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オンライン/オフラインを交差するリアリティ – アラム・バートルによる数々の実験的なプロジェクトを収録した作品集がリリース

June 21, 2012(Thu)|



ベルリン出身のアーティスト、アラム・バートル (Aram Bartholl) の作品は不思議だ。Googleマップの赤いピンを巨大なスケールで現実空間に出現させたり、偽物のGoogleカーでストリートビューを撮影してるのを装ったり、USBフラッシュメモリを壁に埋め込んでオフラインP2Pを試みたりと、どのプロジェクトも、一見すると単純なアイデア/手法であり、いたずらの延長のような作品ばかりではあるが、そこにはオンライン/オフラインの境界を揺さぶり人々をハッとさせるシニカルな視点を持っている。

そんな彼の200ページを超える作品集『ARAM BARTHOLL – The Speed Book』がゲシュタルテンからリリースされた。

彼の作品の多くが、インターネットが日常化した(もしくは陳腐化した)現代において、人々が感じるリアリティの変化やその質に注目したものだ。これは今年はじめにICCにて開催された[インターネット アート これから] 展でもテーマとしたポイントであったが、世界中でそういったテーマ性を持った作家や作品が登場している。これは一種のネット・アートの流れとして語られることが多いが、90年代のそれとは多様な変化(インターネット自体も含めて)を見せている。アラムの作品は、あるオブジェクト単体で完結するものではなく、そのシステムやキュレーション、場合によっては状況そのもの、など広範囲となっており、実空間に落とし込んでいる点が特徴的だ。本の中で、アーティストのEvan Rothは彼の作品はニューメディアアートより街で見かけるグラフィティのほうに共通項が多いとし、既存のシステムに入り込み、新たな価値を示す、という意味で「ハッカー」であるとしている。

ただ、アラムの場合は、スプレー缶で壁に描くわけでも、高度なコードを書くわけでもなく、6メートル大のGoogleマップのピンを街に置いたり、USBメモリを壁に埋め込んだりしているのだ。

Map‘ at Rencontre Arles ‘From Here On’ pics by Anne Foures
Googleマップ上に配置できるピンには影がついており、実際の場所に溶けこませようとしている。それを実際の街に設置した作品「Map」。木製のピンは高さ6メートル、重さ300kg。


WoW
オンラインゲームのアバターの頭上に名前を出す機能を実空間に実装。これをオフラインで見たときに、オンラインゲームに馴染みあるひととそうでないひとではどういった印象の違いがあるんだろうか。


アラムはF.A.T (Free Art and Technology Lab)の主要メンバーの一人であり、インターネット・カフェを占拠して行う一夜限りのネットアート作品のショーケースSPEED SHOWの発起人でもある。そうした彼のプロジェクトには「Release early, often, and w/ rap music.」(リリースは素早く、頻繁に、ラップミュージックとともに)というF.A.Tの精神が見て取れる。アラムの作品はインターネットやデジタルなものからを発想を得ながらも、アナログな手法/マインドで作られる作品が多い。そして作品をリリースするスピード感は、現代のインターネットのコンテンツ消費スピードにリンクする。


SPEEDSHOW
本のサブタイトルの由来でもある ”SPEEDSHOW”。インタネット・カフェにある全コンピューターを占拠し、アーティストのオンライン作品をひとつひとつ閲覧できるようにして行う一夜限りのネットアート・ショーケース。世界中のインターネット・カフェで30回以上開催されている。上のビデオはニューヨークで開催されたEvanRothによるSPEEDSHOW、アラムによる解説も。(以前のCBCNETの記事



