こんにちは。
ここ最近、毎日のようにCBCNETオフィスに出入りしているarinaです。
ちょっと前となりましたが、5月の連休、私は名古屋、金沢、福岡と西日本エリアをうろうろしてきました。

ここでは、金沢SLANTで開催された、グラフィックデザイナー・倉嶌隆広さんの個展『 Poemotion- 新しい世界を見る方法』のレポートをお届けいたします。

インタラクティブなアートブック『Poemotion』



グラフィックの基本的な点・線・面だけを忠実に導き出す非常にシンプルでストイックな作品群。
この展覧会はスイスのLars Müller Publishersから出版されたアートブック『Poemotion』の作品を中心に構成されています。倉嶌さんは元より同出版社のファンで、自作のポートフォリオ・ブックをスイスへ送ったところ、見事出版が決まったとのこと。インタラクティブな仕掛けを持つこの本、百聞は一見に如かずってことで、まずは紹介動画をご覧ください。



ご覧の通り、格子模様のパネルをスライドさせ、動きを持った新たな図像がゆらゆらと生まれていきます。シンプルな仕掛けながら、思わず見入ってしまうこの本は「The Most Beautiful Swiss Books 2011」にも選出。人間の目が映し出す世界の多様さが、目の前に現れてくる一冊です。

「グラフィックを作り続けると、頭の中ではコントロールできないカタチが生まれてくる。その、制御しきれない”カタチ”を作ることの重要性に気付いた」とは、後述するトークショーでの作家本人の言葉。





さてこの倉嶌さん、私はお恥ずかしながらお名前を聞くのはこの日が初めて。
彼は普段、電通のアートディレクターとして勤務する傍ら、シルクスクリーンの版画やポスターなどで斬新なグラフィックアートを手がけてきました。

経歴を聞いて気になったのは、「普段どんな仕事してるのや?」ということ。
大きな広告代理店のADを務めながら、どうしてこれほどまでにピュアな作品を貫けるのか? 彼にとって広告と自身のクリエイティブには大きな隔たりがあるのかないのか? 
なんて、勝手に野暮な想像をしてしまったのですが、オープニング初日にトークショーがあり、少しだけ倉嶌さんのものづくりの姿勢に触れることができました。

倉嶌隆広が見つめる「新しい世界」とは?



トークショーでは、倉嶌さんが師事する元・電通のアートディレクター油谷勝海氏が対談相手として登壇。この油谷さんのトークが饒舌で、ちょっと口下手な倉嶌さんの言葉を見事にすくいとっていました。

美しいグラフィックワークとタイポグラフィで世界的に著名なスイスのグラフィックデザイナー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンに強く影響を受けたと語る倉嶌さん。

「理想とするグラフィックはどんどん音がなくなっていって、アテンションが薄れていく。美しいカタチを突き進めていくと、石の物体そのものを見せるようなことに近付いていく(倉島)」

なるほど、フラクタルを彷彿とさせる彼のグラフィックは、突き詰めれば「石」そのもの。彼の姿勢を表す非常に端的な表現だと感じました。

クライアントワークと自身の作品の違いについて尋ねられると、
「クライアントがいてもいなくても、作る中身自体はあまり変わらない。広告でできないことは、広告をつくることでわかっていく」とのこと。その後、「ある課題についてソリューションを求められるデザイン」と、「課題を自ら提示していくデザイン」の違いについても話が展開。



最後に、倉嶌さん本人の「カタチへの美意識」について尋ねてみました。
「ヒマワリの種の配列など、フラクタルや世の中に美しいと思うカタチはたくさんある。ただ、僕が思う美しさとは、きれいなものと醜いものが同時に存在していることかもしれない」

まだまだ聞きたいことはあったのですが、ひとまずここでトークは終了。

倉嶌隆広「Poemotion-新しい世界を見る方法」
会場:SLANT http://www.slant.jp/
会期:2012年4月28日(土)~5月27日(日)
住所:石川県金沢市広坂1-2-32 2F 
月曜定休(祝日の場合は営業、翌日休み)
協力:fairground




ちなみに前述のギャラリーSLANTは金沢21世紀美術館から徒歩30秒!
SANAA設計のこの美術館、青空と白い建物のコンビネーションが美しいです。


〈金沢21世紀美術館 名物①〉
ジェームズ・タレル「Blue Planet Sky」
タイトル通り、本当にこの日は雲ひとつない青空で、空のキャンバスはまるでイブ・クラインのブルー。雪が降り積もったらどんな景色になるんでしょう。


〈金沢21世紀美術館 名物②〉
美術館の光庭に設置されたプールは、アルゼンチン作家、レアンドロ・エルリッヒの作品「La Pileta」。
これはプールの下から撮ったショット。作品の秘密は行ってみてのお楽しみ。

おまけ


金沢といえば食の宝庫。
金沢市から車で一時間、能登半島の和倉温泉近くで、人生が変わるレベルの寿司に出会いました。

日本海の新鮮なネタと、世界最高峰の職人技のマリアージュ。
涙が出るほど美味しかった。
もうね、トロとか魚の粋を超えてるんですよ。じゃあ何かって聞かれても答えられない。うまいもの。
エビの味噌をウニみたいに乗せた巻き物とか、もはやドラッグ並の中毒性。
穴子がね、さらっとした白焼きにすっと柚子の皮をまぶしてあって、それはもう・・・・(以下略)

あの寿司を食べるためだけでも、今すぐ飛行機に飛び乗りたい。
もしあと1週間の命と宣告されたら、能登半島でここの寿司を食べて死のうと心に決めました。

金沢に行かれる方は、ぜひここのお寿司屋さんもセットでどうぞ。
驚愕の値段も含めて、人生の寿司観が変わります。(店名は @arina02 までお問い合わせを)

text by arina tsukada