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"まち"のこと #05 with Kamata Hiroshi (EARTHBEAT) 後半

June 19, 2009
Shuzo Okabe

※前半はこちらから

Shuzo Okabe(以下SO) :
ちなみに、ネットと実店舗の違いってどう捉えてますか?

Kamata Hiroshi(以下HK) :
ウチのレコード屋は、中古盤中心で数も少ないから一点一点のレコードに愛情を持ってて。ネットだと、不特定多数の人に売ることができるけど、何処か遠くの知らない人に高い値段で売れてもしょうがないと思ってしまうね。
青い物言いではあるけど。出来れば店に来てもらって、お茶でも飲みながら、野球の話とかしながら、選んだ1枚を買ってもらって、後からあのレコード良かったですって言う感想を聞いたりするのが理想だから。
ショップはより突っ込んでダイレクトにお客さんと触れ合える空間だからね。そうでないと、お店をやっている意味がないというか。
アマゾンとかの利便性は理解出来るし、利用することだってあるけど、そういったお店とお客の関係は皆無だから。もちろんネットを全否定するつもりはないし、ちゃんとネットだからこそ可能な表現をやれていればいいと思うし。ZERO(*1)とか店頭とネットの力の入れ方のバランス、ぶれない姿勢とか本当に素晴らしいなと。

SO :
あれはもう、立派な資料としても成立してますよね。

shuzo05_01.jpg
The Style Counchil /
Our Favourite Shop
HK :
前からよく言ってるけど、スタイルカウンシルの『アワ・フェイヴァリット・ショップ』のジャケットの感じ(*2)が自分の理想だね。店主の嗜好や思想が隅々まで行き届いてるような、店主自身が方向性を示す看板のような。
今はそう言う個性的な店や店員は確実に減ってるよね。







SO :
例えば、ここの店に来る時って、単に買い物に来るというよりカマタさんに会いにくるって言う感じなんですよね。
そういう人って結構いると思うし、お店の持つ意味でもありますよね。
ネットからくるデータの凄さって、やっぱりあると思うし、使い方によってはほんとに便利ですけど思い入れみたいなのってやっぱり大事で、例えば、同じCDでもこれはここで買いたいって言うのが僕にはあります。

HK :
確かにね。マッシブアタックをZEROで買うのと、大型店で買うのとなんか違う意味があるって言うか。
ここに来てもらえれば解ると思うけど、レコードを単に音が出るものとだけ見てる訳ではなくて、ジャケットの質感とか、匂いとか、ギャラリー的な空間にしたくて。レゲエやソウルのコレクターとか、最終的に7インチ至上主義に到る人が多いけど、自分がLP盤を好きなのはそう言うことかなと。

SO :
ちょっと話を戻して、最近のカマタさんの活動を見てると、エリザベス・コール&小沢健二による、映画『おばさんたちが案内する未来の世界』の上映会とか、THE ZOOT16の[CLEAN UP BABYLON]など、社会に対する問題提起的な要素が多くなってきているように感じます。
その辺りについてはどうですか?
shuzo05_02.jpg 店内に張られた「おばさんたちが案内する未来の世界」のポスター

HK :
その辺りのことは言葉で説明するのは難しい。
でも、実感としては確実にある。

SO :
確かに、今は、いろんなところで今の社会構造に限界が見えてきていて、価値観の転換期に差し掛かっているという実感はありますね。

HK :
なんか、いろんな仕組みの裏側が透けて見えてくるよね。
政治でも、経済でも、メディアでも。
別に裏を暴きたいとか言う気持ちはないんだけど、システム一つ一つに何の疑いもなく従うのはね。よく言われてる地デジの話とか。

SO :
今日うちの実家でも話題になってました。笑

HK :
地デジ対応じゃないテレビを持ってることが悪いことみたいに洗脳される。まだ2年もあるのに。
CDのチャートとかも、CDを売るためにメディアをいかにコントロールするかっていうだけの話だから。
別に、毎日テレビも見るし、世間から目を背けているつもりはないけど、コレがそんなに売れてるのか??って。
売るための露出だけならまだしも、チャート自体の信憑性まで怪しく見える時代。

