先日、アルス・エレクトロニカの受賞作品が発表となりました。
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アルス・エレクトロニカの受賞作品を見ると、まったく知らない作品ばかりがズラーッと並ぶことが多く、新たな発見や価値と出会うことができるので毎年楽しみにしています。
いくつか作品を紹介しようと思っていたのですが、わりと画像だけだとわからない難解に感じられる作品が多い。
Golden Nicaの作品だと、ハイブリッド・アートでは Joe Davis (US)によるバイオ・アート的な「bacterial radio」、サウンドアートでは Jo Thomas (GB)による20分ほどのサウンド作品「Crystal Sounds of a Synchrotron」、インタラクティブアートでは都市と個人情報を題材にしたTimo Toots (EE)の「Memopol-2」などなど。

また時間があるときにこのあたりリサーチしてみようと思いますが、
今回はハイブリッド・アートでAward of Distinctionを受賞したGolan LevinとShawn Simsによる「The Free Universal Construction Kit」が少し意外(というか嬉しい)選出だったので紹介。


via Forbes

この作品は昨年FITC TOKYOにてGolanが来日したとき、プレゼンテーションの中で一番好きだった作品でもあり、息子のZen君のコミュニケーション能力がすごく高くてビックリしたのもとても記憶に残ってます。Golan Levinはカーネギーメロンの先生でもあり、自身もアーティストとして活動しており、openFrameworks界隈でも中心的な存在。


この作品の制作の発端になったのは4歳の息子、Zen君がオモチャで遊んでると、あるオモチャが違うメーカーのパーツと繋がらない、ということに悩んでいる様子を見かけた時のこと。例えばTinkertoys®とLego®は違うオモチャなので、接続は出来ない。でもこれとこれ繋げて違うものを作りたいとZenくんは悩んでいたようなのです。
以下のビデオがその様子。可愛らしいが主張がはっきりしてる。



そこでGolanも属するF.A.T. LabSy-Labが開発したのはそういした違うメーカーのオモチャをつなげることのできる80個のアダプター的なパーツ、その名も「The Free Universal Construction Kit」。(略して「F.U.C.K」ってネーミングが作品も表しつつ、彼らっぽい)
これで ”Lego bricks” を “Fischertechnik girders”に、”Krinkles”を”Duplos”につなげることができる(以下のForbesの記事より引用)、というもの。

今では比較的安価に手に入るようになってきた3Dプリンターが一般のひとにもそう遠くなく、アダプターの3Dモデルもフリーで公開している。

さらに詳しい解説は公式サイトにあるが、このForbesの記事で取り上げられていた点が面白かった。

Golanたちも懸念していたのはこうしたパーソナル・ファブケーションによって法律的な部分でメーカーから差し止めがかかる可能性だ。
実際に以前、映画Super 8に出てくるCubeをそっくりモデリングして Shapeways(個人間で3Dモデルや3Dプリントを販売できるサイト)にアップしたら18時間後にパラマウントからデータを削除する要請があったという。(本人の解説はこちらのブログ

元のオモチャのパーツをかなり詳細にデータ化してアップロードしていたため、Golanたちは弁護士などと話しながらプロジェクトを進めていたという。
Forbesの記事によると、オモチャの特徴的なデザイン部分でなく、機能面のオブジェクトを作っている限り問題はないという認識で、現在までにメーカーからの差し止めはないとのこと。

元の記事はこちら。
How A Geek Dad And His 3D Printer Aim To Liberate Legos

3Dプリンターが普及し、パーソナル・ファブリケーションがさらに日常に近づいてきたとき、既存の価値や法律との問題は今後も起きそう。
こうした作品を選ぶあたりアルス・エレクトロニカの特徴も出ているように感じられました。

The Free Universal Construction Kit

アメリカCM風の紹介ビデオ。