Kohei Yamao a.k.a BAKIBAKI Interview2
[Category:Interview]


  • 山尾光平 a.k.a BAKIBAKIインタビュー、第二部。(⇒第一部はこちら


    山尾光平。Doppel名義での日本各地でのライブペイントや、ナイキや楽天などへのアートワークの提供など、様々な分野を横断して活動するアーティスト/ペインターである。そんな彼の初となる個展「Stand by Me」が今年5月に開催された。ストリートアートという広義なジャンルの中を幅広い作風で横断的に活動する彼の過去から今に至るまでの回顧展となった。

    そして今回、個展を終えた今の心境や、展示に至った背景を聞くべく、今回はHuovaでも共演しているペインターのQuestaにインタビューをお願いした。一見、変態的にも見える一連のアイドルをモチーフにしたアートワークや“BAKIBAKI”ラインがアウトプットされた背景を聞くことが出来た。


    「Stand by Me展」についての第2部。


    monalisa.jpg- モナ・リザ


    CBCNET:
    というわけで「Stand by Me」展についてお話していこうと思います。
    まずは展示されたアートピースについて聞いていきたいんですが、作品の中で特に気になったのがこの内田有紀なんです。作品自体もかなり大きいですし、象徴的だなと思ったんですが、これに込められた気持ちとか意図とか聞かせてください。

    BAKIBAKI:
    そうすね。内田有紀は中学生の時に生まれて初めてテレビに恋した…平面に恋したモチーフなんすよ(笑)。だから今回のSTAND BY ME展はその頃の自分と向き合うことがテーマだったのでモチーフに選びました。

    CBCNET:
    こういったサイズの大きい作品は会場で制作したんですか?

    BAKIBAKI:
    これは代々木公園で野外ゲリラで描きました。巨大アイドルを公共の場所で勝手に描こう!って友達と企画して。個展会場にはトリミングしたものを設置。それでオープニングパーティーの時にパーカッション3人とセッションして、この上から “BAKIBAKI”でハートを描きました。「ブラウン管にチューする」みたいな感じで(笑)。
    (代々木公園でのペイントの模様はドキュメンタリー映像『欲望大陸』に収録されています。)


    monalisa.jpg -オープニングのライブペイントの様子


    CBCNET:
    話を聞いていると、写真集やブラウン管などの“何か”を通したアイドルに興味があるように思えますが。

    BAKIBAKI:
    確かに。よく人から「アイドル本人に会いたいんやろ〜。」ってよく言われるけれど、ほんまは別に本人はどうでもよくて...。めちゃ近づきたいけど、実際に接したらゲームオーバーみたいな(笑)。平面だからこそ、捉え方が無限に広がるっていう。三次元になった瞬間にもう...ピタって止まる。神から人間にトーンダウンする。別次元だからこそ妄想膨らむって感じですかね。

    CBCNET:
    なるほど。“いもうと”フィギュアも登場しましたね。

    BAKIBAKI:
    巨大ロボなんですよね。1/500スケール。原型師の友達が、今回の展示に合わせて自分のキャラを立体化した次第です。


    imote_figuare.jpg- 1/500スケール量産型イモート(原型制作:新井健史)


    CBCNET:
    35メートルだからですね。

    BAKIBAKI:
    はい。太陽の塔の半分の設定なんで。自分は万博公園の近くの千里ニュータウンで育ったんです。僕にとっては、太陽の塔は生まれた時から傍にあって、もはや“自然(NATURE)”と対等な存在で、その風景が自分のクリエイションの基準になってますね。


    CBCNET:
    原風景?やはりここも記憶の中のイメージを辿ってますね。そういえば、会場の正面に鎮座していた上戸彩の電飾は、今回の展示DMにもビジュアルとして使われましたが、やはりメインキャストだったんですか?


    uetoaya.jpg- ヴィ−ナス(Stand By Me ver.)


    BAKIBAKI:
    この作品には実は“BAKIBAKI”、“アイドル”、“いもうと”っていう今の自分の表現のチャンネルをすべて詰め込んで出来てるんですよ。現時点での代表作を意識しました。両側にあるフィギュアと屏風に負けない最高のクオリティを目指して、そうすることで絶対的な基準を作って、そこに引き上げていくような作業をしていきましたね。

    CBCNET:
    こういう見せ方も最初から?思いっきり光ってますね。

    BAKIBAKI:
    これは枠も含めての作品なんですが、TVに映されてる感じですかね。パソコンとかもそうだけど、僕ら現代人はこういった光る箱をすごい見てますよね。それってある種の信仰のように思えて。その中で動く「アイドル」には偶像的な部分あるんですよね。それで会場のセンターにシンボリックな感じ配置して祭壇みたいにしました。

    CBCNET:
    この作品は、なんとなく「スタンド」のように見えますよね?展示名の「Stand by Me」にもかかっているのでは?

