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土日 Flash のススメ(5):創作のスタートダッシュとアイデアの展開

February 23, 2009
Shuhei Terai
trick7 の寺井周平によるコラム第五回目。

Flash 制作者にとっての幸せは「自分が作りたいものを自分で作れる」ことだと思います。もちろん人ごとにスキルの差はありますが、何か作りたいものに向かって自分なりに手を動かして完成に近づける作業は、とても楽しく、集中でき、結果スキルアップにもつながる行為です。
その際に大事なのは創作のスタートダッシュを上手くキメることだと思います。

個人作品、特に休日作品には予め決められた仕様書はありません。とにかく一旦自分の手を動かし始め、その後どんどん違う方向に展開・発展させることができます。アイデア展開のネタは至る所で得られるものです。そのことを意識し、日々の刺激や発見をFlashコンテンツに落とし込んだり、ネタ同士を混ぜ合わせたりする作業をいつも頭の片隅で続けていれば、最初は小さなスタートだったとしても最後にはどうにかなるのではないかと思います。
以下、僕の小さなスタートをご覧ください。

■ある日さわってみた技術


ある日、Google Maps の地図データを Flash から簡単に操作できる仕組み(ライブラリ)が提供されていることを知ったので触ってみました。拡大縮小や移動、表示モードの変更やラインやマーカーの描画など、ほぼネットで解説されているサンプルそのまま真似した程度でしたが、実際に自分の手で動くものを作ってみるというのはとても大事で、「自分は Flash で Google Mpas を使うことができるんだ!」という自信を持つことができます。勘違いの自信でもいいと思います。とにかく自分の中でスタートダッシュを決めた感じになればしめたものです。それは「スキルの拠り所」となり、以降アイデア展開していくための起点となります。


http://www.trick7.com/ttt/GoogleMapFlash.html

■ある日行った展覧会


銀座 ggg で開催されていた tha社の展覧会に何度か足を運んだのですが、その展示作品の中に、大画面に Google Maps が表示され、ゆっくりと地図全体がスクロールしている作品がありました。ちょうど Flash で地図をさわっていたので、とても印象に残りました。 家に戻り、自分が作っていた地図サンプルを全画面にして、ゆっくりとスクロールするようにしてみました。


scroll500.jpg
http://www.trick7.com/ttt/FullScreenAutoScroll.html

衛星写真はそれ自体が面白い素材なんだと気付かされました。


■ある日作っておいた技術


その頃、Flash で時計を何個か作っていたことと、それに派生して時計が簡単に作れるActionScriptライブラリ(TeraClockライブラリ)を作っていたので、地図を時計のリズムに合わせて画面移動するようにしてみました。フルスクリーンの航空写真時計です。時針の方向に移動するようにしてみました。


trick7_clock500.jpg
http://www.trick7.com/ttt/MapClock.html


■ある日聞いていた音楽


航空写真時計をいろいろいじりながら、たまたま Radiohead というバンドの Idiotequeという曲を聴いていました。そうすると偶然、なんだか画面と音楽のテンポが一致してとても気持ち良い瞬間があることに気が付きました。
(※先ほどの航空写真時計と、Ideoteque の YouTube 動画を別個ウィンドウで開いて見てください。リズムが動機する「気持ちのいい瞬間」があると思います。)


写真と音がシンクロする気持ち良さを体感できたのです。以後コンテンツに相応しい音を考えるようになります。
Ideoteque という曲はいろんな音が重なりあってできています。一方、地図上に表示される国にも各国それぞれの民族音というのがあります。日本なら鼓や琴、スコットランドならバグパイプといった風に。ガムラン・ギター・鈴・シタールなどなど、世界各地の音を重ねて心地よい音が作れるのではないかと考えました。


trick7_mapClockSound500.jpg
http://www.trick7.com/ttt/MapClockSound.html


2音を鳴らしてみた例。別アイデアだが、Flash ならば地図の回転も可能なのでパリの凱旋門を時計に見立てるのも面白いかもしれない。


■ある日行った写真展


trick7_05_photo.jpg先日、代々木のカフェにて開催されている the bitter*girls さんの写真展「the bitter*girls 展 -リリパット・プロジェクト-」に行きました。展示されている写真の中に、ソフトフォーカスでミニチュアっぽく写っている写真がありました。こういうテイストの写真はある程度遠景の写真の方がそれっぽく見えるようです。自分も撮ってみたいのですが、あいにくいいカメラは持っていませんし、ヘリから空撮なんてとてもできません。
「ん?Google Map でやったらどうなるんだろ?」
と、ふと思いました。
家に帰ってネットで調べると、写真をミニチュア風に加工する方法は紹介されていましたので GoogleMaps の画像をキャプチャして試しにやってみます。


hdr_1_1.jpghdr_1_2.jpg
before >                           after


hdr_2_1.jpghdr_2_2.jpg
before >                           after


面白い絵になりましたし、一様なフィルタワークを重ねれば実現できることがわかりました。
じゃあ次は実際に動いたらどんな感じになるのか?あいにくミニチュア風に加工する処理プログラムは現時点の僕には書けませんが、画像加工前のFlashを動画キャプチャして AfterEffect 上で映像として加工して様子を見てみました。


