Home > Dots & Lines > 土屋 泰洋

1. レムコールハースからラスメイヤーまで。あるいは情報過剰時代のブレインストームマニュアル(ウソ)

February 23, 2009
Yasuhiro Tsuchiya
ウェブプランナー、SLN土屋泰洋による連載

title.gif

Hello, World.

みなさまはじめまして。今月から半年間、CBC-NETで連載を持たせていただくことになりましたツチヤと申します。普段は広告に関わる仕事をしながら、 SLN:blog*(http://blog.slndesignstudio.com/)というブログを展開し、ウェブとかアートとかデザインとか色々な事について考えを巡らせたりしています。

今回は連載第一回ということで、この連載を始めるにあたって、DOTS&LINESというお題をもとに、どんな事を書いていこうか、考えたことをまとめてみました。言ってみれば連載のシラバスのようなものですね。自分の頭の中を整理するためにまとめた部分もあるので、ちょっと小難しくてまどろっこしい話になってしまった部分もあるかもしれませんが、来月からはもっとおもしろくなる!予定!です!多分!というわけで、今月から半年間、どうぞよろしくおねがいします。(ペコリ)


Rem Koolhaas to Russ Meyer

ここに二つのコンテンツがあります。まるでペンローズトライアングルのような形をした不思議なビル、現在北京に建造中の中国中央電視台本部ビル (China Central Television - CCTV)のプレゼンテーションビデオと、60年代アメリカンソフトポルノの代表作と呼ばれる「Faster, Pussycat! Kill! Kill!」のトレイラーです。

China Central Television

Faster, Pussycat! Kill! Kill! Trailer


一見まったく関係の無いように思えるこの二つの項目を繋ぐものは、一体何でしょうか。CCTVのビルを設計したオランダの建築事務所OMA代表、レム・コールハース。著作「錯乱のニューヨーク」でも知られる、現代を代表する建築家の一人です。彼は、映画脚本家出身という変わった経歴の持ち主でもありますが、脚本家時代に、数々のカルト巨乳映画を残したことで知られる映画監督ラス・メイヤーの作品ににも関わっていたことは、あまり知られていない事実だったりします。そして、そのラス・メイヤーの代表作の一つが、上の「Faster Pussycat! Kill! Kill!」です。現代建築を代表するビル(現在建造中)と、伝説のポルノ映画は、実は「レム・コールハース」という人物を通じて一つの線でつながっていたんですね。そういえば、よくよく見てるとCCTVのファサードってストッキングみたいでなんだかセクシー。そんなふうに見えなくもなくなくない?(どっちだ)

fig1.gif

以前2chでこんなスレッドがありました。「文部科学省から最低クリック数で18禁サイトへ行く(http://blog.livedoor.jp/blog_ch/archives/50086064.html)」。日本の教育の中枢とポルノという、一見相反するようにみえる二つの情報が、ハイパーリンクを通じてどこかで1本につながってしまうダイナミックな面白さが描かれています。これも上の例と似た構造だといえるでしょう。これは非常に面白い現象だと考えています。


思考のプロセスを共有する


全く関係無いと思っていたものが、タグやコンテクストをたどっていくと、結局つながってしまう。そういった「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりを発見するということが、最近とても面白いと感じています。情報(DOT)から情報(DOT)へ、線(LINE)を引き、なぞっていく。こうした、一見破綻したロジックにわざと溺れてみるような、ハイパーリンクの迷路あそびのような行為の面白さを連載を通じて様々な人たちと共有できないだろうか。

fig2.gif

かつて、編集者の松岡正剛は、著作『知の編集工学』の中で、人間の脳の中は、知識やイメージが無数のリンクを張りめぐらしているハイパーリンクになっており、「思考」とは、この無数にはりめぐらされたリンクを方向修正しながらジグザグと辿っていく行為であると語りました。

僕は、日々見たものをdeliciousというソーシャルブックマークサービスにストックしていっているのですが、これらの、無数のタグで複雑に絡みあった情報群。これらはまさに外部化された脳と考えることができるのではないか。そこで思いついたのが、松岡氏が語るような「思考」のプロセスを、そのまま連載にしてしまうことです。

具体的には、僕が今までアーカイブしていった(見た/気になった)コンテンツを、連想ゲームのように、毎回様々なつながり(似ている、制作者が同じ、モチーフが同じなど)で数珠つなぎで紹介していきます。最初に紹介するコンテンツから連想ゲームを繰り返していったときに、最終回にどんなコンテンツにたどりつくのか。それは、建築からポルノにたどり着くように、そこに大きな隔たりがあればあるほど面白いものになるのではないかと考えていますが、僕にもどうなるのか全く読めないという実験的な、というか結構無責任でスリリング(でも、だからこそ面白くなるポテンシャルも含んだ)企画です。

知の編集工学 (朝日文庫)
松岡 正剛
朝日新聞社
売り上げランキング: 9883


長々と書いてしまいましたが、小難しい連載にするつもりはまったくありません!単純に、みなさんと一緒に、この広大な情報の海を自由に泳ぎ、潜り、たゆたうこと、つまり様々な情報を能動的楽しむスタイルを共有できたら最高だと考えています。この連載は例えるなら、情報の海の旅行記であるとかガイドブック、あるいはミックステープのようなものとして、気軽に楽しんでいただければと思います。ついでに、僭越ながら、その中から何かしらのヒントを見つけていただけたら嬉しいなあ、などとも。

それでは次回から実際に様々なコンテンツを数珠つなぎでご紹介していきます。どうぞお楽しみに。

Information

現在発売中のクリエイティブ誌『QUOTATION No.2』にて、メディアアーティストの川島高氏による『Ten Thousand Cents』という作品について、コラムを書かせてもらっています。僕の記事以外にも盛りだくさんの内容なのでぜひ書店で手に取ってみてください。

QUOTATION
http://www.quotation.jp/

QUOTATION Worldwide Creative Journal no.2
Gradation Blue
ビー・エヌ・エヌ新社
売り上げランキング: 10423

Links




PAGETOP