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土日 Flash のススメ(3):ブログで紹介したくなるサイトとは?

January 11, 2008
Shuhei Terai
trick7 の寺井周平によるコラム。2007年「ブログで紹介したくなった Flash サイト」をピックアップ。どういう要素があればブログで紹介したくなるのか?近年ではユーザー間の口コミで伝播していく「バイラルマーケティング」が重要視されていますので、自分がコンテンツを企画する時の参考になるようにまとめていきたいと思います。

説明したくなる

一番最初に説明なしで刺激的な動画を公開しておいて世間を騒がせ、ブロガーに独自のコメントを展開させるという手法がいくつかありましたね。それ以外にも下に挙げたように、「海外サイトだから」「操作が難しいから」という理由で説明したくなる場合もあります。

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Sire(サイト紹介記事

オランダにおける児童虐待への関心を高めることを目的に制作されたFlashサイト。海外サイトなため、日本のユーザーに向けて誰かが説明する必要があるだろうと勝手にその役を買って出る時があります。

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adidas Y-3(サイト

ファッションモデルがウォーキングする映像の時間軸を自在に操作できます。PS2のゲーム「プリンスオブペルシャ」の時間の砂効果と似たエフェクトです。今までになかったようなユーザーインターフェース(UI/操作性)のサイトを見つけた時、そしてそのUIが多少操作説明を必要とするような時もおせっかい心で紹介してやろうかという気になります。


普通の人にも楽しんでもらえそう

Flashサイトのバズの起こり方で陥ってしまいがちなのは、Flashブロガー間だけで話題となり一般ユーザーまで届かないということがあります。そのFlashブロガーもコンテンツの技術的側面にだけ注目して、一度みたら二度と見ないということもあり得ます。そんな中、一般ユーザーにもパッと見で楽しさが伝わるようなコンテンツを見つけた時は嬉しくなって紹介することがあります。

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monoface(サイト紹介記事

制作会社のグリーティングコンテンツ。スタッフの顔の各パーツをモンタージュ合成できます。難しいことをしているわけではないけれど、アイデアと写真合成のクオリティが高く、ついつい遊んでしまいます。


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Grow a Xmas Tree(サイト紹介記事

クリスマスツリーに自分でメッセージを飾りつけて友人に送ることができます。技術的にもPapervision3Dというハイレベルな実装なのですが、そんなことに興味のないユーザーも楽しんでくれそうなところが紹介しがいがありますね。


ブロガー独自の切り口で語れる

コンテンツの違う楽しみ方を見つけた時は、ブロガーはその自分の独自の切り口を他の人に紹介したくなります。ブロガーが言及できる「余白」みたいなものを織り込んだコンテンツがよいですね。

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UNIQLOCK(サイト

足を組み替える瞬間が何気にエロいという評判から、画像をキャプチャして自分のブログにアップしているブロガーもいました。制作者が意図しなかったであろう切り口で紹介できるというのもブロガーに記事を書かせる動機になりますね。ネーミングも秀逸で覚えやすいので、人にオススメサイトを尋ねられたときに真っ先に思い浮かぶことも大切。



面白いから紹介したい

「かっこいい」よりも「面白い」方が紹介しやすいです。僕は。

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伊武雅刀(サイト紹介記事

自由なレイアウト・コンテンツ。Flashに携わる者としていつもアンテナを張っているつもりですが、まさか芸能人のオフィシャルサイトがすごいFlashサイトだとは思わず、見つけた時の喜び・レア感を教えたくなりました。


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ワン・トゥー・テン・デザイン > 07|ACCESSコンテンツ(サイト

京都の制作会社の自社サイト中にある、アクセスページの特設動画。Webにおいて好感を持たれる要素の一つは「努力の無駄遣い」というキーワードに代表される、そんなところをそんなに頑張る必要はあるのかい?と、ユーザーにニンマリしてもらうことだと思っています。緩急のあるサービス公開でネットユーザーの間で「許されるキャラ作り」をすることも大切なことだと思います。


作り手の情熱

パッと見ただけでも伝わる「狂人的な手作業」を見た時にもグッときます。バイラルとかバズを意図的に狙うのではなく、作品への強烈な情熱がアウトプットされているほうがブロガーも賛同しやすいのではないでしょうか。
これとは別に「気持ちのいいアニメーションの追求」にこだわり抜いているサイトもあるのですが、挙げてしまうと膨大な数になるのでまた別の機会に。