僕が知る限りこの GoogleMaps の表現は見たことがなく、そして絵としても綺麗に思うので是非完成させてみたいです。


■アイデアは繋がる・広がる


通勤時や就寝時、ちょっとした思い付きをメモしておくようにし、出てきたアイデアを吟味・選別していくと、なんとなくコンテンツの最終イメージが定まってきました。
  • 時計のリズムで位置が動いていく航空写真
  • 動くたびに、その場所特有の音が鳴る。 →前に表示した都市の音と合わせてハーモニーになっていく? or インドと京都というふうに二画面表示して音の融合をわかりやすく見せる?
  • 旅行気分が味わえる時計ということで「TicTacTrip」と命名します
  • 表示されてる場所へのツアー情報を表示させる
  • 全画面表示させたいならスクリーンセーバー
  • 航空写真上に実寸で楽器演奏者を合成してみる?アニメーション付きで
  • ユーザー投稿型にする?場所と音のクオリティをどう保つか?

一番初めはコンテンツの完成イメージは決まっていませんでした。ただ、自分が地図をFlashで扱うことができるという少しの自信を持てたことで、それ以降に見たり聞いたり感じたりしたことを地図コンテンツに結びつけるということを自然とできるようになっていたのです。

原稿の都合上、アイデアの展開を一本道のように書いていますが、実際には何か刺激やヒントを受けるたびにいろんな方向に枝分かれし、いろんなコンテンツの可能性を見つけることができました。技術とアイデアの両面からいろんな事柄をインプットし、それを展開させたり混ぜたりしながらいろんなアウトプットになっていく。この作業を一人の頭の中でできるというのは、何物にも代えがたい楽しい時間です。


■必要な技術を狙い撃ちできる


「自分自身のスキルアップ」というのも個人で創作する際のモチベーションのひとつです。昨今の Flash は、表現力が多方面化し、学習すべき項目も広がってしまいました。あれもこれも覚えないとと焦ってばかりいると、焦ってばかりで実は何もスタートできていないという状況に陥りやすいものです(体験談)。そんな時にオススメなのは「自分の作品のために必要なスキルを狙い撃ちでマスターしていく」という学習法です。

今回の僕の場合は、基点となった GoogleMaps を皮切りに、Flash スクリーンセーバー作成法、音のコントロールといった「なんとなくできそうだけど日頃手をつけていなかったスキル」の習得と、ミニチュア写真っぽく画像変換する技術(FlashPlayer10の新機能である PixelBender)という僕にとっては高難度なスキルに挑戦する良い機会になりそうです。

※Point:習得したいスキルのハードル設定は人それぞれ自由です。ひとつひとつ克服していくのが継続のコツでしょう。
また、Flash 初心者の人は「何が難しいことで何が簡単なことなのか」というハードルの形自体が掴めないこともあるかと思います。そんな時は、書店で自分が理解できる Flash 解説本を見つけて、そこに書かれているテクニックを使って自分なりのアイデアを展開させると良いでしょう。本のサンプル通りにやると本のサンプルと同じものにしかなりませんが、サンプルのほうを自分のアイデアに引きずり込むことで、たちまち自分の作品が出来上がり、自分の作品としてブログでも公開できてしまいます!これは創作へのモチベーションを上げるという点でも重要です。


■仕事に繋げる


先日開催された AdobeMAX にて、Joshua Davis さんがプライベートワークの大切さを説かれていました。プライベートワークで試しておいたチャレンジングなアイデアを仕事でも投入することがある、というかそれが大切だと。
今回作ろうとしているミニチュア航空写真コンテンツですが、自分はリクルート社に勤務しており、そのリクルートには AB-ROAD という国外ツアー情報を取り扱っている部署があります。そのツアー情報は API として僕達開発者が自由に使えるようになっています。素敵なミニチュア衛星写真を眺めてもらってユーザに旅行に行きたくなってもらうというのは素敵なマッチングだと思います。国内であれば「じゃらん」の宿情報も使えそうです。仕事として会社に提案できる日が来るかもしれません。

・・・・と、文章書いてる場合じゃないや(笑)。早く作らないといけませんね。

Information

trick7_05_detail.jpg僕のニュースではありませんが、コラム中でも紹介させていただいているthe bitter*girlsさんの追加写真展が2月20(金) ~3月22日(日)まで代々木のPLUG_IN_CAFEで開催されています。素敵な写真に囲まれる中でゆったりできるカフェでしたー。

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