    BAKIBAKI:
    そうっすね。今回の展示を「Stand by Me」展と銘打ったのは、絵描きなり、表現者が具現化するモチーフを、荒木飛呂彦氏の漫画「JOJOの奇妙な冒険」の劇中の「スタンド」の定義に見立てたんですよね。表現者の作品の強度は結局、精神力でしょっていうことと、1986年のアメリカ映画「Stand by Me」のように甘酸っぱい大人未満の体験が自分の表現の揺るぎないソースで、向き合うべき対象であること。そして、自分は表現者としてそれ(JOJOでいうスタンド)を武器にこの世の中と闘っていくんだという宣言でもあります。

    CBCNET:
    なるほど。ちなみに“欲望鎌足”シリーズは公に向けた展示としては今回が初めてですよね?

    BAKIBAKI:
    はい。今回の“欲望鎌足”はある種、ダークホース的存在で可能性、未公開だったので生のリアクションを感じれたいい機会でしたね。次に繋がる何かの兆しという意味で今回大事なバランスを担ってました。


    kamatari.jpg- 欲望鎌足/銀


    CBCNET:
    そういえばネガティブな感情を込めてるとおっしゃっていましたが、今回の“鎌足”に込められたものは何だったんでしょう?

    BAKIBAKI:
    具体的には思い出せへんけど、ムシャクシャして勢いで描いたのは覚えてますね。それで、描いてくうちにその感情が浄化されていくんすよね。


    CBCNET:
    (笑)。そういえば今回の展示では初期の“BAKIBAKI”ラインも展示されていましたね?


    BAKIBAKI:
    はい。今回は現時点での自分の回顧展でもあるんで、自分の成長の物差しとして、初期の“BAKIBAKI”ドローイングは必須でした。ここからスタートしたんだという意識で。


    CBCNET:
    そして今回、屏風に描かれた“BAKIBAKI”が、今の成長の度合いだったということですね。なぜ画材として屏風を選択したんですか?

    BAKIBAKI:
    “BAKIBAKI”を描き続けてたら、どこか“和“というか、”間“を生かした絵作りになっていったんすよね。それで、京都の表具師の友達が仕立ててくれた屏風にアクリルで描画しました。
    あえて伝統的に需要の少ない“銀”屏風を支持体にしていて、描画したところが滋賀の山の中だったんで、そういった風景や空気感が出てるかもです。


    byoubu.jpg- B2-B4(屏風制作:井上雅博)

    CBCNET:
    屏風もさることながら、今回は額装にもかなり凝ったみたいですね。

    BAKIBAKI:
    そうですね、額装することは面白い体験でしたね。何か娘(作品)を嫁に出す感覚と言うか。枠までの余白の割合とかで見え方が変わるし、ちゃんと飾れる“商品”としての耐久力を持つと言うか。1作品/1日のペースで画材屋に通い詰めてかなり悩みながら決めてきました。

    gakusou.jpg- ROOTS”N”MIXIER


    CBCNET:
    そういえば今回、展示された作品は、すべて6に関係した価格設定でしたが...?

    BAKIBAKI:
    そうすね。作品の値段を全部、俺の家賃の66,000円っていうの基準にしてます。例えばフィギュアが10個売れたら1ヶ月、屏風が売れたら10ヶ月とか。絵で食べていくってことは、絵を自分の生活に換算して生きていくわけなんやけど、ただ絵に値段付けるって行為を今までしたことないから、拠り所なさ過ぎて...一番リアルなところの基準として、家賃っすね。

    CBCNET:
    確かにリアル(笑)。
    そもそも今回の展示をASANOHAで開催したきっかけは?

