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A Folk Dance DE VASCODAGAMA 2.「さよなら参画、またきて刺客、まあるくおさめて仁鶴師匠。」

May 10, 2010
Tom Kawada
AR三兄弟の長男としても知られる、ALTERNATIVE DESIGN++の川田十夢による連載、第二回。

企てる画と書いて企画、参じる画と書いて参画、漫ろな画と書いて漫画。僕は三十三年の人生を通じて、様々な画を書いてきました。最近では、企画という行為そのものが仕事の一部になってしまっている訳ですが、これが仕事になるずっと前から、誰に頼まれるでもなく、何かしら企てては実行するという毎日を過ごしていました。日常に疑問符を抱き、それをタギングし、それを解決する手段を企て、それを実行する。それが僕のリズムであり、人生です。人によっては、これを「有言実行」だと過大評価してくれることもあります。しかし、僕自身は何かを実現させる為の努力をした事はありません。日々、企画を成立させるための素材集めをしているだけです。ということで、今回は、僕が今まで企ててきた画について、皆さんにお話してみようと思います。


砂場の女

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企画意図 : あの娘のメメメを拝みたい。
素材 : 箱ブランコ+赤いスカートの女の子(+益子

僕が企画に目覚めたのはいつだろうと、過去に少しトリップしたら思い出しました。あれは、幼稚園時分だから、きっと5才とか6才。家の近所の公園にいつも居る、赤いスカートの女の子。何故かいつもパンツを履いていないあの娘のメメメを、どうしたら自然に拝むことができるか?それが、僕にとっての最初の企画でした。僕がこの企画を実行するにあたってパートナーに選んだのは、益子という親友でした。彼とは朝霞スイミングスクールでクロールの最速タイムを競う仲でしたが、このミッションを遂行するには高い身体能力と動体視力が必要です。野球の守備争いでもライバルだった彼は、このプロジェクトに於いてまさに最高のパートナーでした。

僕が描いた筋書きはこうです。まず、彼女がいつも滞在している砂場から15m圏内にある箱ブランコに誘い出す。そして、ゆっくりブランコを漕ぎ出す。女の子が、「もっと強く漕いで」と急かす。僕らは仕方ないなと立ち漕ぎを始める。ブランコのベンチに腰掛けた彼女の股間と立ち漕ぎしている僕らの視点の角度がバッチリ合う。自然にメメメを拝むことに成功する。

結局、このプロジェクトは失敗に終りました。太陽の位置を全く計算していなかったのです。また、股間から(?)重力に従って滴り落ちる砂は、僕らの視覚を妨害するに十分過ぎました。失敗はしたものの、僕はこうして、人生という企画船を漕ぎ出したのでした。二つの意味で。


舌先で世界を感じる男

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企画意図 : ユニークな奴だという印象の復権
素材 : 味覚

僕は小学校二年生になっていました。名前が十夢ということで、最初こそ珍しい名前だとチヤホヤされてスタートした小学校生活でしたが、特別ケンカが強い訳ではない、運動能力がズバ抜けてできる訳でもない僕の役目はいわゆる出オチで、二年生にもなると特に脚光を浴びることもなくなっていました。そこで僕は考えました。どうにか、ユニークな自分を演出できないか?考えた末、自分の中である特異なルールを設定し、それを公言することにしました。それは、「あらゆる物を口に放り込んで、その感想を以て世界と対峙する」というルールです。

この企画に現実味を与えるには、僕の小学校の流行と当時の男子小学生の特性について触れておく必要があります。まず、僕の小学校では校庭の脇に生えているつつじの花の蜜を吸うのが粋とされていました。休み時間に、下校時間に、小学校の連中はこぞってつつじの花を見つけては、ちょっと一服感覚でつつじの蜜をチューチュー吸います。信じられないかも知れませんが、それがカッコ良かったのです。そして、男子小学生の性質。それは同級生から「少しでもヤバいと思われたい」という初期衝動の固まりだということ。それが万引きを誘因したり、女の子のスカートめくりをさせたり、アリやハチを片っ端から踏みつぶさせたり。僕の周りの男子は特に、奇行としか思えないような行動を取っては、「あいつはヤバい」と言われて悦に入る人、「あいつはヤバい」と言ってそれを支える人が多かったのです。

