まだ間に合う!札幌国際芸術祭2014を3倍楽しむ旅案内
行かれましたか、札幌? え、まだ?
ちょっと、ちょっと、CBCNETの読者の皆さんならご存知のはず。
いま札幌といえば、札幌国際芸術祭2014(通称SIAF)が絶賛開催中。かの坂本龍一氏がゲストディレクターを務め、キュレーターは飯田志保子さんにメディアアート界を牽引する四方幸子さんなどなど。参加アーティストはCBCNETでもおなじみ、みんな大好きカールステン・ニコライ、真鍋大度、エキソニモ、セミトランスペアレント・デザイン、菅野創+yang02…(ここから敬称略)、ほら、知ってる名前ばかりでしょう?
とはいえ、札幌という北の大地に降り立つにはまだ腰が重いっていうそこのアナタへ、今回初めて札幌を訪れた北海道ビギナーArinaが札幌の楽しみ方をゆるやかにお届けいたします!
Text by Arina Tsukada
都市、自然、人間。そして北海道の果てなき大地。
北海道は、広い。北海道は、自然。北海道は、アイヌ。北海道は、ウマい(食が)。
札幌も北海道のほんの一部に過ぎないのでしょうが、中でも都市・札幌は日本の近代化と共に整備されていった街。碁盤目状に道が東西に分かれ、インフラが整えられたモダンシティなのだそうです。豪雪地帯でここまで快適に過ごせる街は世界中を見ても例がない(と、執筆担当したSIAF2014ガイドブックのインタビューで写真家・松江泰治さんが言っていました)。
そんな札幌における初の芸術祭SIAFにおけるメインテーマは「都市と自然」。なんて壮大な。とはいえ、札幌という都市を見つめるには格好のテーマなのかもしれません。このテーマに沿って集められたアーティストたちの作品を見てみると、それぞれの自然観が導き出せるようでもありました。
「都市と自然」の狭間において、常に介在するのは人間という存在。北海道、自然、都市、そして人間というキーワードが並んだとき、アイヌ民族や北海道の近代化の歴史は無視できません。今は廃れた炭鉱の跡地にフォーカスした作家や、アイヌ民族「帯広カムイトウポポ保存会」と野村萬斎のコラボによるパフォーマンスなども開催される。(※ 残念ながら、当日悪天候により中止に…)
余談ですが、アイヌといえば手塚治虫の『シュマリ』が大好きで大好きで。時代は明治初期、アイヌ人から名を与えられた無骨な男・シュマリと、彼を取り巻く開拓民たちの人間ドラマ。話はそれるけどぜひ男性に読んでほしい。お妙さんと、峯さんというシュマリ2人の妻(妙さんは初期で別離)の生き方が美しいんですよ……。次第に追いやられていくアイヌ人と自然。果てなき大地をにらみぬくシュマリ。私の北海道近代化のイメージは大体ここで集約されています。ああ。
まずはルートチェックを。(親切!)
さて、前置きがいつまでも長くなるのは私の悪いクセですが、いよいよスタートした2泊3日の札幌ツアー。あ、もし札幌旅行予定されている方は最低でも2泊がオススメです。なぜなら、けっこう遠いから!!
まずは、SIAFのメイン会場をチェックしましょう。快適なアート観賞は、ここのルート設定が大事です。
[札幌市内]
道立近代美術館(さっぽろ駅から地下鉄東西線で15分くらい/多分)
札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)(さっぽろ駅から直結、まずはここへ)
札幌大通地下ギャラリー500m美術館(チ・カ・ホと隣接)
清華亭(さっぽろ駅から徒歩10分くらい)
※市内の各会場は1日で回りきれるボリュームです。
[札幌から南方へ約16km]
札幌芸術の森美術館(札幌駅から地下鉄南北線→真駒内駅からバスを乗り継いで45分)
[札幌から北方へ約17km]
モエレ沼公園(札幌・大通から無料バスが出ているので便利、45分くらい)
はい、わかりましたか? 厄介なのがモエレと芸術の森の遠さで、ここのルート設定を間違えるとなかなか苦労します。が、あらかじめ日程とルート設定しておくと完璧な旅路を歩んだという達成感を味わえます。
「地球を掘りたい。」モエレ沼公園は世界で最も美しい公園のひとつだ。
さて、はじめから遠いとかネガティブなこと言ってごめんなさい。でも…!でもね…!なんてたって、でっかい北海道ですよ。遠くなきゃ味わえない景色があるんですよ。このモエレ沼公園に!!
