ロサンジェルスはカルバーシティの繁華街を5分ほど車で下った場所に、ストリートの両脇を何軒ものギャラリーが並んでいるエリアがある。毎回、国内外問わず様々なアーティストがエキシビジョンを開催し、週末にこの界隈を散歩するだけでも十分楽しむことができる。
そんなストリートに面したギャラリー「LeBasse Projects」にて、ロサンジェルスでのエキシビジョンは今回で3回目になるRyuichi Ogino氏の展示が行われた。
Ryuichi Ogino
http://www.ogigraphics.com/
今回のテーマは今までと同様「Idealistically Hypocritical 3」(理想的な偽善)と名付けられ、彼のライフ・ワークとまで解釈できる、自身の持つアート・コンセプトを更に追求させた内容に仕上がっていた。
去年の展示にも顔を出させてもらっていたが、今回は、より焦点がかためられていたため見る人を作品へとひき寄せる力をより一層感じた。彼の展示方法は1枚づつの絵画展というよりは、壁一面の配置やロジカルな表現を楽しむインスタレーションと言えるだろう。展示されている部屋に入ると、途端に広がる独特の世界感が国境や文化を越えたとしても皆それぞれの心に焼き付くのだと思う。
2層や3層にも工夫されたビジュアルは全く異なる世界がお互いにマッシュ・アップされているように見えるが、その1つひとつには共通項が存在しテーマへと導かれている。それは彼の思想とも言うべきアート表現のあらわれでもある。
例えば、アニメやオタク・カルチャーの世界から飛び出てきたかのような少女の描写があれば、同じキャンパス内には全く違うコントラストを持つキャラクターやテクスチャーが描かれている。そして、「謀叛」と書かれた徳富蘆花が1911年大逆事件の最中に唱えたプロパガンダや、1917年に発表されアート界に波紋を引き起こしたマルセル・デュシャンによる「泉」の写真素材等も同時にマッシュ・アップされていた。
作品に関して彼に問いかければ問いかけるほどに、まるで謎が解けるかのように、これらのコンセプトへの感心も深まり、興味が湧いて来てしまう。今後の彼のエキシビジョンや新作への期待感も自然に抱いてしまう。
カルバーシティの週末はアートやアート好きな人々と触れ合いながら深夜まで楽しませてくれた。
Text & Photo by Nico