今回のアルス・エレクトロニカでは『REPAIR』(修理、修復、回復などの意味)をテーマに様々な展示、プレゼンテーション、ライブなどが展開されていた。
それぞれ展示に応じてさらにテーマ設定がされており、例えば、「Repair the Environment」(環境の修復)、「Deign for Repair」(修復のためのデザイン)、「Repair Our Society」(社会の修復)、「Repair Yourself」(自身を回復せよ)など。

また他にも、アルス・エレクトロニカの機関であるFuture Labが中心となった「Future Factory」では、Next Idea部門(新たなアイディアに関する活動や論文などを評価する部門)の展示、またアルス・エレクトロニカはHondaとの共同研究なども行っており、ASIMOやロボット関係の展示もあった。

これに加えて、ドイツとアイルランドの大学によるインターフェイス研究関連の展示、サウンドスペースでの音楽、音響関連のライブ、そしてもちろんアルス・エレクトロニカの受賞作品の展示など盛りだくさんな内容だ。
大きなテーマ設定のもと、様々な文脈からそれを細分化した構成となっている。
多くの作品が見られる一方、同一会場の展示ということもあり、全体のテーマとリンクして把握するのはちょっと難しい面もあった。

ここではその中でいくつか展示作品をザザッと紹介したい。
とりあえず、そのテーマごとに列挙してみる。




Design Repairでは新たなアプローチでの修復をテーマにワークショップ的に展開された。イスの修復、お皿の修復などなど。下の画像はJan Vormannによる街の破損された壁などにレゴを華麗に埋める作品「Dispatchwork」。
参考画像:


Repair Yourselfでは個人や自身に対してのアプローチした作品群。

“My husband and me, me and my wife” by Nico Ferrando
写真作品で、夫婦の体の一部が入れ替わっている。


日本から参加の真鍋 大度と石橋素による作品。
レーザーと蓄光シートを利用した作品。

下は自分が試した際のビデオ。



Repair the Environmentでは捨てられていくモノなどを新たな解釈をした作品たちが並ぶ。

日本からはOpen Reel Ensemblesなどでも知られる和田永によるBraun Tube Jazz Bandが参加。
アルスでは15回にもおよびライブを披露。
日本では来年でテレビとしての用が無くなってしまうブラウン管テレビを利用した作品。
初の海外講演として欧州を巡回中の彼だが、観客からは毎回大きな歓声と反響があった。




“Repair Our Society”では普段我々が生活している社会やデジタル社会などの変化がテーマ。カンファレンスでは「オープンソースライフ」と題したトークを展開。

“TELE-INTERNET”と題されたコーナーではAram Bratholl(chaos computer club:知らなかった団体だが、PRIXのコミュニティーを受賞してる)が中心となり、様々なインターネット文脈の人たちがプレゼンをした。
日本にはあまり入ってこない分野でもあり、全体を把握できてはいないが、たとえばインターネットカフェでイベントをやるspeed showなどもキュレートしてるのも彼らだ。

ネット・アート初期から活動しているOlia Lialina

夜に開催されたウェブ・サーフィン・コンテスト。JODIなども参加していて、なかなか濃くユルい雰囲気。


このコンテストは最後まで見れなかったが、割と単純でかつ面白い設定だった。
ルールは「指定のURLから指定のURLまで左クリックだけで辿り着きなさい。早く着いたものが勝者。」
キーボードはなく、右クリックもできない。
指定されたURLがまた面白く、アルス・エレクトロニカのウェブサイトからTELE INTERNETのサイトまで行けということだった。
何気に文脈では近くとも、google検索以前を考えるとインターネット上のリンクでは遠いこともある、と実感させられる設定であった。

その他にもGraffiti Research Labとしても幾度も紹介しているEvan Roth によるGMLのプレゼン。
彼のプロジェクトは様々なメンバーを巻き込みながらどんどん進化、拡張していっている。
最新のプロジェクトがGML(グラフィティ・マークアップ・ラングエッジ)。様々な入力ソースからグラフィティーのタギングをデータ化(XMLのような数列データ形式であるGML)し、それをネット上で共有し、オープンなデータとするプロジェクト。
以下はそのビデオ。

GraffitiMarkupLanguage.com (Trailer) from Evan Roth on Vimeo.


ウィーンを拠点に活動しハッカーとしても有名なJohannes Grenzfurthnerによる次世代ポルノについてなど、

なかなかついて行くのも大変な幅広い内容になっていて面白かった。

“Repair Our Society”で、もうひとつ興味深かったのはJon Rafmanによる映像。
彼のプロジェクト” Nine Eyes of Google Street View” はGoogle Street Viewに偶然写った不思議で個人的なシーンを集めたもの。展示自体はその写真を並べただけなのだが、片隅にあった映像がとても興味深かった。以下の写真を題材に失われた恋を追い求める青年の目線でエンドレスなフィルムを作り上げていた。

と、軽く並べてみました。
展示、ワークショップ、ライブなど数が多く、雑なものもあったりもしたが、見に来た人それぞれの視点や知識で違った解釈ができる展示ばかりであった。

では引き続き、他の作品や別会場の模様などを書いてみたいと思います。

※※
あと、早めに書いておく全体の印象ですが、
アルス・エレクトロニカは受賞者、出展者、関係者が全体の割合が高く、メディア・アート界の関係者総揃い的な印象、30年もやっているので、その業界のハブ的な機能を果たしているようでした。

その反面、土日に関しては地元の方が家族連れて大勢来ており、とても和やかな雰囲気。また、作品に立ち会っているスタッフはとても親切で、作品の説明なども丁寧にしてくれました。子供やおじいちゃんおばあちゃんが多かったのも印象的です。規模や街が大きすぎないゆえのバランスが取られている、先端とコミュニティーの共存、のようなバランスが印象的でした。

あと、定かではないのですが、入り口の警備員は出入りに人数を数えていたり、展示によってはセンサーで入場者数を計測していたような。もしそうであればしっかりした体制だなと思いました。どうなんでしょ?>関係者の方々


続く。

レポート3はこちら
https://www.cbc-net.com/log/?p=1866