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Interview with NODE

April 17, 2008 2:20 PM

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ベルリンを拠点に活動しているデザイン・スタジオ「NODE」。「032c」や現代音楽イベント「Happy Days Sound Festival」のビジュアル、アーティストの出版物など、独特で渋いグラフィックデザインが印象的なスタジオだ。彼らはワークショップなどで興味深いプロジェクトを展開している。

新しいオフィスに引っ越したばかりの彼らにメールインタビューを行った。彼らの仕事・作品の紹介を含めてお届けする。

Text by Yosuke Kurita
Translation by Xinjiroh TAHARA

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Q. こんにちは,まず始めにNODEのことを知らない人のために,簡単にスタジオについてと,バックグラウンド,そして何をしているかを説明していただけますか? 


NODE: 私たちグラフィックデザインスタジオNODEは,2003年に設立され,現在は3人で活動しています。ノルウェー出身の Anders Hofgaard,ドイツ出身の Vladimir Llovet と Serge Rompza です。
基本的には,自分たちがやりたいことおを楽しむための楽しい職場づくりを目指しています。
私たちの共通のバックグラウンドとしては,アムステルダムにある学校 Gerrit Rietveld Academy があります。そこはデザインの見方に大きな影響を与えてくれた場所でもあります。
今は,小さいけれどもおもしろいプロジェクトと,予算の大きなプロジェクトのコンビネーションを模索している段階ですね。


Q.過去の仕事の中でお気に入りのものをいくつかあげていただけますか? そしてその背景のエピソードもお願いします。


NODE:私たちはオスロで開催された 現代音楽のイベント"Happy Days Sound Festival" での作品が非常に気に入っています。昨年そのフェスティバルはオスロ市最大のショッピングセンターで開かれ,私たちには "supermarket-esthetics"(スーパーマーケットの美学)と現代音楽を結びつけるよい機会になりました。Ny Musikk(International Society for Contemporary Music / 国際現代音楽機構のノルウェーセクション)の人々との作業はとても刺激的なものでした。(参考:ノルウェーの現代音楽について

最近の仕事で成功を収めたのは,2007年のヴェネツィア・ビエンナーレのリトアニアパヴィリオンのためにつくられた Villa Lituania book です。アーティストの Nomeda & Gediminas Urbonasとの制作の過程では,本の中身はプロジェクトそのものもドキュメントとして含まれています。



NODE - WORKS

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Happy Days Sound Festival 2007
「普通の人のためのコンテンポラリー・ミュージック」というテーマのもと、オスロで最も大きいショッピングモールで開催されたサウンド・フェスティバルのポスター。消費とカルチャーの反映として、スーパーマーケットで使われるカリグラフィーを意識したものとなっている。


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Høvikodden Live art festival
ノルウェー、Henie Onstadで開催されたアートフェスティバル用のビジュアル全般を担当。このプロジェクトでは「PenJet」という学生がはじめたプロジェクトの印刷方法を利用している。「PenJet」は既存のプリンターのヘッダーにペンを装着し、そのヘッダーがタイポグラフィーを描くという装置。プリンターによってその動きや挙動のリズムが異なり、毎回違う動きをする。


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032c
http://www.032c.com/
コンテンポラリー・カルチャー・マガジン。世界中から評価が高く、ロンドンのDesignMuseum、パリのColetteなどでも展示会が開催された。


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Audio Alphabet
"No-Sound"プロジェクトとHappy Days Sound Festival 2006の際に制作したオーディオ・アルファベットと題したタイプフェイス。



Q. 皆さんの仕事内容には何が影響を与えていますか? デザイン,タイポグラフィー,メディアなどの分野で言うと。


NODE:身の回りのものすべてによって影響されていると言えます,視覚文化,メディア,文学,日々の生活など。その次の段階としてアートやデザインの世界で何が起きてるかに注目し続けているし,同じように私たち個人それぞれの文化からアイディアを見つけることもあります。デザインとタイポグラフィーに関しては,私たちが一番影響を受けたのは,おそらくオランダとスイスの伝統様式からと言えるでしょう。


Q. NODEの過去の仕事を見ていると,いろいろなスタイルやテクニックが見受けられます。NODEはデザインで何を実現しようとしているのでしょうか? 一定のコンセプトとしてはどういったものがあるのでしょうか?


NODE:多くのデザイナーは現代流のスタイルで仕事をしているし,自分のスタイルを確立しようとしています。一方で私たちは多くの場合,スタイルを取り省いた時に何が残るかを見ようとしています。もちろん,意識してスタイルを用いてもいるのですが,それはスタイルとコンテンツの間に緊張関係をもたらすためであるのです。

私たちとテクニックとの関係性は,かつて Rietveld Academy の教授の Frans Oosterhof 氏が言った言葉:「テクニックに『会話』をさせること」( To make the technique "talk" ),に集約されるかもしれません。


Q. NODEでは,おもしろいワークショップも行っていますよね,印象に残っているものはありますか?


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NODE:一番刺激的だったプロジェクトのひとつは,エストニアの首都タリンの Estonian Academy of Arts で開かれた "Means of Promotion"(プロモーションの意味・理由) プロジェクトでした。
私たちは既存のメディアに寄生するための様々な戦略を練り,真っ白な旗や,テレビや新聞に何の意味もないメッセージを載せて遊ぶというデモンストレーションを行いました。唯一本質的な意味でプロモーションをしたのは,ワークショップの最後に,展覧会そのもののプロモーションをドキュメントした映像を流したことです。
なお,2007年から,私たちはベルリンの Fashion and Design Academy で「視覚コミュニケーション」を教えています。