かの彫刻家イサム・ノグチが、「地球を掘りたい」とつぶやいたあの日から始まった壮大な夢。面積188ヘクタールにおよぶ壮大なゴミの埋め立て地を自然公園にする計画がはじまったのは1979年のこと。惜しくもその9年後にノグチが急逝するも、彼の遺志を引き継いだ関係者たちの尽力によって2004年に晴れてグランドオープン。ここに、大地と、空と、緑と、ノグチの彫刻と、そして人々が歩く様すらも美しくデザインされたこのモエレ沼公園が完成したのです。ここは、天才彫刻家イサム・ノグチが「地球」をマテリアルにした最高の彫刻作品といえるでしょう。
モエレ沼公園で最初に目にするガラスのピラミッド。この中で展示されていたDaito先生と坂本氏による初の共作はさすがのひと言。展示場内、またチ・カ・ホでセンシングした電磁波のデータから可聴・可視を試みた作品。いくつものパターンが連なるイメージと音の重なり。いつまでも見ていられます。同じく、同会場には坂本氏とYCAM InterLab共作による《フォレスト・シンフォニー in モエレ沼》(supported by LOUIS VUITTON)も。
森がこだまする。札幌芸術の森美術館で鳥になる。
続いてやってきたのは札幌芸術の森美術館。ここもこれまた広大な森の中にあるわけですが、美術館の入り口では中谷芙二子による「霧の彫刻」、《FOGSCAPE #47412》が出迎えてくれるのです。
芸森の注目作は、視覚が拡張されるインスタレーションを力技で作り出したカールステン・ニコライ、札幌の「都市と自然」を空からばっすり切った写真家の松江泰治、「切り株」のインスタレーションが美しい平川祐樹、美術館内に和紙の森を出現させた栗林隆などなど。
中でもぜひ体感してほしいのは、スーザン・フィリップスの《カッコウの巣》。本会場の美術館から歩くこと5分、芸術の森野外美術館の樹木の中にそれはあります。作品のありかをスタッフの方に尋ねると、「聞こえてくるからきっとわかります」とのこと。樹木、光、どこからともなくやってくるフィリップスの歌声…、生の悦びを全身で体感できるこの場所。スコットランド出身の作家だけあり、寒い国ならではの「夏の森」を謳歌するかのような景色が目に浮かびます。
川の流れと人の動向がリンクする地下歩道、センシング・ストリームズ
1日7万人の利用者が行き交う札幌駅の巨大な地下歩行空間、通称「チ・カ・ホ」では、「センシング・ストリームズ」をテーマとした特別展示が行われている。駅から直結の地下歩道なので、まずここを訪れるのもいいだろう。注目は菅野創+yang02の《Semi-senseless Drawing Modules》だ。横幅約20mほどの壁面に、30個弱のペンを取り付けたモジュールが自動的に絵を描き続けるインスタレーション。地下歩道の天井部分に取り付けられたセンサーが感知した通行人のデータがモジュールに送られ、有機的な動きをめぐらせる。会期終了後までにどんな壁画が登場するのか楽しみだ。
雪の科学者、中谷宇吉郎の見た世界を引き継ぐ
北海道という地域性の特化に注力したSIAFの「らしさ」が最も顕著に出た展示といえば、道立近代美術館における「雪の顕微鏡写真」ではないだろうか。こちらは雪の科学者・中谷宇吉郎(1900-1962、北海道大学教授)にフォーカスを当て、数百枚以上の研究写真や素材の中から選別された写真を元にダムタイプ高谷史郎が展示監修を行ったもの。「雪は天からの送られた手紙」とは、中谷の有名な著作の言葉であるが、雪の結晶の研究から見出されたそのカタチは非常にデザイン的でもあり、今見ても多くの発見がある。自然が生み出すビジュアルそのものの構造美に、アートの視点で迫る美しい展示だった。
旅の足休めに、清華亭で毛利悠子ワールドにひたる
札幌駅から歩くこと10分弱。明治初期の建築・清華亭では毛利悠子さんのインスタレーション《サーカスの地中》が展開。ここは旅の足休めにもぜひ訪れてほしいところ。モノとモノが交互に連鎖する毛利流のイニシエーション、モノたちの小さな息吹が家屋全体にまたたいています。
やってきました、インターネットヤミ市4 in 札幌!
8月3日(ヤミの日)には、今や世界を渡り歩く大人気プロジェクト「インターネットヤミ市」がさっぽろテレビ塔で開催。東京2回、ベルリンのトランスメディアーレを経て、今度は札幌。市内の学生やクリエイターも多数参加、マークサッカーバーグさんからお花も届いてました。
最後に、札幌グルメ案内
北海道といえば食! てなわけで、各界の要人たち(誰)から収集した札幌グルメ情報を一部おすそ分け。海鮮、ジンギスカン、札幌ラーメンにスープカレーと、美味いモノを列挙すれば枚挙にいとまがない。ちなみに旅の2日目、「今日はジンギスカンだ!」と息巻いて市内に出向くも、日曜19時というピークタイムにぶち当たり数々の名店で惨敗。ここまで来て引き下がるわけにいかない我ら5人は、ジンギスカン亡者となってさまよい歩き続けることに…。週末のジンギスカンなら、早めの予約、または深夜帯がオススメです。
札幌国際芸術祭2014、会期は9月28日まで!
ということで駆け足でお送りしました北海道旅案内、札幌国際芸術祭は9月28日までなのでぜひこの機会に!
Information
札幌国際芸術祭2014http://www.sapporo-internationalartfestival.jp/
開催期間:
2014年7月19日(土)〜2014年9月28日(日)(72日間)
主な会場:
北海道立近代美術館
札幌芸術の森美術館
札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)
北海道庁赤れんが庁舎
モエレ沼公園
札幌市資料館
札幌大通地下ギャラリー500m美術館 ほか
主催:
創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会