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先週末にウィリアム・モリス展をみに府中にいってきた。府中市美術館は場所はちょっと駅から行きにくいけど、よく面白くて不思議な展示がやってて好きな場所なのだ。で、モリスだけど、モリスといえば、アーツ・アンド・クラフツ運動を世に広げたこと知られている。自身もデザイナーで、建築・絵画などいろいろ試したけどどれも失敗し、機械化していく19世紀の社会のなかで、手仕事による壁紙やテキスタイル分野で成功し、丁寧な仕事と生産の仕方を提唱してきた。その後、アーツ・アンド・クラフツはヨーロッパへ広がり、海を超えて日本の民藝運動へ、時代を超えて(たぶん)ヴァナキュラーウェブとかインターネット民藝にもつながっていると思う。そんな展示はテキスタイル、ステンドグラス、それに家具の見せ方が面白く良い時間が過ごせた。


しかし、やっぱ手仕事すごいな〜とか思いながら、その後ミュージアムショップへといってみると、そこにはモリスのパターンが印刷されたチープな紙やら化粧ポーチやらが販売されていて、思わず吹いてしまった。さっきまで展覧会で語られていたモリス時代の機械生産に抗う姿勢はどこへ行ってしまったのだろうと。でも、もちろんあれから100年以上立ってるわけだから全然状況は違うし、僕は結構それで満足できるので、そのお土産物を本気で悪くいうつもりはないんだけどね。

それを見ていてふと思ったのは、美術館に行く前にランチでたべた府中のラーメンが、そういう意味では徹底的に手仕事だなということ。煮干しから時間をかけて出汁をとり、麺にこだわり一杯ラーメンつくって800円。大きな鍋でグラグラと時間をかけて煮込まれるスープからつくられるラーメンをモリスが見たらどう思うだろうとか。そういうラーメン屋さんが幹線道路に何件も立ち並び、激戦区と呼ばれていることとか。働いてる人に外国人も少ないくないこととか、そんなことを考えてしまった。もはや機械生産に対しては日本では抗うこともあまり意味もないし、どちらかといえば機械の先にあるインターネット上に、グリッジ刺繍とか、gifアニメとか、手仕事的なものが生まれていることへの興味のほうが僕には興味がある。
モリスの化粧ポーチや簡易のポスターは「モリス作ったモノ」ではなく、『「モリス作ったモノ」のイメージ』なのかもしれない。そうなると、どちらかと言えばそれらの安いポーチの類は、本物を写しとって改変されたgifやjpegなどに近い存在になるんだと思う。

一昨日、大阪に出張してきたのだけれど、大阪民俗学博物館でみた芹沢けい介の縄のれん(本物)と、それがプリントされた手ぬぐい(イメージ)をミュージアムショップで見た時にも同じことを思った。手仕事を機械生産で再現する「イメージ」的なものは少なくない。無機質な器よりもそういう手仕事的な雰囲気を感じるモノを好む人も多い。こういう機械の手仕事(メカニカルハンド)について興味が湧いてきて少し意識して生活しようかなと思う。