Q. そのワークショップの一環で行われた"Demonstration About Nothing"が私のお気に入りのひとつなのですが,どういった反応がありましたか?


NODE:何の情報も提示しなかったので,人々は様々に違った反応を見せていました。苛つく人がいれば,笑う人もいるし,たいていの人は困惑しているように見えました。エストニアという国家の自由と関係があると考えた人も何人かいましたが,当然空白の欄には好きなものを入れることが出来るのです。実際のところ,これは体制への疑問でもありました。当局が事前に通告されていないデモに対してどう反応するか,また通告がないゆえ違法とされるだろうか? ということです。当時何人かの警察官が居合わせていましたが,どう反応したらよいかわかっていないようでした。


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Demonstration About Nothing
ワークショップMeans of Promotionの一環で行われたデモ。既存のメディアをどういった形でパラサイトするかという試み。このプロジェクトでは白紙のプラカードを掲げたデモを敢行。エストニアの法律ではデモ運動をする際は法的な許可が必要となっているが、許可は取らず、既存システムにこの行動が違法なのかという疑問を投げかけている。この活動はエストニアのメジャーテレビ局や新聞などに取り上げられた。


Q. この業界で不快に感じることはありますか?もちろん、個人的なこと以外で。 


NODE:グラフィック・デザインは,そもそも自分で作り上げるものです。人生の他の物事と同様に,一度自分の倫理に妥協してしまうと,不快なものになってしまいます。大きな組織のもとで働くと,妥協することがよりたくさん増えるでしょう。私たちはとても小さなスタジオですから,決定権に関して大きな自由を保持出来るわけです。


Q. アーティストといろいろな仕事もなさっていますが,NODEの周りにいる面白いアーティストについても教えていただけますか?


NODE:今ちょうど,ノルウェー出身でベルリン在住のアーティスト Lars Ramberg の本の制作を完成させようとしているところです。彼の作品は2005年の『Palast des Zweifels(疑惑の宮殿)』のように,多くが政治的作品です。この作品では, "Zweifel"(疑惑)という単語を6メートルの高さのネオン管にして,旧東ドイツ国会議事堂に掲げました。この作品は東西ドイツ統一後のベルリンのロゴのようなものになりました。


Nomeda & Gediminas Urbonas の作品は,旧ソ連の国家たちの変化を扱っています。 Villa Lituania では,かつて第一次リトアニア共和国の大使館になっていたローマの建物に言及されています。この建物は多くのリトアニア人にとっては,ロシアに占領されていても最後のリトアニア領だと認識されてきました。アーティストたちはヴェネツィアからローマのこの邸宅まで鳩レースを開催したのです。プロジェクトそのものは建物の返還を要求したわけではなく,象徴的な場所としてから政治的な交渉の地として位置づける意味合いがありました。中心となったモティーフは平和の象徴である鳩でした。私たちの仕事としては,先ほどあげた本に加えて,展覧会と鳩レースのためのグラフィックの素材をつくっていたことがあげられます。

また,ベルリン在住の日本人アーティスト、竹村京のカタログを二冊制作致しました。


node_works_villa.jpgVilla Lituania



Q. NODEの普段の生活はどのように過ごしているのでしょうか?


NODE:かなり多くの時間をスタジオで過ごしています。日に10-12時間か,それ以上になる日もあります。一日の最初の時間は,管理業務を行い,その後はアイディアやデザインの制作に費やします。その日の業務はプロジェクトによって変わるし,業務の構造も変化していきます。皆それぞれがすべての工程に関わっているので,プロジェクトごとに役割も変わります。反復的な作業は滅多にありません。

NODE - STUDIO
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NODE_studio_3.jpg引っ越したばかりという彼らの新しいスタジオ




Q. 今何に熱中していますか?


NODE:私たちは今新しいスタジオに移ったところで,よい職場の環境を整えている最中です。やっていることには,すべて熱中しています,でなければこれほどの時間を仕事に割くことはありません。それ以外では,音楽や,社交,美術,哲学,心理学などですね。


Q. 最近よく使うフォントや好きなフォントはありますか?


NODE:読みやすい伝統的なフォントの次に, Linetoのフォント,例えば Superstudio を好んで使います。もう少し小さいタイポ・ファウンドリーでは Optimo やスイスのB&P Type Foundry がおもしろくて便利なフォントをつくっていると思います。


Q. これからのプロジェクトは? そして将来の計画は?


NODE:Oslo Jazz Festival と仕事をする予定で,2009年の Nordic Music Days が待ち遠しいところです。私たちは将来も小さい規模のままでいて,独立しつつ,楽しめる仕事を続けていきたいですね。


Q. このインタビューは日本語に翻訳されます。日本の読者にメッセージありますか?


NODE:残念ながらまだ日本に行ったことはないんです。ぜひ行きたいと思っているので,来日のためのよい言い訳をお願いします!

Detail

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NODE
http://nodeberlin.com/

2003年にベルリンとオスロを拠点に、Anders Hofgaard 、Serge Rompza によって結成され、06年にVladimir Llovet Casademont が参加。3人ともアムステルダムのGerrit Rietveld Academyを卒業。
NODEはインターナショナルなクライアントから自主的なプロジェクトなどを幅広い分野:本、マガジン、ポスター、タイプフェイス、アイデンティティー、展示会デザイン、サイン、ウェブサイトなどで活躍している。

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