GLOBAL BEARINGは間違いなく、展示会場でもっとも目立つ作品である。ダイナミックな映像とデバイス。自然と順番待ちがあって、
常に誰かが触ってる状況になる。
平川さんは多摩美の卒業制作でこの作品を制作し、メディア芸術祭やデジスタなどに参加している。
作品を説明すると(体感しないとわからないが)。
大型のスクリーンがあり、その前方に一本の棒が立っている。これは360度、グルグル回せるデバイスである。ここで、この棒が真っ直ぐ地面に伸ばしていくと??そう、それは地球の反対側に繋がる。理解は出来ても実際に想像は出来ない。それを体感させてくれるのがGLOBAL BEARINGなのだ。グローバル的な方向感覚(BEARING)を体感させてくれる素晴らしい作品である。
今回は3月に行われた多摩美の卒業制作展で話を聞いてきた。難しいことはもちろん考えてるが、そういったことを抜きにしても面白い作品でいたい、という彼の気持ちは非常に作品からも伝わってくるものであった。
Interview with Norimichi Hirakawa
Q: こういうメディア・アートを作る前は何をしてたんですか。
Norimichi Hirakawa : 実は元々は体育会系で、柔道でインターハイ予選で3位とかまでいってたんですよ。勉強嫌いだったし、何も知らずそれでセンターで入れるところを探してたら多摩美になったっていう(笑)別に最初はなにもなかったんですよね。
大学のカリキュラムが変わっていて、1、2年は色々いろんなところ回ってから、3年になって専門的に何をやるか
決めるんですけど、そのとき興味を持ったのがメディアアートにだったんですよね。
Q: 最初はどういうのを作ってたのですか。
NH: 最初はわけわかんないですよ。(笑)なんか小屋みたいのの中に、2枚の伸縮性の布があって間に圧力センサーをいれて。それもキーボードを分解して作ったようなもので。それを両側から押して体験者の手が合うと、天井のオブジェが動くとか。それが2年のころですね。それで卒業制作にGLOBALBEARINGを作ったんです。2003年の12月からリサーチを初めて、一年がかりで作りましたね。設計から、空間構成、こういう絵を見せて、こういうデバイスがあってとか、全部自分でやりました。
Q: よく聞かれると思うんですけど、この作品で表したかったものとかは。
NH: それはよく聞かれますね(笑)でも実際は特定のメッセージを持たせたくないってのがあります。地球という普遍的なものに、僕の主観が乗ったところで何も意味を持たないですからね。
そうじゃなくて、誰もが抵抗がなく入れるものであって、かつそこに新しい切り口があるものを目指しました。
見る人がそれぞれのレイヤーで見れればいいなと思います。子供が面白がって回してるのもいいし、地球規模のことにびっくりもいいし、単にビジュアルが綺麗だって言ってくれるのもうれしいです。
Q: GLOBAL BEARINGの簡単な原理を簡単に教えてくれます?
NH: 音は加速度センサーから数字をもらって、計算して描画するソフトが音響ソフトに信号を送って、
それを受け取って音を出しているって感じですね。
描写はオブジェクティブCというのでOPENGLを書いてやってるんですよね。かなりマニアックですね。(笑)
一番難しかったのは、この場所から下に真っ直ぐ行ったらどこに着くのかって、普通にわかりそうにないじゃないですか。そこの式だけで机に2週間向かってましたね。でもそういう難しいことを感じさせないで直感的にわかる点では成功しましたね。
Q: 納得いってないところとかはあります?
NH: 欲を言えばもっと身体感覚と密着したかったなと。やっぱりデバイスがベースになってるんで。最初の段階ではキーワードで「方向感覚」というのを上げていて、感覚揺さぶられるような感じにしたいなってのはありますけど、今回の作品の形だとあれが完成形かなとは思ってます。
Q: あの作品を発展させることとかは?
NH: あいつをどうにかオンラインにできないかなとか企んでますよ(笑)
IPアドレスを使って、WEB上の空間と実際の空間を物理的な状況にしたいなと。インターネットは空間ゼロじゃないですか。でもユーザーは向こう側に大きな空間を感じるので、それを物理的に持ってきたいなってのはありますね。
Q:アイディアはどういうところから?
NH: なんかNASAの衛星写真とか見て「すげー!」みたいなのはありました。「ほんとにあるの?」みたいなもののリアリティを表に出していきたいってのが始まりですね。
そのリアリティが出てくれば世の中もっと面白いだろ、みたいな(笑)
あとは単純に人が見て、驚かせたいってのもありますね。コンセプトがしっかりしていて面白いね、っていうのも、もちろん考えてるのでうれしいんですけど、入り口からインパクトがあるというのは必要ですよね。
Q:今後どういうのを作っていきたいとかはあります?
NH: デジタル環境だけで完結したくない、だからデバイスを作ってるんです。なにかしら実際の環境とデジタル環境と繋ぐものを作りたいです。
でも今やってることにこだわらずに色々やって、後でこれだってのが見つかればいいかな。まだ模索段階って感じですね。
GLOBAL BEARING MOVIE (at counteraktiv.com)
Interview&Text by Y.Kurita