そんな状況の中ですから、味覚でしか世界の情報を得ないという常軌を逸した行動が、受け入れられない訳がありません。僕はたちまち「ヤバい奴」に昇格し、一気にクラスのスターダムを駆け上がりました。あと、この企画には、思わぬ副賞がついてきました。国語力の過大評価です。僕はあらゆる物を口に放り込んでいましたので、作文の文体も他とちょっと違っていました。「アリのお尻を歯で噛み潰したような悔しさ」「古い電池から流れ出る茶色い液体を舐めたときのような鈍い衝撃」そんな大人びた文章を、担任の先生は大いに評価してくれました。それが経験則から生まれた文章であることを知らずに。


獅子舞フェイク

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企画意図 : 獅子舞ズルい
素材 : 牛乳パック+マジックインキ(赤)

獅子舞ってズルいですよね。毎年毎年、口をパクパクさせるだけでお金がもらえる。子供心に嫉妬を覚えました。小学三年に上がろうかという僕は、クリエイティブ魂に火が付き、一心不乱に牛乳パックを赤く塗りたくり、斬新なオリジナル獅子舞を作り上げました。さっそく小遣いを近所からせしめてやろうと出掛けたところ、意外にもあっさり偽物だと見破られ、まったくお金は集まりませんでした。が、僕が実はユニークな少年だという認知は決定的となり、今までの企画もあいまって、僕はいつの間にか近所の小学生やその親から、一目置かれる存在となっていました。


ビックリマンチョコを1個しか買わずにキラキラシールをコンプリする方法

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企画意図 : お金と時間をかけずにキラキラシール集めたい
素材 : 助っ人竹ちゃん(お守りシール)+ヤバい奴だという印象

ビックリマンチョコ、流行りましたよね。僕の小学校でも流行りました。が、僕は本や漫画や音楽に没頭していたかったので、シールばかりに時間とお金をかけている場合ではありませんでした。だから、ちょっと頭を捻ることにしました。

僕はまず、ビックリマンチョコのシール出現比率について調べました。どのくらいの確率でキラキラシールが出るものなのか、どのくらいの種類のシールがダブるモノなのか、悪魔シールとお守りシールは本当にゴミ同然なのか。色々調べた結果、僕の中で、ある方法論が確率されました。価値がないと言われている悪魔シールやお助けシールをタダ同然で収集しては、コンプリートを目指して箱買いしてはチョコを捨てているような富裕層にさばき、キラキラシールを効率的に集めるという方法です。この読みが見事に当たり、僕は面白いようにキラキラシールを集めることに成功しました。

この企画が当った理由はもう一つあります。前述までの企画で、僕は既に周囲から一目置かれる存在になっていました。その「ヤバい奴」という印象は、クラスの枠を越え、学校の枠を越え、近隣の小学校にまで轟いていました。多くの小学生諸君が自分の小学校だけでトレードを行っていた中、僕だけは小学校の枠を越えたトレードが可能となっていたのです。結果、僕は全種類のキラキラシールを短期間で集めることに成功しました。ビックリマンチョコを一個しか買わずに、です。


足速くないのに、リレーの選手に選ばれてみよう
遅刻大喜利365連発
日本横断幕委員会
多摩川車窓劇場
毒蝮三太夫の真実
北島三郎 新宿コマ劇場 公演コンプリートへの道
皇室 4コマ漫画化への道
女盛りは女体盛り盛り
古手川祐子 天使と悪魔の二段活用
イカから学んだ未来コンピューティング
履歴書に未来の経歴を書く男
AR忘年会

