致命的なトラブルに見まわれた先日のライブを出演側からレポートします。

インスタレーションでも参加している「恵比寿映像祭」のライブイベント「see this sound」に出演。
マウスカーソルを操るコードを走らせ、デスクトップを自在に演奏する「DesktopBAM」をやることになっていた。



DesktopBAMの初出は2010年にInterferenze Seeds Tokyo 2010というイベントが最初で、それまでしばらく断ってきていた“ライブ”のオファーを、このアイデアなら受けられるということで、新規に作ったもので、

マウスカーソルの位置と動作をミリセコンド単位で指定していくエディタから開発し、その上で演奏のシーケンスを一ヶ月くらいずっと作り込んでいった。
ちなみにこんな感じのエディタで、ちまちまと“打ち込み”していくのだ。

DesktopBAM Editor
名前の由来はHIPHOPの開祖と言われるAfrika Bambaataa。HIPHOPによってターンテーブルが演奏のツールとして発明されたように、Desktopを演奏のツールとして発明するというテーマがあったりして。なので、ストレートなHIPHOPへのオマージュでもあり、演奏内容も割りとHIPHOPな感じになってます。

特に出だしのQuicktime Playerを二つ起ち上げて、カーソルが往復しながらつないでいくパフォーマンスは、Bambaataaの「DEATH MIX」が元ネタになってて、当時発明されたばかりのバイナル2枚使いを拙いテクでやっているフレッシュさに衝撃を受けた記憶から、彼がMIXしている音源をそのままサンプリングして、Desktop上で”すこしだけ上手”にMIXしてみようというものだ。(ちなみに僕らはこのDesktopBAM上のパフォーマンスを「バイナリ2枚使い」と呼んでいる)



上で「すこしだけ上手に」と言ったのは訳があって、カーソルのオートメーションは、GUIの上で動いているだけに、その瞬間瞬間のマシンの状態によって、かなりタイミングが変わってしまうのだ。走らせるたびに、毎回微妙に挙動が違うし、それが音楽を演奏するようなシビアさには追いついていない。でもその拙い感じが、僕らとしてはBambaataaが一生懸命つなぐレコードの如く、いいグルーブを生んでいると思っている。

さらにDesktopBAMでは後半に行くに従って、かなり激しい演奏になるために、さいあくFinderやQTがハングアップすることもある。実は、全部のシーケンスを完璧にこなす成功確率はそうとう低く、見ている人にはわからないような細かいところまで入れると、今まで何度かライブやってきて、完璧だったことはほとんどなかった。

でも、それが去年劇的に改善した。理由は簡単で、ライブでつかてた僕センボーのマシンがCore2DuoのMacbook Proで、微妙にスペックが古かったのだ。最近は赤岩の使っているCorei5のマシンで動かすことで、ほとんど失敗がなくなっていた。

ライブの構成は、最初に僕らがマシンを持って登場し、一言二言喋ってから(僕らは何もしません的な説明をする)、マシンに注目してもらって、僕らがステージからはけた後はマシンの独壇場。最後に自らシステム終了して、プロジェクタの映像が黒に落ちた所で、僕らが出てきて皆でマシンに拍手を送るというパターンが出来ていて、それに加えて最近は過去作「断末魔ウス」からのインスパイヤが加わり、ライブ開始前にマシンに繋いだUSBマウスをハンマーで叩き割ってから、ライブを始めるという流れになっていた。



今回のイベントもその流れを踏襲、すべてのセットアップは前日に済ませていた。舞台監督さんがすごくしっかりした人だったので、普段あまりそこまでちゃんとやったことないくらい、人間が登場する最初の照明のタイミング等まで綿密に打ち合わせた。
準備万端で、控え室で他の出演者と談笑なんかしながら出番まで待っていた。

で、出番がきて、舞監さんにキューを出されて、まず最初にマシンと僕ら二人がステージに登って、ちょっとした説明的なことやって、マウスを壊しますとか言って、赤岩が隠し持ってたハンマーをやにむに取り出して、マウスをパカーン、スマッシュした。

マウス破壊慣れしているのか、あっという間に粉々に砕け飛んだマウスが、テーブルから落下して引っかかってぶら下がっている。一応今までの流れだとこれで僕らはステージから退散して、あとはマシンが暴れまわるわけだが、ちょっとあっけなく壊れすぎたかなと思った僕は「もう一発!」余計なことを言ってしまった。

ぶら下がったマウスを再びテーブルにセットして、止めの一撃を刺す。マウスはケーブルだけを残して完全に消し飛んだ。さあ退散しようと思った瞬間、いつもと何かが違う感じがした。さっきまでデスクトップとカーソルが大写しだったプロジェクタの画面が真っ暗に消えている。慌てて画面を除くと、画面も真っ暗になっている。

…!!

