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5. iPhoneと建築 - 現実世界と情報空間をつなげる

March 12, 2010
Nao Tokui
メタクリエイター・徳井直生による連載第5回。

私が代表をつとめる株式会社Qosmoについてまずは宣伝させて下さい (まず読み方はコスモではなくコモです!!)
会社を設立してから、いままでにないくらいのハイペースで多くの方とお会いしました。そんな折に、必ずといって聞かれるのが、「Qosmoさんってどういう会社なんですか?」と「どうしてQosmoなんですか?」といった質問です。

Qosmoという名前はご想像のとおり Cosmos (コスモス)から来てます。Cosmosを手元の辞書でひくと次のような意味がでています。


  1. 宇宙。世界。
  2. 秩序。調和。
  3. コスモス - キク科の一年草。

日本語でコスモスというと花のイメージが強いかと思うのですが、英語では「宇宙」といった意味が最初に来ています。野に咲く小さな花と大宇宙、その両極端を表現する素敵でかつ不思議な言葉ですね。

思い返せば、第一回目の連載で、

  • ユーザーをアプリの中に閉じ込めない
  • 想像力を働かせるきっかけを与えるようなアプリケーションを目指す

わたしたちの会社のミッションも同じです。小さなモバイルデバイスという窓を通して、使う人の想像力が世界全体に、あるいは宇宙にまで広がるようなそんなシステムを作る、そんな会社にしたいという想いから「Cosmos」という言葉をピックアップしました。

こうした目的意識をもってスタートした弊社ですが、もちろん常に思い通りの仕事ができるわけではありません。少しでも理想に近づこうともがいているわけですが.... 最近のお仕事の中で少しはそこに近づけたかなというプロジェクトがあるので、それをご紹介します。すでに自分のブログでも書いたのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、立川にある「Nビルディング」という商業ビル専用のiPhoneアプリです。

tokui05_02.jpg

ビルを設計された寺田尚樹さん(TERADADESIGN ARCHITECTS)が、11月から弊社に加わったアメリカ人のクリエイター Alexander Reederの友人であったことから、このプロジェクトが始まりました。ご覧の通り、ファサードの幾何学模様が目を引く一方で、他には一切の装飾を省いたシンプルかつ特徴的な外観のビルです。ファサードにはQRコードが埋め込まれているのが分かるかと思います。

もともと寺田さんがQRコードをファサードに埋め込んだ意図は次のようなものだったようです。

- teradadesign
立川駅近くの商店街に位置するテナントビル -通称 Nビル- の計画です。テナントビルの場合、看板や宣伝がファサードを占拠してしまい、建物自体の個性やアイデンティティーを表現することが設計では難しいと思いました。そこでQRコードのパターンをそのままファサードにし、看板と置換えることを考えました。このQRコードをきっかけに携帯サイト上で店舗情報などを随時更新していくことによって、従来の看板とは違った質の情報の発信を行う事を目的としました。

今、日本で使われているケータイのほとんどでQRコードが読める、だからこそビルのファサードにはQRコードを埋め込んだわけですが、これがちょっと未来のケータイだったとしたらどうでしょうか? 静的なQRコードに対して、よりダイナミックな表現が可能なiPhoneのようなデバイスを用いることで、どんな表現が考えられるでしょうか?

両者の間でブレストを重ね、建築物と情報、都市とメディアの可能性を探る実験として実装したのが、このiPhoneアプリです。私たちが提案する一つの未来像、それはデバイスを通して建物を眺めることで、建物の中の情報や人々の活動の様子をより直接的/直感的に眺めることができるというものです。バーチャル(iPhone)が物理的な存在(Nビル)をエンハンスするかたちで、建物に関する情報を提示する新しい手法を模索しました。

tokui05_03.png

Nビル iPhoneアプリは、建物の形状をリアルタイムに認識し(ビデオをご参照ください)、カメラのライブ映像の上にキャラクターをオーバーレイすることで、あたかも建物内部が透けて見えているかのようなグラフィックを実現しています。ファサードに組み込まれたQRコードは、ユーザーがカメラを建物に向ける動機付けとして重要な役割を果たしている点は見逃せませんが、弊社の独自の技術を用いることでマーカーを持たない建築物に対しても同様な仕組みを実装することができます。さらにお披露目会がクリスマス直前だったということで、ちょっとしたサプライズも!  


N Building from Alexander Reeder on Vimeo.

ブログでの紹介直後から海外を中心にさまざまなメディアに紹介されました。そのいくつかを紹介。

N Building.app [iPhone]
http://www.creativeapplications.net/iphone/n-building-app-iphone/

Iphone App Lets You See What People Are Tweeting Inside Building
http://singularityhub.com/2010/01/18/augmented-reality-building-lets-you-see-what-people-are-tweeting-inside-video/

広告大臣: QRコード + AR(拡張現実) + 位置情報 + twitter x iPhone = 立川Nビル
http://www.ad-minister.net/2010/01/13/n_building_iphone_app/

いずれもビルのファサードを使ったAugmented Reality(AR / 拡張現実)のシステムという紹介をされてます。ARという言葉は、一昨年あたりから話題にのぼる回数も爆発的に増え、一種のバズワードと化している感があります。今回のプロジェクトに対して「いまさらAR」と言われることもあるのですが、私は見せ方次第でまだまだ可能性はあると思います。鍵を握るのはストーリーテリングなのではないでしょうか (ARに限らず、こういった新しいテクノロジーを使ったシステム全般に当てはまることだと思いますが)。そういった意味でも、自分のブログ記事のコメントのなかで、このプロジェクトを「poetic - 詩的な」という形容詞で評価してくれた方がいたことは非常にうれしかったです。

建物のファサードとiPhoneをインタフェースに、現実世界の都市にオーバーレイする情報空間にアクセスする、ひとつのカタチを提示しました。もちろん、これがすべてではなく、さまざまな方法論があってしかるべきでしょう。それぞれが有用性を追求するなかに、ある種の遊び心を忘れないようなものであってほしいと願ってやみません。

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