AIの〈ビジュアル〉を想像してみる。トーク「シンギュラリティ:人工知能から超知能へ」前の雑感
こんにちは。今回からCBCNET Postsに参加します、arinaです。
さて、早速手前みそながら、自分の出演するトークショーのお知らせ。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事や『電脳のレリギオ:ビッグデータ社会で心をつくる』など数々の名著で知られる情報学研究者ドミニク・チェンさんにお誘いいただき、ウェブサイエンス研究会を主宰する研究者の岡瑞起さんと登壇します(超光栄!!)。 こちら、ドミニクさんが監訳された著書『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』(マレー・シャナハン著)の出版記念トークです。
2月11日(木・祝)14:00〜16:00
会場:NTT ICC
「シンギュラリティ:人工知能から超知能へ」
出演:ドミニク・チェン(情報学研究者)、岡瑞起(ウェブ・サイエンス/筑波大学准教授)、塚田有那(編集者/キュレーター)
詳細はCBCNETの記事にも!
そもそも、最近密にドミニクさんとお仕事するようになったのは、わたしの活動母体「SYNAPSE」で昨年夏に開催した公開議論「Sense of AI(人工知能、自我、表現)」へご登壇いただいたことがきっかけでした。
ゲームAI研究の三宅陽一郎さん、ドミニクさん、そして、機械学習を用いてモジュールが〈文字〉のようなものを模倣するドローイングマシン「SDM#2 レターズ」を発表したばかりの菅野創+やんツー&開発の日本ユニシス・坂本啓法さんをお招きしたこの会。アーティスト、研究者、そして脳科学に強い我らSYNAPSEの陣営と卓を囲んで、白熱3時間トークを繰り広げたのでした。
ちなみにこのときのテーマは、「AIの創造性」。
IBMのシェフワトソンに代表されるように、創造性も最近何かと注目の集まるテーマですが、では、〈創造的な行為〉を促すインプット源として、AI自体の〈感覚〉〈自我〉はどこにあるんだろうか、という問いを発したのです。つまり、身体を持たないAIが、自我(意識?)を発露する手だてはあるのか、その時々でセンシングした膨大なデータがあったとしても、それを「どこで」集約し、アウトプットするのか?……などなど。
と、今回のトーク主題の著作を読んでいくと、さすがロボット工学者の筆とあって、焦点となる論のひとつはAIの「身体化(Embodiment)」。その背景には人間・動物の生体脳の模倣(全能エミュレーション)があり、そこから生じる「AIの意識」へ、さらにはデジタル脳が可能にする「超知能」(すごい言葉だ)の可能性へと論は展開されるのですが、あれ、でも、映画『her』のサマンサって身体ないよな……なんて考え始めると、色々と想像がふくらみます。
超雑感ですが、AIに身体があると仮定すると、個体が輪郭をもつと同時に、いつか物質は壊れる気もする……。そして、シェル(殻)の中のゴーストはどこに宿るのか……(©攻殻機動隊)。と、去年、DOMMUNEの宇川さんが「AIに〈死〉の概念は与えられるのか!?」なんてことを言っていたのを思い出しました。
この続きはトークでぜひ!!! わたしはひたすらお2人に質問します!!(きっと)
ここからは余談ですが、昨年のイベント開催前、SYNAPSEチャットでは十数時間におよぶ議論が繰り広げられ…、メンバーそれぞれ脳や機械学習を扱う研究をしているだけに、本領発揮しすぎてガチでした。w
個人的に印象に残っているのは、イベントのアイキャッチイメージ=AIのイメージを何にするかという議論。AI研究界隈のポスターなんかで、いわゆる「ロボット」みたいな画像ってよく見るのですが、これからのAIってもっと概念的なもので、目に見えないエコシステムみたいなものなんじゃないかなあ、とか、考え始めると話は止まらず。結果として、登壇者である菅野創+やんツーの「SDB」vs Houxo Queによる、機械vs人間のパフォーマンス時の写真をお借りしました。
(Qくんにはいつも画像提供いただいてます。でもこれ、左はBotなので、AIあんまり関係ない)
最近、お仕事でも人工知能特集を手がけることがあるのですが、いつも頭を悩ますのがこのAIの「挿絵」だったりします。(宣伝:昨年発売、「WIRED」のAI特集で、SYNAPSE総出で編集したAI年表&用語解説も読んでね!!濃厚だよ!!ちなみに文字ばっかだよ!)
かつて、フランツ・カフカは代表作『変身』には決して挿絵を描いてはいけないと言ったそうですが、読者の想像力を喚起する方法については、いつも慎重でいたいなあとも思います。「わかりやすさ」問題と拮抗するところですが。
で、昨年おジャマした人工知能学会で、衝撃的だったのはこれですね…。この表紙の絵、数十年前から変わってないんじゃ、っていう…。(この学会表紙シリーズは一度ジェンダー問題で炎上してましたが、それはさておき)
このときは岡さんにお誘いいただき、ウェブサイエンス研究会レポートを執筆させて頂きました!(人工知能学会誌の表紙とは無関係です)
ちなみに、今回の『シンギュラリティ 人工知能から超知能へ』の書影はあれですね、『2001年宇宙の旅』に登場するHAL9000ですね。ちなみに『2001年〜』も、フィリップ・K・ディック『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』も、発表されたのはどちらも1968年。半世紀以上経っても、人間のイメージって変わってないんだなあ、とも思ったり。最初のイメージって強いなあ、と。
2045年、シンギュラリティが起きる否か!?論争には少々懐疑的なわたしですが、今後、AIがどう社会に蔓延していくのか。そのとき、いわゆる〈一般人〉なわたしたちは、何をどこまで理解し、それらと向き合っていくのか。(または、気が付いたときにはその環境下で息するようになっているのかもしれない。腐海とともに生きるように…… ©ナウシカ)
曲がりにもメディア側に属する人間として、こうしたイメージ訴求やビジュアライズって、研究・技術のアウトリーチにおける重要なファクターじゃないかな、と思ったりもする昨今です。長くなっちゃった!トークぜひお越し下さい!