9月13日、APMT:WEEKメインイベントの一つとして開催されたBridge。今回が第一回目となった同イベントは、TokyoMaxUsersGroup (TMUG)、processing.jpを主催するメンバーによる合同企画であり、Audio/Visual表現にフォーカスしたイベントである。
Audio/Visualというキーワードによって選りすぐられたゲストは計5組。サウンドアーティストや建築家、デザイナー、プログラマーなど多様なフィールドで、現在目覚ましい活躍を見せている、注目すべき表現者達だ。
プレゼンテーションとライブパフォーマンスを交互に進行させ、さらにパフォーマンスの特徴に合わせて、反射率の高いスクリーンを使用したり、会場に設置されている28個のスピーカを駆使するなど、運営側の意欲的な試みも随所に見られた。そして、当日の来場者数は250人を越え、大盛況にて幕を閉じた記念すべき第一回目のBridge。以下、出演者一組ずつについて紹介するとともに、当日の様子を振り返っていく。
Bridge
http://bridge.tokyomax.jp/
TokyoMaxUsersGroup
http://tokyomax.jp/
processing.jp
http://processing.jp/
緒方壽人 [LEADING EDGE DESIGN] × 松井敬治 [the primrose]
緒方壽人は、昨年、山口情報芸術センター(YCAM)にて開催された企画展「minimum interface」のインタラクティブなナビゲーションシステムを手がけたことで一躍有名になり、21_21 DESIGN SIGHT「骨」展でも作品を出品していたことで知られている。
今回は音楽家として「the primrose」名義で活動している、松井敬治とのコラボレーションが実現。パフォーマンスでは、バンドの演奏者たちに映像を投射し、その影の残像をビジュアライズしてみせた。さらに、スクリーンに投影されているポインターに影で触れることによってサウンドを発生させ、映像を楽器のように操る実験的な試みも披露。
RjDj TEAM (Frank Barknecht)
今回のAPMT:WEEKでは2日間に渡るRjDjワークショップの講師も務め、APMT:WEEK以外では多摩美にてスペシャルレクチャーを行うなど、多忙な来日であったRjDj開発チームのFrank Barknechtによる、RjDjについてのプレゼンテーション。
iPhone上での反応音楽における画期的プラッ トフォームである「RjDj」。その歴史の説明に始まり、環境音を変換するための「シーン」と呼ばれるソフトの作り方までトークが発展。Frankは前日にDeskTopLiveを見に行き、そこで繰り広げられていたライブコーディングに激しく感化されたらしく、最後には5分でシーンを一つ作るというライブプログラミングにも挑戦してみせた。
Masato TSUTSUI × Shuta HASUNUMA
会場であるSuperDeluxeの3面スクリーンをフル活用した大パノラマに映し出される、Jitterで生成された高解像度のビジュアルは息を呑むほど美しく、視覚的ダイナミズムからくるインパクトは正に圧巻の一言であったMasato TSUTSUIによるビジュアルパフォーマンス。先鋭的でエッジの利いた電子音を巧みに取り入れたShuta HASUNUMAによるサウンドも、ビジュアルにとてもよくマッチしていて、一段と完成度の高い見事なパフォーマンスであった。
double Negatives Architecture
昨年開催されたYCAMでの大規模なソロ・エキシビジョン以降、transmediale(ドイツ)、ARS Electronica(オーストリア)と立て続けに、数々の国際的なメディア・アート・フェスティバルにて受賞、展示を行っているdouble Negatives Architecture(dNA)による、プレゼンテーション。
彼らは、空間を計測する装置・プロセスとして「建築」を位置づけ、その独自のコンセプトに基づき、プロジェクトごとにメンバー編成を変え、インスタレーション、ソフトウェア、建築設計など表現形態を限定せず活動を行っている。
最近では、スマートダストとよばれる、あらゆる環境情報をデータとして取得出来るセンサーモジュールを複数用いて、バーチャル空間上に環境情報によって変容する建築物を作り上げる作品を多く発表しており、展示の際にそのモジュールを環境に仕掛けていく様子の写真や、バーチャル建築の映像を交えながら、自身の建築における思想を語った。
evala[port,ATAK]
イベントのトリを飾ったのがevalaによるサウンドパフォーマンス。渋谷慶一郎が主催するレーベル「ATAK」に所属し、その活動でも有名なevalaは自身もportというレーベルを立ち上げており、ストイックなまでに音響表現を追求している。
今回のライブパフォーマンスでは会場に設置された計28個のスピーカーを用いて臨場感溢れる、空間性のあるライブを展開。iPhoneやLemurなど、最新のガジェットをインターフェイスとして取り入れながらも、それらを自然に使いこなし、暗闇の中で独自の音の世界を鮮やかに表現していた。
Text by Takahiro Yamaguchi