何かと賛否両論あるらしい「風立ちぬ」を見てきたので
何となく書いてみる

以下ネタバレあり

まず、正直そんなに興味なかったんだけど、
村上隆氏が絶賛していた(http://togetter.com/li/538643)のを見かけたし、
アートとの関係で書いていたのでちょっと興味をもって、
見ておくかーと、映画館に足を運んだのでした。

僕は宮崎駿の作品の中では「千と千尋の神隠し」が一番好きなんですよね。
舞台設定からして不思議な世界に迷い込むという設定だから、表現が超アシッドだし、
あの頃から、人間がぐにゃぁって歪むような表現が出てきた気がするし(それが気持ち悪くて好き)
悪者とか善人とかが、意味をなしてないような世界観とか、
ハクが元川だったり、川との恋愛?!っていう、もはや手放しで認めざるをえない状況とか、

あと、主人公の女の子が、宮崎駿が描く美少女じゃない方だったってのも
良かったですね。
おじさんの欲望から、するりと抜け落ちてセーフな感じ。

物語全体として、特に主義主張がない感じがよかったです。

千がデカイおにぎりをむしゃむしゃ食べながら泣くシーンとか、
それ以上でも以下でもない感情が吹き出ていてよかった。

「風立ちぬ」は、零戦作った人の話だって以外には前提知識なしで見ました。

始めの方の夢のシーンとか、震災のシーンとかはさすがにアシッドでしたね。
ただ夢に関しては夢っていうエクスキューズありきなので、この表現は限定的なんだなーと、油断してたら
震災のシーンはビビリました。
現実のシーンなのにこれかよと。
最初に夢としてそういうシーンを出しておいて、汽車のなかでいきなり現実が歪むところとか、
もってかれ感が半端無く、
さすがにああいう感じは、ほんとにすごいです。

あと所々、人間が歪みます。
千と千尋以降の、あの感じ。

ただ、割りとストーリーが地味なので、途中寝そうになりました(その日は、飛行機移動→取材→打ち合わせというスケジュールで疲れてて…)

庵野秀明の棒読みは、そんなに悪くなかったです。
主人公のキャラに合っていたので、これはいい表現だと思いました。

違和感が出てきたのが、あの女の人と結婚するとかそういう感じになってからです。
結核だと打ち明けた瞬間に「このパターンか!」っと。

これは単純に個人的な好みなんだけど、不治の病を抱えたドラマが好きじゃない(木更津キャッツアイは好きです)
もう後は死ぬまでのカウントダウンを如何にドラマチックにするか、っていう消化試合みたいになるじゃないですかたいてい。
絶対負ける試合って感じがして、ブルーになりました。あのパターンで泣かされるのかと。

まぁそうはならなかったんですけど。。

その後も、ずっと主人公は自分の「少年の夢」を追い続けて、
女は、その邪魔をしないように、並走するっていう状態が続いて、
ずっと「少年の夢」に都合がいい様に女がいて、
夢が結実するんだけど、その時には女は邪魔しないように消え去ってるんですよね。

どんだけ「少年の夢」を美化するのかと。

しかもその少年の夢は戦争に利用されてて、
ちょっとそういう残忍なシーンもでてくるけど、基本的にその時代に精一杯生きたことが美化されてて、
鯖の骨の曲線を追求したことが、美しいと描かれる、

見ていて、どこかで聞いたことあるような昭和の時代の美学を見ているような既視感があって、

でも単純に男社会で、女は3歩後ろをついていけ、的な話でもない気もし(主人公が超オタク)
少年が美しい夢を追求していたように、
少女も自分の命のなかで、美しさを追求した結果の、ああいうありかた、という見方もできて、

そこは僕的にもちょっと揺らぐ部分というか。

ただ、それもちょっと僕の現実感からは遠くて、
あくまで「昭和の時代にそういう人間のあり方があったんですよ」っておじいちゃんとかおばあちゃんの時代の話を聞いて、それを否定も肯定もできない感じというか、できないというかする必要もないというか、そういう距離感を感じた。

男も女も、自分の美学を追求するために、お互いを利用したって風にも全然みえるんですよね。
でも、それって成立すれば問題ない話でもあるから。

成立してるなって思いました。

最後の丘のシーンで、
主人公が声をつまらせた「ありがとぉ」って言うシーン(唯一、声が演技してるっぽいシーン?w)があったけど、あそこで、そういうこと言わなかった方が、主人公は完全にひとでなし、もしくは孤高の存在になったんじゃないかなと、そんなことを想像してみて、ハラハラ感を遊んでいましたw

多分、宮崎駿は、ものすごく主人公と自分を重ね合わせて描いているとおもうんだけど、
それで理解できたこととして、宮崎駿は、“鯖の骨の美しさ”を表現したいのであって、
それが戦争で利用されても、(戸惑いつつも)しょうがないよねっていう立場なんだと思う。
つまり、鈴木Pにどう利用されても俺はとにかく描くからさっていう感じ?w

今までみたジブリ映画の中で、割と主張が強いやつにいまいちピンとこなかった理由がわかった気がした。
宮崎駿って、職人なんだなぁと。
主義主張は、いままでも、ほんとうの意味で興味あることではなかったんじゃないかと。

今回は「鯖の骨の美しさが描ければ、あとはどうだっていいんだよ」ってぶっちゃけた映画なのかなと。
でもなんか、そういうのってわざわざ言わなくても、みんな分かってるんじゃないのかなぁ。。。
今まで作ってきた作品で、十分伝わってる気もするけど。。