SO :
よくありますよね。世間、というかマスコミが騒いでいて、実感のないものって。
音楽雑誌とかって、取材というか、もうみんなプロモーションって言っちゃってますもんね。
良いから載るってことではなくて、売るために載るみたいな。

HK :
何にしても、いちいち他人が作る流行やスタイルを追いかける側に回ると本当しんどいよね。
そう言うのは、スーパーマーケット的なショップに任せておいて、ウチらが辿る道は、自分のスタイルで、
共感してくれる人に向けて発信していく作業。決して閉ざしてはいけないけど。

SO :
ほんとにそうですね。
少し話は変わりますが、段々歳を取ってくると、クラブみたいなとこからは離れざるを得ない状況になるってことを、何となく理解できるようになってきたのですが、そういうことに対して、地域に根ざしたコミュニティで活動を続けるってことは、意味を持ってくると思います。
クラブはクラブで楽しいですが、"クラブ"の面白さの本質はそこだけではないというか。

shuzo05_03.jpg
CLEAN UP BABYLON TOUR @ 松山のフライヤー
HK :
クラブには行かないけど、ライブには行くって人は結構いるよね。やっぱり夜中っていうのが、一般の人には圧倒的に難しい部分だから。昨年やった[CLEAN UP BABYLON TOUR]では、DJあり、ライヴあり、出店・展示あり、ラジオの公開トークあり、映像ありって感じでやってみたり、いろいろクラブという空間の使い方を考えてやってみてるけど。イギリスのパブロックみたいに、ただの酒場が公民館的な役割を果たしていて、そこから面白い音や人材が沢山生まれてたりするのも興味深い。そう言うクラブの使い方の可能性は探りたいよね。やっぱり、表現している以上は、マイナーが良いということでもなく、良いものは、自分たちのやり方で、より多くの人に共感してもらえるように、努力していく必要はあるよね。



SO :
それは大事ですね。そう言う積み重ねがコミュニティを作っていくのが理想ですね。これまでも感じてはいましたが、今日改めて、カマタさんの松山に対する思いを感じることができています。

HK :
年齢とともにその想いも変化してきてる。10代の頃はできるだけ早くここ(松山)から脱出したい、ロンドンに行きたいとかって思ってたのに、ある時期からここにいて、ここで表現したり、ここから逆に東京に向けて発信することに意味を見出すようにいつの間にか変わってきた。
別に、ここの主を気取るつもりはないけど。どんどん面白い人に前面に出てきてほしいな。
鋭い感性を持った若い子と出会っても毎年確実に東京とかに出て行ってしまうのはツライところだけど。
こっちも育てるなんて上から目線でもないけど、折角面白い感性を持った子と出会えて、クラブや店に通ってくるようになって良い感じになってきたのに、卒業したらいなくなるってことを何十回も体験してるしね。
もちろん状況が許せば若い内に何処にでも行ってみた方が良いし、自分の眼で確かめてくるのが一番だと思ってるけど。

SO :
そろそろ(東京に)出て行った人が(年齢的に)戻ってきたりって言う時期なんですかね。
散々種は蒔いてきましたからね。

HK :
(笑)今日こうやって岡部君と話をしているのもその一つだと思うし。
『未来世紀メキシコ』(*3)の2人が帰ってきてパーティやったりするのも自分も含めて松山にいる彼らの同世代にも刺激になってるし、既に帰ってきて何かを始めてる人とかもいたり。

EKD (未来世紀メキシコ) Live @ Room Bar 下北沢 07.6.22

SO :
僕も最初はそんなに松山がどうとかってなかったんですが、外に出てしばらくしてから改めて、地元の良さを実感してきましたね。
今は情報も、コミュニケーションも、どこにいてもそんなに変わらないし、物理的な距離ですら近づいている感があるので、そう言った意味でも、地方の方が面白いことっていっぱいあるような気がします。

HK :
ここで自分がやってることって、みんなが愛媛に帰ってきたら、当たり前のようにそこに店があって、立ち寄って近況を話する。
携帯(番号)とか知ってる仲じゃなくても、何年ぶりかに会って、何でもないことを話せる。
そう言う場所って考えると、レコード屋以上の空間になってるかも。


