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APMT:WEEK - 月刊インタラ塾 レポート!

October 6, 2009 3:37 PM

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ウェブ広告制作者のためのトークイベント「月刊インタラ塾」。APMTのメインイベントのひとつとして開催された9月13日(日)の回は、「本気勉強会~届く作品の創り方」と題し、東京、大阪のウェブ制作会社から6組、計8名をゲストに招いてのトークセッションが行われた。デザイン系の学生や制作会社に務めるクリエイターなどが集まる中で、6組のゲストによって語られた貴重な話の数々を簡単に紹介していこう。

月刊インタラ塾
http://intarajyuku.net/

Text by Chiemi Isozaki (IMG SRC)
Photo by CBCNET



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一組目のゲストは、ネットベンチャー企業「面白法人カヤック」から、クリエイティブ・ディレクターの鈴木啓央氏が登場。カヤックは、「作る人を増やす」を経営理念に掲げ、企業のキャンペーンサイトやコーポレイトサイト制作を行っているほか、自社で企画・開発したサイトも数多く運営している。

鈴木氏の考える"届く作品"とは、沢山の人が訪れるだけでなく、「話題になる(ユーザーが楽しめる)」「クライアントが利益を出す」「制作者も利益を出す」という三点を兼ね備えていること。しかし、沖縄の海に珊瑚を植える「gooホーム」や環境省による市民参加型温暖化影響調査「いきものみっけ」等の"何かの役に立っているサイト"の例を挙げながら、今後は利益には直結しない社会貢献を目的としたウェブ作品が増えていくのではないか、という興味深い意見を述べた。


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二組目のゲストは、2006年のXboxのプロモーション「Big Shadow」や、2008年の相模ゴムのキャンペーン「Love Distance」など、国内外でも高い評価を受ける作品を数多く手掛けてきたイメージソース/ノングリッドの代表取締役社長、小池博史氏。

より良い作品を作るために、まずは社内のデザイナーやプログラマーなど各部門の担当者からアイディアを聞き、それをひとつにまとめる形で方向性を決める、という小池氏。そこから、それをユーザーに"届ける"ために、キャンペーンのターゲットを明確にした上で、彼らの行動パターンを把握し、どのような体験をすれば面白いと思われるかを考えていく、という。また、観客参加型のインスタレーション作品やディスプレイを使った店頭設置型の作品を紹介しながら、時にはちょっとした遊びの要素を加え、ユーザーとのコミュニケーションをはかることも重要だと語った。


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今や日本を代表するクリエイターとなった中村勇吾氏が所属することでもお馴染みのtha ltd.からは、ディレクターの阿部洋介氏が登場。tha ltd.は、アマナや無印良品などの企業のウェブ制作の他、お気に入りのイメージをユーザーとシェアするウェブサービス「FFFFOUND!」を社内で運営している。

実装以外の全てを行うという阿部氏は、ウェブ制作において、企画からアウトプウトまで一貫して考えることが重要だと語る。場合によっては、アウトプットが先に完成し、それに企画を合わせていく逆のパターンもあるそうだ。また、ウェブで映像を見せるという過去の事例を使って、「ウェブでの効果的な映像の見せ方」についてを説明。見る方の時間を拘束してしまう映像を、真逆の環境であるウェブでどのように表現するか、という壁にぶつかった阿部氏は、長くても短くても正しく機能し、一部を見ただけでその状況が見て取れる表現をすることが重要、という結果に行き着いたと語った。


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大阪を代表する制作会社と言っても過言ではない、AID-DCC Inc. Katamari Inc.からは、エグゼクティブプロデューサーの富永幸宏氏、プランナーの富永勇亮氏、クリエイティブ・ディレクターの小山智彦(さくーしゃ)氏が登場。

「届く作品とはユーザーが自分から見たくなるようなもの」と、初めに語ったプランナーの富永氏は、釣りの動画サイト「SHIMANO TV」を例に、開設から2年後のアンケートで回答したユーザーの9割が「満足」と答えたサイトをどのように制作したかについて紹介した。富永氏は、このサイトが趣味性の高い内容で届く人にだけに伝え続けたこと、ユーザーがその価値を見出すまで待ち続けたこと、定期的な調査を通してユーザーに役立つコンテンツ提供を目指したこと等から、ユーザーとのコミュケーションをはかり「ユーザーにとって役立ち続ける存在になることが重要」だと語った。


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5組目は、ウェブの広告キャンペーンを中心に手掛けるザ・ストリッパーズ株式会社の遠崎寿義氏。遠崎氏は、かなりの数をこなしているというIntelのキャンペーンサイトを通して、届く作品とは何かについて語った。

KPI(重要業績評価指標)的な点数をクリアする、つまり、どれだけ効果があったのかという数字を求められることが多いという遠崎氏。しかし、そこだけを追っても意味はなく、元のコンセプトをきっちり伝えられるコンテンツかどうかということが重要だと語った。その方法はケースバイケースだが、「数字をかせげても本来ブランドが伝えたいものを伝えられなければ、それは0点。」と力強く語った様子は非常に印象的だった。


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遠崎氏とは正反対とも言える「結果が出なければ意味がない」という、限りなくビジネス的な持論を展開したのは、6組目のゲスト、ベースメントファクトリープロダクションのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、北村健氏。

「アクセスがなければダメ、商品が売れなければダメ、好感度が上がらなければダメ、情報が伝えきれなければダメ」とし、それをクリアすることでクライアントの信頼を得て、同じクライアントと長く付き合い続けてきたという。また、届く作品には「受動・能動・魅了」が重要とし、「広告と触れ合う瞬間から、見る人に能動的な行動を起こさせ、最終的に魅了する」という一連の流れを説明した。「ターゲットは常に消費者。クリエイターではない。」と語る北村氏の「使いやすい入力フォームの制作もクリエイティブな仕事」という言葉には、はっとさせられた人も多かっただろう。


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最後は、ゲストへの質問コーナー。様々な質問がぶつけられる中で、最も興味深かったのは、来場していた代理店勤務の男性からの「未来の代理店に何を求めるか?」という質問だ。制作会社が直接クライアントと仕事をするという、代理店には厳しい状況が徐々に増えている現在、ゲスト達からは「クライアントとのやりとり」「メディアをおさえる力」「マーケティング的な知識や意見」「ターゲットとなる人達の調査」「結果の報告」「全体を引っ張っていく力強さ」など、今後も代理店の存在に期待する回答がいくつも挙げられた。

会場では、入場の際に配られたメモ用紙を活用したり、持ち込んだノートブックでキーワードを書き留める人達の姿が目立った。イベントは5時間以上にも及んだが、進化し続けるウェブの世界で走り続ける6組のゲストの話は、その場で終わらせるのはもったいないほど貴重なものばかりだった。


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