「sound tectonics」は山口情報芸術センター(以下YCAM)が主催するメディアテクノロジーを駆使したサウンドアートを紹介する企画だ。その7回目が4月29日(水・祝)に開催決定、渋谷慶一郎が主催する「ATAK NIGHT 4」のジャパンツアーの一環としてYCAMに登場する。ニューヨークを拠点に活動する伝説的サウンドアーティスト、刀根康尚がYCAM初出演のほか、フィンランド出身の2人組Pan sonic(パン・ソニック)、さらに渋谷慶一郎、evalaの4組のアーティストが出演。YCAMだからこそ実現できるハイクオリティなサウンドと先鋭な音響・音楽表現に注目したい。
チケットの販売は今月7日から。
またその後は他2都市でも開催が予定されている。
刀根康尚
1935 年生まれ。60年に小杉武久、水野修孝、塩見允枝子らと即興演奏集団「グループ・音楽」を結成。その後G.マチューナスを知り、フルクサスに合流する。日本の前衛芸術に大きな足跡を残し72年渡米。以降ニューヨークを拠点に活動し、J.ケージやD.テュードアらとともに、フルクサスやM.カニングハム舞踊団などのイヴェントに参加。85年からはプリペアされたCDを用いたパフォーマンスを開始。90年代にはサウンドアートや電子音響の文脈からも驚嘆をもって迎えられた。02年アルスエレクトロニカ、デジタルミュージック部門金賞。代表作に、万葉集4500首あまりを構成する漢字を全てデジタル画像化し、音声データとして出力させる「Wounded Man'yo」のシリーズなどがある。
Pan sonic
フィンランド出身のミカ・ヴァイニオとイルポ・ヴァイサネンにより93年結成。ベルリン在住。テクノ以降90年代の電子音響に新しい扉を開いた先駆者的存在。現在まで6枚のアルバムをリリース。坂本龍一、ビョーク、noto、アラン・ヴェガ、メルツバウらとのコラボレーションや数多くのリミックスワークでも知られ、特にビョークはミカの大ファンであることを公言し、「テレグラム」への参加が実現した。リズム的強度とテンションによって形成される独自の世界観は、他の追随を許さない。
渋谷慶一郎
音楽家。02年「ATAK」設立。先鋭的電子音響のCDリリースをはじめ、多様なクリエーターを擁したマルチプラットフォームとして活動。04年のソロアルバム「ATAK000 keiichiro shibuya」で評価を決定的づける。池上高志と非線形物理学の応用による第三項音楽を提唱し、06年三次元立体音響作品「filmachine」を YCAMで滞在制作・公開、その後08年ベルリンで発表。07年アルスエレクトロニカ/デジタルミュージック部門Honorary mention受賞。09年ピアノソロによるソロアルバムの発表を予定。
evala
サウンドアーティスト。04年に音楽レーベル「port」を設立し、これまでに3枚のアルバムをリリース。数々のサウンドデザインやサウンドプロダクトの開発なども多く手掛ける。06年に発表したソロアルバム「finitial」は、フィールドレコーディング音素材の人工的なプロセスによる加工/編集によるサウンドが"日本の最前線を担う音響作"と評された。ATAKにも所属し、「ilmachine」の立体音響プログラミングや、コンサートにおけるビジュアルプログラムなども担う。09年セカンドアルバムを発表予定。