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高谷史郎 《Camera Lucida》 2004年

高谷史郎の個展「明るい部屋」が東京都写真美術館にて12月10日より開催される。

高谷は、国際的な芸術家集団「ダムタイプ」の芸術監督として、パフォーマンスやインスタレーションの制作に携わり、映像、照明、グラフィックや舞台装置デザイン等を幅広く手がけてきた。個人の活動では、映像作家として、自然環境や物理現象への深い洞察に基づく作品や、音楽家ほか多彩なジャンルのアーティストとの協働で作品を制作し、とりわけ近年では、光学的な関心から写真シリーズを発表している。

本展覧会のタイトルである「明るい部屋」とは、哲学者ロラン・バルトによって1980年に書かれた写真論の題名であり、画家が風景を手元の紙の上に映し出すために用いた光学装置カメラ・ルシダ(camera lucida、ラテン語)を意味している。カメラ・ルシダは、今日のカメラの原型とも呼ばれる「暗い部屋(暗箱)」=カメラ・オブスクラ(camera obscura)が、針穴(ピンホール)から入ってくる外光によって倒立像を投影するのとは異なり、「カメラ」(部屋、箱)と呼べる部分を持たず、プリズムや鏡とレンズだけで目の前にある対象物を映し出す。

「写真ができる(像が結ばれて定着する)過程は暗箱というブラックボックスの中で起こっているけれども、すべてを明るみのもとにさらすような、そんな構造の舞台をつくってみたかった」として、高谷はパフォーマンス「明るい部屋」を2008年に発表。舞台そのものをカメラ・ルシダにすることで、高谷はバルトが考えた写真というものに近づこうとした。

バルトは、その写真の本質を、「それは=かつて=あった」という実在との関わりに見出している。絵画は対象を摸倣することができても対象そのものを映し出すことはできない。しかし、写真は対象そのものを映し出し、それ自体が関わる記憶や存在感といったものを、観る者に想起させる。高谷にとって、写真は、あらゆるメディア表現の原点として存在しているのだ。

本展では、インスタレーションとして制作された《Camera Lucida》(2004)、初公開の新作《Toposcan》などを紹介するほか、同美術館のコレクション作品で、高谷の活動の原点である写真映像の歴史を検証する。

2014年1月3日には、関連イベントとして、坂本龍一(音楽家)、浅田彰(批評家)、高谷史郎、による特別アーティスト・トークも予定されているので、展示とあわせてお楽しみ頂きたい。
高谷史郎の美術館における個展は今回が初という事で、ぜひ、お見逃しなく。

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高谷史郎 パフォーマンス《明るい部屋》 2012年 撮影:福永一夫

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《Camera Lucida》2004

Information

高谷史郎 明るい部屋
http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-2023.html

会 期: 2013年12月10日 ( 火 ) ~ 2014年1月26日 ( 日 )
会 場:東京都写真美術館 地下1階展示室
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)、および2013年12月29日~2014年1月1日 ※2014年1月2日・3日は年始特別開館
料 金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/
小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/東京都写真美術館友の会会員は無料/第3水曜日は65歳以上無料

展覧会関連イベント【特別アーティスト・トーク】
2014年1月3日(金) 16:00~17:30
□会場:1階ホール(定員190名)
□出演:坂本龍一(音楽家)×浅田彰(批評家)×高谷史郎(出品作家)
※本展覧会チケットの半券をお持ちの方は、どなたでもご参加いただけます。
※当日10:00より1階受付で整理券を配布します。
詳細はこちら


profile

高谷史郎
1963 年奈良県生まれ。京都市立芸術大学環境デザイン科卒業。1984 年より「ダムタイプ」に参加。ダムタイプの活動と並行して1998年より個人での制作を開始。近年の活動としては、2012 年 パフォーマンス《CHROMA》初演(びわ湖ホール)、「吉左衞門X:高谷史郎・音/ 映像 + 樂吉左衞門・茶碗」展(佐川美術館)、2013 年 《composition》(シャルジャ・ビエンナーレ、アラブ首長国連邦)、《CHROMA》(マルセイユ・フェスティバル、フランス)。《LIFE-WELL》坂本龍一、野村萬斎とのコラボレーション(山口情報芸術センター)等。