2015年10月3日から7日まで、カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された、「Adobe MAX(以下MAX)」のレポートをお届けする!
初参加のMAXは聞きしに勝る神イベントであった。
ちなみに2013年のレポートはこちら
さて、このMAX。名前は聴いたことがあるけれど、具体的にどんな内容なのかを知る人は少ない。そこで今回はMAX入門編と題し、その概要をご紹介。
text by Akiko Saito
Adobe MAXとは何なのか
主催は、PhotoshopやIllustratorなど、デジタル・クリエイティブに欠かせないソフトウェアを提供しているAdobe社。
MAXは毎年秋季に主催しているクリエイター向けのカンファレンスイベントだ。世界中からAdobe製品にまつわる人々が一堂に会する、年に一度のお祭り。250以上のセミナーやセッションが行われる。今年はこれまで最大規模の、世界60カ国から6,000人が参加した。
こちら、基調講演の会場「Microsoft Theater」。
一言で言うとAdobeが開催する「クリエイティビティ」の祭典。今年の舞台はロサンゼルス。
基調講演はMTVのVMA受賞式なども行われる「マイクロソフト・シアター」(旧NOKIAシアター)にて、セミナーはすぐお隣の「ロサンゼルス・コンベンション・センター」にて行われた。
ロサンゼルス・コンベンション・センター
イベントのターゲットは、Adobe製品のユーザーであるクリエイターたち。世界中から集結した彼らが手掛けるジャンルはデジタル全般。そのジャンルはグラフィックからモバイル、フォトビデオ、写真などさまざまで、所属する組織も民間のデザイン会社から政府、非営利組織までいろいろだ。
MAXの催しはおよそ5種類に分けられる。
1. エグゼクティブやセレブリティたちが登壇する基調講演
日替わりで行われる基調講演。初日はAdobeの役員ら、各製品の担当者が登壇し、Adobeの新しい取り組みについて発表を行う。
この方がAdobeの社長さんです。米Adobe社長兼CEO シャンタヌ・ナラヤン
今回の目玉は、デスクトップとモバイルをクラウドでシームレスに繋ぐシステムによって、どこにいても作品を制作し、共有することができる、Adobe Creative Cloudを通じた「コネクテッド クリエイティブ キャンバス」の構想。
Adobe Creative Cloudを契約している人には、作成したファイルをクラウドで共有する「CreativeSync」という新サービスが提供される。アドビが注力している、独立した機能を持ったモバイルアプリーー外出先でもサクっと画像レタッチが出来る「PhotoshopFix」や、写真をベクターデータに変換してくれる「Adobe Capture CC」で作成したファイルを、自宅のデスクトップや、遠隔で作業している同僚などが引き継ぐ事が出来るというわけだ。その時、それぞれのメンバーが設定したアセットを保存して使う事もできるので、チーム全体がアセットを共有して統一されたトンマナのクリエイティブが可能になる。
全体的に、今年のトレンドはモバイル環境でもデスクトップと遜色ないクリエイティブが行える環境をAdobeが作ろうとしていることだった。そのため、「Photoshop CC」、「Illustrator CC」、「Premiere Pro CC」などもタッチでのオペレーションに対応を開始。いまコンテンツはWebではなくモバイルで見られる時代と言われているが、制作環境もモバイルに移行しつつあるのかもしれない。壇上ではMicrosoftの新製品「Surface Book」やiPad ProとApple Pencilを使ってデモが行われ、その作業性はデスクトップにも追いつきそうな勢いであった。
写真をドロップして、アプリ「Photoshop Mix」や「Photoshop Fix」などで編集したものをその場でレイアウト。iPadやiPhoneを使ってレイアウトデザインができるカンプ用アプリ「Adobe Comp CC」。
などなど、当日の発表についてはこちらの速報をどうぞ!
基調講演の二日目は、コンテンツ・メーカーたちによるもの。「華麗なるギャツビー」などを手がけた映画監督のバズ・ラーマンが壇上に上がった。すごくエネルギッシュな人で、なにかとイスに座りたがらず、やたらと立ち上がっているのが面白かった。
バズとAdobe製品の出会いについても語ってくれた。映画を作るにあたってはビジュアルスクリプトとミュージカルスクリプト、普通の脚本が必要になるが、バズ自身はスケッチが苦手。そこで映画「ロミオ+ジュリエット」を作るとき、ビジュアルのイメージを伝えるために、写真を切り抜いてコラージュするビジュアルブックを作っていた。するとビジュアルエフェクトを手掛ける友人が、「Photoshopというものがある」と教えてくれた。初めてPhotoshopを見たときに「すごいコラージュマシーンだ!」と感激したという。ハリウッド映画の監督がデジタル・クリエイティブについて語っているのを見るのはなかなか新鮮な体験である。
最後、彼は観客に向かってこう言った。「みなさん、僕はみなさんの役に立ちたいんです。そのためにはいったいどうしたらいいのかずっと考えていました。是非僕に質問をしてください。そうしたらみなさんの役に立てる」と。恐るべきサービス精神!そして「それは間違っている、と人に言われて抑えられるのはクリエイティビティではない」と観客を鼓舞して去っていった。
2. プロフェッショナルたちによるセミナー
開催されるセッションの数は250以上。Adobe製品のTipsを紹介するセッションから、Facebookのクリエイティブ・ディレクターであるジョシュ・ヒギンズや、Macのアイコンのデザインで知られ、現在はPinterestに在籍するSusan Kareによるセッションまで。初心者にもマニアにも興味深いセミナーが行われた。
3. 新製品に触って試せる「コミュニティパビリオン」