    BAKIBAKI:
    いわゆるギャラリーでって話もあったけど、今までずっとクラブやストリートでやっていたから、ギャラリーやハイ・アートの環境になかなかフィットできへんっつーか、なかなか対等な関係が築けなくって。この展示は、そのままアートとしても通用するクオリティをより等身大で身近な信頼関係の築ける空間でやってみようかなっていう感じですね。

    CBCNET:
    なぜ原宿のアパレルショップだったんでしょう?展覧会を開催する(アートを売る)という面では少し不利にも見えますが。

    BAKIBAKI:
    若い人にも、服やインテリアを買うように、アートを買う事が心のオシャレというか、自分の価値観やセンスに投資するということを気づかせれたらな、という想いが第一にあったんですよ。それにアートにある程度の投資が出来る人物は自分のフィールドには来ないし、身近な人たちにはものすごい経済力があるわけでもない。いわゆるギャラリーで「アート」を買う人と、今自分のまわりにいる人々が混在できる場所を作れないかと思ったんですよ。ただそれはまだまだ遠い道のりであることも実感しましたが...。目指すべきヴィジョンの一つですね。

    CBCNET:
    なるほど。確かに日本人はまだアートを観覧することで終始してしまいがちですよね...。今回は「売る」部分も自身でこなしたと思いますが、実際感触はどうでしたか?

    BAKIBAKI:
    正直「売る」って一線は、だいぶムズかったですね。売るとこだけは距離ある人がやった方がええかなと。絵の説明とかはしたいけど、間に人が入ったほうがいいかも。
    値段設定とか自分の中で筋を通して、周りにもオープンにしているけれど観に来るだけで買いに来てないから、それすら気づかれてない...。

    CBCNET:
    まだまだリテラシーにかなり個人差がありますね。実際、個展の反響はどうでしたか?


    BAKIBAKI:
    うーん。正直まだ消化しきってないけど、対象によってリアクションが違うので一概には言えないかな。やっぱりアートっつうか、こうゆうコアな表現は伝達に時間がかかると思うので、今現在の反響は判断つきませんです。

    CBCNET:
    なるほど、まだこれからってことですね。

    BAKIBAKI:
    そうですね、「100年後どーなのよ?」ってスパンですね。極端やけど。

    CBCNET:
    ...それだと完全に死後の評価ですね。

    BAKIBAKI:
    もちろん生きてる間に評価されたいけど...。ただやっぱり身を削って表現してるもんなんで、そんなすぐに消費されたら困りまっせ!て感じすね(笑)。


    CBCNET:
    あはは。それは確かに(笑)。最後に今後の目標って言うと漠然としてしまうので今、目の前にあることを聞いてもいいですか?

    BAKIBAKI:
    個展で全部出し切ったんでしばらく充電中でしたね。映画見たり本呼んだりゲームしたり。
    ただ漠然と見るんではなくて、個展で浮き彫りにした自分の表現を掘り下げるために興味あることしかしてませんね。今年はもともとは春に東京、秋に京都で個展をするって決めてたんで、ぼちぼち秋に向けて向き合い始めてます。皆さんをばっこり裏切れるフレッシュな作品を発表するつもりです。

    CBCNET:
    なるほど。楽しみにしてます。ありがとうございました!

    BAKIBAKI:
    はーい。ありがとうございました。


    山尾光平 as BAKIBAKI プロフィール

    1978年、大阪・千里ニュータウン生まれ、太陽の塔の傍らに育つ。美大時代より京都に移住し、2001年京都発ライブペイントデュオ"DOPPEL"を結成。2005年、名古屋万博のライブペイントにて、ソロ・デビューを果たす。その制作スタイルは、"バキバキ"と呼ばれるミニマルな直線を駆り、"いもうと"というキャラクターの創造、時代を映すアイドルをモチーフにした"美人画"シリーズなどが挙げられ、都内/地方を問わずライブペイントを中心に、壁画、イラストレーション等で活動中。2006年より東京在住。


    yamaokohei.com

    gakusou.jpg
    欲望大陸 webで配信!

    個展最終日に上映されたドキュメンタリー映像『欲望大陸』がWebで配信中。
    この情熱大陸ならぬ欲望大陸は、代々木公園でのゲリラペイントをメインに、友人でもある映像作家の島田正道(sequence3)が個展まで半年間を追って制作したドキュメントでHUOVAでのペイントの様子や自宅でのインタビューなど絵はもちろん、かなり作家自身にフォーカスした内容となっている。
    インタビューと合わせて、必見の出来。ぜひご覧下さい。

    欲望大陸(17min.)



    [ DATE : September 3, 2007 ]
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