら、そんなことはほとんど意味をなしていないし、気に留めている人さえもいないのではないかと思う。

しかしながら、結果として川辺には驚くほど多くの人が歩き、集い、水と触れ合う、親水空間が生み出されていた。また、橋の下は、デザイナーの意図を外れて、単純に日陰として人々が集う場所として機能しているようであった。
これらは、とても興味深い現象である。


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大人も子供も一緒なって水と触れ合う様子が印象的。 / 橋の下で涼む人々。


"まち"のデザインというのは、そこに関わる人々が自由に利用してはじめて完成する。多くの人にとって、いわゆる"デザイン"そのものはそれほど意味を持たないのだ。目に見えない、多くの要因。複雑に絡み合うそれらを、如何にデザインしていくか?それは、当然、建築家や、都市プランナーだけの領域ではない。そう、"まち"は、あなたの新しいクリエイティブを求めているのだ。

現在、東京の渋谷においても、渋谷駅の開発にともなって、渋谷川を復元しようと言う活動は様々なところでおこなわれている。あなたのクリエイティブを試してみてはどうだろうか?


*)渋谷川復元プロジェクト関連リンク

港区ポータルサイト
http://www.city.minato.tokyo.jp/kurasi/kankyo/kangaeru/mizukaigi/index.html

シブヤ経済新聞
http://www.shibukei.com/special/105/index.html

渋谷川ルネッサンス
http://www.shibuyagawa.net/

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