落ちただけだろ、と電源ボタンを押してもシーン。長押ししてもシーン。USBを抜いてみたり、アダプタを外したりつけたりしてもシーン。うんともすんとも言わない。しかも、アダプタのLEDライトが緑色の点灯じゃなくて、オレンジに点滅している。しかも消えそうな照度で。。。

「断末魔ウス」で、今までも同じ様な方法で何度も何度もマウスを破壊してきている。USBマウスを直繋ぎのままに、バーナーで焼いたり、水に水没させたり、車で踏みつけたりもしている。それでも今まで一度もマシン本体に何かしらの影響が起こったことは無かった。
経験的に「大丈夫」なんだと知っているつもりだった。

僕の頭の中にマザーボード死亡というエラーメッセージが横切る。

もう、マイクをもってステージに居るもんだから、全部あけすけに話してしまう。「マシンが壊れました」「どうしよう」「なにも反応しません」
舞監さんもステージに上がってきて、みんなでマシンを取り囲んで、さてどうしたものかと、

頭がぐるぐる。。。。。


@hachiya
【速報】シーディスサウンドに来ているのだが、エキソニモのマシンが目の前で死んだ。しかも開始前。



@arina02 エキソニモ。ステージ登場5分でMac落ちる。 がんばれ…‼
http://instagr.am/p/HJFBsCjd0n/


あ!
検索に1件ヒットした。

今日たまたま別の作業用に持ってきてた僕のマシンが美術館にある。あれなら一応DesktopBAMがセットアップしてある。随分前のライブのセッティングのままだし、演奏の成功率に問題があるけど、やらないよりマシだ。

状態が分からないけど、替えのマシンがあることを舞監さんに伝えると「せっかくなので、やりましょう」ということで、僕はステージを走って飛び出して、隣のビルの美術館へ。

観客をまたせっぱなしだもんだから、急がないと、、控え室でマシンを掴んで、走りながら起動、専用アカウントでログイン、走りながらMacいじるの初めてだわ。このままコケて、コッチのマシンも逝ったら泣きながら笑うわとか思いながら、

ステージに戻ると、赤岩と舞監さんがなんかつないでくれているっぽい。ちょっとドラマチックにMacを掲げながら登場しつつ、即効でケーブルをつないで設置。

そこで赤岩が言った「あの最後のところの位置合わせ、出来てない」

実は今回、最後のオチのところで、あるWebサイトを表示してボタンを押すアクションがあるんだけど、そのボタンの位置が前回と変わっていたので、ライブ直前に設定しなおしていたのだ。もちろん古い方のマシンにその数値はセットしてない。

「もうこうなったら設定も公開しちゃえ」赤岩が機転を利かす。
そりゃそうだ。もともとデスクトップおっぴろげ、ハプニング丸出しなんだから、細かい設定を隠す理由なんかない。

かくして、ステージに巨大にテキストエディタをプロジェクションしながらの設定値の書き換えが始まった。

しかし、その設定値は壊れたマシンの中と僕の頭の中にしかなかった。懸命に思い出す。たしか430だった。いや、433だったかな。もう心の中の声も全部マイク越しに共有。

「このマシンは遅いので、最後まで行けるかわからないけど」などとフォローしつつプログラムスタート!!

結果、なんと古い方のマシンくん、奇跡的に全ての演目を完璧にこなしてくれた。

最後の最後、全部の力を出し切ったマシンが自らシャットダウンを選び、マシンが落ちていく、Finderが消え、青い画面になり、画面中央でインジケーターがくるくると回る。。。回る、、、回り続ける。。。
終わらない。。!?

燃え尽きたようなマシンが、終了するのを皆が固唾を飲んで見守っている。

あまりに長く感じ、ちょっとマズイかもしれないと思い、止めに入るべきか?!と舞監さんに目線を送ると「味!味!」と引き止められた。

いつもより長めのシャットダウン、やがて終わって、会場が暗闇に落ちた。

– お疲れ様 –

ステージに上り、頑張ってくれたマシンに拍手を!パチパチパチ!!
そして、
赤岩に抱えられた、殉職したマシンにも拍手を!

みんな心よく拍手を送ってくれた。
なんか嬉しかった。





@kuga703 八谷さんとも話していましたが今までのマウスの怨念が濃厚かとw RT @naokiring USBがショートして、Macそのものが死ぬ例はなかなか無い気がしますね。ある意味奇跡。 RT @kuga703: 映像のフィジカルのライブ目の前でエキソニモさんのMacが死んで、去年の卒展



まさに奇跡のようなライブでした。
事故をみんなで共有するライブ感が良かったのか、いろんな人からいい反応をもらいました。殉職したマシンも報われます。

そして今回の経験でひとつわかったことがあります。

マウスはPCを殺せる!!!

ライブレポートでした。

古い方のマシンくんから送信