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Infinite OZ | Tin Man | SCIFI.COM(サイト

何枚ものイラストを連続的に繋ぎ、無限にズームしていく不思議なサイト。思わず引き込まれてしまうし、その作業量に感動してしまいます。昔のサイトになりますが「THE ZOOMQUILT」も必見です。


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MAKIBISHI COMIC | マキビシコミック(サイト紹介記事

膨大なイラストと細部までこだわられた緻密なアニメーション。その力の入れ具合に惚れ込んでしまいます。


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Get the Glass!(サイト紹介記事

フルCGではなく、一部ジオラマセットを撮影したものだったということで2度驚かされましたし、紹介記事でもまんまとそのことを紹介してしまいましたね。制作行程を紹介するというのもバイラルの要因になり得るということですね。


作り手の細部へのこだわりを感じ取れたとき

この場合は同じFlash制作者としてコメントすることが多いのですが、コンテンツ内のディティールの作り込みを見つけた時、紹介したくなります。制作者が個人であったり、知人であったりすると、尚のこと紹介したくなりますね。

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ANTEPRIMA(サイト紹介記事

特筆すべきは右上に表示されているBGMのON/OFFボタン。実際のBGMのボリュームに連動しているというディティールの作り込みに感動し、人に伝えたくなりました。その労力等はFlashをやっている人にしか分からない箇所ですが、Flash関連ブログをやっている僕には特筆すべき箇所なのでした。


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Jonathan Yuen (2006)(サイト

水墨画のような世界観のサイトなのだけれど、墨の黒を表現するためにわざわざマウスカーソルを真っ黒なものに変更しているという「作者のこだわり」に気づいた時、このことを他の人にも教えてあげたいなと思いますね。


自分が表現できる

ブロガーが自己表現できる仕掛けを提供してくれるタイプのコンテンツ。「○○ジェネレーター」もこの分類ですね。最近この手法が増えてきている分、ブロガーとしては、自分がきちんと自己表現できているのか?あるいはコンテンツ企画者の掌の上で踊らされているだけなのか?その見極めに慎重になりつつあるのではないでしょうか。企画者はそのバランス感覚が重要になりそうです。

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Nike AF25 Videocard(サイト

これは昨年の始めに登場した Nike Basketball のキャンペーンサイトで、細かく細分化された映像クリップを好きなように繋ぎ合わせて、音楽もつけて自分の映像作品を作り、できた映像を友人に紹介することができるというものです。ただこのコンテンツは元クリップの完成度が既に高く、アウトプットが画一化しがちなので、できた映像で自分のクリエイティビティを表現しにくい欠点がありました。


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Simpsons Movie > CREATE YOUR SIMPSONS AVATAR(サイト紹介記事

自分でシンプソンズキャラを作れるサービス。作ったキャラを画像としてダウンロード・プリント・友人にメールで知らせたりと「ユーザーが広げやすいための導線」を充実させています。DVD販売のためのキャンペーンサイトでもあるのですが、DVDパッケージ用のプリントもできるという導線がいいですね。


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Verizon Action Hero(公開終了/紹介記事

自分の顔写真をアップロードすると、その顔をもとに3Dキャラを作成し、そのキャラが大活躍する高画質なムービーを作ってくれるというサービス。ムービー制作作業がどこまで自動化されているのかは謎で、ムービー完成までに4,5日かかるというのはデメリットのようでもあり、逆に2度紹介してしまうかもしれないメリットにもなりうる!?