などなど、まだ紹介しきれていないユニークな企画が沢山あるのですが、うっかり文字数とモラルの制限を越えてしまいそうなので、今回はこの辺で。最後に企画の伝え方について触れて終わりたいと思います。


折角ユニークな企画を思いついても,伝わるべき人に伝わらなければ意味がありません。企画は通らなければただの画、単なる絵空事で終ってしまいます。僕も実際、企画を企画として成立させるために、ユニークなアイデアを実現させるために、様々な場所へ出掛けてはプレゼンをします。斬新とは省略することなのですが、その斬新を理解してもらうには、省略しなくてはいけないプロセスよりも、はるかに膨大な情報やそれにかける想いを伝えなくてはいけません。その正しいプレゼン方法を、読者のみなさんに如何に端的に伝えるべきか?考えていたら、YouTubeにアップされていた糸井重里のプレゼン映像を思い出しました。この映像、残念ながら今はもう見る事ができません。僕の記憶から彼のプレゼンがどんなモノだったのかを再現し、その本質について解説を加えます。

糸井重里のプレゼンについて

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彼がプレゼンを披露したのは、「ダウンタウン7怒れ!熱き日本人」という番組です。登壇者が考えた企画を、鉄の壁と呼ばれる論客7人と100人の観客に、与えられた制限時間内で訴えかけ、最終的に観客の過半数の支持を得られれば賞金100万円が与えられるというルール。糸井重里という人物は、過去に斬新なキャッチコピーを数多く世の中に浸透させてきた人物です。いわば、プレゼンの鬼な訳です。そんな彼が開口一番こんな事を言いました。

「緊張している」

彼は、この「緊張している」ファンクションによって、プレゼン開始まもなく、番組全体的に覆っていた空気を一変させました。番組の構成上、登壇者である企画者は、どんなに完成された企画を発表しても、7人の鉄の壁によって進行を阻まれてしまいます。多くの登壇者もそれを恐れ、より完璧な企画であること、よりマルチスレッドな回答を準備することに集中します。しかし、彼は違いました。彼の企画自体、「老人は畑を耕すべきだ」という何とも的を得ないような、漠然としたスカスカの内容でした。このスカスカな企画と冒頭の「緊張している」、この二つの要素によって、この企画は見事に多数決を得ることに成功しました。

もう少し解説を加えます。目の前でスカスカの企画を発表された7人の刺客は、キョトンとしてました。反論するだけの論理が成立していないのです。彼らは番組の空気を読めるタレントでもありますから、このままでは番組自体が成立しないことを察し、まずは議論を成立させようと、スカスカの企画に自ら肉付けを始めました。糸井重里は、心もとない感じで、「あ、それいいですね」「そういう考え方もあるのですね」と、鉄の壁の意見を肯定してゆきます。7人の刺客は、個々に自分のアイデアが肯定されてゆくことに潜在的な快楽を覚え、いつしかこの企画自体が、自分のアイデアが投影された素晴らしい企画のように思えてしまっています。鉄の壁も、その攻防を見守る観客も、「これはいい企画なのではないか」と完全に倒錯しかけた瞬間、すかさず糸井重里は、鉄の壁の意見を最小公倍数に丸め込んだ企画の骨子を一気にまとめあげ、自分の企画の是非を観客に問いました。結果は、前述の通りです。

企画を考えるのも然り、企画を通す手段を考えるのも然り、企画という行為の周囲には、ゴロっとしたクリエイティブがざっくざくです。みなさんも一度、途方もない絵空事を描いては、それを実現するにはどうしたらいいか。企んだ末に実行してみてはいかがでしょうか。

次回は、過去・現在・未来のメディアについて書いてみたいと思います。川田十夢でした。

Information

この夏、僕が企画・執筆する本が三冊出ます。ユニークなイベントも絶賛企画中。詳細追って。

川田十夢
http://alternativedesign.jp/
http://twitter.com/cmrr_xxx

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