「Community Pavilion」は、各メーカーが新製品などを引っさげ出展する展示ブースとコミュニケーションの場。休憩のためのラウンジも備え、講演やセッションの合間に楽しめる仕掛けがいろいろ用意されている。
6日朝に発表された、タブレットPCとして注目を集める「Surface BOOK」が早くも登場!触って試すことができる。
こちらは360度のポートレイトを撮影してもらえる「360 Bullet Photo」。撮影したポートレイトはWebからダウンロードする。
アナログなクリエイティビティの出展も多かった。これはシルクスクリーンのポスター
ストラタシス社による3Dプリンタ作品。インクジェット紫外線硬化方式で、積層がわからないくらいの滑らかさ。
4. Adobe社員が現在開発中のプロジェクトをリーク!「スニーク・ピーク」
MAXの名物になっている「スニーク・ピーク」は、Adobe社内の研究者やクリエイターたちが最新プロジェクトをリークするプレゼンテーション。いま取り組んでいる最中の、キレキレのプロジェクトが紹介される。今年は人工知能によるプロジェクトが多く紹介された。
オリジナルのフォントを直感的に作成「Project Faces」
こちらはAdobeのエバンジェリスト、リー・ブリムロー氏による「Project Faces」。フォントの太さ、斜体、ヒゲなどをスライドで調整することで、直感的な操作によってオリジナルのフォントを作ることができる。撮影した写真から消失点を自動で取得「Project Dollhouse」
こちらは、モバイルで撮影した写真からパースペクティブを自動的に取得し、ベクターデータで描画するもの。モバイルで撮影した写真から、、
自動的にパースペクティブを取得。その場で犬を合成した。
2Dの写真から3Dデータを起こし、3Dプリンタで印刷できる「Photoshop 3D Portraits」
そっくり
街で見かけたフォントを、、
人工知能で解析して突き止める「Deep Font / Font Capture」
ビッグデータを参照し、消去される確率が高いものをスライド操作だけで消してしまう「Defusing Photobombs」
「スニーク・ピーク」での発表は、詳しくはicsさんのウェブサイトに完璧にまとまっているのでそちらをどうぞ!
5. ネットワーキングのためのパーティ
アメリカのカンファレンスは、セッションと同じくらいパーティにも気合が入っている。
5日の夜はコミュニティ・パビリオンにて軽食とビールなどが振る舞われるパーティ「Sponsor Welcome Reception & Meet the Teams」が開催された。18時になると同時に、会場にはお酒と軽食のカウンターが登場。フランクな雰囲気だ。来場者はビール片手に出展者らとの会話を楽しむ。
Adobeのソフトウェア開発担当者がなんでも質問に答えてくれるコーナーも。このコスチュームは今回のために調達したそう。
みっちりと講演とセミナーを受講した後、6日の夜はお待ちかねのお祭り騒ぎ。さながらフェスの様相で、イベント空間にインスタレーションを展示したり、ロックバンドの演奏を行う「Beer Bash」が開催。もちろんビールも軽食も無料で振る舞われる。
NY発の体験型エンターテイメント「FUERZABRUTA(フエルサブルータ)」がショーを行ったのは驚きだった。
みんな写真撮りまくりです
このために作られた鏡と光のインスタレーション
ホスピタリティとサービス精神
Adobe MAXが他のカンファレンスイベントとは違うところ。それはホスピタリティ。会場にある、飲み物や食べ物の豊富さ、そして新サービス「Adobeストック」1年分や、FUJIFILMのミラーレス一眼「X-T10」を来場者全員にプレゼントするなど、すさまじいサービス精神を感じる。
まさかカメラがもらえるなんて、、。詳細はブログ「カンファレンスに出席したらカメラをもらった 〜AdobeMAXがすごい〜」をどうぞ
膨大なセッションと、新製品の情報を会場で熱狂しながら聞く体験、そしてこのサービス精神に触れると、1600ドル(およそ19万円)という参加費用も納得だ。
ちなみに広告やクリエイティブのイベントだと、このお値段はザラ…。
これまでに体験したことがないほどのもてなしぶりだった。
ロサンゼルスのまちをプロフォトグラファーとめぐる「フォトツアー」も開催
Adobe MAX2015は一度来てみると毎年来続けたくなる、不思議な魅力をもったイベントである。来年の開催は、11月にサンディエゴで。次回はあなたも是非!
ちなみに2015年11月11日(水)には日本版クリエイターの祭典「Adobe Live -Best of MAX-」が開催!
様々なフィールドで活躍するクリエイターが集結、デザイン、Web、映像、写真など、それぞれ独自のテクニックやノウハウをご紹介。
Adobe社のエキスパートによるCreative Cloudの最新Tipsやワークフローのご紹介もあります!
詳細はWebサイトにて
Information
ADOBE MAX 2015http://max.adobe.com/
October 3-7, 2015 Los Angeles, CA.
クリエイターの祭典
Adobe Live -Best of MAX-
http://www.event-web.net/adobelive2015/max/
劇的に変化を続けるクリエイティブ環境において、Creative Cloudが現場にどのような効果をもたらすのか、最新情報や事例を交えながら紹介していきます。
日時:2015年11月11日(水)
11:00-18:15 セッション
18:15- ビアバッシュ
(受付開始 10:00)
会場:東京ミッドタウンホール(六本木)
定員:800名
参加費:無料(事前登録制)
※お申込み多数の場合は抽選とさせていただきます。
主催:アドビ システムズ 株式会社
出演:
オープニングアクト:エンターテインメント集団「白A」
アドビセッション:佐分利 ユージン(アドビ システムズ 株式会社 代表取締役社長)ほか
ゲストセッション:原野 守弘(株式会社 もり)
その他のスピーカー詳細は公式サイトにて