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VAIO - REMIX YOUR LIFE(サイト

Webカメラに向かってドから順番に音階を吹き込んで録画すると、それをサーバー上で細分化して曲を再合成してくれるキャンペーンサイト。自分が歌う様子を友人に伝えることができます。技術的にも凄いですが、コンテンツ内容は人に伝えやすく、それゆえに是非体験してほしい!という気持ちで紹介することもあります。


逆に自分が紹介してもらえる

これも昨年増えたアプローチですね。紹介することで逆に紹介してもらえる仕組みです。できるだけ初期段階で紹介(参加)しないと、後になればなるほど大勢の中に埋もれてしまうのが残念なところです。

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The Handshake Company(サイト紹介記事

ブログパーツを貼付けることで自分のブログが穴となり、他のユーザーが出てきて握手できるというもの。コミュニティサイトからの流入と握手回数をカウントできることによる自己顕示欲をくすぐる仕掛けもあるが、何よりもコンテンツの詩的なストーリーに共感して貼付けた記憶があります。


worlduniqlock.jpg
WORLD.UNIQLOCK(サイト紹介記事

ブロガーが紹介する一方だったのが、紹介記事を書くことで逆に紹介してもらえるという切り口が登場しました。Webブランド力のあるUNIQLOからリンクしてもらえる&プレゼントが当たる(しかもこまめにアクセスしないと当選確認できない)仕掛けが新鮮でしたね。


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1-click Award(サイト紹介記事

おっさんを貼付けるという楽しげなつかみ、そしてクリック(浣腸)すると他のブログを走り抜ける、公式サイトから自分のサイトへの流入も見込めるという仕掛け


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NIKEiD JASARI(サイト

こちらは自分のブログページが道の一部になるタイプ。Nikeブランドからリンクしてもらえるオシャレ感が紹介するモチベーションに繋がるかどうかでしょうか。


これはなんとしても紹介しておかないと

Flashであろうがなかろうが、Webを語る上で外せないだろうというサイトを見た時は、たとえ既にみんなが紹介していようが紹介してしまいますね。ここで挙げた3本とも、ライフスタイルを変えてくれそうな可能性を感じたのでエントリーしたという感じでした。

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DARAO(サイト紹介記事1

個人的にWiiゲームのプレイ時間よりもDARAO視聴時間の方が長い気がします。自分のチャンネルが持てるというユーザーのことを考えたサービス設計。作者ご本人がユーザーだからこその設計&改善が続いています。同時期に同じサービスが何個か登場しましたが、始めに接触したコンテンツに固執してしまうものですね。


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ニコニコ動画(サイト紹介記事

初めて見た時にその可能性にワクワクし、それ以来視聴し続けてしまっています。当時既にいくつかのブログで紹介されていたし、フルフラッシュサイトでもないのですが、そんなことにこだわっている場合ではないほどの衝撃を受けたので紹介した記憶があります。


koebu.jpg
こえ部(サイト紹介記事1

ニコニコ動画以後の登場になるので、「音声版ニコニコ」と表現するのが一番伝わるかと思いますが、ユーザーの目を奪わないため、部屋で他のことをしながら楽しめるという棲み分けができていて、こえ部はこえ部なりのライフスタイルを提案してくれています。再生プレーヤー部分のFlashの使い方も素敵です。


最後に

今回リストアップしたサイトは形式上項目ごとに分類しましたが、本当はいくつもの項目を両立されているサイトがほとんどです。全体を通じて見えてくるのは「コンテンツ自体が全てを語りきらないようにする」ということです。ディティールにいろんな仕掛けを隠しておいたり、謎を含ませておいてユーザーがコメントできる余地が残されているコンテンツがバイラルには大事なのだと思います。

もう一つは「ブロガー個人個人を大切に思ってくれている感」でしょうか。ジェネレーター系コンテンツに代表されるようなブロガーが個性を表現できる仕掛けがこれにあたりますが、コンテンツ提供側の自動化具合が進みすぎると感動が薄れてしまいます。ブロガーとしての僕は、コンテンツ提供側の向こう側にも個人を感じていたいという衝動が大きく、「個人」対「個人」という関係を築けているかのように錯覚させてくれるコンテンツが好みです。

ブロガーがわざわざ紹介するのは、ブロガー自身が何かしら得をするということが背景にあるはずです。「あの人の情報は早い」「切り口が面白い」と思ってもらいたかったり、アクセスが増えたり、アフィリエイトで儲かったりと、いろんな動機はありますが、コンテンツ提供者の思惑の上で踊らされるのは本意ではありません。昨年一年「バイラル」が一般化し、その手法が浸透してしまった今、ブロガーの目も肥えてきていることでしょう。意図的なバイラルはもはや見抜かれてしまうかもしれません。そうなると重要になってくるのはコンテンツやユーザーへの「愛」でしょうね。

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