SO :
あそこ(店頭)に飾ってあるEKDのCDとかは、ここ(松山)で生まれたものですよね。

shuzo05_EKD.jpg
EKD 1st album "PARA TODOS TODO"
HK :
うん、あれは、正に松山で作ってたからね。
1 そう言う感じが音に出てるよね。
あの、音に内包されてるパワーは凄いね。

SO :
僕もあれを聞いたときは嬉しかったですね。
イケちゃん(EKD)と、コウヤンと、松山で何かやりたいねって言って行動に移したことが、
ほんの少しだけでも、きっかけになってるようで。
そんな感じで、いろんなことが繋がって、生まれていけば良いですね。

HK :
みんなが何か作品を作らなきゃいけないってことでは全くないけどね。

SO :
そう、それぞれの方法で。

HK :
そんなこと言ってて、明日にはウチの店が無くなってたりね。

HK/SO : 笑

(おわり)

2009.02.21@ EARTHBEAT RECORDS店内にて


shuzo02_05.jpgKamata Hiroshi (EARTHBEAT)
http://imag002.exblog.jp/

DJ / 音楽評判家
クラブDJとして長いキャリアを持ち、クボタタケシとのパーティ[Hottest Neo Classics]や、Ska Flamesが主宰する[Down Beat Ruler]、EGO-WRAPPIN'のLiveツアー etc。各都市のクラブ、ライヴ会場にて積極的に選曲活動中。
「カリブ海発世界経由混血抵抗音楽集」と題したMIX-CDシリーズ[Hottest Hits Outernational](EARTHBEAT)を毎年リリース中。
ライターとして、TOKYO No.1 SOUL SET,THE ZOOT16,RUB-A-DUB MARKET,EKDなど
多数のアーティストの公式プロフィール編集、インタヴュー、ライナーノーツ、レヴューを担当、
コラムの連載や自身が選曲を手がけるラジオ・プログラムなど、あらゆるメディアを駆使してグッドミュージックを紹介し続けている。 現在レーベル兼ミュージックストア [EARTHBEAT RECORDS]を運営中。
さらに自身の音楽的嗜好をデザインに反映させたブランド[Subversion]を準備中。

キーワード解説 by Kamata Hiroshi

(*1) 下北沢DISC SHOP ZERO (http://www.discshopzero.com/)
全てにおいて理想的なレコードストア。

(*2) "Our Favourite Shop" by Style Council(1985年)
このアルバムのジャケに映ってる架空のストアこそ究極の理想。
嗜好と思想を商品やディスプレイに反映させ前面に押し出している。
シングルの裏ジャケでこの店の全景が見えるものもある。

(*3) 未来世紀メキシコ(FZMX) http://www.myspace.com/fzmx
東京REBEL MUSICセレクター次世代クルー。
あちこちのライヴに出演し話題のEKDとDoc.Koyamantadoの2人が松山出身。

Information

shuzo02_06.jpgSKATTER BRAINS / Valve-Tone Ska (EBCD-0002)
2006 Manufactured by EARTHBEAT RECORDS

「93年から活動してる松山のパーティ・スカ・バンド。
もう昔っから僕の主宰したパーティやライヴや、ラジオにも出てもらったりしてて。滅多にライヴもやらないし、このCDも長くやってて唯一リリースした公式音源というマイペースな活動で。ライナー・ノーツも書かせてもらったし、この作品をリリースする際に付けたレーベル名がそのまま店の名前になったりして自分にとって特別な作品でもあります。
スカってジャマイカで生まれてイギリスでブームになって、今は日本でも根付いてる。そうやって島国を渡って伝来してるところが面白いなと。四国も島国だからスカ好きなのかな(笑)」


SKATTER BRAINS presents
COOL WISE MEN Tour '09 "RUNDOWN"

2009/07/12/SUN
@Live House SALON KITTY- Matsuyama
Live : COOL WISE MEN, SKATTER BRAINS & more
Info : http://www.myspace.com/skatterbrainsfrommyc


"IN THE BEGINNING"
73 minutes of madness
mixed by Kamata Hiroshi

URL : www.upsetters.jp/radio/

自身の音楽的思考をデザインに反映させたブランド"Subversion"サウンドトラックEXTRA CD第1弾。
テーマは「80年代ニューヨークのストリートを(勝手に)感じながら選曲したパーティミックス」

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