Dead Drops
アラムの最も有名なプロジェクトの一つがこのDead Drops。彼がNew Yorkのメディアアート施設Eyebeamのレジデントアーティストとして滞在中に生まれたこのプロジェクトは、匿名の相手とネットワーク経由で通信を行うP2P(Peer to Peer)という手法を見事にオフラインの現実空間にインストールしている。オープンソース/フォーマットで発表した同プロジェクト。壁に埋め込まれたUSBメモリは当初ニューヨークに彼自身がインストールした5箇所のみだが、現在では世界中で900箇所以上に膨れ上がっている。
最近、自分の居場所に近いDead Dropsを閲覧できるiPhoneアプリもリリースされた。



How to build a fake Google Street View car
urban intervention by artist group F.A.T. Lab
February 2010

Googleをネタにしたプロジェクトを数多くやっている彼ら。このプロジェクトは「悪ふざけ」と言われてもしかたがないが大きな反響を呼んだ。その名通り「Google Street View」を撮影する、いわゆるGoogle Car、を自前で作ってしまうというもの。ただ、360°撮影するカメラなどの機能はまったく搭載されておらず、DIYで作成された木製の装置なのだ。このプロジェクトはF.A.Tとして2010年のトランスメディアーレに参加した際に制作された。「Google Car」と思い込んだ一般の通行人と様々なトラブルを起こしながら街を走っていく。



0,16
light installation
2009

シニカルでユーモアのある作品の一方で本作はピクセルというデジタル表現の最小単位に注目した作品。アナログでシンプルな仕組みで影をピクセレートするインスタレーションとなっている。


アラムの作品リリースのスピード感はとても早い。ときには、そのあからさまな手法により、彼の作品は批評の対象にもなることもある。たとえば、GoogleマップのピンのプロジェクトはGoogleが公式で広告としてやっていたとしたら、それなりに伝わりやすいキャンペーンとなっていたかもしれない。ただ、彼が建築を学んでいたのが影響しているのか、私達がオンライン/オフライン関わらず日常的に自然に受け入れている既存のストラクチャーの仕組みを理解し、それぞれの世界をシンプルな方法で交差させ、実空間に持ってくることで、リアリティの捉え方の変容を指し示している。この数年で日本でもソーシャル化したインターネットは着実に定着し始めており、こうしたオンライン/オフラインを意識した視点から見えてくるものもあるのではないだろうか。

出版は、グラフィックデザイン、イラストレーションを始め、建築、インテリアデザイン、都市計画などデザイン関連全般の書籍を手がけるゲシュタルテン。各分野における最先端の表現を独自の視点でいち早く取り上げ、書籍として精力的にリリースし続けている。アラムの作品の多くはオンラインでアーカイブを見ることが出来るが、この書籍にしか掲載されていない、彼へのインタビューやゲストアーティストによるコラムなどのコンテンツも収録されており、新たな考察や発見ができる内容となっている。大型書店では取り扱ってる店舗もあるようなので、見かけた際は是非手にとってみてほしい。

最後に、こちらはゲシュタルテンによるアラムのインタビュー映像となる。

Aram Bartholl — At Top Speed from Gestalten on Vimeo.

ARAM BARTHOLL (c) 2012 Gestalten, Berlin

Text by Takahiro Yamaguchi / Yosuke Kurita


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プレゼント概要
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Aram Bartholl 『The Speed Book』
応募締切:6月29日 23:00
協力:Gestalten Japan

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Information

Aram Bartholl 『The Speed Book』
http://shop.gestalten.com/aram-bartholl.html

著者: Aram Bartholl
編者: Domenico Quaranta
頁数: 268 ページ
判型: 21.6 x 28cm
仕様: オールカラー版 / ハードカバー
定価: EUR 39.90 / USD 60.00 / UK 37.50
発売: 2012年1月(国内:2012年4月)
ISBN: 978-3-89955-393-2
出版: Gestalten

販売に関するお問い合わせ:嶋田洋書 (tel: 03-3467-3863)
ゲシュタルテンに関するお問い合わせ:Gestalten Japan (tel: 0422-30-9326)

Aram Bartholl
http://datenform.de/
Gestalten
http://www.gestalten.com/


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